※この作品はR-18です。

外法ってやつを見せてやろう   作:山上真

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第40話:独り身が長いって嫌ね……

 カリカリ、カリカリ……。

 放課後の教室内にペンを動かす音が響く。いつも通り、池と山内が清隆謹製の問題集に臨んでいるのだ。

 所々で詰まったり悩んだりするのはいつものことだが、今日はいつにも増して精彩がない。

 その理由にも察しが付いている天嶺は、二人へ静かに問いかける。

 

「須藤のことが心配か?」

 

 予期せぬ、或いは予期していた投げかけ。池と山内は互いの顔を見合い、改めて口を開く。

 

「そりゃあな……」

「アイツのバカっぷりは、ダチの俺らがよく知ってるからよ」

 

 然もありなん。『三バカ』というのは、単に学力不振のワースト3を指してのことではない。

 単に学力不振というだけならば、そんな生徒は1-Dにはたくさんいるし、須藤は別にしても、池と山内とは五十歩百歩だ。

 その上で、池、山内、須藤の三人を指して『三バカ』と呼び始めたからには、相応の理由が存在する。

 それこそが、互いの距離感だ。入学早々にして、この三人は異常なほどに早く距離を縮め始めたのだ。馬が合うとはよく言ったもの。その言葉は、『三バカ』にこそ相応しい。

 

「気持ちは分からんではないが、今のお前たちは須藤の心配を出来るほどには優れておらん。そのことを認め、まずは自分のことに集中せよ。

 俺と違って、平田は未だに須藤を見放してはおらん。である以上、あとは須藤の態度次第よ。

 平田がどれだけ手を差し伸べようと、肝心の須藤が掴まねば、そして掴んだ後も真面目に臨まねばどうしようもない。――そのことは、他ならぬお前たち自身が分かっていることだろう?」

 

 粛々と天嶺は語る。

 その言葉に否はない。自分たちが今こうしているのは、先月のうちに差し出された手を掴み、言われたことには素直に従ってきたからだ。……そのことを、池も山内も理解している。

 その甲斐あって、今までの自分たちからは信じられないほどの好成績を取れたが、それでも60~70点だ。問題の難度を鑑みれば、決して手放しで喜べるレベルではない。来る中間テストの難度は、小テストに比べると劇的に上昇するのだから。……両名はそのことも理解していた。

 それでもなお、須藤を心配せずにはいられない。理屈ではない。感情とはそういうものだ。

 

「まあ、そうは言っても、それで簡単に実行できるようなら苦労はないのだがな……」

 

 当然、天嶺はそんな心(・)の(・)機(・)微(・)を理解している。二人を追い詰め過ぎないように、苦笑いで軽く流した。

 

「それと、明日と明後日だが綾小路に面倒を見てもらえ。俺は用事がある」

「いや、そりゃあ構わねえけど……」

「用事って何だよ? 気になるじゃねえか?」

 

 天嶺の言葉に、池と山内は怪訝な眼差しを向ける。

 

「気になるか? なに、単に女の相手をするだけよ」

 

 いつも通り、自信を伴った笑みを浮かべて天嶺が告げると、池と山内は雷に打たれたかのような表情を浮かべた。

 

「そ、それはまさか、デートか!?」

「はたまたセックスまで!?」

「フッ……!」

 

 二人の問いかけに天嶺は言葉を返さない。ただ笑みを浮かべるだけだ。

 

「チクショウッ!」

「これが……出(・)来(・)る(・)男(・)の風格!?」

 

 しかし、それが信憑性を底上げする。池と山内は呻くことしかできない。

 そんな一幕がありつつも着実に時間は過ぎていき、やがて下校を告げるチャイムが鳴った。

 三人が帰り支度を進めていると、ガラリと教室の扉が開き、1-Bの担任である知恵が姿を現した。一之瀬、網倉、白波の姿もある。

 

「ああ、いたいた。九角くん、申請のあった試合場の件だけど、希望通り、明日と明後日に確保できたから」

 

 その言葉に、池と山内は聞きかじった昼休みの一件を思い出す。

 二人はポイントがない故にサッサと食堂に山菜定食を食べに行ったわけだが、どうもその間に1-Cの生徒が二人ほど訪れていたらしい。うちの一人は『剣狂い』とも言える女子で、天嶺に勝負を吹っ掛けたとか……。

 

「なんだよ、九角。自信ありげに、女の相手をするだけよ、とか言ってたくせに、本当に言葉通りかよ!」

「あー、悔しがって損した。んじゃあな!」

「ああ、気を付けて帰れよ」

 

 早合点した池と山内は、挨拶をしてサッサと教室を出ていった。

 正確なところを言えば、京と勝負する予定があるのは本当だ。これは早ければ早いほどいい。だがその一方で、一之瀬たちや佐倉たちを抱く予定もある。

 どちらにしろ、連休というのは非常に都合がよかった。

 試合場の予約を二日間入れたのは、単に京の都合が分からなかったためでしかない。それでいて、この勝負は向こうから吹っ掛けられたものであるのも間違いないため、何から何まで向こうに合わせる気も天嶺にはなかった。この二日間で予定が合わないのであれば、また別の機会へと先延ばしにするだけだ。

 とはいえ、そんな裏事情を池と山内に説明する義理も理由もない。教室で話すようなことでもない。

 なので、向こうが勝手に納得した以上、天嶺としてはそれで構わなかった。何食わぬ顔をして挨拶し、二人を見送る。

 

「……いいの?」

「構わんよ。――さて、どちらがいいか、神夷に確認を取るとするか」

 

 知恵の確認に頷いた天嶺は、端末を操作して京に連絡を取った。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 天嶺、知恵、一之瀬、網倉、白波は帰路を共にしていた。――が、その行き先は寮でもなければ、普段天嶺らが拠点としている場所でもなかった。

 学校に用意してもらった拠点であるのは事実だが、普段使っているのとはまた別の拠点である。

 平田にもまた別の拠点を貸したからそれはそれでいいとして、普段の拠点は変わらず清隆、幸村、鈴音たちが使うのだ。

 つまり、連休中は三宅に外村、沖谷に井の頭といった面々も使うことになる。

 そんな場所に一之瀬たちや佐倉たちを連れ込んで、何食わぬ顔でセックスに耽るほど天嶺も厚顔無恥ではなかった。

 普段拠点を共にしている面々は協力者として登録が済んでいる以上、扱いとしては『身内』になる。身内に対してそこまで気を回す必要も義理もない。

 しかし、三宅たちはあくまでも『お客様』だ。である以上、それなりの配慮はする。

 まあ、仮にも家主が挨拶をしないのはどうかという思いが無くはないが、細かく見れば家人が招いた客という扱いになる。ならば、家人がホストを務めればそれでいい。……天嶺はそのように自己弁護していた。決して、後ろめたい部分がないわけではないのだ。

 

『ふわぁ……』

 

 拠点に辿り着いた際、女性陣は大口を開けて驚いていた。

 形式としては一軒家だ。拠点の中では小規模な扱いになる。

 基本的に、高度育成高等学校の敷地内は徒歩移動か自転車移動が主となる。あくまでも主ターゲットは学生であるからだろう。物資の搬送、体調不良者の緊急搬送を鑑みて、敷地内には車道も車も用意されているが、使われる機会や時間帯は酷く限定的だ。

 つまり、モールを始めとする商業区画からは離れている時点で、買い物なんかには不便な面があるのは否めない。だが、その分だけ喧騒からも離れている。近所に家がないわけではないが、その距離は数十メートルは離れていた。

 同時、だからこそ、それなりの大きさはあった。少なくとも、十人くらいならば普通に暮らせるだろう。

 未だその予定はないが、封印物の類を安置するにはこれ以上ないほどの立地だった。

 天嶺は鍵を取り出すでもなくチャイムを鳴らした。付属のセンサーが内部に映像を送る。

 程なくして、鍵が外され扉が開いた。

 

「よお、ただいま」

「おかえり。んで、いらっしゃい」

 

 扉を開けたのは澪だ。佐倉と長谷部の両名と共に一足先にやってきていたのである。

 入学後、簡単な内見をしたことはあるが、本格的に使うのはこれが初めてである。用意された時点で最低限の準備はされているだろうが、何かしらの不足が生じる可能性は否めない。

 分かりやすいところだと、想定人数との差異によるものだ。何せ、正式に仕事を承ったのは天嶺と澪の二人だけであるからして、形式上は二人分の物資が用意されていれば条件を満たすことになる。

 そのため、澪たちが一足先にやってきて、そこら辺を確認していたのである。

 

「さてと! 場所も分かったことだし、私は一旦戻るね! 後でまた来るから!」

 

 元気よく告げて、知恵は踵を返そうとする。

 

「そう言えば……今更ですけど、どうして星之宮先生までここに?」

 

 本当に今更、網倉が思い出したように質問した。

 

「そこら辺の説明も兼ねて、まずは家に入るとしよう。知恵も入るといい」

 

 それに対し、口を開いたのは天嶺だった。

 クラスが違うとはいえ、仮にも教師である知恵を堂々と呼び捨てにしている辺り、網倉たちも察しを付けるのは容易かったようだ。揃いも揃って『あ……!』というような表情を浮かべている。

 

「まあ一言で言うと、私も天嶺くんの女(・)なわけ。ただまあ、立場の違いもあるから、中々抱いてもらうタイミングもなくてね。そんな私としては、機会を逃してられないのよ」

 

 リビングのソファに腰掛けて笑顔を浮かべた知恵は、悪びれることなく教え子たちに向かってそう言った。

 

「それに、そっちにとっても悪いことじゃないわよ。私は学生の皆と違って大人だからね! だからこその利点もあるのです! 具体的には『大人のオモチャ』を始めとする『アダルトグッズ』の用意が出来ます!」

 

 フンスと鼻息荒く自信満々に告げる知恵に対し、教え子たちは困惑顔だ。

 

「え~、なんか思ってた反応と違う~。一之瀬さんと網倉さんはともかく、白波さんはもっと喜んでもいいと思うんだけどな~」

 

 予想と違う教え子たちの反応に、知恵は頬を膨らませた。子供っぽいが、これがこの教師の売りでもある。生徒たちと気安く接するために編み出した処世術だ。

 

「私……ですか?」

「そりゃそうでしょ。だって、オモチャがあれば、疑似的にでも処女を一之瀬さんに奪ってもらえるんだよ? 白波さんとしてもその方が嬉しいんじゃない? てか、むしろそのために天嶺くんは私に声をかけてきたんだよ?」

 

 首を傾げる白波に対し、知恵は説明した。それには、彼女がここにいる理由も含まれていた。

 

「あ~、それってアレですか? 『双頭ディルド』とか『ペニスバンド』とかいう……」

 

 拙い性知識でも、何となくの心当たりはあったのだろう。羞恥に頬を赤らめながら、網倉が知恵に確認した。

 

「まあ、そんな感じ。……天嶺くんから白波さんが同性愛者だって聞かされたときは驚いたけど、知っちゃった以上は、担任としても、竿(・)姉(・)妹(・)になる者としても、協力はしないとね!」

 

 やはり経験の違いによるものか。知恵は教え子たちと違って頬を赤らめることもなく、笑顔でウインクをかます。

 

「俺としては、必ずしも自分で処女を頂くことに拘ってはおらんのでな。白波としては一之瀬に頂かれる方が嬉しかろうと思ったのだが、余計なお世話だったかな?」

 

 どこかニヤニヤとした笑みを浮かべながら、天嶺は白波へと問いかける。

 

「そんなことないです! ありがとうございます、九角くん! 私は九角くんのことを誤解していたようです!」

 

 それに対し、嬉しさを全面に押し出して白波は答えた。清々しいまでの掌返しである。

 

「初めてはデートの末に一対一で……。そんな考えもあるとは思うが、そこについては我慢してほしい。

 俺も複数の女を抱える身だし、生徒として学校に最低限の筋は通すつもりではあるからな。である以上、平日からサカってはいられんのだよ。

 故、セックスをするにしても、基本的には土日祝日くらいしか機会がない。――まあ、慣れて性行為の負担が減れば話は別だがな……」

「実際、私が天嶺くんに抱かれたのも、平日の放課後だったしね!

 まあ私のことはさて置き、性行為に興味津々となる年頃の男女に対して、『セックスするな!』と言う気は私にはないわ。そりゃまあ、『教師』として振る舞ってる時には言わざるを得ないけど、星之宮知恵個人としては許容する。

 許容するけど、やっぱり限度があるわけでね。エロに熱中する余り、素行不良や学力不振になられると困っちゃうのよ。特に、この学校だと退学が絡んでくるから尚更ね……」

 

 天嶺と知恵の言い分は、一般的な倫理観に合わせればアウトな部分も含まれていたが、それぞれに一定の筋が通っていた。

 

「今現在、既に抱いている女がこの学校だけで澪、桔梗、千秋、真澄、知恵の五人だ。そこに、佐倉、長谷部、一之瀬、網倉、白波の五人が更に加わるわけだからな。

 精力的な問題は無いにしても、時間的な問題は付き纏う。仕事もあるし、生徒としての体面もある。その上で、一人ずつなんて真似をしようものなら、時間がいくらあっても足りるものではない。

 正味な話、都度に性欲を発散できる俺は構わなくとも、既に抱かれた女の方が耐えられんだろう。

 どうしても一対一を望むのであれば、誕生日などの記念日か、各長期休暇くらいしかタイミングはないだろうな……」

 

 ソファに腰掛けた天嶺は、指折り数えながら人数を告げる。

 自分たちを含めれば、この学校だけで十人もいる。その時点で、倫理観的には問題しかない。――女性陣はそうと理解しつつ、だ(・)か(・)ら(・)こ(・)そ(・)惹かれずにはいられなかった。

 それは『自分だけではない』という安心感からくるものか。

 或いは、倫理的に問題があるが故の背徳感からくるものか。

 確かなところは分からない。分からないが、経験者のみが持ち得る空気感に、女性陣は次第に吞み込まれていく。

 

「まあそんなわけで、私は一旦寮に戻って各種アダルトグッズを持ってこなきゃならないから、この辺でオサラバさせてもらうわね!」

「あ、手伝います!」

 

 立ち上がった知恵に対し、すかさず言葉を掛けたのは一之瀬だった。

 

「実際にどれだけの量があるのかは分からないんですけど、結構多いんじゃないんですか? 一度に運んでこられます?」

 

 一之瀬の問いに、知恵は即答できなかった。

 買う時は一つずつでも、合計すれば結構な量になる。一度使ったっきり、後は段ボールにしまいっぱなしになっている物、買ったはいいものの、使うこともなくしまい込んでいる物も含めれば、総量がどれほどになるかは分かったものじゃない。

 そして、それらは何も『大人のオモチャ』に限ったことではない。エロ漫画、エロ小説、アダルトDVD、コスプレグッズ……細かな例を挙げればキリがない。

 一度に全部を使うことはないだろうが、何が必要になるか分からないのも事実である。

 

「……お願いできる? 改めて考えると、結構な量があって一人じゃ到底持ちきれなかったわ……。独り身が長いって嫌ね……」

 

 そう語る知恵には哀愁が漂っていたのだった。




本作では須藤に厳しめな描写をしてますが、須藤は龍園に語らせた『将来的なビジョンを持って頑張ってる奴』に該当するのは間違いありません。
ですが同時に、その頑張りが『空回っている』代表例でもあります。
本人の中で『プロバスケ選手』=『バスケの技量が上手い』としかなっていないため、他に必要とされるだろう附随要素に目が向いていないわけですね。
本場がアメリカなので英語が出来るに越したことはない、勝負師であると同時に観客の要る客商売なので愛想や礼儀が良いに越したことはない。
簡単なところで、ここら辺に本人の考えが及んでいないわけです。原作描写からしてそれは明らかです。

天嶺らの考えとしては、『そこら辺はプロ選手になる上で基本的な部分であるために、自発的に気付いて然るべき。それすら自発的に気付けないようなら、どの道大成する余地はない』というものです。
本人が既に働いている身であり、須藤の態度が悪いことから、尚更厳しめな目線になっています。

比べると、池とか山内は『女子にモテたい』という思いは強いものの、須藤のように『これ!』といったビジョンがあるわけでなく、必然としてそのために努力しているわけでもないので、『エサの垂らし具合では導きやすい』という考えです。
エサ自体が『モテ漢直々の指南』なので、見事食いつけた暁には、『モテ男』に相応しい振る舞いが身に付いているという寸法です。

で、これからゴールデンウィークの連休を利用して佐倉たちや一之瀬たちのエロに突入するわけですが、先に謝っておきます。割とアッサリ目です。
いや、プレイ内容としては十分に濃いと思います。描写はともかく、『初体験でそれかよ!?』というツッコミが来てもおかしくはないと思います。
その一方で、内容の幅が少ないんですよね。
書いてて気づいたんですが、対象の問題ですね。
今回の相手は『一之瀬・網倉・白波』と『佐倉・長谷部』に分かれるわけですが、既にグループメンバー内の仲が良いために、天嶺にしてみれば『差をつけすぎるわけにはいかない』んですよね。
女性陣にとっては最初だからこそ、尚更に。
結果として、それぞれを均等に扱わざるを得ず、同じようなプレイにせざるを得ないわけです。
ただ、あくまでも初回だからであり、今後は幅が広がっていくと思います。
ご了承をお願いします。

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