※この作品はR-18です。

外法ってやつを見せてやろう   作:山上真

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第39話:だからお願いだ。僕にまで皆を切り捨てさせないでほしい

 五月一日の夕食後。

 

「九角くん。もしよければだけど、どこか空いている拠点を借りてもいいかな?

 龍園くんの言葉に感銘を受けたってわけじゃないけど、僕ももう少し積極的に動いてみようかなって思ってさ。

 これからゴールデンウィークの連休に突入する。その期間を使って、泊り込みの勉強会を開催しようと思うんだ。ゴールデンウィーク後も、放課後を使ってね。――そして、一部の生徒には半強制的に参加してもらおうと思う」

 

 天嶺にそう告げる平田の眼には、強い力が籠っていた。気迫は十分に感じ取れる。

 

「なるほどな。だが、場所が無くてはどうにもならん。故、俺たちの借り受けている拠点の一つを利用しようということか」

「うん。どうかな?」

「構わんぞ。今は使っておらんし、暫くは使う予定がないのも事実だからな。結局のところ、必要になってから用意しようとしたのでは遅すぎるから、前以て用意してもらったに過ぎん。いざその時まで使わずにいるよりは、多少なりと有効活用した方が拠点も報われるだろう」

 

 念には念を入れて、天嶺たちは複数の拠点を要求し、用意してもらっている。その規模も、大中小と様々に分かれている。

 である以上、そのうちの一つを一時的に平田に又貸しするくらいは許容範囲だった。

 先の小テストにおけるDクラスの成績は散々なものだ。ラスト3問を解けないのは仕方ないとして、問題の難度を考えれば、それ以外の全問正解――85点を取るのが既定路線と言えるだろう。だが現実には、それにすら満たない生徒の方が大半である。

 中学範囲――それも、入試問題より二段階は簡単な問題でそれなのだ。

 それを踏まえると、普通に考えて、より難しくなった高校の問題が解けるとは思えない。思わない。基礎が及ばずして、応用に手が回る筈がないのだ。

 だからこそ、平田は中間テストでクラスから退学者が出るのを危惧しており、それを阻止するべく打てる手を打とうとしているのだろう。

 納得した天嶺は、平田へと拠点の鍵を一つ渡す。規模としては中規模だが、数十人は収容できる。

 

「ありがとう。――ただ、こんなやり取りをしておいて何だけど、僕だけだと人手が足りないのも事実でね。誰か手伝ってはくれないかな?」

 

 天嶺から鍵を受け取った平田は、そのまま食堂に残っていた面々へと問いかける。

 

「悪いが無理だ。俺は恵と麻耶の面倒を見るので手一杯だな」

 

 真っ先に答えたのは清隆だった。

 

「清隆に集中教育受けて、漸く中学範囲が何とかなった感じだからね」

「それだって、全部が全部理解できたわけじゃないし……。テストにすれば平均80点換算ってところ……?」

 

 清隆の言葉を裏付けるように、その教えを受けている恵と麻耶が続いた。

 その言葉を信じるなら、三週間後には中間テストが待ち受ける状況で、丸々一ヶ月分の高校範囲の遅れを取り戻さなければならないのだ。とてもじゃないが、平田を手伝う余裕はないだろう。

 

「俺も無理だ。まあ、乗り掛かった舟だからな。引き続き、池と山内の面倒は見てやる」

 

 続いて言葉を発したのは天嶺。

 正直なところ、池と山内も恵と麻耶の二人に負けず劣らずでヤバい。むしろ、ヤバさで言えば二人以上だ。恵と麻耶が80点換算なら、池と山内は60~70点換算で回しているのが実情だ。高校で難度が上昇することを踏まえれば、今でさえギリギリだ。

 

「僕は三宅だ」

「私は佐倉と長谷部ね」

「私は井の頭さん」

 

 幸村、澪、鈴音が続いた。

 

「一応、僕と堀北ならもう一人、二人ぐらいの面倒を見ることはできるだろうが……」

「問題があるとすれば、うちのクラスで私たちの言うことを素直に聞く相手がいるかってことね……」

 

 幸村と鈴音は揃って溜息を吐いた。

 二人には他にも教えるだけの余裕はある。――余裕はあるが、相手が素直にそれを聞くかは別問題である。

 そして、人を加えるにしても、既に教えている相手――三宅と井の頭に配慮した人選をしなければならない。

 

「そうか……。もしかしたら、幸村くんと堀北さんには、誰か面倒を見てもらう相手を増やしてもらうかもしれない。その点は了承してほしい」

「了解した。可能な限りは手伝うさ」

「私たちだって、クラスの一員だという自覚はあるもの」

 

 平田の言葉に、幸村と鈴音の二人は頷いた。

 

「ってことは、残りの面子を私と櫛田さん、平田くんの三人で面倒見なくちゃならないわけ? ……小テストの点数を鑑みても、普通に無理じゃない?」

「教師役としては王さんも見込めるけど、普通に難しいよね? って言うか、須藤くんとか勉強会に参加するの?」

「そこはどうにかするつもりだよ。小テストで成績の低かった生徒は、半強制的にでも参加させる。そのためには鉄拳制裁も辞さないつもりだ。

 僕が恨まれること。それによって僕の前で笑顔が失われること。それは確かに嫌だけど、それを厭うが余りに事態を見過ごして退学者が出ることの方が僕は嫌だからね」

 

 渋い表情をする千秋と桔梗に対し、平田は覚悟を決めた表情で告げる。

 ――目醒めよ。

 轟!

 ――目醒めよ。

 分かる者には、平田の身に氣が迸ったのが分かった。

 

「あれ……?」

「これって……?」

 

 視えはしていないものの、既に氣に覚醒している恵と桔梗は、それを感じ取ったようだった。

 

「今、何か……?」

 

 恵と桔梗ほどではないものの、鈴音も何かを感じたようだ。不思議そうに首を傾げている。

 或いは、周囲に氣の使い手が増え始めたこと、『青龍』の宿星を持つ龍園と間近で接触したことなどが、影響を及ぼしているのかもしれない。

 

「平田もか……」

「この調子でいくと、どれだけの人が目醒めることになるのか、分からなくなるわね……」

「ああ。この場の全員が目醒めたところでおかしくないような気もしてくる」

 

 呆れか。はたまた感心か。

 いずれにせよ、天嶺と澪は深々と溜息を吐くのだった。

 ハッキリ言って、この学校に入学してからというもの、氣に目醒める、或いは目醒めている相手に遭遇し過ぎである。

 村で仕事をしていた時からは信じられないことであった。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

「みんな、聞いてくれ! 明日からゴールデンウィークの連休に入る。それを利用して、泊り込みでの勉強会を開催する。場所に関しては、九角くんが仕事用に用意してもらった場所を貸してもらうことが出来た。

 ゴールデンウィーク後も、放課後の教室なり図書館なりを使って勉強会は継続していく予定だ。

 正直、そうでもしないと中間テストが本当にヤバい。みんなの小テストの結果を見ると、そうとしか思えないんだ。

 僕はみんなに退学してほしくはない! だから、先の小テストの点数が心許なかった生徒には、半強制的にでも参加してもらう!

 教師役は、僕と櫛田さんと松下さんが務めることは確定している。出来れば、成績が上位だった高円寺くんと王さんにも協力してほしいんだがどうだろうか?」

 

 五月二日。

 朝のホームルーム前、平田はクラスメイトに向かって勉強会の開催を呼びかけた。その一方で、好成績を修めた高円寺と王に教師役を打診する。

 流石に昨日の今日ということもあって、遅刻をしている生徒がいなかったのは幸いだった。

 

「私は遠慮させてもらおう。私が目を掛けるに値する人物がいないのでね。――いや、この言い方は正しくないね。このクラスにおいて私が目を掛けるに値する相手は、わざわざ勉強会を開いて面倒を見る必要がないのだよ」

 

 案の定と言うべきか、高円寺の返答は否だった。正直、彼に関してはダメ元であり、然程期待してはいなかった。平田にとっての本命は王である。

 

「私は構いませんが――あの、他の方は? それこそ、満点を取っていた綾小路くんとか、九角くんとか……」

 

 目論見通り王は教師役を引き受けてくれたが、同時に当然とも言うべき質問が飛んできた。

 

「綾小路くんは軽井沢さんと佐藤さんの教師役で手一杯だそうだ。同様に、九角くんは池くんと山内くん、伊吹さんは佐倉さんと長谷部さんを受け持つ。

 幸村くんは三宅くんを、堀北さんは井の頭さんを受け持つけど、もう一人、二人くらいなら受け持つ余裕はあるそうだ。

 ただし、先約である三宅くんと井の頭さんに配慮した人選であることが絶対条件となる。

 また、当然のことながら、キチンと二人の教えを受ける気のある人物となる。

 個人的意見を言わせてもらえば、その時点でだいぶ候補は限られるだろう」

 

 平田は王の質問に答えていく。

 それを聞いたクラスメイト達は内心で不満を覚えた。しかし、反論することは出来なかった。

 天嶺と清隆、澪の学力を以てすれば、他にも教えることは可能だろう。……クラスメイトの誰もがそう思った。――その一方で、他の相手に教えることがないだろうことも理解していた。

 昨日、担任である茶柱に言及されたこともあり、注意喚起を無下にし、差し伸べられていた手を払ったのは自分たちだという自覚があったからだ。

 教えを受ける相手として名を挙げられた面々は、先月の段階で差し出された手を掴んで態度を改めたからこそ、今月も見放されずに済んでいるのだ。

 

「あの、僕、幸村くんか堀北さんに教えてもらいたいんだけど、大丈夫かな?」

 

 手を挙げてそう言ったのは、沖谷京介という男子生徒だった。

 男子ではあるが、体つきは華奢で、髪はふわっとしたショートボブの青髪。端的に言って、『男の娘』という表現がこれ以上ないほどに似合う男子だった。

 沖谷の質問に、平田は直接答えず、幸村と鈴音に視線を向ける。

 

「そうね。沖谷くんは私の方で面倒を見るわ。彼であれば、井の頭さんも大丈夫だと思うし……。どうかしら?」

「は、はい。大丈夫です」

 

 途中、鈴音が井の頭に問いかければ、彼女はやや慌てながらも了承した。

 

「決まりね。ただし、真面目にやってもらうわよ?」

「う、うん。もちろんだよ!」

 

 鈴音が冷たい目線を向けながら問いかければ、沖谷は緊張しつつもコクコクと首を縦に動かして了承する。

 本人に自覚があるかは不明だが、この時点で沖谷は第一関門を突破していた。鈴音にしてみれば、この程度の眼力に耐えられないようであれば、いざ教え始めたところでついてこれるとは思えなかったからだ。

 

「あの~、拙者もよろしいでござるか?」

 

 沖谷に続けとばかりに、それでも自信なさげに手を挙げたのは、外村という男子だった。

 やや小太りの体型でメガネを掛けており、愛称は『博士』。もっとも、頭が良さそうな愛称の割に、学力は然程でもない。ただし、エンタメ知識や歴史にコンピューターなどには詳しく、満更的外れな愛称でもない。

 その趣味から度々口調が変わるが、基本的には『拙者』に『ござる』といった侍口調を用いる。本人曰く、『余りにも尖りすぎた口調だと、敬遠されてしまって、そもそも会話してくれない』とのことだ。

 

「じゃあ、外村は僕の方で受け持とう。……三宅も構わないか?」

「ああ」

「ただし、勉強する時はキチンと勉強に集中してもらうぞ。エンタメ知識やコンピューター知識を垂れ流すのは、それ以外の時間にしてくれ。

 正直に言えば、僕もその手を知識をある程度は学ぶべきだと考えている。その点では、逆に教授してほしい」

「そうだな、俺にも頼む。……幸村は勉強を、俺は肉体改造を、外村はエンタメやコンピューター関連を。そんな感じにやってけばバランスが取れるだろ」

「うっ!? 勉強だけでなく、肉体改造もでござるか……」

 

 三宅の言葉に、外村は若干怯んだ。

 

「運動会や体育祭なんてのは、名称が違うだけで学校ではお決まりの行事だ。それを踏まえると、定期テストの赤点で退学になるのなら、体育祭でもペナルティがあっておかしくはない。

 仮に直接の退学にはならないとしても、サッカーで言う『イエローカード』みたいに、『累積で退学になる』なんてペナルティは普通に考えられる。

 そして、この学校が真に生徒の実力を多角的に評価するのであれば、エンタメ知識やコンピューター知識を問われる試験があったとしてもおかしくはない。

 何せ、現代社会は情報化社会だからな。ある程度のコンピューターの扱いは必須だ。しかしだからこそ、その必須アイテムの知識を問うてくる可能性は捨てきれない。

 エンタメ知識も同様だ。だって、日本は『アニメ大国』と言われるほどだからな。この学校が『日本の次代を牽引する人物の輩出』である以上、自国のセールスポイントの知識を問われても、やはりおかしくはないんだ。

 あくまでも推測だけで、確証や確信がないのが頭の痛いところだがな……。

 兎にも角にも情報が足りていない。それでも、推測を元にして動くしかない。――動かない結果どうなるかは、嫌と言うほど分かっただろう?」

 

 幸村は外村のみならずクラス全体に向けて言い放った後、自身の頭に手を当てて、頭が痛いとばかりに表情を歪めて溜息を吐いた。

 幸村の言葉はあくまでも推測でしかない。だが、最後に付け足された言葉によって、紛うことなき正論として機能する。してしまう。

 天嶺を始めとする一部の面々が動き、その結果として270CPが残った。……Dクラスの現状はそう言う方が正しく、仮に天嶺たちが動いていなければ0CPになっていた可能性も普通にある。

 だからこそ、CPや退学を危惧するならば、何ら確信や確証のない推測段階で動き始めるしかないのだ。

 

「幸村殿の言う通りでござるな……。相分かった! 拙者も頑張らせてもらうでござる!」

 

 幸村の言葉に納得した外村は、力強く宣言する。

 

「今のやり取りで分かってもらえたと思う! 多角的に見据えた場合、僕たちはこの学校で過ごすには余りに地力が足りないんだ! 

 ただ、今しがた例に出た身体能力、エンタメ知識、コンピューター知識は『推測に基づくもの』でしかないのも事実だ!

 だから、茶柱先生が言及した『確定した事項』――すなわち『定期テストでの赤点退学』を防ぐために力を入れるのが、現状では一番理に適っている!

 普通に考えてくれ! 入試よりも格段に簡単な問題であの点数なのに、今のままの学力で、それより遥かに難度が上がっている高校のテストで赤点を防げると思うかい!? 無理だろう!? ――けどそれは、『今のままの学力』なら、だ!

 学力を上げれば、退学を防げる可能性はある! その上で学(・)校(・)側(・)が(・)定(・)め(・)た(・)攻略法を使えば、中間テストだけなら間違いなく乗り切れる! そのためのヒントは既に出ているんだ!」

 

 平田の言葉に、Dクラスの教室内はざわついた。

 

「攻略法……?」

「そんなのあるの……?」

 

 そこかしこから、そんな声が上がる。

 

「先の小テスト、先生は『学習状況を確認するのが目的』と言った。それは間違いじゃないだろう。――だけど、ラストの3問はそれを踏まえた上でも難度が高すぎる。

 みんなはそう思わなかったかい? 何でわざわざ一学年も二学年も先の問題を出すんだと、先生の話を聞いていて微塵も不思議に思わなかったかい?」

「それは、思った……」

「そうそう。いやまあ、どっちにしろ解けなかっただろうけど、二学期とか三学期の範囲でよくない? っては思った」

 

 平田による同意を促すかのような質問に、クラス内から返事が上がる。

 

「そう! みんながそう思ったのは、決して不思議なことじゃない! むしろ、そう思う方が当然なんだ! ――にも拘らず、実際には『二、三年の範囲の問題』が出されている!

 なら、『そこには学校側の思惑があった』と、こう考えれば筋が通る! 

 この一ヶ月、うちのクラスは授業を真面目に受けない生徒の方が圧倒的に多かった! 小テストも散々な出来栄えの生徒の方が多い! それは事実だ!

 だけど考えてみてくれ! その『事実』は、小テストをやらなくても学校側は把握できていたことだとは思わないか!? わざわざ、それぞれの出来映えを晒す必要は無かったとは思わないか!?」

 

 再度の平田の質問に、やはり同意の声が上がる。

 

「そう! 出来映えを晒されたことに、特に成績不良な面々が不満を覚えるのは当然なんだ! ――にも拘らず、やはり学校は『公表』という方法を取っている!

 ならば、やはりそこにも『学校側の思惑がある』ことを、想像して然りなんだ!

 そうして考えていくと、見えてくるものがある! 結論を言おう! 初回の中間テストは毎年使い回されている! 流石に全く同じってことはないと思うけど、類似問題である可能性は非常に高い! 先の小テストは、『先輩に交渉して過去問を手に入れろ』という学校側からのメッセージなんだ!」

 

 平田の断言に、またもやクラス内には騒めきが走った。

 

「言われてみれば筋は通ってるけど、んな過去問を買うポイントなんて残ってねーよ!」

 

 次々に上がる、同じような内容の声。

 

「分かっている。個人で見ればそうだろう。でも、クラス全体で見ればそうじゃない。僕を始め、節約して過ごした人だっている。そんな人たちがポイントを出して過去問を買えば、あとはそれをコピーしてみんなに配ればいい」

 

 平田の口から紡がれた希望に、クラス内には笑顔が戻る。活気が戻る。

 

「でも! そうして節約した人が、素直に協力するかは別問題だ! それは仕方ない! この一ヶ月で、それほどに心証を下げてしまったからだ!

 高校生には過ぎた額である10万もの大金を一ヶ月で使い切った! 解けて当然の問題が解けない! それらの事実は、心証を下げて余りあるんだ!

 だから、協力を得たい生徒たちは、まずその事実を受け入れて、行動で改善を示していくしかないんだ!

 僕が行っているのは、その手助けに過ぎない。早い話、たとえ僕が過去問を手に入れても、勉強会に参加しない生徒には、参加しても真面目に勉強をしない生徒には、過去問を渡すことはない。

 僕が優先するのは『クラスの和』。言い換えれば、『クラスの笑顔』だ。

 そのためには、勉強という、や(・)っ(・)て(・)当(・)然(・)の(・)努(・)力(・)すら出来ない生徒のことは切り捨てるしかない。そうしないと、努力している生徒が報われないからだ。足を引っ張られ続けることになるからだ。

 だけど、僕個人の本音を言えば、そんな真似はしたくない。

 だからお願いだ。僕にまで皆を切り捨てさせないでほしい。クラスメイトだと、思わせたままでいさせてほしい」

 

 教卓の前、平田はクラスメイト達に対して、静かに頭を下げた。

 1-Dの教室内には、困惑が広がるのだった。




平田の意思表示回です。
別に『Dクラスのリーダー』として起ったわけじゃないですけど、実質的にはリーダーポジに納まっていくことでしょう。
『利己的な目的』と『利他的な結果』を照らし合わせた場合、Dクラスでリーダー足り得る人材って本当に限られてますから。
それも、この初期段階のDクラス相手となると平田ぐらいしかいません。
素養だけなら桔梗や鈴音も持っていますが、この二人は『切り捨て上等』な面も持ってますから。

ただまあ、『足手纏いの切り捨て』に利を見出す一方で、『連帯制度故のペナルティ』を危惧せざるを得ないのも事実なわけです。
そのため、平田以外の上位陣も、『積極的な切り捨て』には二の足を踏んでいるのが実情です。
ただ、この一ヶ月間を見てきて、個人の中でも『損切りした方がいいんじゃない……?』という見方が強いのも事実です。
その一方で、『ここまで追い詰められれば、流石に改善するんじゃない……?』という見方があるのも否定しません。
結果、積極的な協力はしないけど、積極的に邪魔もしません。
平田を立てる一方で、中間テストをクラスメイトに対する試金石にする考えですね。
ここまで追い詰められて、それでもなお変われないなら、損切りも已む無し。……天嶺グループの意見としてはこんなところです。

沖谷のビジュアルは原作準拠で行きます。というか、原作とアニメで仲谷のビジュアルが変わり過ぎでしょう。
いや、原作に仲谷のビジュアルはないわけですが、それでも文章で描写はされてます。

原作描写:華奢な体つきに、ふわっとしたショートボブの青い髪。女子に免疫力のない男子なら、コロッと「惚れてまうやろー!」と叫んでいただろう。
アニメ:赤みを帯びた茶髪の男子。一目で男と分かる容姿で、男の娘要素なんか微塵もない。

どうしてこうなった……。 
いやまあ、名字の読みからして、オキタニなのかオキヤなのか定かじゃないですからね。
公式ガイドとかではオキヤになってますけど、一巻時点ではオキタニなわけで……。
それを言えば、真嶋先生も名前がトモヤとトモナリで一貫してないんですが……。

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