※この作品はR-18です。

外法ってやつを見せてやろう   作:山上真

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第48話:部活を作りましょう!

 不健全極まりない時間も、永遠に続くわけではない。体力的な問題もあれば、気分的な問題もある。快感への願望はあっても、いつまでも初体験の熱に浮かされてはいられない。

 陽が昇って朝陽が射し込めば、それに合わせるかのように異(・)常(・)は日(・)常(・)へと顔を変えていった。一人一人が眠りに就いていく。

 特に寝室の用意をしているわけでなければ、どこが誰の部屋と決めているわけでもなかったので、全員がリビングでの雑魚寝だ。

 文明の利器のおかげで空調管理はシッカリとされているためか、或いは溜まった疲労のためか、全員がグッスリと眠れた。

 

「おはよう」

「おはよう」

 

 一人起き出してはまた一人が起き出して、互いに朝の挨拶を交わしていく。

 起きた誰かは自然と洗面所へ足を運び、顔を洗おうとして思い直し、風呂場へと足の向きを変える。それほどに、昨夜の行為の後が凄い面々の方が多かった。

 そして、温かいお湯を浴びている内に段々シッカリと覚醒していき、人知れず昨夜の行為に身悶える。経験者も未経験者もそれは変わらなかった。

 

「イカンな……。ヤりすぎてしまったかもしれぬ……」

 

 天嶺をして熱いシャワーを浴びながら、頭を押さえて溜息を吐かずにはいられなかった。

 村では夜這いも逆夜這いも珍しくはなかった。そんな風に性に奔放でありながら、その一方で貞淑さも併せ持つ住民が多い。

 だが、人の性癖なんかは千差万別だ。破滅願望の持ち主もいれば、マゾヒストもいるし、露出願望の持ち主もいる。その上で、鬼哭村は山奥に位置する閉鎖体質であり、一般社会と距離を置いている。

 結果、常日頃からというわけではなかったし、余りにも幼い子供の目に触れないように注意もされていたが、人に首輪を着けて全裸・四つん這いにさせた上での露出散歩や、それこそ輪姦もないではなかった。

 そういった性癖や行為を忌避するのではなく、敢えて受け入れ、むしろ満たせるように率先して協力する。

 最初はどうだったか知らないが、現在は既にそんなシステムになっている。これを一朝一夕でどうにかするのは不可能と言ってもいい。むしろ、不可能だからこそ現在のようなシステムになったのだろう。

 天嶺と澪は、その立場上、どうしても村のそういった隠された一面を知らないわけにはいかなかったし、知らされないわけにはいかなかった。

 常識的には問題であっても、理屈として一定の筋が通っているのは事実であり、それによって村が上手く回っているのも事実であるため、認め、受け入れないわけにはいかなかった。

 天嶺も澪もそんな村で生まれ育ったのだ。どうしても基準が村に依ってしまうのは否めない。

 一応、一般社会での常識なんかは備えているつもりのため、避妊の重要性は認知しているし、だからこそ鬼道を用いてまで実行している。――だが、精々がその程度でしかなかった。

 ヤったこと自体は間違っていたとは微塵も思わないが、未経験者に対するものとしては内容がハードすぎた可能性は否めない。その点については考えずにいられなかった。

 しかし、最初がハードだからこそ、次回以降はもっと気楽に臨める可能性があるのも事実。

 あちらを立てればこちらが立たなくなるのが現実だ。

 益体もない考えに頭を悩ませていた天嶺だが、決してそれを表には出さない。人の上に立つ者は、容易に周りにそれを悟らせるようではいけないのだ。

 その一方で、悟れる人材を身近に配置するのも重要である。そうでなければ、誰に相談することも出来ず、肝心のトップが易々と潰れてしまうだろう。

 

「おはよう、天嶺くん! いい朝だね! ――まあ、実際にはもうお昼を回っちゃってるけど……」

 

 風呂上がりの天嶺に元気よく声をかけてきたのは愛里だった。

 

「ああ、おはよう。愛里。……昨夜は些かハッスルし過ぎてしまったからな。それを思えば、この時間になっても無理はあるまいよ」 

 

 微笑を浮かべて、天嶺も声を返す。

 

「うん、凄く強烈な初体験だったよ……。我ながら思い返すと身悶えせずにはいられないんだけど――でも、良かったと思う。自分でも知らなかった自分の一面、友達の一面、他人の一面、そういうのを知れて、受け止めることが出来たから……。

 たぶん、今までの私は人間関係っていうものを重く捉え過ぎていた。深く考え過ぎていた。

 他人との違いに劣等感を刺激されては気落ちする。そんな人生だった……。

 だけど、今回の一件で新たな見方をすることが出来るようになった。

 どんな人だって性欲を持っているし、裸になっちゃえば肉欲をぶつけ合う獣に過ぎないんだってことを実感できた。

 他人に対しても自分に対しても、今までとは違う見方が出来るようになった。

 それはきっと、私にとってはとても良いことで……。だから、ありがとう、天嶺くん」

 

 愛里は百面相を浮かべながら言葉を紡ぎ、最後には満面の笑みを浮かべて天嶺に礼を言ってきた。

 

「なに、礼を言うのは俺の方よ。お前のようなイイ女を頂くことが出来たのだからな」

 

 天嶺は愛里の頭にポンと手を置き、優しく撫でながらそう言った。

 愛里の言葉で若干ながら救われた自分がいるのを天嶺は自覚し、それ故の行動だった。

 

「あ~っ!? 愛里ばっかりズルい! 私の頭も撫でろ~っ!」

 

 それを見た波瑠加が二人を指差して叫び声を上げ、かと思えば駆け寄ってきた。……普段の、教室での態度からは考えられない、子供っぽい仕草だった。

 

「ハッハッハッ……。そう叫ばずとも、撫でてほしいのなら撫でてやるとも」

 

 呵々と笑いながら、天嶺は波瑠加の頭も撫でさすった。

 

「むふ~」

 

 波瑠加は満足げな笑みを浮かべて鼻息を鳴らす。

 

「波瑠加ちゃん、可愛い」

 

 愛里もまた、天嶺に負けじとばかりに波瑠加を撫でた。

 

「にゃ~っ! 贔屓はいけないと思います! 釣った魚ならぬ手籠めにした女の子には、等しく接するべきだと思います! そんなわけで私たちも撫でろ~っ!」

 

 今度は両脇に麻子と千尋を連れた帆波が突撃してきた。

 

「ええい! だから叫ばずとも撫でると言うに……! こら! 流石に止まらんか!」

 

 言葉も空しく、三人娘の突撃を受けた天嶺はソファに倒れ込んだのだった。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 昨夜の行為が異常に過ぎ、それでいて濃密に過ぎたこともあり、日(・)常(・)に還ってきたとてすぐに適応できるわけもない。未経験だった少女たちなら尚更だ。

 そのため、自分たちで食事を用意するのももどかしく、外食で済ませることになった。

 向かう先はケヤキモールのフードコートだ。選択肢は多い方がいい。

 流石は高度育成高等学校の敷地内に用意されたフードコートである。選択肢の豊富さがフードコートの売りではあるが、それを鑑みても店舗が多い。

 

「毎度のことではあるが、ここに来るたびに選択肢に迷うな……」

「同感……」

 

 キョロキョロと見回しながら天嶺が呟けば、澪がそれに同意した。

 好み・気分・予算、そういったあれやこれやで選択肢も分かれるだろうが、多ければ余計に迷う。ラーメン一つとっても、当然ながら店舗で味は違うのだ。

 

「今回、皆の分の支払いは私が持つからね! 好きなものを注文しちゃってよ!」

 

 辺りの店舗を見回す面々に向かい、知恵が胸を叩いて宣言した。

 

「いいんですか?」

「流石に毎回ってなれば困るけど、偶になら構わないわよ。特に今回の組み合わせは1-Bと1-Dだからね。支給ポイントに大きな違いがあるのが分かってて、『自腹で食べてね!』とは言えないわよ。

 それに、帆波ちゃんは家庭環境もあって『安さ』を念頭に選びそうだしね。それを否定はしないけど、時と場合によってはそぐわないのも確か。

 そういったあれやこれやを踏まえれば、最初から私が持った方がよっぽどいいわ。先生だからこそ、大人だからこそ、見栄を張らなきゃならない場合もあるのよ」

 

 首を傾げて問いかける帆波に対し、知恵は苦笑を浮かべて答えた。

 

「にゃはは……。お見通しですか……」

「助かります。先月はデジカメや洋服代で結構使っちゃってピンチなので……」

 

 知恵の言葉に帆波は頬を掻き、愛里は素直に頭を下げた。

 撮影から衣装から何から何までを事務所が用意してくれた時分とは違い、今の愛里は自腹での活動を余儀なくされている。『雫』としては活動休止中なのだから仕方のないことだが、途中で退学しない限り、公には三年間は活動休止が続く見込みなのだ。その間に何もしないままでは、ファンは離れる一方だ。

 愛里としては卒業後や退学後も活動を続けるつもりではあるし、事務所もそれを望んでいる。である以上、出来ることに限りがあるとはいえ、ファンを維持するための自主努力は欠かせない。

 そのための手段がブログへの写真投稿であるわけだが、無から有は生み出せないのだ。有を生み出すための代価は必要で、一番分かりやすいのがポイントだ。

 

「愛里の件だが、そこら辺も何とかせぬといかんよな……。ぶっちゃけた話、この環境では愛里の最大の持ち味が活かせぬ」

 

 全員が注文を済ませ、頼んだ料理を持って席に着いたところで、思い出したように天嶺が言葉を発した。

 アイドルたる者、人気を取って然りである。しかし、この環境ではファンを獲得するための手段が限られるのだ。敷地内でファンを獲得することは出来るかもしれないが、人数比では敷地外の方が圧倒的に人口が多いのが事実である。そして、校則により情報の発信手段がなく、敷地外のファンを獲得する術がない。

 ファンに見放されたアイドルの末路など悲惨である。特に『雫』は活動したてであり、その割にファンを掴んでいるものだから『新進気鋭』などと謳われているが、活動自体はグラビア撮影くらいしかない。普通に考えて、それだけファン離れが早いだろう。

 

「部活を作りましょう! 名付けて、『高度育成高等学校スクールアイドル部』です!」

 

 それに対し、千尋が拳を握って発言した。

 

「あくまでも高育の生徒として、佐倉愛里名義で活動してもらいます。最低限の人数や顧問がいないと部として認定されないと思いますので、天嶺くんに澪ちゃん、帆波ちゃんに麻子ちゃんに波瑠加ちゃんにも参加してもらいます。もちろん、私も参加します。顧問は知恵先生ですね。

『雫』として実績のある愛里ちゃんがいるわけですし、人数と顧問を用意できたら学校も拒否はしないと思います。高育の広報係を務めることを条件にすれば、尚更断られないと思います。

 そして上手いこと部として認定されたら、撮影代や衣装代は部費で賄います。別にプロじゃないし仕事でもないんですから、活動内容は余り厳格じゃなくていいでしょう。それこそ、これから教わる石鹸作りとか、占いのやり方、健康体操なんかをホームページに上げるだけで十分だと思います。

 あとは、場合によって除霊シーンなんかを特撮ドラマとしてでっち上げます」

 

 千尋の言い分は、ある意味で筋が通っているものだった。

 部活動紹介なんかは普通に学校のホームページに載っているし、各部活の有力選手なんかは顔写真付きだ。言い換えれば、『学校認定の実力者』ということに他ならない。

 千尋は、自分たちも部活を作って、ホームページに堂々と活動写真を載せることで、『雫』のファン減少に歯止めを掛けようと提案しているのだ。

 学校としても、新進気鋭のアイドルである『雫』を、あくまでも学校の一生徒として無料で使えるのであれば損はない。だって、スクールアイドル部に所属しているのは『雫』ではなく、生徒の『佐倉愛里』なのだから。

 本名バレが怖いのであれば、イニシャル表示で済ませるのも手だろう。『Sちゃん』で済ませれば、世間に愛里の本名はバレない一方で『雫』との結び付きも容易となる。

 また、発信元が高度育成高等学校のホームページであれば、一般に広まっている謳い文句と相俟って、『雫』のファンも活動休止に対して勝手に納得してくれる。

 いくらブログに写真を投稿しても、コメントに無反応では反感を買いかねないのだ。だが、そこに如何ともしがたい正当な理由があるのなら、反感も幾分かはマシになるだろう。

 

「ふむ……。表向き俺たちは生徒会に所属している故に部活動への参加は出来ぬが、高育の広報係を務めることで、『半公営』としての側面を持たせるわけだな?」

「はい。重要なのは、周りが勝手に納得してくれる理由を用意することです。

 実際にスクールアイドルとして活動する表担当、それ以外を担当する裏方に分かれる必要があるのはある意味で当然のことです。所属メンバーの顔触れについて疑問を抱かれても、そこを説明すれば問題はないでしょう。

 また、常日頃からクラスの垣根を超えて大人数で行動していても、部活を理由にすることが出来ます。寮以外への泊り込みに関しても同様です。何なら、『勉強を教わってる』なんかを付け加えてもいいでしょう。

 天嶺くんたちの本来の仕事柄、仮に除霊シーンなんかを目撃されても、ある程度までであれば部活を理由に誤魔化すことが出来るようになると思います」

 

 これまた一定の筋は通っている。

 生徒会同様に『半公営』の肩書を持たせることで、部員の選別に関しても説得力の伴う理由を持たせている。

 

「ありかもしれんな……。今度、学校に提案してみるとするか」

 

 天嶺は納得して頷いた。

 それによってある程度面倒事を背負うことになるかもしれないが、趣が異なるだけでそれは今も同じである。

 

「で、本音は?」

「これで帆波ちゃんを売り込みます! 皆、もっと帆波ちゃんの素晴らしさを知るべきなんです!」

 

 横から挿し込まれた一言に、千尋は拳を握って力説した。

 

「そんなことだと思った……。ほんとブレないね……」

 

 洩れ出たのは、呆れか感心か。  

 その後は、昨夜の麻子との約束を果たすために各種店舗を巡った。

 石鹸を自作するにもある程度の材料は必要だし、健康運動を行うのであれば動きやすい服装の方がいい。占いを教えるにも、やはり材料のあるなしで幅に違いが出るのは否めない。

 材料を買って拠点に戻ったら、早速それらに取り掛かった。

 皆が笑顔を浮かべ、和気藹々として取り組んだのだった。




高度育成高等学校のシステムって、致命的なまでに愛里の仕事と相性悪いんですよね。
昔から活動してるならともかく、デビューして間もないのは原作で明言されてますし……。
本当に、どうして原作の愛里は高育に入学したのか……。
そこら辺を考えると、事務所の意向と愛里の意向の合致があった可能性が高く、それ故に本作ではストーカーにチカラを目醒めさせて、それを理由にしたんですけど……。

高育にいながら愛里=雫のファン離れを防ごうと思えば、どうしても方法は限定されます。
その上で一番現実的なのは、高育のホームページ(外部向け)に情報を載せて発信することだと思いました。
それによる部活創設の流れですね。
学校側が協力せざるを得ないように『広報』としての面を持たせるとすれば、『スクールアイドル部』が妥当かな……と。
どれだけ学校の謳い文句がよくても秘密主義が過ぎれば受験生も減るでしょうし、それを防ぐ意味でも部活の実績とか有望選手の紹介とかはやると思います。

また、天嶺らが仕事を行う上で協力者は必須で、それをクラスメイトだけに求めるのは、情報の偏りなども発生しやすく効率が悪いんですよね。
自然、他クラスにも協力者を求めるのが必須になります。
ただ、学校がクラス闘争を強いていることがハードルを上げているんですよね。
そういう部分でも、クラスの垣根に拘らず人員が集まれる理由として部活は最適です。

原作の設定上、生徒会と部活の両立は出来ませんが、本文中で語ったように、部活に『学校の広報』という面を持たせれば、結果として『半公営』になり、些かグレーですが成立するかな……と。
スクールアイドル部に『生徒会の下部組織』という側面を持たせてもいいでしょうし。

こんな感じで、部活創設に関しては決して不自然ではない理由を用意したつもりです。
ご理解いただければ幸いです。

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