現在、篠原は気を失っていた。
そもそもが四人を同時にしているハードプレイである。いつまでも耐えられるわけがないのは道理だ。
言葉巧みに誘導して篠原に飲尿をさせた後、これまた天嶺は言葉巧みに誘導してイラマチオを行った。
池、山内、外村とはレベルの違うデカマラである。それで容赦なく喉奥を突かれるのだから、尚更篠原が耐えられる道理などない。
「……さて。都合よく篠原も気を失ったことだし、今の内に注意点を告げておこうか」
祝福効果の付いたアクセサリーを池たち三人へと渡しながら、天嶺が言葉を紡いだ。
「注意点、でござるか?」
「おう。これからの篠原は、基本的には池と山内の言いなりだ。故に、性欲の発散には彼女を使え。
ただし、基本的に本番行為は厳禁だ。今ここで当然の如く『生の膣内出し』が出来ているのは、俺の呪が機能しているからであるのを忘れるな。
俺の関与せぬところでお前たちが本番行為を行った結果、仮に篠原が妊娠してしまい問題に発展したとしても、俺の知ったことではない。忠告を聞かなかったお前たちを庇い立てする理由もない。
また、いいなりとは言っても、当然だが限度がある。彼女を支える根底にあるのは『平田への献身』だ。そこからの乖離が激しければ激しくなるほど、彼女とて疑問を抱くし、反感を抱く。
特に、お前たちに対する心証は低いからな。何だかんだと理由を付けても、その分だけ彼女が『受け入れられる範囲』は狭まっていく。最初から『ハードすぎる内容』はバツだ。
お前たちは、それを前提にして彼女に指示を出していく必要に迫られる」
「まあ、道理ではござるな」
天嶺の言葉に、外村は納得したように頷いた。
「うえ~、何でもかんでも従ってくれるわけじゃねえんだ?」
「めんどくせえなぁ~」
他方、分かりやすく顔を顰めたのは池と山内である。
「あほう。そんな簡単にいくわけがあるか。この状況とて、俺や桔梗がだいぶ御膳立てをしているのだぞ?
単に、これからはお前たち自身が、此度は俺たちが代行した面倒事を背負い込む必要があるだけのことだ」
天嶺は呆れを露わに池と山内を叱った。
「少なくとも、お前たちも見ていた通り、俺は篠原に対して排尿を行った。
それとなく誘導した部分が無いではないが、俺の言葉をきっかけに篠原が自主的に考え、飲尿を決意・実践したのは事実だ。
そしてこの時点で、少なくとも篠原の中で『飲尿』という行為に対するハードルがガクンと減ったのは事実だ。何せ、実際に一度はやったわけであるしな。
だから、話の持っていき方や、篠原のお前たちに対する印象次第では、お前たち相手にも飲尿を行ってくれる可能性は十分にある」
「おお!」
「なるほど!」
天嶺の言葉に、池と山内は分かりやすく喜色を浮かべた。
飲尿行為は紛れもなくインモラル極まりない行為であり、現実的に可能な場合は殆どない。――が、だからこそ、『自らの尿を女に飲ませる』部分に惹かれるのは否めないだろう。
「実際、ここら辺のアダルトDVDの中にも、主軸かどうかはさて置いて、『プレイの一環』として収められている作品があるようでござるからな」
段ボール箱をガサゴソを漁っていた外村が、いくつかのパッケージを取り出して補足した。
成年限定とはいえ一般販売されているDVDに収録されている以上、飲尿行為は『性行為の一環』として捉えられている向きがあるのは間違いない。
「いい線を突いているな、外村。
池に山内よ。お前たちが今後も継続して篠原を相手に性欲の発散を行いたいのであれば、まずは一緒に行動したりして互いの仲を深めることが肝要だ。『同じ釜の飯を食う』と言うであろう?
それと同時、自分たちと篠原の『地力の向上』にも気を配らなければならぬ。……何故か分かるか?」
「篠原が俺たちの言うことを聞いてくれるのは、あくまでも『平田ありき』だからだろ。俺たちが平田と同じ教室の生徒だからこそ条件が成立しているだけで、根底にあるのは俺たちに対する好感じゃねえ。
とはいえ、好感度が高いなら許せる範囲が広がってもおかしくねえからな。仲を深めるに越したことはねえってことだろ?」
「付け加えると、篠原は『退学者予備軍』のEクラス所属だからだろ? 篠原が退学しちまったら、必然的にアイツを相手に性欲の発散は叶わねえわけだ」
天嶺の質問に、池と山内は然程悩むことなく答えた。
「その通りだ。まあ、この程度すら分からないようではお話にもならなかったわけだがな」
鼻で嗤って天嶺は頷いた。
「お前、どんだけ俺たちのことをダメ人間だと思ってるわけ?」
「……聞きたいか?」
「遠慮しとく」
池が辟易した様子で訊けば、天嶺は目を丸くして訊き返す。
それを見て、池は質問を撤回した。聞くまでもなく、かなりの低評価なのが分かったからだ。
「まあ、九角的には低評価この上ない俺たちにも便宜を図ってくれるんだから、俺たちにとっては『良いリーダー』だよ。そりゃまあ、対外的には平田がリーダーなんだろうけどさ」
「そう思うのであれば、Eクラスに落ちることなく、そして篠原を退学させることなく、上手くやってほしいものだ。
とにかく、最初のうちは比較的簡単なことからさせていくのが吉だな。
一緒に勉強を行い学力の向上を図り、一緒にそれらの作品を見ることでそっち系の知識を深めると同時にプレイの幅を広げる土台を作り、幾ばくかの報酬を支払うことで日頃から手料理を作らせる。……それらを行っているだけでも、自然と互いの仲は深まっていくだろうさ」
天嶺はアドバイスを送る。
年頃の性少年らしくエロには興味津々な池たちだが、その一方で知識がお粗末であるのは否めない。まあ、未成年であるが故に、その手の商品を堂々と買えるわけがないのだから当然だ。
だからこそ、知識の補填を図る上で『エロ漫画』や『エロ小説』、『アダルトDVD』はこの上ない教材となる。
それらを篠原と一緒に見れば、同時に彼女の性知識も補填できる。反面、いわゆる『無知シチュ』は不可能になるが、そればかりは必要経費として諦めるしかないだろう。
また、Eクラスに落ちたことで、篠原はゼロCP生活が確定した。少なくとも、Eクラスに所属している限り、毎月のPP支給はない。
だからこそ、シッカリと報酬を支払いさえすれば、連日連夜手料理を作ってくれる可能性は十分にある。
「その上で、実際の性行為も適度に挟み込んでいくことで、篠原から『性行為への抵抗感』を失わせていくことも重要だ。
例えば、朝食を作りに越させた際に、『朝勃ちの処理を義務付ける』などだな。『一緒に入浴する』、『その際に身体を洗う・洗わせる』などもありではあるが、初めのうちは避けた方が無難だろう。
大事なのは、『人でなしな行為』を強制させていたとしても、その一方で誠実足らんと務めることだ。
それを視覚的に表すのが『減点ポイント管理』だ。現在、どれだけの減点ポイントが溜まっていて、どれを行えば何ポイント減るが、失敗した場合には何ポイント増える。基本的には自由な挑戦性だが、ペナルティの中には『強制行為』=『義務』もあり、それに関しては拒否しただけで減点が何ポイント溜まる。
それをシッカリと体制化し、望めば篠原自身が自由に確認できる状況を用意するのが大切だな」
天嶺は、池と山内にも分かるように、『心掛けること』を説明していく。
「減点ポイントの管理が面倒ではあるだろうが、それを常日頃からキチンと行うことで、お前たち自身の思考力や事務能力が広がりを見せていくのは間違いないだろう。
例えば、『朝勃ちの処理』自体は1ポイントの消費だが、『どの行為で』処理するかによって、更にポイント消費が増えるといった感じだな。
手扱きはゼロ、フェラは1、尻は2とした場合、尻で朝勃ち処理を行い成功すれば、それだけで3ポイントの消費だ。篠原にしてみれば挑む価値はあるだろう
また、行為の証明として、その場面を撮影することも義務付ければいい。証拠映像が無ければポイント変動することがないとなれば、嫌でも映像に残さざるを得ん。それを繰り返すことで、やはり抵抗感を失わせていくのだ」
「しかし、九角殿。今現在は九角殿の術法とやらで問題なくアナル行為を行えるようにしてもらったわけですが、毎度毎度九角殿に頼むわけにはいかぬでござろう?
篠原殿が自発的にアナルで朝勃ち処理をしてくれるのであれば、それは大変に結構なことではござるが、それによって拙者らが病気をもらってしまえば堪ったものではないのでござるよ」
天嶺の言葉に、すかさず外村が疑問を提示した。
学力面はともかく、『博士』に二つ名に相応しいだけの『頭の回転力』は持ち合わせているのだろう。
「その疑問は尤もだ、外村。……お前たちにとっては幸いなことに、俺が行った『浄』と同様の効果を持つ薬もある。無論、一般的な薬ではなく『オカルト的な薬』だがな。
朝勃ち処理用にこの薬を購入する場合、その費用は篠原に負担させるルールにすればいい。PPを利用するか、さもなくば『減点ポイントの増加』だな。
しかし、薬である以上は消耗品なのは間違いない。また、普通に考えてこの環境では補充も難しい。である以上、当然ながらその費用は在庫状況によって変動するのが道理だ。
無論、篠原が望むのであれば、原材料や薬の作り方は教えよう。やはり、キチンと代価は頂くがな。
だが、教えたところで篠原が原材料を自力で入手できるとは限らぬし、無事に薬を作れるとも限らん。――とまあ、そういうことだな」
外村の質問に答えた天嶺は、実に悪辣な笑みを浮かべていた。
簡単に言えば、『篠原を借金漬けにし、その状況に留め続け、それでいて篠原が希望を絶やすことなく折り合いを付けられる状況』を作り上げろと天嶺は言っているのだ。
「それは……」
「大事なのは『生かさず殺さず』を徹底することだ。慈悲を向ける場面では慈悲を向けていい。しかし、その根底ではシッカリと縛り付けておくことが重要だ。
何せ、お前たちが『上』で、篠原が『下』なのは間違いないのだからな。その事実に基づいた上でのルールにしなければ破綻が生じる。
ルールを明確にし、その上で『減点ポイント』の現在状況を自由に閲覧可能にすることで、篠原の不満や反感を育てにくくする環境を構築するのだ。
強制する部分は強制しているが、基本的には篠原による『自由選択制』を採用している。である以上、結果がどうなろうと、それは『篠原自身の選択に起因する』。
悪びれもせずにそう言えるようになれ。そして、篠原がそれを認めざるを得ないような言い回しを身に着けろ。
そういう悪辣性を備えることを、この学校も奨励している」
天嶺の言い分を、池たちは否定できなかった。
実際に、天嶺も桔梗もそれを実践している。篠原さつきという、紛うことなきクラスメイトだった女子を、情け容赦なく地獄と言ってもいい状況に突き落としている。更には、そこに留めようとしている。
だが、それもこれも、池や山内を慮ればこそであるのも間違いない。天嶺と桔梗が篠原を地獄へと導いてこの状況を構築しなければ、池たちがセックスに及べることなどなかっただろう。
これまでに培われてきた『底辺扱い』もあって、池たち自身、そのことは否応なく自覚していた。
「搾取と言える面があるのは否定しない。しかし、そうとも言い切れない。……何故だか分かるか?」
「……俺たちが、篠原が退学しないように気を配るからか?」
暫し悩んだ末、自信なさげに池が答えた。
「そうだ。現実として、篠原が『退学者予備軍』とされるEクラスに所属していることが根底にある。
それは学力不足が証明された結果であり、周囲にいるのは同じような連中ばかりだ。そんな奴らで協力し合ったところで、本当に実力が向上すると思うか? 精々が『馴れ合い』と言う名の協調性ぐらいだろうよ」
「勉強を教える奴が――教えられるほどの学力を持った奴がいねえから……だな?」
口を挿んだのは山内だった。
「ああ。Aクラスからも一人落ちたらしいし、勉強を教えるとしたらおそらくはそいつになるんだろうと思うが、一人で十人以上もの人間を面倒見切れると思うか? ――まず無理だ。零れ出る奴は必ず現れる。
そのことは、『学校』というシステムが教えてくれている。正式な教員資格を取得した人物が教えてさえ、零れ出る奴が現れているのが現実なんだ。資格も持っていなければ、学力不足が原因でそうなった奴に出来るわけがない」
残酷なようではあるが、それが事実なのだ。
この学校が『放任主義』を敷いている以上、生徒自身で対策するしかないのが現実なのである。
その一方で、対策可能な能力を持った人物がいなければ、そもそも対策できないのも現実なのだ。
その現実がある以上、『復活試験で好きなクラスに移籍する』などという目的のために敢えて自分からEクラスに向かうような人物を除けば、退学したくないのなら身を低くして他クラスの生徒に協力を願うしかないのも、また現実なのだ。
しかし、誰も彼もが無償の慈悲を与える筈もない。そも、Eクラスに落ちた時点で、『慈悲を掛ける価値が低い』のも否定できない事実なのだから。
ならば、そこをどうにかして補填しなければならない。『慈悲を掛ける価値がある』と、メリットがあると示さなければならない。――退学したくないのであれば。
だが現実問題、実力が尊重されるこの学校で、実力不足故にEクラスへと落ちたのだから、提示できるメリットなど至極限られるのが道理なのだ。
「だからこそ、『身体を使った奉仕』という選択肢が生まれる土壌となる。そしてこちらは、『それが嫌ならば素直に退学すればいい』と突っぱねることも可能になる。二択のどちらを選ぶかは本人次第ということだ。
ああ、そうそう。ペナルティには『セフレの提供』も挙げておくことだ。二進も三進も行かなくなれば、篠原の方から進んで紹介してくれるだろうさ。ポイント消費は時価にするのが妥当だな。タイミング次第では面倒だろうし、お前たちにも外見や性格の好みはあるだろう?
無論、実際に紹介される際には前以て教えてくれよ? 契約書の準備があるし、契約で縛らないことには安心できないのでな」
そう言って、天嶺は笑みを浮かべる。
池たちは、ゴクリと唾を呑む。
「良くも悪くも、組織というものは『搾取』と無縁ではいられないのが現実だ。大切なのは、搾取する側――すなわち『上』に立つ者が、その事実を認め、『搾取している』という自覚を持つことだ。
その上で、搾取される側――すなわち『下』に立つ側が、たとえそのことに気付いたとしても、不満を持つ余地を少なくし、折り合いを付けられる状況を用意することだ」
「……そんなこと出来るのか? いや、出来るにしてもすごく難しいんじゃねえか?」
表情を顰めながら池が問いかける。
「ああ、そうだな……。難しい……。本当に、難しい……」
答える天嶺の表情には、確かな苦悩が見て取れる。常日頃の自信あふれる様子からは想像もつかない。
「言ってみれば、『外見に気を配り、その上で内面にも気を配る』ということだからな。
しかし、それをやらねば破綻するのが現実なのだから、如何に難しくともやるしかない。悩みながらも、折り合いを付けて……な。
これは何も、組織に限ったことではない。人間個人だって同じことだ。
如何に外見を着飾って美しく見せても、性格が悪ければ、実際の能力が低ければ、離れていく人間は多いだろう? それでも近くに残っているのは、大抵は『同じ穴の狢』である場合が多い。
或いは、恨みを持って復讐する機会を窺っているとかだな」
「ミステリー物の鉄板でござるな」
天嶺の言葉に、外村が感想を零す。
美人で金を持っているけど嫌味なお嬢様が怨恨によって殺される、なんてのは使い古された展開だ。パターンに多少の変更を加えられる場合があっても、根底にあるのは似たり寄ったりな場合が多い。
考えようによっては『すぐに飽きがくる』と言えるだろう。それでも使い回されているのは、それだけ視聴者に分かりやすくしているためだ。
率直に言って、『人間関係の縺れ』に起因する犯行なんてのは、現実でも起こり得るのだ。だからこそ、そうならないように警告している面もあるだろう。
「昨今は『人手不足』の『就職難』が騒がれているが、これも根底は同じだよ。
現実として人手は溢れているのだ。それでもそんな声が上がるのは、雇用する側が『求職側の求めるメリット』を提示できていないのが最大の要因だ。
確かに、雇用する側は『即戦力』を欲するさ。人を安く使って成果を出したいだろうさ。何せ、そうしなければ会社の維持そのものが難しいんだからな。
それは分かる。俺だって同じだ。村に、組織に人を招く以上は即戦力であるのが好ましい。――しかし、現実としてそれは難しいのだ。
それでも人手がほしいというのであれば、一旦は会社のメリットを差し置いてでも、『働く側の充実』に重きを置くしかない。それが、巡り巡って会社のメリットになるのだからな。
分かりやすく言えば、給料や環境なんかだな。劣悪な就業環境に低賃金では、就職希望者が出る筈もないし、働いたところですぐに見切りを付けるのは道理だ。何せ、人間というのは根底的に『楽』を求める生き物だからな。
早い話、会社の方に『働く上での魅力』がないのだ。外から見て魅力を感じないから、そもそもにして応募することもない。外からは魅力を感じたが、中に入った途端にまやかしだと気付いて去っていく。――全てが全てではないだろうが、大抵はそんな感じだろうよ。
その現状を受けても、会社側は改善を図ることもなく『人手不足』を声高に叫ぶ。……まさしく悪循環だな。
人間は『生きる』ために働くのだ。働いても――働いた結果、長く生きられないのであれば、そもそも働こうとする筈がない。
要は、仕事内容や就業環境、給料とのバランスだ。これらを天秤に掛けた上で、働く側が明確にメリットを感じられるのであれば、早々辞めていく筈もないのが理屈だ。
現状は、『雇用する側』=『搾取する側』が自らのメリットを優先するが余りに『楽』な体制に溺れた結果、『働く側』=『搾取される側』が、そのことを肯定的に受け止められる環境作りに失敗した好例と言えるだろう」
未だ将来については明確なビジョンがない池たちだが、この情報化社会だ。ちょっと興味を持ってネットで検索すれば、ある程度までは簡単に調べられる。
だからこそ、実際の社会経験はないにせよ、天嶺の言葉に同意できる部分が無くはなかった。
「結論を言えば……だ。この現実を鑑みた上で、お前たちは篠原を教材にしろ。
『搾取する側』の自覚を持ち、『搾取される側』である篠原が、『搾取されていること』に気付かない、たとえ気付いたとしても許容できる環境を構築し、実際に篠原から搾取してみせろ。
もっと分かりやすく言えば、『搾取する側』と『搾取される側』の双方がある程度満足できる状況を作り上げられるようになれ。
この学校が求める『次代の日本を牽引する人材』とは、それが上手に出来る者なのだからな」
九角天嶺という実力者の『慈悲深さ』と『厳しさ』。
その一端を、池たちは否応なく理解するのだった。
前話が桔梗から森と真鍋グループに対する誘導シーンなら、今話は天嶺から池たちへの誘導シーンですね。
やらせようとしてることの内容は最低最悪に等しいですが、理屈の上ではある程度筋が通っているのがタチ悪いです。
また、池たちの願望にある程度マッチするのも事実なら、実践を通して池たちが成長する可能性も否定できません。
世の中の構造的に、『上』と『下』が出るのは避けられません。『上』が『下』から搾取するのも同様です。
である以上、『上』がするべきは『搾取している』と自覚を持って搾取することです。
その自覚があるなら、『下』にも十分な気配りをする筈なんですよ。
昔はそれが出来ていた――と言うよりは、今ほど技術も発展しておらず、金の使い道自体が限られていたからこそ、どうにか回っていたんだと思います。
ただ、今は当時に比べて技術が格段に進歩し、それに応じて『金の使い道』自体が増えました。
だというのに雇用体制が旧態依然としたままでは、そりゃあ上手く回る筈がないんですよ。
世の中に金を回すのは、数多ある会社で大多数を占める『従業員』という名の有象無象なんですから。
彼ら彼女らが満足な金を得られなければ、使い渋りが発生するのは当然なんです。
そして個の額は小さくとも、その数が山となれば、世の中に金が回らなくなるのも当然なんです。
高育の生徒たちは、その状況の打開に役立つことを願われているのだから、本当に大変だと思います。
だからこそ、そのために必要な心構えを諭すのは必須でしょう。
理想としては、戦国時代の後北条氏辺りだと思います。
むしろ、本来なら学校側で諭さなきゃいけないことなんですよね、これって……。
高育が放任主義を敷いているのは、これを大々的に言うのは教育機関として問題があるからかもしれません。
その結果が、自主的に気付くことを願っての放任主義なのかな~とも思ったりしてます。
まあ、大々的に言った結果、そういう思想の生徒ばかりが増えても問題なので、それを危惧してる部分もあるのかな~と。
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