「いや、ちょっと待て」
天嶺による第二部開始宣言に対し、冷静に咎める声があった。清隆である。
「開始そのものにはオレも異論はないが、その前にやることがあるだろう?
これからやることが、個々人の心情的にはともかく、法や常識に反しているのは間違いないんだ。誰かが口外すれば、一発退学はないにしても、怪しまれて次回以降の開催が危ぶまれるのは否めない。
だからその前に、参加するしないは別にして、契約書で縛るのは必須だ」
天嶺よりは、むしろ担任である茶柱や、移籍組に対して説明するように清隆が言葉を紡ぐ。
基本的に天嶺や清隆は優秀だ。問題視できる面がないではないが、『実力』の一点で見れば学校側からの評価は上々だろう。
そんな天嶺が主催のパーティーなのだから、たとえ口外したところでそう簡単に信じられることはないだろう。証言だけだと決定的な証拠能力は持たないから尚更だ。
それでも、怪しまれる可能性自体はゼロではない。だからこそ、事前に契約で口外禁止を強制することで、そうなる可能性を減らすのは理に適う行為だ。
「……あ、強制参加ってわけじゃないんだ?」
「当然だ。あくまでも『性交によるストレスの発散』を主目的にしているわけだからな。
今しがた清隆も言ったが、法や常識に反しているのは事実なんだ。知るだけならまだしも、参加することで逆にストレスが溜まることだってあり得る。それを思えば、強制参加などさせられんよ。
まあ、それはそれとして、口外が出来んように契約は結んでもらうがな。どうしても契約を結ぶのが嫌なら無理にとは言わんが、その場合は記憶を曇らせてもらうことになる」
呆気に取られたように姫野が零せば、天嶺はより詳しく説明した。
「それ、騙し討ちもいいとこじゃん……。パーティーに参加した時点で、契約するより他にないパターンじゃん……」
説明を聞いた姫野は、天嶺にジト目を向けて言い放つ。
記憶を曇らせる云々は、魔法が登場する作品では割と言及されるが、その扱いは作品によって千差万別だ。催眠術のように割とお手軽で比較的安全性の高いものもあれば、関連情報から何から一気に飛ばしてしまうようなものもある。
そして当然ながら、姫野たちが安全性を推し量ることなど不可能だ。術によるものか道具によるものかはさて置き、そこには信用性と信頼性が絡むのは否定できない。
その上で、現状の姫野はそのどちらもが大きく不足している。である以上、まだ自意識が残り、自己判断が利くであろう『契約』の方を選ぶのは当然と言えた。
「ハッハッハッ……! まあ、そうとも言うな。
だが、さっきも言ったが、これから俺たちは同じクラスの一員――仲間なんだ。
秘密の全てを明かす気はないし、明かせと迫る気もないが、逆に言えば、明かしても構わない部分は積極的に明かしていく所存だ。
互いの長所と短所、性格やスタンス……。そういう点で、当たり障りのない部分だけでなく深いところまで共有しなければ、クラスとしての仲が深まることなどあり得んし、この三年間を乗り越えることも出来んだろうよ」
ジト目を向けられることに理解と納得を示しつつ、それでも天嶺は笑い飛ばした。
「……必要とあれば、騙し討ちも厭わないって?」
「まあ、そうだが……。そこまで悪し様に捉えなくともいいと思うぞ?」
止まぬ追及に、天嶺は若干拗ねたように言い放つ。
「……そうだね。確かにその通りだ。ちょっと、余りにも埒外な内容だったから、受け止めきれてないみたい……。
でも、確かに、方法や内容なんかを度外視すれば、一定の筋が通ることを否定はできない……。『赤信号、皆で渡れば怖くない』とは言うけれど、一足飛びに関係性を深めようとすれば、時にはいけないことをした方が効果的ではあるだろうさ」
それを受け、姫野は自身の舌鋒が鋭かったことを自覚した。
人間、他人と仲良くなれば遊びもする。その関係を指して『友人』というわけだが、仲が深まれば、そして互いの性別次第では、『彼氏・彼女』や『恋人』と称されるようにもなる。そしてそうなれば、法や常識に反していようと性交に及ぶことはあるだろう。
性欲は人間が本能的に持つ欲求だし、子作りは次代を残そうとする本能だ。個人の理性で止めきれるとは限らない。むしろ、止められないと判断しているからこそ、法や常識で幾重にも縛っているのが現実だろう。
無論、そこには『子育ての責任』とか、『母体の健康』とか、いろいろと抑制する理由はあることだろう。
だがそうして抑制された結果、人はいつしか、性交を禁止されている間はそれに特別性を見出すようになってしまった……。
同時に、『少子化問題』にも繋がってしまった。
大概、人が持つ熱意など一過性のものなのだ。熱い時期が過ぎれば冷めるのが道理で、個人が責任能力を持ち得る頃には、熱意はだいぶ下降気味。それに伴い、性行為に対する特別性も損なわれる。
昔はそれでも会社がお見合いやら何やらを取り持つことで結婚を奨励していたとは聞くけれど、今ではそんなこともめっきりと無くなってしまったらしい。
オマケに、技術の発展に伴い、オーガズムを得るだけなら然程の苦労は無くなってしまったのも大きい。コミック、小説、ゲームに映像……『未成年禁止』を謳ってこそあれ、逆に言うとひとたび成人してしまえば、自慰を助ける道具の入手は非常に容易となっている。
最近では、『一般』に分類されるティーンズ系の作品でも、ある程度までの描写がされていることは少なくない。
裏を返せば、それだけ『実際の性行為』に対する敷居が高くなっている証明だろう。敢えてティーンズ系の作品に載せることで、若い内から性行為への衝動を高めさせ、『実際の性行為』へと及ぼさせようとする目論見があるのは否定できない。
理屈は分かるが、それが悪手と化している面があるのも否定しきれないかった。
だって、個人で簡単にオーガズムを得られるのなら、わざわざ生きた人間に目を向けようとしないのも道理だ。異性の裸体に興味はあれど、それが『理想の相手』である可能性など無いに等しいのだから。
そもそもにして、肝心の法が『実際の行動』に移ることを戒めているのだから、効果が低くて然りなのだ。
性欲を後押しされて実際の行動に移りました。→違法です。では、余りにも割に合わない。
法で許可される年齢になってから無理に行動に移しても、諸々の部分で理性がストップをかけてしまい、結婚までは及ばない。――そのことは、知恵が証明してしまっている。
「早い話、現代社会は根本的な部分で他人に対する興味関心が薄くなっている。上辺だけの付き合いで是とさせてしまっている側面がある。技術の発展が生活に利便性を与えた反面、人をそうさせてしまった……。
生身の煩わしい相手に振り回されるくらいなら、映像の中の、ゲームの中の、或いはコンピューターが生み出す『理想の相手』を愛でていた方が余程いい……。たぶん、現代の社会人の多くはそんな心境になりやすいんだろうね。
私だって、人付き合いはそこまで好きじゃないし。必要性を否定はしないけど、過度な馴れ合いは好きじゃない」
「……ふむ。いわゆる『俺のヨメ』というやつでござるな。アニメやゲームのキャラに『理想の相手』や『癒し』を求めて、視聴者がそのように表現するのはよくある話でござる。
実際、自分もそのクチでござるからな。世の女性陣の多くは、拙者のように太っている相手には見向きもしないのでござる。自分だってアニメやゲームに現を抜かしているくせに、それでも世間体やレッテルとやらを意識して、すぐ近くにいる同好の士との会話に洒落込むこともない。
これでは、こちらだって現実の相手には興味を失くすでござるよ。小さな世界に閉じ籠っている方が、よほどに安寧を得られるでござるからな」
姫野に続いたのは外村だった。
努めて冷静に語ってはいるが、都度に変化する表情が、彼の心情を如実に表していた。
「正味な話、現在の世はつまらないのでござるよ。有体に言えば、『夢も希望もない』。あるのはただ、『一過性の気晴らし』くらい。
だって仕方ないでござろう? 心身を入れて熱を向ける対象があったとしても、『
そして、評価を得られなければ成功も得られないのが現在の世の中でござる。
拙者はアニメもゲームも好きなら、歴史も好きだし、コンピューターにだってちょっとは詳しいつもりでござる。だが、拙者に対しては『オタク』の一言で切り捨てられ、例えば平田殿のようなイケメンが同じことをしていれば、『意外』だの『ギャップ萌え』だのと好意的に受け止められるのが現実なのでござる。
この口調だって、先達への敬意の表れでござる。――だがしかし、他人はよく拙者のこの口調をバカにするでござる。
何故でござるか!? 日本という国においては、侍は過去を語るに欠かせないのも事実でござろう? 確かに現代社会と相容れぬ口調なのは事実でござるが、日本という国に誇りと愛着を持っているのなら、決してバカにすることも否定することも出来ないものではござらぬか?
それを否定するということは、自分たちの先達そのものを――日本という国の歴史そのものを否定することに繋がるのでござるぞ!」
自身の『侍』口調を引き合いに出して、外村は吠えた。
聴衆は外村ではないのだから、本当の意味で共感は出来ない。しかし、共感は出来なくとも、心当たりはあった。
故に、筋が通っているように受け止めることも出来た。
「コンピューターだってそうでござる! 中学時代の拙者は、後学のためにネットワークカメラを購入して、いろいろと実験を行っていたでござる。
しかし、自身が興味ないからといって、実験を行っているのが拙者だからといって、『オタク』の一言で切り捨てるのは如何なものでござるか! それを許容する世の中はどうなのでござるか!
昨今のアニメは、視聴者が辟易するくらいに『異世界転生』だの『異世界憑依』だのの作品が多いでござる。
だがそれも、冷静に考えれば仕方がないのでござるよ。だって、原作者が現代社会に夢も希望も抱けていないのでござるから。必然、異世界に見出すしかないのでござる」
それは外村の慟哭だった。
人によっては、それを『責任転嫁』と切り捨てるだろう。
だがその一方で、決して無視しきれない一面もあった。
無論、以前から異世界を舞台にした創作物は多々あった。だがそれは、或いは剣、或いは魔法という、現代社会からは程遠いそれらに対して、文字通りに
しかし昨今は、同じように『異世界』を舞台にした作品でも、転生物や憑依物が多いのも否定できない。
そしてそこには、『死』という過程を以て、日本という国との『断絶』を明確に描写している作品も少なくない。
生まれ変わった後で前世を懐かしむこともあるが、大抵は食文化や技術であることが多い。懐かしんでいるのは、あくまでも利便性なのだ。人を懐かしむ描写がないわけではないが、殆どないのも事実である。
それを裏返せば、それだけ日本という国に愛想が尽きている証明となる。……少なくとも、そう考えられる面があるのは否定できない。
「あ~、言われてみりゃあ、最近の異世界転生物のアニメってどれもこれも同じに感じちまうんだよな~。
いや、確かに作品ごとに違いはあるんだけどさ、『転生して、なんだかスッゲえスキル持ってて、何だかんだで活躍して、人気者になってハーレムを築く』って辺りは変わらねえんだよな」
「そうそう! それを羨ましく思うのも事実だけどさ! 結局スキルのおかげじゃん!
だって、その手の作品の主人公ってブラック企業の社畜とか、俺たちみたいな学生が大半だし……。スキルが無きゃあ、それでどうやって活躍するんだって話だよ。
要領がよけりゃあ社畜なんてやってねえっての! 逆に言やあ、社畜やってる時点で要領の悪い低能って証拠だし、スキルが無きゃあ、俺らみてえな学生が転生したところで活躍なんか出来るわけがねえって!」
「そのくせ、主人公は『外れスキル』を持ってる場合が多いんだよな。でもそれは、その世界の『ルール』に合わせて考えるから『外れ』なだけで、使い方次第では十分に強力な面を持っている……。で、最初は苦労しても、最終的には何だかんだで成功する。
ここら辺って、もうパターンなんだよな。もちろん、描き方次第では十分に面白い作品もあるんだけど、前提条件が一緒過ぎて、面白さを味わう前に飽きがくるって言うか……」
池と山内が外村の言葉に頷いた。
その言葉には、確かに憧憬と現実批判が含まれていた。
この息苦しい世界でさえなければ、凄いスキルを持っていれば、自分たちだって活躍できる! ……そんな、根拠のない憧憬と、根拠のある現実批判が。
「人が他人に冷たくできるのは、そういう空気が蔓延しているのも一因でござるが、根本的な部分で暮らしに余裕がないからでござる。
だからこそ、拙者はこの学校の謳い文句に惹かれてやって来たでござる。――だが、現実は無情でござった。
国家という『入れ物』を優先するか、国民という『中身』を優先するか。……この学校は、後者を取っているように見せかけて、その実は前者を優先しているでござるよ。でなければ、夢と希望を抱いてやって来た新入生に対し、騙し討ちなど仕掛ける筈もござらんからな。
曰く、『衣食足りて礼節を知る』。そして『貧すれば鈍する』。
人という生き物は、物質的に不自由がなくなって、初めて礼儀や節度に心を向ける余裕が生まれるのでござるよ。その逆に、生活が苦しいと心まで貧しくなり、判断力や思考力が低下するでござる。
確かに、新入生の多くは10万という大金に浮かれたでござろう。だがそれは、『そうやって浮かれてしまうほどに、普段の生活に余裕がない』と見ることだって出来るのでござるよ。
まあ、それも当然でござる。高校生の普段のお小遣いで買える物など限られているでござるからな。ゲーム機は数万、ゲームソフトだって数千、パソコンはそれ以上する場合だってあるでござる。小説やコミックだって、塵も積もれば山となるでござる。そしてそれらは、男子学生の趣味嗜好品としてはほぼ必須でござる。女子であれば、衣類や化粧品でござろうかな……?
言い換えると、現在の世の中は人の欲心を刺激する物に溢れているのでござるよ。にも拘らず、次から次へと新たな物が生み出される。
それを随時買えれば、やがては満足するでござろう。さすれば、他人に目を向ける余裕が生まれもするでござろう。
しかし、それが出来るのは果たして如何ほどか。間違いなく一握りでござろうな。
これでは、人の心が真に満足することなど無いでござる。そして心が満足しないなら、周りに気を向ける余裕など生まれる筈もないでござる。――そう、この国は悪循環に陥っているのでござる。
他国と渡り合う。それも確かに必要ではあろうが、今はたとえ技術的な進化をストップさせてでも、国民一人一人の生活を豊かにすることが肝要なのでござる。
だって、その技術の産物を獲得・維持するために、出費が嵩む一方なのでござるから。自由に使えるお金など『雀の涙』なのが現実でござる。
入れ物の体面を重視するあまり中身を蔑ろにする国家など、どのみち長続きはしないでござる。まさしく『張り子の虎』でござるな。
そしてそのことを、現在進行で国を引っ張っている政治家が認識していないでござる。或いは、認識した上で無視をしているかでござろう。――ま、無理もなかろうな。理想を追求するより、現実的な判断を下すことが楽でござるからな。
永く続いたこの国も、いよいよ滅びの時が近付いてきているのでござる。――一歩一歩、着実に……」
外村は高度育成高等学校を、その大元である日本政府を痛烈に批判した。
極論ではある。
暴論でもある。
だが、確かに一定の筋は通っていた。
実際、高度育成高等学校は鬼島総理が設立を推し進めたのだから。
だから外村も期待したのだ。希望を抱いたのだ。鬼島総理は、クリーンな政策を重要視し、それを自身で体現するかのように、女性や金にまつわるスキャンダルを何一つ持たないが故に。
しかし残念なことに、現実は鬼島総理の意向が何から何まで通るわけではない。権力のために政治家をするような腐った連中が多いのも事実であり、そういう連中の力なくしては国家運営も成り立っていないのが現実なのだ。
「分かるよ、外村くん! そうだよね! 今の世の中、息苦しいんだよ!
確かに、法律や常識は人が集団として社会的な生活を送る上で必要不可欠だとは思うよ。
でも、だからって、過度に縛り付けるようなやり方も違うと思う。まあ、お偉いさんにとってはその方がやりやすいのかもしれないけど、言い換えれば、それって国民を信じていないってことじゃん! 国を動かす人がそれじゃあ駄目でしょ!
武田信玄曰く、『人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』。どれだけ難しくとも、『国家という入れ物』よりは『国民という中身』の充実を図るべきだと思うんだよね!」
真っ先に外村に同意したのは麻子だった。
外村は感激したように麻子へと視線を向ける。
「網倉殿……。じゃあ、拙者とセックスしてくれるでござるか?」
「あ、ゴメン。それは無理」
ああ、無情。
麻子は外村の問いかけをバッサリと切り捨てた。
「いや、私、もう天嶺くんと肉体関係結んじゃってるから。そりゃまあ、天嶺くんが私以外とも関係を結んでいるのも事実だけど、だからって私が天嶺くんに愛想を尽かしたわけでもないし……。それで私が天嶺くん以外と肉体関係を持つのは違うと思うんだよね。
言ってみれば、一種の貞操観念……?」
言葉足らずと思ったのか、麻子は補足を入れた。
「何でござるかそれはーーーっ! 結局のところ、『イケメンの勝利』ではござらんかあああぁぁ……っ!」
外村は涙を流して絶叫した。
「……変に期待させちゃったようで、なんかゴメンね。でもほら、女の子は私だけじゃないから! そりゃまあ、既に天嶺くんのお手付きになってる子も多いけど、全員ってわけじゃないからさ!」
根本的な部分で人が好いのだろう。それを見て、麻子は慌てたように、そして慰めるように言葉を放つ。ただし、事実を付け加えるのは忘れなかった。
「九角殿!」
「おう。……何となく言いたいことに想像は付くが、何だ?」
「九角殿が既に肉体関係を結んでいる相手は誰でござるか? 拙者、寝取りに興味が無いと言えば嘘でござるが、現実的に難しいのも理解しているでござる。ならば、最初から無理な相手は『無理』と諦めた方が建設的でござる。そのためにも教えてほしいでござる」
血走った眼で、外村は天嶺に問いかけた。
「ふむ、理に適ってはいるな……。分かった、教えよう。分かりやすく、それぞれの周りに集まってもらうとしようか」
言って、天嶺は立ち上がった。
僅かに遅れて清隆も立ち上がる。
そして、既に関係を結んだ女性陣が両者の周りに集った。
堪らないのは、残った――言い換えれば『フリー』の女子である。
事実、外村を始め、池や山内の視線も残った女子に向かったからだ。
「ああ、私は幼少期から清隆くんに想いを寄せていますので悪しからず」
そう言い放ち、真っ先に立ち上がったのは坂柳だった。
「私も平田くんが好きなので!」
それを受けて、王も叫んで平田の元へと歩を動かす。
「よし、平田。お前もこっちに来い」
「……まあ、うん。分かったよ」
苦笑を浮かべながら、平田も天嶺や清隆と横並びになり、王もそれについていった。
性行為に興味津々な男共の視線は、尚更残された女子へと向かう。すなわち、井の頭心、小野寺かや乃、森寧々、椎名ひより、真鍋志保、藪菜々美、山下沙希、姫野ユキ、森下藍、山村美紀である。
年頃の少女である以上、性行為に対する興味が微塵も無いとは言えない。如何に互いの合意ありきとはいえ、強硬に迫られれば否定できるかは怪しかった。
自然、残された女子は
「では、私と山村美紀は九角天嶺の元に身を寄せるとしますか。現状で特に性行為に興味があるわけではありませんが、将来的には彼の故郷に移るわけですし……」
そう言って立ち上がったのは森下だった。山村の手を取って天嶺の元に向かう。
仮予約! その手があったか! ……瞬間、残された女子の選択肢は増えた。
井の頭は仲谷へ。
小野寺は須藤へ。
椎名は天嶺へ。
残ったのは、森、真鍋グループ、姫野である。
好色系モテない男子から向けられる視線が一層強まる。
「はぁ……。姫野、僕のところに来い。君は人付き合いが苦手で、それは僕も同様だ。である以上、僕にとって君ほど打ってつけの相手もいない。
とはいえ、すぐにどうこうするつもりもない。取り敢えずは、一緒に勉強でもしないか?」
「ありがたく。幸村くんも中間では結構な高得点を取っていたからね。そんな相手に勉強を教えてもらえるなら、こちらとしても渡りに船だ」
そして、姫野は幸村の手を取った。
残ったフリー男子は、池寛治、外村秀雄、三宅明人、山内春樹の四名。――元より高円寺は参加していないため、選択肢には挙がらない。
性行為に興味はあるが、その一方で貞操観念も根付いているのだ。未経験だからこそ、森も真鍋グループも一人の相手を求めてしまう。――それが、行動の遅延を招いてしまった。
「先に言っておくと、俺に来ても無駄だぞ。断るからな」
座ったまま、顎に手を当てて三宅が言った。
「俺、京の家族から『京の婿にならないか?』って迫られてるんだよ。京本人がそれを知っているかは分からねえし、俺をどう思っているかも分からねえけど、この状況で他の女子に手を出す選択肢はねえよ……」
溜息を吐きながらの三宅の言葉に、残された女子は一本気な漢気を感じると共に危機感を強める。
「ちょっと~。佐枝ちゃんを無視するのはどうかと思うよ~」
そこに齎された、知恵の声。
「おいこら、知恵!」
「ほらほら、佐枝ちゃんもいい齢なんだから。ここは大人として、クラスの男子を導いてあげないと」
「私が処女なのをバラしたのはお前だろうが! 導くもなにも、私の方が導いてほしいわ!」
ニヤニヤとした笑みを隠さない知恵に対し、茶柱は焦燥を隠せない。
「なら、茶柱先生はオレがリードするとしよう。なに、大人の相手にも興味があったんだ。オレとしても都合がいい。
何なら、お前たちの初体験もオレが相手しようか? 経験人数は九角に負けるが、オレのテクも中々のものだと自負しているぞ」
そこに声を掛けたのが清隆だった。
自信を伴ったその声は、追い詰められた女性陣にとって救いの糸に他ならない。当然の如く、残された女性陣は清隆の元へ集った。
「綾小路いいいぃぃ……っ!」
「そりゃねえだろおおおぉぉ……っ!」
「綾小路殿おおおぉぉ……っ!」
誰一人として相手を得ることの出来なかった、好色系モテない男子の絶叫が響き渡るのだった。
外村って、原作だと『巨乳ランキング』とか『女子更衣室の盗撮』にも積極的に協力してますので、決して生身の女子に興味が無いわけじゃなさそうなんですよね。
その一方で、『生身の女子が自分を振り向くことはない』と決めつけている感じです。
作中で『二次元の世界に行きたい』とか、『嫁は二次元こそ完璧』とか言ってますが、裏を返すと、それだけ現代社会に夢も希望もない証拠でしょう。
実際、外村が全国平均で見ても疑いようのないタイピング能力を持っているのは原作で証明されています。確かな実力を持ってるんです。
ただ、それが正当に評価される機会に恵まれなかったのであれば、スレてしまっても不思議はないと思います。
あ、本作の真鍋は清隆のヒロインです。
原作でのキューピッドさんには、本作では報われてほしいと思っています。
能力的には良くも悪くも桔梗の劣化型です。――あくまでも現状は、ですが……。
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