「ポイントDに移行、各隊は整備を急いでください繰り返しますポイントDに移行各隊は整備を急いでください」
ガチンッ、ガチンッ!と凄まじい金属音がハンガーの甲高い空気の中に響き渡っていた。
コズミック・イラ71、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦。宇宙の命運を分かつ大決戦の渦中、地球連合軍別動隊の空母格納庫では、作業員たちが額に汗を流しながら怒号を飛び交わせていた。
「右腕部ビームキャノン、エネルギーライン再充填完了!」「左腕部の固定式ビームサーベル、出力正常!」「腰部マシンキャノンの残弾よし!」「背部ビームサーベルの固定ロック確認!」「背部大型ユニットの大型スラスター5基、全身20個の小型スラスター、すべて同調(シンクロ)完了だ!」
整備士たちの手によって最終調整を受けるのは、悪魔的なまでの圧迫感を放つ25機のストライクダガーカスタム。
背部の大型ユニットから伸びる2本の強力なサブアームが、それぞれ重厚なシールドを前面に構えている。正面からの敵砲火を力任せにねじ伏せるために特化された、無骨で凶暴な要塞突破用MSだ。
「よし、全機武装チェック終了! パイロットはただちに作戦室へ集まれ!」
ハンガーのスピーカーから響くアナウンスを受け、パイロットスーツに身を包んだ男たちが集まる。その先頭を歩くのは、イオ・フレミング。戦争という極限状態にどこか魅入られたような、不敵で鋭い眼光を宿した若きエースパイロットだった。
作戦室のホログラムモニターには、ヤキン・ドゥーエ周辺の複雑な立体宙域図が映し出されている。壇上に立った艦隊司令官が重々しい口調で告げた。
「本隊が正面でザフトの防衛線をひきつけている隙に、我々別動隊はこのストライクダガーカスタム25機を投入し、デブリの濃密な別ルートからヤキン・ドゥーエ内部への直接侵攻・制圧を試みる。……だが、浮かれるなよ」
司令官のポインターが、暗礁宙域の一点を赤く明滅させた。
「偵察データによれば、この宙域の残骸の影には、ザフトの超遠距離狙撃用ACE——『エーススナイパー』が潜伏している可能性が極めて高い。一瞬の油断が即座に死へと直結する。各機、地形を利用した障害物回避パターンを徹底し、間断なき交戦を行いながらヤキン・ドゥーエへ肉薄せよ」
多角的な作戦説明と陣形配置の指示が矢継ぎ早に下され、ブリーフィングが終了する。
パイロットたちが各々の機体へと向かう中、イオは整備エリアの通路で端末を抱えていた男に声をかけた。幼少期からの親友であり、この艦で整備士を務めるコーネリアだ。
「おい、コーネリア」
「なんだよイオ、もう発進時間だぞ。機体に何か不具合でもあったか?」
眉をひそめて振り返るコーネリアに、イオは鼻をさすりながら笑ってみせた。
「いや……なんか鼻がむず痒くてたまんねぇんだ。ティッシュ持ってないか?」
「はあ? これから死地へ飛び出そうかって時にティッシュだと?」
コーネリアは呆れたように大きなため息をついたが、ポケットからティッシュの箱を取り出すと、何枚かを引き抜いてイオの手に押し付けた。昔から変わらないイオのマイペースぶりに、男友達らしい苦笑いを浮かべる。
「まったく、相変わらずお前ってやつは……はいよ。それと頼まれてたやつ、コックピットのオーディオにセットしておいたぞ。お気に入りのジャズだ」
イオは豪快に鼻をかみ、ゴミを屑籠に放り投げると、コーネリアの肩をドンと叩いた。
「助かるぜ、コーネリア! やっぱり戦場には、シビれるような最高のジャズがなきゃ始まらねぇからな」
「死ぬなよイオ。お前が帰ってこなきゃ、俺が次の機体の調整をする相手がいなくなる」
「ハッ、俺を誰だと思ってやがる」
背中に親友の視線を感じながら、イオはストライクダガーカスタムの狭いコックピットへと躍り込んだ。機体ハッチが閉まり、高揚感と緊張感が交錯する密室となる。
『全25機、発進準備完了。ストライクダガーカスタム隊、順次出撃せよ!』
コンソールの再生ボタンを叩く。次の瞬間、コックピット内に鳴り響いたのは、激しく跳ねるドラムと甲高いサックスが錯綜する高速のフリージャズだった。
「イオ・フレミング、ストライクダガーカスタム——行くぜ!!」
カタパルトから解き放たれた25機のストライクダガーカスタムが、漆黒の宇宙空間へとなだれ込む。
目の前に広がるのは、凄惨な激戦の痕跡だった。へしゃげた連合軍の戦艦の巨躯、爆発したザフトのナスカ級の装甲片、そして無数のジンやダガーの残骸——死のデブリ帯。
だが、戦争の狂気に魅入られたイオの瞳には、それが最高のリズムを刻む「舞台」にしか映らなかった。
「ヒハッ! 最高のビートじゃねぇか!」
激しいジャズのシンコペーションに合わせ、イオは両手両脚を滑らかに、かつ苛烈に動かす。
背部の5基の大型スラスターが爆発的な推進力を生み出し、重装甲の巨体を弾丸のように加速させる。目の前に立ちはだかる巨大な戦艦の残骸に対し、イオは全身20基の小型スラスターをコンマ数秒の狂いもなく瞬間噴射させた。
ガガッ、と宙を蹴るような慣性移動。
迫り来るデブリの角がコックピットキャノピーの数センチ横をかすめ、跳ね飛ばされた敵機の腕部パーツが、サブアームに構えた重シールドのすぐ脇を滑り落ちていく。
「くぅ〜ッ! 効くぜ、このキレ! 重装甲のくせにスラスターの吹きがたまんねぇ……最高の機体だ!」
無数のデブリの狭間を、完璧なリズムと速度でスレスレに滑り抜けていく快感。自らの卓越した操縦技術と、機体ポテンシャルの高さが完璧に噛み合う感覚に、イオは恐怖すら忘れて自分自身の機動に惚れ惚れとしていた。
潜伏する敵のエーススナイパーの射線すらあざ笑うかのように。
蒼い推進火炎の尾を引いたイオのストライクダガーカスタムは、ジャズの旋律に乗ってデブリの海を極速で突破し、要塞ヤキン・ドゥーエの喉元へと一気に距離を詰めていくのだった。
機体解説
ストライクダガーカスタム
最新量産機、背部が大型化し、サブアームが2つあり、ソレにシールドを2つつけた正面戦闘用であり、装備は右腕部ビームキャノン、左腕部、固定式ビームサーベル、腰部、マシンキャノン、背部にビームサーベルで、ストライクダガーカスタムは、全身に小型のスラスター20個、背部の大型ユニットには大型スラスターが5ある、大型ユニットはパージし、高機動型ストライクダガーになることもできる