※この作品はR-18です。

外法ってやつを見せてやろう   作:山上真

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第56話:まあ、簡単に言えばレクリエーションの一環だよ

「よお、調子はどうだ?」

 

 ゴールデンウィークの連休最終日、天嶺は平田たちに又貸ししている拠点を訪れていた。

 

「九角くん……? ボチボチと言うところかな。取り敢えず、僕の勉強会に参加してくれている皆は、全員が真面目に向き合ってくれているようになったし、その上で一日の大半を勉強に費やしているわけだからね。これで後れを取り戻さなければ嘘だよ」

「とは言っても、元が酷すぎた面々も多いからねえ~。今日を使って、漸く中学部分の遅れを取り戻せるってところかな……?」

「今後も平日の放課後や休日を有効的に活用して、漸く高校分に追い付く目星だね」

「私たちとしても些か詰め込みすぎな気がしなくはないんですけど、先日を休日に充てることも出来ましたし……。

 あとは、幸か不幸か、うちのクラスはお小遣いも少ないですし……。節約の面でも効果的なんですよね。中には、見張っててくれないと無駄遣いしちゃいそう、と自己申告してくれる人もいるんですよ」

 

 天嶺の問いかけに、平田、千秋、桔梗、王が順番に答えた。

 以前に比べると、笑顔の割合が強いように天嶺は感じた。上辺だけの笑顔でないということは、それだけ手応えがあるのだろう。

 王が言っているのは四神暴走の日のことだろう。教師役の面々が揃って訪れていた以上、勉強会はどうやったって行えない。

 どうやら平田たちは、それをいいことに休日にしていたようだ。縛るだけだと不満や反感が溜まるのは道理であり、度が過ぎると逆に非効率的になる。それを鑑みると、適度に緩めるのは理に適っている。

 

「……そうか。まずは順調なようで何よりよ。いや、こちらも学校側から借り受けている場所を、無理矢理理由を付けて又貸ししているわけだからな。どうしたってそこら辺を気にしないわけにはいかんのだよ。効果が無いようだと、今後は同じことが出来なくなるからな」

 

 それぞれの返事を聞いた天嶺は、僅かに安堵の息を吐いた。そして続ける。

 

「俺とて、何も積極的にクラスメイトにいなくなってほしいわけではない。仕事を優先せざるを得ない以上、どうしても厳しい判断を下さざるを得ないだけでな。

 まあ、元より無理のある依頼内容であったのは事実だが、依頼者側も無理があるのは承知しているからこそ、可能な限りの後援はしてくれている。この場所の提供もその一つだ。そういう恩恵を受けている以上、こちらも仕事には真摯に当たらねばならん。

 俺たちが不真面目だと、それは所属組織である鬼道衆の評価が下がることになるから尚更だ」

 

 天嶺は、平田たちのみならず、今現在この場を使っての勉強会に参加している面々に向けても言葉を発し、己が行動に理解を求める。

 

「あ~、今なら素直にその言葉を受け入れられる気がするわ。こと『勉強会』や『勉強合宿』って面で見ると、これ以上ないほどに効果的なのよね……」

「付け加えると、私らがどれだけ平田くんや櫛田さんの優しさに甘えてたかってのもよく分かったしね……」

 

 どこか座りの悪そうな表情で発言したのは、篠原さつきと前園杏だった。

 それに続くように、他の面々も首を縦に振っている。

 

「……どうした? 連休前に比べると、些か以上に態度が改善されているが……」

 

 それを見た天嶺は、首を傾げざるを得なかった。

 天嶺の認識するクラスメイトと比較すると、物分かりが良すぎる。これほどに物分かりがよくなかったからこそ、彼はクラスメイトに対して見切りを付けたのだ。

 

「いや、先日――連休の二日目に平田くんがキレてね。須藤くんを理詰めで追い込んだ上で、彼の左腕を折ろうとしたのよ。まあ、その時は実際に折るまではいかなかったけど、それは折る前に須藤くんが自分の非を認めて必死に嘆願し、桔梗ちゃんの持ってきた契約書を介してキチンと契約を結んだからだしね。

 そんな場面を目撃しちゃえば、否が応でも真面目にならざるを得ないでしょ。不真面目が過ぎれば、『次は我が身』になるかもしれないんだからさ」

「……なるほど」

 

 千秋の説明を聞いて、天嶺は納得した。

 健全な組織運営のためには、厳しさと優しさは必要不可欠だ。――しかし、その比重は時と場合によって異なる。

 1-Dの生徒は自分に甘い人物が大半を占める。自分に甘いからこそ律することが出来ず、それが態度や行動に表れる。そのことは、入学してからの一ヶ月間が既に証明している。

 それによってクラス評価がガクンと下がったのだから、誰も否定することはできない。

 そんな不真面目な彼ら彼女らにとって、優秀でありつつも自分たちに優しい平田や桔梗は、縋(・)る(・)相(・)手(・)として打ってつけだったのだ。

 そして、それぞれに理由は異なれど、平田も桔梗も無理にそれを振りほどけない。――桔梗は既に内心で見離していても、いざその時が来るまでには表に出せない。出さない方が都合がいいからだ。

 そのことが、悪循環に輪を掛けていた面があるのは否めない。

 そんな中で、平田が実力行使に及び、クラス内きっての問題児である須藤をやり込めた。その事実は、クラスメイト達に多大な衝撃を齎したことだろう。

 クラスメイト達にとって不幸中の幸いだったのは、平田の実力行使にはキチンとした基準が存在したことだ。裏を返せば、その基準に則った行動をしている限り、実力行使の対象になることはない。

 そしてその基準は、学生としては極々一般的なものである。真面目に勉強する、真面目に授業を受ける、といった内容だからだ。これを『一般的』と認められないようなら、そんな人物は『公の規則』よりも堂々と『己のルール』を優先する人物が揃っているような、底辺の不良校に通っている方がお似合いである。

 平田が実力行使に及んだのは、クラスメイト達のことを『高度育成高等学校』という『名門校』の生徒に相応しいと信じているからでもある。だからこそ、必死になって改善を促しているのだ。それこそ手段を問わずに。

 そのことをクラスメイト達も感じ取ったのだろう。実力行使に出た平田に対する恐怖があるのは事実だが、その一方で信頼があるのも事実であり、実力行使に出たことで信用も高まった。

 能力があり、優しく、それでいて厳しさも併せ持ち、その厳しさは不条理に振るわれるものではない。――そんな人物、旗頭とするにはもってこいである。

 須藤を見せしめとしたことで、平田は真にクラスメイト達からリーダーとして認められたのだ。

 そのことは、天嶺としても大いに助かる。

 

(しかしまあ、行動に移すとは聞いていたが、よもや腕を折ろうとまでするとはな……)

 

 そこに関しては、天嶺も内心で驚かずにはいられなかった。

 

「ああ、そうそう。今回、俺がここに来たのには、進捗状況の確認以外にも理由があってな」

「そうなのかい?」

「そうなのだ。……理由と必要があってのこととはいえ、この勉強会がお前たちにとって多大なストレスになっているのは否めんと思ってな。

 しかも、少なくとも最初の関門である中間テストを乗り越えるまでは続き、場合によっては期末の際にも同じことが起こる。

 今は納得して勉強に励んでいるお前たち自身、ストレスに耐えられると思うか?」

 

 天嶺はクラスメイト達に対して問いかける。

 

「あ~、正直に言えば無理かもしれねえな。やっぱ俺はバスケが一番だからよ。

 平田には圧倒されちまったし、言うことも尤もだと思ったから、俺なりに必死に改善に努めてるけどよ。だからって、それでバスケの練習時間が取れなくなるようなら、本末転倒……? ってやつだ。耐えられるとは思えねえ」

 

 真っ先に答えたのは須藤だった。

 その後も、天嶺に同意する声が次々と上がる。

 

「まあ、だろうな。人間である以上、どうしたってストレス発散は必要だ。

 しかしながら、手持ちの都合で制限があるのも事実。四月に比べると格段に手持ちが少ないことも相俟って、逆に不満が溜まりかねん部分もある」

 

 苦笑して言い分を認めた天嶺は、次は悩まし気な表情を浮かべて続けた。

 そのことに、再度クラスメイト達から同意の声が上がった。

 現在の支給額である27,000も一般高校生のお小遣いとしては十分に多いのだが、10万という甘い蜜を味わった後だからこそ、耐えられるか分からないのも事実だ。

 

「だからな? 無事に中間テストを乗り越えた暁には、比較的ポイントを使わなくて済み、それでいて大々的にストレスを発散できる機会を用意しようかと思っているわけだ」

「そんなんが可能なのか?」

「まあ、簡単に言えばレクリエーションの一環だよ。場所に関しては、ここみたいに俺が仕事用に借り受けている拠点を使えばいい。時間に関しては、翌日が休みのタイミングを使えばいい」

「具体的には何を?」

「乱交パーティーだ」

 

 平田の問いに、天嶺はキッパリハッキリと言い放った。

 瞬間、世界が固まった。

 少なくとも、誰もがそう思えるほどには沈黙が支配した。

 

「何かおかしなことを言ったか? お前たちだって、年頃の健全な少年少女なんだ。性行為には興味関心を抱いていて然りだと思うが?」

「いや、確かにそう言われると否定は出来ねえけどよ……。いくら何でも発言内容がぶっ飛び過ぎだろうが! お前の口から『乱交』なんて言葉が飛び出してくるとは微塵も思ってなかったわ!」

 

 不思議そうに首を傾げる天嶺に対し、叫び返したのは本堂遼太郎という男子生徒だった。

 

「お前たちがどう思っているかはさて置き、俺は性行為には積極的だぞ。実際、この学校に入学してからも、既に何人かとはセックスをしているしな。

 双方が合意の上で、避妊に気を付け、表沙汰にならぬよう節度を持って臨んでいる限り、何の問題がある?

 まあ、法やら校則やらに反しているのは事実だが、セックスは『子作り』と結び付く人間の本能的行為だ。それに対し、必要以上に抑制を掛けている状況にも問題があると俺は思うがな。

『少子化問題』が騒がれ、確たる対策が取れないままにどれだけの時間が経っていると思っている?」

 

 悪びれもせず、あまりにも天嶺が堂々と言うものだから、クラスメイト達は呆気に取られながらも内心で同意する。実際、天嶺の言い分は誰もが一度は思ったことだからだ。

 

「学生の性行為が禁じられているのは、子供が生まれたところで、一般的にはそれを育て上げることが出来る社会的能力がないことが最大の要因だ。次点で、性行為に耽るあまり、態度や成績が悪化することだろう。少なくとも、俺個人はそう思っている。

 逆に言えば、気を付けて行為に及んでいる限り、子供が生まれないのであれば責め立てる大義などない。

 そも、『社会的能力の欠如』を名目に抑制を強いている現状こそが、『少子化問題』に拍車を掛けているとは思わんか?

 最も興味関心を抱く時期に抑制を強いられ、公に性行為を認められる年齢になった後も、生活苦からそういった行為に踏み込めない。結果、興味関心よりも諦めが先に来る。この世の中、そんな人物の何と多いことか……。

 この状況を改善しようと思えば、むしろバンバンとセックスに臨むべきなのだよ。そうすることで身体の相性を測り、やがては協力して子作りに挑む。

 この言い分が暴論にして極論の類であることは俺自身も認めているが、お前たちの中に完全否定できる者がいるか?」

『………………』

 

 答えられる者は誰もいなかった。

 実際、性行為に興味はあれど、『子供が出来たらどうしよう?』という恐怖によって行動を縛られている面々も多いからだ。――いやまあ、それ以前の問題として相手がいないのが最大の要因ではあるのだけれど……。

 

「一般的に考えれば、どれだけ避妊に気を付けても絶対はない。コンドームを着けようが、外に出そうが、ピルを飲もうが、危険日以外に臨もうが、子供が出来る時は出来る。それが道理だ。――しかし、そんな道理を覆すのが超常の法だ。

 お話なんかでよくあるだろう? 呪いをかけて子供が生まれないようにするというのは。

 お前たちに分かりやすいように言えば、俺はそれが出来る。それも未来永劫ではなく、あくまでも一時的なものだ。だからこそ、膣内出しをしようが子供が生まれる可能性をゼロに抑えることが可能だ」

 

 天嶺の発言に騒めきが走る。

 

「それ故の提案だ。無論、参加するもしないも、見学に留めるもそれぞれの自由だ。俺としては強制するつもりはない。

 その上で、俺の提示するいくつかの条件に同意するのであれば、その機会を用意する。まあ、特段に難しい条件ではない」

 

 そう前置きして、天嶺は条件を告げていく。

 一つ。あくまでもストレスの発散が目的であり、学校生活に問題のない範囲に収めること。逆に言えば、定期テストの赤点で退学が周知されている以上、学力が安全圏に参加していない生徒は参加資格を有さない。参加したければ、学力を安全圏に引き上げろ。

 一つ。避妊の問題もあるため、天嶺が用意した状況下でのみ行為に臨むこと。

 一つ。大前提として『互いの合意』が必要であり、強制は禁止。希望する相手との行為に及べないのであれば、自分の実力を高めろ。それによっては行為に及べる可能性がある。ただし、確実性を保証することはできない。

 一つ。『互いの合意』さえ得られているのであれば、アブノーマルな行為もあり。

 一つ。彼氏彼女が生まれた際には、素直に祝福すること。

 一つ。性癖の問題もあるため、彼氏彼女の関係になったからといって参加資格を失うわけではない。世の中には、難儀な性癖の者もいるのだ。

 一つ。表沙汰になるのを防ぐため、第三者への口外を禁止し、認知者同士で会話する場合も発覚に留意すること。

 

「まあ、こんなところだ。先も言ったが、法や校則に反しているのは否定できないため、流石に通信機器で誘いをかけることも出来んのでな。それもあって、直接赴いてきたわけだ。

 ああ、言い忘れていた。以上の条件を呑むのであれば、発覚を防ぐためにも先に契約で縛らせてもらうので悪しからずな」

 

 一方的に言い放った天嶺は、クラスメイト達からの反応が返る前にその場を後にするのだった。 




クラスメイトに対するエサ蒔き回です。
早い話、モブ生徒が努力し結果を出すための理由付けですね。なお、必ずしも結果が出るとは限りません。

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