「いや、多過ぎだろう……」
一度教員寮に戻った知恵と、お手伝いとしてついていった面々が戻って来た。それぞれが、その手に段ボール箱を持って。
泊まり道具や何かも一緒に持ってきたのかと思った天嶺だったが、蓋を開ければビックリ仰天。
確かに、一番上には衣類なんかを置いてさり気なさを装っていたが、その実、中身のほとんどはアダルトグッズだったからだ。
大人のオモチャ、エロ漫画、エロ小説、アダルトDVD、コスプレ衣装……段ボールの中には、それらが所狭しと敷き詰められていた。
さしもの天嶺も、思わず感想を零していた。その内実は呆れ半分感心半分だったが……。
「いや~、重かったわ~」
「ホントですよ! これ持ってこの距離を歩いてきたんですよ! いくらカモフラージュしていても、いつバレるんじゃないかって冷や冷やでしたよ!」
笑顔を浮かべて汗を拭う知恵に、網倉が食って掛かる。
「でも、その背徳感と緊張感が堪らなかったでしょ?」
「それは、まあ……」
しかし、流石に経験の差は大きい。笑顔を浮かべたままの知恵に言い返され、網倉は見事にやり込められていた。
まあそれはそれとして、いい時間なので夕食を済ませる。
その後は、それぞれが持ち込まれたアダルトグッズを吟味していた。
曰く、今回持ち込んだ物は、買ったはいいものの使う機会がなかったり、使ったけど知恵には合わなくて段ボールに封印していた物が大半とのこと。
「うわぁ……。これがローターで、これがバイブ……でいいんだよね?」
「だと思うけど、私も実際には見たことがないから……」
長谷部が適当なローターやバイブを手に、意味もなく振動してみせながら、隣の佐倉に問う。
対する佐倉は、頬を赤らめながらも、振動するオモチャから眼を離せずにいる。
「うさ耳も牛耳もいいとは思うんだけど、一之瀬さんはやっぱ猫耳だと思うんだよね~! 驚いた時の口調とかからして……」
「あ~、確かに。帆波ちゃん、驚いた時にはよく『ニャッ!?』って言ってますもんね」
「う~、否定はできないけど……。でも、私に着けさせるんなら、先生と麻子ちゃんも着けてくださいよ!」
別の一角では、知恵が帆波にケモ耳シリーズを付け替えて遊んでいた。
「これで帆波ちゃんに……。えへ、えへへ……」
ペニスバンドを手に、締まりのない笑顔を浮かべているのは白波だ。
『はっはぁ! いくら先公っつってもな! 一枚剥ぎゃあ男に媚び振るメスなんだよ! おら、ヤるぞてめえら!」
『ヒャッハー!』
『いや、嫌あああぁぁ……っ!』
澪はアダルトDVDを鑑賞していた。学園もので、女教師や女生徒が男子学生や男性教師に輪姦される作風のようだ。
「やっぱ、こういうのって新鮮でいいわね……。うちの村だと複数プレイは珍しくないけど、どうしても女の方が多くなっちゃうし……」
パリポリとスナック菓子を摘まみながら、澪はそんな感想を宣っている。
18禁作品ではあるが、一般販売されている以上、そこには『演技』、『シチュエーションプレイ』という前提がある。
だから、ある意味では安心して鑑賞することが出来ていた。――流石に現実でコレは見過ごせないが。
「ほう、輪姦か。男として惹かれる部分があるのは否定せんが、現実的には難しいからなぁ……」
澪の横では、天嶺もまたスナック菓子を摘まみながら一緒にエロDVDを鑑賞していた。
そうこうしていると、いつしか他の女性陣も一緒にエロDVDを鑑賞し始める。繰り返すが、内容は女教師や女生徒の輪姦物である。
「うわぁ……。私、エッチなDVDを見たの、これが初めてだよ……」
「私だってそうだよ! ――これって、やっぱり先生の願望が入ってたりするんですか?」
「そこまではいかないかな~。ただ、やっぱり職業柄もあって、興味が無いとは言い切れない部分はあるかもしれないけどね」
「う~ん、複数に責められるのはやっぱり嫌かな……」
「エッチにドハマりしちゃって、仲のいい相手同士ってなれば、可能性は否定できないけどね。――けど、今の段階だと流石に無しかな……」
「百合物のDVDはないですか!?」
鑑賞後のやり取りはこんな感じであった。一人だけブレないのは、流石と言っていいのかどうなのか……。
やっぱり大半は、ついこの間まで中学生だったのだ。耳年増というか、最低限の知識は有していても、
初の『エロDVD鑑賞』に気勢が高まって、それぞれが他のエロDVDを漁り出す。
だが、基本的にエロDVDなんて物は、男性をターゲットにしたのが大半だ。女性向けがないではないが、その数は圧倒的に少ないだろう。自然、『男と女』という関係性はマッチしていても、女性目線だと求める方向性が一致しない。
そんな中でそれぞれが選んだ作品は、見事に毛色が分かれていた。
佐倉が選んだのは、極論すれば『コスプレもの』であった。純粋なコスプレものもあれば、ワークスレディものも手に取っている。
長谷部が手に取ったのは、『屈服もの』であった。『クッ殺もの』と言ってもいいかもしれない。女が自らの土俵で相手の男に負け、それを機に男に支配され、段々と依存していく。……
一之瀬が選んだのは『家族もの』である。まあ、エロ作品であるからして、『家族愛』を描いているのではなく、『一人の男に母親と娘姉妹が食われる』という作風だが……。もっとも、最終的には家族総出で男にドハマりするみたいだが……。
網倉が選んだのは『グループ乱交もの』であった。とはいえ、そこに
白波が選んだのは、言うまでもないだろうが『女子高生同士の百合もの』だった。トコトンまでブレない少女である。
「それぞれで見事なまでに毛色が違うが、だからこそ見えてくるものがあるな……」
天嶺の言葉に、それぞれが納得した様子を見せる。
「あ~、佐倉ちゃんって、グラドルの『雫』だもんねえ~。そりゃあ、こういう『着せ替えもの』って言うか『衣装もの』って言うかに興味が向いちゃっても無理はないか……」
「帆波ちゃんも、妹のために万引きしたり、家族のために中卒で働こうとしたくらいだもんねえ~。『家族一緒』の作品を選ぶのは道理か……」
「波瑠加ちゃんって、相手の男性に求める理想が高いもんね……。それを突き詰めてけば、こういう感じになってもおかしくはないのかな……?」
「麻子ちゃんは、クラスでも男女問わず積極的に話しかけてますし、仲が良い相手も多いですからね……。まあそれを言えば、うちのクラスは積極的な生徒が多いんですけど……。
『男女問わずの仲の良さ』に主眼を置けば、この選択も理解は出来ますね」
例を挙げればこんな感じだ。
「でも先生。よくこんなに買ってますね……。しかも、これで一部なんでしょう? 一体どれだけ注ぎ込んだんです?」
恐怖の表情を浮かべ、一之瀬が知恵に問いかけた。
母子家庭の貧乏生活を余儀なくされてきた一之瀬にとって、信じられないほどの
「ん~……? でも、実際にはそれほどでもないよ。
まず前提として、うちの学校の教師はお給料がいいのよ。少なくとも、
顎に人差し指を当てて暫し考え込んだ知恵は、口を開いてそう言った。
前提とするならば、確かにその通りではあるだろう。この情報化社会において、入学を希望する学生が得られる情報が酷く限られていた。言い換えれば、それだけシッカリと情報規制と統制が取られている証であり、各スタッフの口止めが機能している証拠である。
その方法を単純に考えた場合、一番分かりやすいのは強制を不満に思わないほどに環境を良くすることだ。
「あ~、先生ってよく二日酔いで学校に来てますもんね……。正直、『教師としてそれはどうよ?』って思わなくはないんですが、それも
「さっすが、一之瀬さん! まさにその通り! 自分で言うのもなんだけど、こんな『二日酔い教師』、
で、私と佐枝ちゃん、真嶋くんは君たちの先輩――この学校のOG、OBでもあるわけよ。運営側にしてみれば、その分だけ説明が容易で、理解と納得もされやすい。
正味、敷地内のスタッフには、割とそんな人たちが多いよ。私自身、出掛ければ先輩だったり同期生だったり後輩だったりを見かけるし……」
一之瀬の言葉にポンと手を打った知恵は、そのまま説明を続けた。
「なるほど……。この学校ってお題目は立派ですけど、実際に入ってみれば、そこそこに
額に手を当てて呟いたのは網倉だった。
いくら情報統制を敷いたところで、人の口に戸を立てるには限度がある。いくら契約やら何やらで縛ったとしても、人道的な人物は黙っていられないだろう。
ならば、そもそもの人選を『口を噤みやすい人物』にしてしまえばいい。簡単な帰結だ。
この学校のOGやOBであれば、システムに慣れている分だけ口も噤みやすいだろう。
そこに加えて、明らかに学生時代よりも待遇を良くしたら、敢えて口外しようなんて人物は現れないに決まっている。――それもまた、『楽』に溺れると言うことだろう。
「後援する経営陣、現場で働くスタッフ、双方が口を噤めば、
「そういうこと。……で、物には
その点、ここは『日本政府の肝いり』だからね。『最新作』がちょくちょくと入れ替わる。そうでもしないと看板に瑕が付いちゃうからね。
まあ、ここでの『型落ち』も
じゃあどうするかって言うと、セールが掛かるわけよ。その時点で
そうして、極度に安くなったタイミングを逃さずに買うわけね。そんなだから、必ずしも目当ての品が買えるとは限らないけど、全部を新品で買うのに比べたら出費は然程でもないし、思わぬ掘り出し物に出会える可能性もある。福袋なんて最たる物ね」
その結果、これらのアダルトグッズもこうして増えていったのだろう。
敷地内においては、無料で販売される商品が無くはない。流石に一ヶ月も暮らしていれば、新入生だろうとそのくらいは知っている。
この学校のシステムを思えば無理からぬことではあるが、
だが、特に生鮮食品なんてものは、学生だけが無料の恩恵に与れるわけではない。敷地内に暮らしているのは学生だけではないのだから当然だ。
学生には無料販売するけれど大人は有料販売に限定される、なんて真似をすれば、大人たちの不満が溜まるのは眼に見えている。
結果、店としては大人相手にも無料販売せざるを得ないのだ。そうしなければ、『高度育成高等学校』という環境が成立しなくなる。
「おそらく、ここの敷地内で働いているスタッフ――それもヒラの大半は、
学生時代にポイント貧困生活を余儀なくされたからこそ、ある程度の自炊能力は備えている。
結果、無料食品を購入しての自炊もある程度までは熟せる。自分さえ満足できればいいのだから、高度な自炊能力も必要は無い。
学生時代に比べて支給がよく、自炊することでポイントの節約に努めれば、それ以外にポイントを回すことも容易よな……。
なるほど……。ここという働き口を宛がうことで、Aクラス以外の卒業生にもシッカリと救済の手は伸ばしていたわけだ……。
いやしかし、これはOGやOBから情報を得んことには分からんことだな。推測は出来るかもしれんが、確証や確信は得られん。
そして、追い詰められている学生がそこまで気を回して考えられるかも怪しい」
そう言って天嶺はウンウンと頷いた。
考えれば筋は通る。だが、学生の時分にそこまで考えるかも怪しい。
「この環境を真に謳歌できるのは、むしろ学生よりも大人ってわけね……」
肩をすくめ、長谷部が結論を告げたのだった。
サブタイトルは原作を読んでの素直な感想です。
理由は本文中で描写した通りですね。
あとはまあ、そんな感じで理由付けないと、知恵が独り身には見合わないほど沢山のアダルトグッズを持ってることが不自然になってしまいますので……。
むしろ、理由としてはこっちの方が大きいですね。
一之瀬や白波を抱くとなったら、『白波の処女喪失の相手は一之瀬の方が相応しいだろう』と考えるのが天嶺です。
その上で、既に知恵という大人の協力を得られる状況にあるのだから、相談しない方がおかしいです。
そこから無理の少ない範囲で結び付けようと考えたら、こうなりました。
ともあれ、これで筋道は通りましたので、今後はレパートリーが増えます。
例として、一之瀬、網倉、白波の三人が、放課後や休日に集まってAV鑑賞をしていても、オモチャを使ってレズプレイに励んでも、それが天嶺のいないところであっても、不自然ではなくなるわけです。
だって、アダルトグッズの入手経路が出来ましたから。
それは先のこととして、各種アダルトグッズの吟味やAV鑑賞を経て本番に流れるわけですね。
未経験の初心な少女が多いので、空気に流される前提です。
ここも拠点である以上は、結界を展開していますしね。
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