乳魔の家庭教師になったら親子揃って誘惑されて… 作:怪文書製造機
大学生とは自らを由とするものであり、モラトリアムと言う人生最後の余暇を大いに楽しむ為にあるのだ。
そしてその享楽の時間は、まだ残っている。
からこそ自分は大学生活という学生の身分において最高に贅沢な時間を満喫する為に、小遣い稼ぎをすることにした。
幸いにも国内随一の大学に入れるだけの学力を持っていたので、最も効率的で時給も良かった家庭教師を始めることにした。
問い合わせが殺到したのには驚いたが、やはり受験を控える子供たちや大学受験をする高校生の親からの引き合いが多く、その中で一番割の良い家庭を選んだ。
なにより時給が良く、当初の二倍近い値段にまでなったのが大きい。受け持つ人数を増やす必要性すら感じさせない破格の条件であった。
指定された駅近の住所へと向かう足も自然とくなるというものである。
閑静な高級住宅街は都会の中でも独特の空気感を有している。空気は無味乾燥としているが、街自体の高級感や洗練されている様がありありと感じられた。
そしてどこか視線を向けられているような感覚を覚えつつも、少し早く着き過ぎたかな等と考えながら地図アプリの指示通りに角を曲がり、そのまま歩いて行くとその先にあった一軒家の前で足を止めた。
「これは……」
外壁は白系ベージュを基調としており、庭木は落ち着いた色合いをした木立が点在しており季節の花々が添えられていた。門扉から玄関までの通路には石畳が敷かれていて、道なりに沿うように大きな花壇が備えられていた。
まさに豪邸である、この立地だけでも羨ましい限りの贅沢な環境だった。
表札に『貴嶺』と書かれており、それが今回指導させていただく家庭の方の名であることを再確認し改めてインターホンを押した。暫くして内線での呼び出し音が鳴り響き程なく声が返ってきた。
『はぁい』
甘やかな女性の声だった。母親だろうか。
「……こんにちは、本日より家庭教師として担当させていただきます、◯◯と申します」
出来るだけ丁寧に挨拶する。
『はい♪どうぞぉ♡』
語尾を上げる特徴的な喋り方と共に、ガチャッとオートロックの鍵が解除される音が響く。
飛び石の道を歩きながら考えることは一つ。
まるで住む次元が違う、異世界に迷い込んでしまった様なそんな錯覚を抱いてすらしまう。
自分などたかだか多少学が他者よりあるだけで何物でもない人間だという現実を突きつけられた気分にすらなる。
学生になって芽生えた多少不遜な心持が一瞬にして粉砕され、羞恥すら芽生えて来る。
それはこの家の主に対してなのか己自身に対しての感情なのか判断すらできなくなってきていた。
──そう、この余暇に過ぎない筈のひとときが自分の人生を左右するとは全く思いもしないでいたのだから。
◇
「いらっしゃい♡先生♡」
玄関に出迎えてくれたのは先ほどの声の主であろう女性だった。
私は、思わず息をのんだ 。
背丈は低い、寧ろ小さいと表現した方がしっくりくるような小柄な女性だ。
しかし、そのシルエットは女性らしさを極限まで濃縮したかのような、豊かで色香を秘めた抜群のプロポーション。
胸部の双丘はあり得ないような質量を誇り、腰から臀部のラインは芸術的ですらあった。
顔貌は愛らしさと妖艶さが同居した、魔性の美貌。
その相貌はまさに傾国。男を惑わすことに特化したような容姿だった。
そして何より、側頭部から伸びる一対の角。
(淫魔……いや、この姿は……)
自分の本能が警鐘を鳴らした。
「うふふ♡先生?」
戸惑う自分を見て小首を傾げる仕草一つにもその妖艶さは色香を放つかのようだ。そして何よりこの漂う甘い香りと鼻腔を擽るような香りは、否応なく強烈に性衝動を刺激して来るものであった。
内心の動揺を押し殺し、頭を下げる。
完全に数秒、いや一分は呆けてしまって居たかもしれない。
「失礼致しましたっ。改めまして、本日より家庭教師として指導させて頂く安藤と申します」
「あらあら♡頭をあげて下さい?貴嶺綾乃と申します♡うふふっ♡こちらへどうぞ?」
貴嶺綾乃と名乗った彼女は靴を脱ぐこともせず立ったままの自分に気が付くと手を引きリビングへと案内してくれた。
まるで迷子のこどもを導く母親のような。そんな優しさが感じられて思わず顔が熱くなってくる。相手はじぶんより小さい筈なのに、なんとも不思議な感覚だ。
「お、おじゃまいたします」
「はい♡どうぞぉ♡」
そして通されたのはリビングルームだった。しかしそこは自分の想像を遥かに超えた空間であった。
(なんだこれは……)
まるで高級ホテルの一室のような広々とした間取りに、上品かつ洗練された調度品の数々。
「ふふっ♡先生?こちらへどうぞぉ」
呆けて立ち尽くしている自分を見てか、彼女は優しく手を引きソファへと座らせてくれた。
「あ、ありがとうございます……すみません、このような環境は不慣れな物で、つい見惚れてしまいました」
そう白状すると彼女はくすくすと笑いながらキッチンで紅茶を準備してくれていた。
キッチンも彼女の背丈に合わせて設計されているのか、随分可愛らしい印象すら受ける。
「ふふっ♡お気になさらず?うふっ♡先生って可愛い方なんですね?」
「か、可愛い……ですか……」
「はい♡」
自分の中の男としての本能が警鐘を鳴らしている。しかしそれ以上に彼女の放つ色香が容赦なく理性を侵食して来る。
「うふふっ♡はい、どうぞ♡」
「……あっ!い、頂きます……」
彼女が差し出した紅茶はミルクがたっぷりと入っているのか、色も香りも濃厚で今までに嗅いだことのない芳しさが感じられた。
口を付ける付けないと言う判断すら失わせるに十分な、豊潤で甘い香り。
「ふふっ♡遠慮なさらず?先生?♡」
その甘い言葉に誘われるがままゆっくりと紅茶を口に含む。……そして脳天を貫くような衝撃に全身が震えた。
「……美味しい」
ぽつりと、率直な感想が漏れ出た。
優しいと言うべきか、茶葉の香り高さをミルクの
まろやかさが絶妙に包み込んでおり、一口含むごとに多幸感すら感じさせる味わいだった。
「うふふっ♡良かった♡」
「あ、ありがとうございます……こんなに美味しい紅茶は初めてです」
素直にそう告げると彼女は嬉しそうに微笑んだ。
どこか少女性すら感じさせるその笑みに、年甲斐もなくドギマギしてしまう。
「お口に合ったようで何より♡……ところで先生」
その瞳が妖しげに光る。
その色は、そう間違いなく魔性の蒼だった。
「な、なんでしょうか?」
思わず身構えてしまう。
そんな自分の様子は気に留めることなく彼女は微笑んだまま言葉を紡いだ。
「乳魔に逢ったのは初めてでしょう?♡」
──遂に来てしまったか。
頭の中で警鐘が鳴り響く。しかしそれでも視線は彼女の胸元に吸い寄せられてしまう。
乳魔。淫魔のその特徴は外見的な物から能力的なものまで多岐に渡る。
しかし乳魔の場合、その特徴は一目瞭然だった。
あからさまなまでの巨大で豊かな乳房。一般的な淫魔と違い翼や尾を欠いており、角と乳房がその象徴的な特徴であった。
温厚温和で人類に友好的な乳魔は、人間社会に於いても生活している個体も居ると聞く。
しかし、なぜだろうか?その様な温厚で友好的な存在が自分に対して『乳魔』などという単語を口にしたことで警戒してしまうのは至極当然の事であった。
「その……申し訳ありません。自分、乳魔の方とお会いするのは初めてで……失礼な想いをさせてしまっていましたら、申し訳ありません……」
頭を下げる。緊張のあまり喉がカラカラに渇いているのか、ひりつく喉でなんとか謝罪の言葉を口にすると彼女は優しく笑いかけてくれた。
「うふふっ♡そんな事は気にしなくていいんですよ?書類に記載していなかったのは私達の落ち度ですし、先生を怖がらせるような事はしませんから」
「で、でも……」
「うふふっ♡本当にお気になさらないで?それに……私としては先生には『私達』に慣れて頂かなくてはいけませんから♡」
その言葉の意味を理解する前に、彼女は身を少し捩る。
僅かな動きだけでその巨大な乳房がゆさっ♡と揺れ動き、その質量の暴力をまざまざと見せつけられる。
視線は完全にその双丘に釘付けになっていた。
「ふふっ♡視線が……ううん、先生のお目々がおっぱいから離れないのも無理はありませんわ♡乳魔の肉体が人間の理性を狂わせてしまうのは当然の事ですから♡」
「えっ……?」
いつの間にか彼女の瞳は妖しく輝き、その口元には妖艶な笑みが浮かんでいた。
間違いない、これは……魅了だ。確かに乳魔の特性に『異性を惑わす』という記述は
読んだことがあるが……これ程までとは。
「ふふっ♡でも先生のような学生さんなら……きっと私のおっぱいを見たら我慢できないんじゃないかしら?♡」
「なっ!?そ……そんな!せ、先生なのですからそんな事はっ……!」
これは間違いなく魅了状態を誘う為の言葉だろう。絶対に乗らないようにしなければ。
しかしそんな自分の意志とは裏腹に身体からは力が抜けてしまい、座していた筈の体はソファへと沈み込みそうになってしまうが、寸での所で肘を付き防ぐ。
その情けない姿を見て、綾乃さんはくすりと笑う。
「うふふっ♡本当に先生って可愛い方ですのね?♡……冗談です♡でも……先生?私のおっぱい、気になるでしょう?」
「そっ!そんな……ことは……」
ない、とは言い切れなかった。
しかしそれでも教師としての矜持が辛うじて言葉を紡ぎださせる。
「ふふっ♡本当に可愛い♡……ごめんなさいね?こちらの方こそ無礼を働いてしまいました。でも私、先生のような誠実な方が大好きです♡……少し身体を休めて下さいね?娘の授業の前に色々お話もしたいですから♡」
そんな自分の様子を見てか彼女は謝罪の言葉を口にする。
「は、はぁ……」
魅了の効果が切れてきたのか、なんとか返事を返すことが出来た。
しかしそれでもまだ頭がぼーっとしているような感覚が抜けない。……助かった、のだろうか?
──そこからは、至って真面目な話だった。
彼女の娘、貴嶺美夜さんは今年で高校二年生だそうで。
聖乳魔女学院、通称セイジョに通っている。
聖乳魔女学院は、文字通り乳魔しか入学を許されない、乳魔の為の教育機関。
ただでさえ多くない乳魔の中でも鎬を削る偏差値の高い名門校で、入学する為には厳しい試験を突破しなければならない。
(セイジョはその名前はともかく、その情報が一切外に漏れない事で有名だったな……)
これは自分が乳魔、ひいては淫魔に関して無知であった事を反省した。これがレアケース中のレアケースであることは勿論、淫魔や乳魔が人間に家庭教師を依頼する事自体想定していなかったのだ。
そんな難関の学院に美夜さんは首席での合格を果たして入学。
そして今年から貴嶺家では家庭教師を雇う事となり、その白羽の矢が自分に立てられたと言う訳である。
「先生?何か質問はありますか?」
「いえ……特には」
「そうですか♡ふふっ♡じゃあ美夜も既に部屋で待機していますから、そろそろ行きましょうか?♡」
「は……はい……」
そして彼女の後について行くようにリビングを後にする。
(……しかし、本当に広いな)
この豪邸の廊下は長く、その天井も高く作られていた。
それはまるで自分が小人にでもなってしまったかのような錯覚さえ受ける。
階段はない、平屋でこの敷地面積だ。廊下の幅もやたらに広い。
思わず不安になってしまうほどの豪邸での生活。
「ふふっ♡ご心配には及びませんわ?日中はお手伝いさんがいらっしゃいますから♡」
「そ、そうですか……」
見透かされたような言葉を掛けられ思わず変な返答をしてしまう。
「美夜もあまり人間さんには慣れていないものですから……ふふっ♡」
「は、はぁ……」
「でも先生ならきっと美夜と仲良くなれると思いますわ♡だって先生は誠実な殿方ですもの♡うふふっ♡」
その妖しげな笑みに思わずドキリとしてしまうが、すぐに気を取り直す。
(何を動揺してるんだ……自分は此処に家庭教師として来た身だぞ?)
そう言い聞かせる。
だがそれでもどうしても目線が彼女の胸元に行ってしまうのは男としての本能なので仕方のない事だろう。
そんな自分の視線に気づいたのか、彼女はくすりと微笑むとその豊満な乳房をわざとらしく揺らす。お茶目を通り越して文字通りの魔性だ。
「うふふっ♡先生ったら、またおっぱいを見て……♡駄目ですよぉ?生徒の親と言えど、先生のすることではないんですもの♡」
「す、すみません……本当に」
しかし綾乃さんはそんな自分を咎めるでもなくくすくすと微笑んでいるだけだった。
「あら、もう着いてしまいました♡残念♡ふふっ♡」
そんな彼女の言葉通り、気が付けば既に部屋の前に着いていたようだ。
綾乃さんがノックをする。
「美夜さん、家庭教師の先生をお連れしましたよ」
「入っていいよ」
するとすぐに中から返事があった。
落ち着いた感じの、しかしまだ幼さの残る声だった。
綾乃さんは扉を開けると自分が先に通るよう促す。
「お邪魔します……」
おずおずと中に入ると、整然とした空間が広がっていた。
少女らしさと、そして上品さが絶妙に調和されたその部屋はまるでモデルルームのように整頓されていた。
ベッドはかなり大きく、天蓋付き。
そして勉強机も大きく、その横には本棚が設えられ、そこにはぎっしりと本が詰まっていた。
その部屋の主は、机に向かっておりこちらには背中を向けている。
セイジョの制服なのだろうブラウスを着ているのだが、明らかにサイズが大きいのか、その成長途中の双丘は今にもボタンが弾け飛びそうな程に張り詰めていた。
(彼女が……貴嶺美夜さん)
綾乃さんと似た顔立ちに、母譲りの栗色の髪。
そこからは羊のような巻き角が顔を覗かせている。そしてやはりと言うか、とてつもない胸部の大きさを誇っていた。
「美夜さん、ご挨拶を」
「うん」
少女が振り向く。その顔立ちも綾乃さんに似てはいるが、彼女の方が僅かに緊張した雰囲気を纏っているように感じられた。
少女はすくっと立ち上がるとこちらにすたすたと歩み寄って来る。
ブラウスがゆっさゆさと揺れ、たわわに実った果実が弾む。
そして彼女は目の前まで来るとそのまま立ち止まり頭の先からつま先を品定めでもするかのようにじっくりと見つめてきた。
「あ、あの……?」
「ふーん……」
近くに寄ると、やはり綾乃さん同様身長は低いが体積も質量も比べるべくもなく。その乳魔特有の圧巻の体型に思わず気押されそうになるがなんとか堪え、こちらも目を見つめる。
「あの?えっと……?」
見つめ合うこと数十秒。沈黙に耐えられなくなった自分は再度声を掛けると彼女はハッとした様子で一歩後ろに下がった。
「……貴嶺美夜です。よろしく、先生」
「は、はい。宜しくお願いします」
お互いの顔をまじまじと見つめ合ってしまった為か気恥ずかしくなり思わず目を逸らしてしまう。目線を逸らすと今度は大きな胸に目が行ってしまう。
「うふふっ♡私は席を外しますので♡じゃあごゆっくり~♡」
「あ……は、はい」
そう言って綾乃さんは部屋を出て行った。
残されたのは自分と美夜さんの二人だけである。
(き、気まずい)
しかし彼女はそんなこちらの気持ちなどお構いなしに話し始める。
「先生、座って」
「え、あ、はい」
言われるがまま、明らかに今日からの為に購入されただろう革張りの椅子へと腰を下ろす。
(良い椅子だ……高いんだろうな)
などと下世話な感想を抱きつつも、改めて彼女の容姿をまじまじと観察する。
(やはり……乳魔と言うだけあって母娘揃ってとんでもない美人だ)
整った顔立ちに透き通るような白い肌。そして蒼い瞳はまるで宝石の様だ。そしてその美貌を裏切らず、そのスタイルもまた圧巻。
特に胸はブラウスをこれでもかと言うほど押し上げ、今にもボタンがはち切れそうだ。
(乳魔の肉体は人間の理性を狂わせる……か)
しかし、自分は教師だ、と自分に言い聞かせるように心の中で呟くと改めて彼女へと向き直った。
「すこし、お話ししようか?僕も美夜さんや、美夜さんの学校……聖乳魔女学院の事は正直何も知らないから、美夜さんも聞きたい事があれば何でも聞いて欲しい」
「ん、分かった。じゃあまず一つ目」
そう言うと彼女はずいっと身を乗り出してきた。その豊満な乳房がゆっさりとその質量を誇示するかのように揺れる。思わず視線が吸い寄せられそうになるのを必死に堪えた。
「先生って童貞?」
「……え?」
一瞬何を言われたのか理解が追いつかず硬直してしまう。
(なんだって?童貞?)
しかし彼女はそんな自分の様子などお構いなしに更に追及してくる。
「だから、先生は童貞なの?」
聞き間違いではなかったようだ。突然の事に困惑しつつもとりあえず答えることにする。
「え、あ、は……はい」
思わず声が上ずりかけたがなんとか堪えつつ肯定の言葉を返すと彼女は満足げな表情を見せる。
「ふーん……私も処女。人間で言うなら同類、かな?」
「そっ!?しょ、処女って……」
(この娘はいきなり何を言っているんだ?)
思わず赤面しそうになるがなんとか平静を装おうと努力する。
「近くで人間を観察したのは初めてだけど、先生は童貞、私は処女。つまり……私と先生の相性は良いと思う」
「な、何を言って……」
冗談なのか、揶揄っているのか、あるいは本気なのか。
彼女の意図が全く読めない。
「先生、私のおっぱい……気になるんでしょ?」
そう言うと彼女はその大きな双丘を両手で持ち上げるようにして見せつけてきた。
手指どころか腕にさえめり込み有り余るほどの質量。
その乳房は重力に逆らうかのように張りつめており、まさに天を突くという言葉が相応しいほど巨大なそれはブラウス越しにその大きさが窺い知れる程だった。そして仄かに甘いような香りが鼻をつく。
「性的な魅力が……この乳魔の肉体は人間にはある一定の性的興奮を促すって教わった」
「ど、どこでそんな事を教わるんです!?」
思わず大きな声で突っ込みを入れてしまう。
「学校。セイジョ」
「そ、そうですか……」
(いや……しかし、確かに)
彼女の言うように淫魔の肉体には人間を性的に興奮させてしまうような効果があると保健の授業でも習ったが、まさかそれをここまでストレートに言われるとは思わなかった。
「先生、私のおっぱい触りたくない?ほら、こんなに柔らかいよ?」
そう言って彼女はその豊満な乳房を自分の手で鷲掴みにすると、そのままぐにゅりと揉みしだいた。
「なっ!?」
その光景を見た瞬間、思わず息を飲む。
彼女の手の動きに合わせて自在に形を変える大きな乳房、そしてそれに伴って形を変える乳肉は視覚的にも非常に扇情的で、思わず視線が釘付けになってしまう。
(や、柔らかそう……)
「ね?先生、触ってみたいでしょ?」
そう言いながらも彼女は更に強くその乳房を握り込みぐにゅりと形を歪める。
その光景にごくりと生唾を飲む。
「だ、駄目!僕は家庭教師で、君の先生としてここにきたんだ!美夜さんのご両親に申し訳がたたない!」
流石に教師としての理性を総動員して、誘惑に耐えようとする。
「……?生物の最終目標は繁殖なのに?それに、人間と乳魔の恋愛は別に禁止されてない。むしろ推奨されてる」
確かに、人間の学校にも淫魔の生徒は居たし、学外から淫魔の講師を招いて講習を開いている学校もあると聞いている。
「そ……そうかもしれないけど!でも僕は教師として美夜さんを教え導く立場にあるんだ!」
そうだ、自分は教師としてここに居るのだ。
いくら彼女の誘惑が魅力的であろうとも、先生として、人間としての本分を弁えなければ。
「ふーん……そうなんだ。わかった」
そう言うと、彼女はあっさりと引き下がった。
(な……なんとか耐えきったぞ)
内心ホッとしつつ改めて彼女の姿を見たが、やはり目に映るのは圧倒的な存在感を放つ二つの乳房だった。
「先生、お母さんから私の事なんて聞いてる?」
「え?綾乃さん……から?」
美夜さんからの質問に一瞬戸惑う。
しかし彼女はそんな自分の様子など気にも止めずに言葉を続けた。
「うん、人間の尺度で言うと私みたいなのは『モテない』ってお母さん言ってた」
「は、はぁ……?」
「でも、私はそうは思わない。だって私のおっぱい、こんなに大きいから」
そう言うと彼女はその豊満な乳房をゆっさゆさと揺すった。その動きに合わせてぷるんっと弾む乳房を見て思わずごくりと生唾を飲み込むが慌てて視線を逸らす。
しかしそんな自分の醜態も気に留めず、彼女は続ける。
「勉強だって私、がんばってる。学校で教わる事ならだいたい分かるよ?先生が来るまでの間もちゃんと勉強してた」
「そ、そうですか……」
確かに彼女の机の上には参考書や教科書が綺麗に整頓されており、ノートもしっかりと書き込まれているようだった。
「だから……お母さんが勘違いしてるだけ。家庭教師だって人間に慣れさせたいとか、それだけの理由。私は人間に興味ある。先生を誘惑してみたい」
「う……あ……」
(まずい、またあの甘い香りが……)
頭がぼーっとしてくるような甘い芳香に再び理性を失いかける。しかしそれでもなんとか耐えようと歯を食いしばったその時だった。
コンコンとノックの音がしたかと思うとゆっくりと扉が開き、綾乃さんが入ってきた。
「あら♪ふふふ♡すっかり仲良くなったかしら♡」
「は……は……」
未だ混乱状態にある頭でなんとかそう返事をすると、彼女はそのまま机の方に紅茶とお菓子を運んできた。
「うふふっ♡美夜さんお菓子ですよ?♡」
「うん」
(あ、あれ……?)
先程まで感じていたはずの強烈な衝動がまるで最初からなかったかのように収まっている。
ミルクティーから漂う甘い香りに誘われるように、カップを手に取り一口啜る。
「あ……れ?」
先程まで感じていた強い衝動がまるで嘘だったかのように引いていく。
(これは……)
「うふっ♡お口にあったようで何よりです♡じゃあごゆっくり~♡」
そう言うと彼女は部屋を出て行った。その後ろ姿を呆然と見送ってしまう。
「先生?どうしたの?」
「あ、いえ……」
思わず固まってしまっていた事に気が付き慌てて取り繕うと、もう一度紅茶を口に運んだ。
(……紅茶の成分?何故だろうか、落ち着く……)
その香りと味に冷静さを取り戻す。
(綾乃さんが気を回してなにかこう……乳魔のフェロモンに作用する何かを紅茶に……?)
思わぬ助け舟に感謝しつつ、改めて美夜さんの方を向く。
「僕は勉強を教えにここにきたんです。美夜さんがその……魅力的なのはよく分かります。だからその、誘惑しないでほしいとは言いませんが……その、そう言うのは大人になってからお願いします」
「うん?私はもう大人だと思う。だけど……先生を誘惑するのは勉強中は極力控えようとおもう」
少しだけしゅんとしながら美夜さんは言う。
「その、ありがとう……ございます?」
「うん」
そう言って彼女はまた自分の方を見つめてくる。今度は先程のようにじっと見つめてくるような様子ではなく、じっと何かを考えている様子だったがやがて口を開いた。
「ねぇ先生?勉強、見て欲しい。いい?」
「え?あ、はい……」
突然の言葉に驚きつつも承諾する。すると彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。その笑顔を見るとなんだかこちらも嬉しくなってくるようだった。
◇
乳魔に限らず、淫魔の頭部には特徴的な大きな角が一対以上生えている。そしてこの角は脳と密接にリンクしており、その淫魔の思考・感情と直結していると言われている。
そしてこの角からは特殊な電磁波が常に放出されており、その電磁波は人間の脳に作用し様々な影響を与えると言われている。それが所謂"淫夢"と呼ばれる夢の正体だと言うのだ。
だが淫魔はそれ以上にこの角を用いて互いに交信を行う事も可能としており、この通信網は"サキュバスネットワーク"と呼ばれる。これを利用して今日の高速無線通信が実現したと言われている。
簡単に言えば、淫魔は居るだけで通信基地局のような働きをしてくれるのだ。
「じゃあ、この問題はこう解くのが正解?」
すらすらと問題を解きつつ美夜さんが問いかけてくる。
「そう、公式を当てはめて……」
「ん……こう?」
「うん、正解。じゃあ次はこっち」
そう言って次の問題へと取り組む。美夜さんは飲み込みが非常に早く、一度教えた事はしっかりと記憶しており応用力も高い。
通信網の一端を担う脳の処理速度も、人間とは比べ物にならない程高いのだろう。
(たはは、僕より確実に賢いな、この子は……)
教えようと思えば、彼女は幾らでも吸収する。
「先生、ここ分からない」
「どれどれ……」
美夜さんが指差したのは数学の問題で、その問題文を一緒に読みながら解説をする。すると彼女はすぐに理解してくれたようで、次の問題に取り組み始める。
(なるほど、自主学習させるより教えた方が呑み込みが良い……淫魔のコミュニケーション能力の高さはこういう所から来ているのかもな……)
そんな事を考えながら、美夜さんの様子を見守る。
(しかし、この分なら特に問題もなさそうだな……)
はっきり言えば、つきっきりで勉強を見てその内容を理解出来ている時点で自分は不要なのではないだろうか。
「先生、ここも分からない」
そう考えていた矢先にまた新たな問題を提示してくる美夜さん。しかし今度は先程の物よりもずっと難しそうだ。
「うーん……これはちょっと難しいかなぁ……でも、ここをこうすると」
そう言いながら考えていると不意に彼女が此方をじっと見つめている事に気がついた。その瞳はまっすぐにこちらを見つめており、思わずどぎまぎしてしまう。
「あ……あの?美夜さん?」
「先生のおかげかな、勉強がすんなり頭に入ってくる」
勉強に集中し始めたからだろうか、彼女の甘い、理性を溶かすような体臭も薄れてきていた。
「……それは良かった。正直、こんなに頭が良い子を受け持つとは思わなくて少し驚いてるくらいだよ」
乳魔と言う未知の存在に多少不安があったものの、その不安は美夜さんの理解力と学習能力の高さによって払拭された。
「ん……先生、ちょっと休憩」
「え?」
突然そんな事を言い出した彼女は椅子を近付け、身体を預けるように寄りかかってきた。
「み、美夜さん……それは……」
「勉強は十分したから。次はスキンシップ」
(いや、勉強の休憩にスキンシップは必要ないんじゃ……)
むっと匂い立つような甘い香りが至近距離から漂ってくる。
「先生、いい匂いする。いい匂いがする」
胸板に顔を近付けるとくんくんと匂いを嗅ぎ始めた。その仕草はまるで犬のようだと思ったものの、それを口に出すのは憚られた。
ブラウス越しに押し付けて来る胸の圧倒的質量と熱量。彼女の体温は、まるで熱でもあるかのように高くなっているように思えたがそれは人間と乳魔の勘違いだろうか。
「人間ってちょっとひんやりしてるんだね。きもちいい……」
僕の頬に手を触れながら彼女はそう呟く。
「そ、そうですか……」
彼女の体温は人間よりも少し高いようで、その手から伝わる熱は心地よかったもののやはりその大きな乳房の感触が気になって仕方がないのも事実だった。
(あ……やば)
美夜さんが椅子の上に乗り上げて来る形になって、その大きな乳房がより強く押し付けられる形になる。
むにゅりと形を変え、こちらの身体に押し当てられるその豊満な果実の感触は筆舌に尽くしがたい物だったし、その重量は彼女の体重と相まってずしりと重く感じられた。
その重量感と柔らかさは、まるで巨大なマシュマロに覆われた求肥を押し付けられているような錯覚さえ感じさせる程だ。
「先生、顔赤いよ?どうしたの?」
美夜さんが不思議そうに首を傾げる。しかしその表情にはこちらをからかっているような様子は一切ない。純粋に疑問に思っているのだろう。
「い、いや……なんでも……」
慌てて視線を逸らすが、それでも彼女は不思議そうに見つめてくる。
その大きな乳房の存在感は凄まじく、どうしてもそちらに目が行ってしまうのだ。
(うぐ……)
美夜さんの膝小僧がちょうど股間の上に乗せられており、意識せざるを得なかった。
「先生?」
ぐいっと身体が寄ってくると同時に、膝が股間を押し上げてくる。
「うぐ……」
その刺激に呻き声を上げるが、彼女は気付いていないようだ。
そしてそのままさらに身体を密着させてくる。
(あ、これまずい……)
血流が一気に股間に集中していく感覚に襲われる。しかし、それを悟られまいと必死に平静を装った。
美夜さんはそんなこちらの様子など気にする様子もなく、こちらをじっと見つめて来る。その目は真剣そのものであったが、同時にどこか艶っぽく感じられた。
(まさか……生徒との勉強中に勃起したなんて知られたら……初日でクビ、最悪訴えられる……)
だが、こちらの焦りとは裏腹に彼女は特に気にしていないようだ。それどころか興味深げにズボンの股間部分を凝視していた。
「……先生?ここおっきくなってる」
「うっ……!!」
やはり気が付かれてしまったらしい。慌てて誤魔化そうとするが言葉が出てこない。しかしそんなこちらの様子にはお構いなしで、美夜さんは手を伸ばしてくる。
「え!?み……美夜さん!?」
「どうしたの?痛いの?」
そう言いながら彼女はズボンの上から優しく撫で回してくる。その手つきは非常に柔らかく優しいものだったが、逆にそれがもどかしくもあり余計に興奮してしまう。
(う……)
「美夜さん、ちょっと……」
「先生?ここ、苦しそう」
そう言うと彼女はチャックに手をかけてきた。慌てて止めようとするも、既に遅くあっさりと下ろされてしまう。
「ちょ!?」
パンツの中から顔を覗かせてしまったソレは、みっともないほど大きく硬く勃起していた。
その先端からは透明な汁が溢れており、下着との間に糸を引いてしまっている。
「え……先生」
突然出て来た男性器に驚いたのか、美夜さんは目を丸くしている。
生まれて初めて見たのだろう。それにしたって反応が初心過ぎると言うか……。
「ち……違うんだ美夜さん!これはその……」
慌てて弁解しようとするも言葉が出てこない。美夜さんも黙りこくってしまっており、非常に気まずい空気だ。
しかし、そんな空気を打ち破ったのもまた美夜さんだった。
「良いニオイがする……」
すんっと鼻を鳴らすと、彼女は顔を近づけてくる。眼を閉じて深く鼻から息を吸い込むと、口から熱い吐息を漏らした。
「ん……先生……」
そのまま美夜さんは顔を股間に埋めてくる。そして鼻先が触れる程の距離で匂いを嗅ぎ始めたのだ。
その距離の近さと彼女の熱っぽい呼吸は、まるでこちらの理性を吹き飛ばそうとするかのようで、頭がくらくらしてくる。
「美夜さん、駄目だって……!」
慌てて引き剥がそうとするものの彼女は離れようとしない。それどころかより強く股間に顔を押し当ててくる始末だ。
「先生……ここ、すごいニオイ……嗅いだことない……こんなの」
美夜さんは陶酔したような表情のまま、くんくんと何度も鼻を鳴らす。その度に彼女の熱い吐息がかかりくすぐったさと同時に快感を覚えてしまう。
「うぐ……や、止めなさい!美夜さん!」
何とか引き剥がそうとするものの彼女は全く離れようとしない。むしろさらに強く抱き着いてくる始末だ。
「先生……私、これ好きかも……」
そう言うと彼女は酔ったかのような目でこちらを見つめてきた。その目は潤んでおり、頬は紅潮しており息も荒い。その姿はとても扇情的で思わずドキリとする程だ。
「先生……♡」
彼女は熱っぽい声でそう言うと、まるでマタタビを嗅いだ猫のように、その小さな鼻をひくつかせながら何度も匂いを吸い込んだ。
「う……美夜さん……」
(まずい……これは)
理性が飛びそうになる。おかしくなりそうだ。
こんなに小さな身体にどれ程の膂力が秘められているのか、その力は強く振り解こうにもまったく離れる様子はなかった。
(なんて力だ……!)
こちらの抵抗などまるで意に介さない様子で、彼女はひたすら股間に顔を埋めて来るのだ。その刺激は強烈で思わず腰が浮いてしまう程だ。
(うぐ……まずい……!)
このままでは彼女の思うがままにされてしまうだろう。初日でクビだけは勘弁願いたい。何とか彼女を引き剥がそうと試みるもののびくともしなかった。
「ふぅー……♡ふぅー♡」
熱い吐息が股間に吹きかけられる。口を開け今にも咥えようとしているのが感覚的に分かった。
「美夜さん!駄目だって!」
そう叫ぶも、彼女はまるで聞こえていないかのようだった。そしてついには女の唇が触れそうになった瞬間、思わず手が彼女の頭に伸びて押し退けようとした時、ある場所に手が触れてしまった。
「あ……」
そのとき、美夜さんの目が大きく見開かれたかとぴたっと動きが止まり、静止する。
私の手は彼女の側頭部から伸びる巻き角をがっしりと掴んでいたのだ。
滑らかで、それでいて少ししっとりした感触のそれは、まるで上質なシルクのように触り心地がよくずっと触っていたくなる程だ。
「あ……あ……」
美夜さんは目を白黒させながら、全身を小刻みに震わせていた。
「美夜さん?大丈夫?」
明らかに様子がおかしい。心配になって声を掛けるが彼女は返事をしてこない。ただ呆然としたまま、こちらの顔を見つめるだけだった。
「あっ♡ああっ♡あぁあッ♡」
ビクンッと彼女の身体が跳ね上がると同時に、甲高い悲鳴を上げる。掌にびりびりとした電気めいたものが流れたような感触、手を離そうにも美夜さんがしがみついているためそれも叶わない。
そのせいで、いきり立った雄の象徴が彼女のシャツの隙間に潜り込み、柔らかな乳房と擦れ合う形になっていた。
「や、美夜さん……離れて」
慌てて離れようとするものの彼女は全く離そうとしないどころかますます強く抱き着いきた。
「あ♡はぁッ♡ああぁ……ん♡」
美夜さんは目を潤ませながら、甘い吐息を漏らす。その目はどこか虚ろで焦点が定まっていないように見える。
この時初めて、自分が淫魔にとっての『角』がどんな意味を持つのかを思い出した。
(そうか、脳と密接にリンクしているから……)
淫魔の角は、脳を通じて様々な情報を受信し処理する器官だ。
その情報の中には当然『性感』も含まれる訳で……つまり今彼女は性的な情報を感じているのだ。勉強で脳の処理能力を上げていた今、その性感は通常の何倍にも膨れ上がっているだろう。
そしてそれは彼女の身体に多大な影響を及ぼしているはずだ。
(早く引き剥がさないと……)
しかし美夜さんはこちらの身体をがっちり掴んでおり、とても離れてくれそうにない。手も角に吸い付いてしまっているため剥がす事も出来ない。
「あぁッ!先生ッ♡きもちいい……」
切なげな声と共に美夜さんは身体を揺らす。その動きによって柔らかな胸がずりずりと擦り付けられるような形になり、その刺激は凄まじい物だった。
脂肪の塊のような柔らかな感触に包まれつつも、同時に走るピリッとした電気めいた感覚。
皮膚の滑らかさにぬめりのある汗。そして何より淫魔の甘い体臭と、彼女の熱っぽい吐息が理性を溶かしていくようだった。
「あッ♡あぁん♡先生ぇ♡」
まるで本能からくるような動きで美夜さんは身体を動かす。ブラウスは汗でぺったりと張り付き、その下にある柔らかい肌の色が透けて見えている。
「ん♡んぅ♡」
彼女は夢中で乳房をこちらの身体に擦り付けて来る。
「美夜さん、お、落ち着いて」
角を撫でさする様にすれば刺激で動きが止まるやもと、角を撫でてみる。
「んあッ!や、それぇ♡きもちいい……っ!♡あッ!♡あぁん♡」
しかし、その刺激は逆効果だったようだ。美夜さんはさらに激しく身体を動かしてきた。
そしてそれと同時に角を触られる事で得られる快感も増しているらしく、彼女は身体を痙攣させるように震わせる。
「先生っ♡おねがぃ♡もっと♡もっと♡なでてぇ♡」
切羽詰まった声で懇願されては、断る事など出来なくなってしまう。
「ああ、わかったから……!」
言われた通りに角を優しく撫で回す。まるで赤子をあやすように撫でてやると彼女は嬉しそうな声を上げた。
(うぅ……これで大人しくなってくれないと、もう……)
股間は限界に達しようとしていた。これ以上は本当にまずい。
(頼む、早く終わらせてくれ……!)
そう願いながら、ひたすらに手を動かし続ける。
「ああぁッ!♡もっとぉ♡あぁん♡せんせぇ♡」
美夜さんは甘えたような声で鳴いている。その顔からは知的な面影は消え去っており、快楽に溺れきった表情を浮かべていた。
彼女の濡れきったブラウスから、汗とは違った液体が胸元を伝い落ちるのが見えた。
白い液体がブラジャーから滴る。
「えっ!?あ、美夜さん!?」
甘いミルクの香りが部屋中に広がっていく。非常に濃く粘度が高い液体。
「おっぱい熱い……♡なにこれぇ♡」
彼女は自分の胸を見て戸惑っているようだったが、行為は止むことがない。
「あッ♡ああッ!♡先生っ♡せんせぇ……ッ!」
(母乳!?乳魔が母乳を!?)
淫魔の体液は人間の粘膜に触れれば強い催淫作用を示す。
特に淫魔が興奮すれば興奮する程、その体液の効果は高くなるのだ。
「やだっ♡なにこれ♡止まらなぃぃ♡」
彼女は自分の胸を掴み、必死に抑えようと試みるもそれは逆効果だった。滾々と溢れるそれが、私の男根にじわじわと染み渡る感覚。
ずんと下腹の辺りが重くなる感覚に、思わず腰を浮かせた。
(まずい……これは本当に……!)
腰を引き抜こうと試みるものの、美夜さんの谷間に深々と突き刺さってしまっている状態のため全く動く事ができない。
それどころか、彼女はより深くへと押し込んで来ようとする始末である。
「んッ♡あッ!せんせぇ♡」
彼女の動きに合わせて乳房が激しく揺れ動く。その振動が股間に伝わり、甘い快感を生んでいた。
衝動的な欲望が迫り上がる。
「美夜さん!離れて!」
危険を感じ叫ぶも、彼女は離れない。それどころかますます強く抱き着いてくる始末だった。
そして次の瞬間、ついにその時が来てしまった。
(まずいッ……!出る……ッ!!)
「あっ……」
まるで失禁したかのような勢いで、大量の精液が噴出した。
強い快楽の波が脈打つ度に、どくん、どくんと何度も精が放たれる。最悪の状態を、最高の快楽が上塗りしていく。
「あ……」
美夜さんは呆然とした様子でそれを見つめていた。
ぷつぷつとブラウスのボタンが外され、彼女のブラジャーに包まれた乳房が露わになる。
精液が谷間に吸い上げられ水たまりのようになってしまっており、むせ返るような性臭が室内に充満していた。
その匂いは思考をより濁らせていく。そしてそれは美夜さんも同じであったようだ。
「せんせぇ……これ……なに……」
彼女は熱っぽい目でその白濁液を見つめる。興味関心と言うより、それは欲求に近いものに見えた。
「あ……み、美夜さん?そ、それは……」
そんな言葉など聞こえていないかのように、彼女はそれを手にとった。
指先で掬い取り、じっと見つめるとそのまま口に運んでいく。まるでそれが甘いお菓子であるかのように味わうように舌の上で転がして味わっていく。
「んっ……んく……♡」
そして、こくりと喉を鳴らして飲み込んだ。
「ん……♡あ……」
その瞳はすっかり蕩けきった物に変わっており、口の端からは一筋の唾液が垂れ落ちていた。
「美夜さん?」
様子のおかしい彼女を心配して声を掛けるも返事はない。代わりにゆっくりと身体が倒れ込んできた。慌てて抱きとめようとするとそのまま彼女は体重をかけて来たため支えきれず押し倒されるような形になってしまった。
──彼女が絶頂し、意識を失う形で。
彼女の乳房に圧し潰され、身動きはまるで取れない。密着した彼女の身体から漂う甘い香りは鼻腔を擽り、その熱と柔らかさは至上の感触だ。
その体温が心地良いと思ってしまう自分に嫌気が差した。こんな事を考えている場合ではないというのに、頭では分かっていても身体が言う事を聞いてくれない。
自分がクッションになった形の為、彼女に怪我がないことだけが幸いだったが、その豊満な乳房の柔らかさが理性を溶かしてくる。
射精の余韻の残る肉棒が硬いまま、事態は更なる悪化の一途を辿ろうとしていた。
「あの~~?どうかしましたか~?」
コンコンというノックと共に場違いな明るい声が部屋に響く。
絶望の音だ。この状況を見られたら何を言われるか分かったものではないだろう。
慌てて返事をしようとするも、今の美夜さんを押し除ける事も出来なければ勃起も収まらない。
(まずい……!)
「あの~~?大丈夫ですかぁ~?」
そんなこちらの状況など知る由もない彼女は、何度もノックをしてくる。このままでは不味いと思い美夜さんを起こそうとするも全く起きる気配が無い。それどころか、まるで甘えるかのように身体を擦り寄せて来る始末だ。
「先生ぇ……先生ぇ……♡」
うわ言のように私の名を呼びながら、すりすりと身体を寄せてくる美夜さん。まるで恋人にするような仕草に心臓が高鳴った。
再び込み上げてくる射精感、あり得ない。しかし、事実としてそれは起こりつつあった。
美夜さんの乳房が押し付けられる度に、その柔らかさに反応してしまうのだ。
「先生ぇ♡せんせえ♡」
(まずい!本当にまず……)
ガチャ、と扉が開かれた。
「先生、失礼しますね~……あら♡」
乳房の下敷きになった自分と、綾乃さんの目線が合う。
彼女は一瞬、驚いた顔をした後すぐににっこりと笑みを浮かべた。
その笑みにどこか恐怖を感じる。
──意識が遠のく最中、柔らかく温かな乳房の中にもう一度精が迸るのを感じながら、意識を手放した。
◇
閑静な夜の住宅街を、所在もなくふらつく足で歩く。
まるで夢の中のような、マラソン大会のあとのような。
そんな疲労感と虚脱感が身体を支配していた。
──あれから目を覚ましたのは、日がとっぷりと落ちた後だった。
見知らぬ天井。時計を確認すれば午後10時を指しており、自分が数時間意識を手放していた事を悟る。
衣服は新品のように綺麗になっており、着直されていた。
違和感の残る股間に目を向ければ、萎えたモノが慎ましく股の間に鎮座していた。
そう実感すると同時に激しい羞恥と罪悪感に襲われる。自分が乳魔……いや、生徒に翻弄されるなどあってはならないことだと言うのに、その快楽を貪ってしまった。
(これからどうすれば……)
「はぁ……」
深い溜息と共に独り言が漏れる。そしてあの夢のような快楽が腰の奥にじんわりと残滓を反響させた。
「あら、先生♡よかった、起きてたんですね~」
その声にドキリとする。顔を向ければそこに居たのは、綾乃さんだった。
「あ……綾乃さん……」
平静を装おうとするも声が上擦ってしまう。彼女はそんな自分を見てくすりと笑った。
「まだ寝ていた方が良かったかもしれませんね。……ご気分はいかがですか?」
「……ええ、なんとか」
「ふふ♡それは何より♡……今日はごめんなさいね、美夜さんが……娘が粗相をしたようで」
綾乃さんはそう言うと軽く頭を下げた。
「い、いえ……こちらこそその……すみません」
動揺からかうまく言葉が出てこない。こちらの犯した失態を思えば、謝罪すべきなのはこちらの方だ。
しかし彼女はそんなこちらの様子を気にも留めず言葉を続けた。
「美夜さんったら、先生の匂いを嗅いだ途端あんな風になってしまって……私が過保護だったせいで人馴れをさせてこなかったのが良くなかったのかしら」
彼女はそう言うと、少し困ったような顔をした。
「いえ、それは……僕が悪いんです。乳魔の方との接し方がよく分かっていなかったのが原因に違いないですから……。家庭教師の応募条件にも特に記載が無かった以上、僕の落ち度です」
そう答えると、彼女は少し驚いたような表情を浮かべた後微笑んだ。
「あら……先生ったらお優しいのね。でも大丈夫ですよ♡美夜さんはまだ子供ですから、これから学んでいけばいいんですよ♡」
(いや……)
違う、そうではない。これは優しさなどではない。
「そう言って頂けるのはありがたいですけど……僕にはもう、此処に通う資格は……」
授業料だって受け取る気はさらさら無かった。しかし彼女はこちらの言葉を遮り、微笑みながら言った。
「あらあら♡いけませんよ先生♡そんな簡単に諦めてしまっては♡」
「え……?」
にっこりと笑顔を浮かべる綾乃さん。その笑みからは悪意や敵意と言ったものは感じられないものの、どこか含みがあるように思えた。
まるで、全てを見透かすかのような、そんな微笑み。
「ふふ♡まず先生が感じている罪悪感情……痛いぐらいに分かります。自分の生徒に淫らな行為をしてしまったんですもの……とてもご両親や学校の方には言えないでしょう」
「それは……」
事実だ、それについて否定などできるはずもない。
そもそもの話として、誘惑に負けてしまったのは自分の落ち度なのだ。常識的に考えればすぐさま警察に自首すべき事案だろう。
「あくまでそれは”人間”相手での常識……。私たち乳魔には関係のない事ですもの♡ふふ♡先生♡」
綾乃さんはこちらへゆっくりと近づいてくると、そっと手を取った。そしてそのまま胸に押し当てると耳元で囁くように甘く語りかけてくる。
「大丈夫ですよ~……先生が『悪くない』って事は私がよ~~~くわかっています♡♡♡『淫魔に対する性教育』という建前はありますから、それを口実にすれば何の問題もないですよ♡」
「で、ですが……」
それはつまり『生徒との性交渉』を認めるという事だ。そんな倫理的に許される筈のない行為を、生徒である美夜さんに対して行ってしまった以上もう後戻りなどできる訳もない。
「美夜さんはもう立派な大人……あの子のアレを見たでしょう?あまぁいあまぁい……乳魔の母乳が♡ふふ♡」
「え……それって……」
彼女は私の手を取り自らの乳房に手を添えさせると、熱いぐらいに火照った体温が伝わってくる。そしてじんわり湿った感触を感じ取り、その正体を理解するのに時間は掛からなかった。
「乳魔は妊娠出産を経ずとも母乳を分泌する事が出来ますの♡それは成熟した証……つまり、あの子ももう立派な乳魔として成熟したという事♡それが今日起きた事だとしても、それは決しておかしな事ではないんです。むしろ喜ばしいこと♡そうは思われませんか?先生♡」
彼女はそう言うと、私の股間をそっと撫でる。その甘い刺激にびくりと反応してしまうと、彼女は妖艶な笑みを浮かべて言ったのだ。
「だから~……先生♡これからも美夜さんの事をよろしくお願いしますね♡先生♡」
捕食者の目だ。自分はもう逃げられないのだと悟った瞬間、身体の力が抜けていくのを感じた。
マシュマロで圧死させられるのは、きっとこんな感覚なのだろう。
恐怖と快楽が入り混じったような不思議な感情を抱きながら、私はただ呆然とするしかなかった。すると、綾乃さんはいきなり手を離すとぽんと手を叩いた。
「あ、そうそう♡今日のレッスン料をお渡ししなくてはいけませんね♡はい、どうぞ♡」
そう言うと、彼女はどこからか封筒を取り出すと私に手渡してきた。
「え……?」
ずっしり重いそれは、中を見ずとも分かるほど大金が入っている。
「う、受け取れません……こんな大金……」
慌てて返そうとするも、綾乃さんはそれをやんわりと押し返した。
「あらあら♡遠慮なんてしなくてもいいんですよ?これは正当な報酬なんですから♡」
「いや……しかしですね……」
「ふふ♡それとも……美夜さんでは不満でしたか?教えるに値しない……と?」
「そ、そんな事は……!美夜さんはとても優秀で……!」
そこまで言いかけて言葉を飲み込む。
このまま教えて行けば、確実に優秀な……いや、それ以上になる事など分かり切った事だ。
だが、それには私の倫理観がついていけない。
「……ふふ♡そうでしょう?美夜さんはとっても優秀ですよね♡」
私の葛藤を察したのか、彼女はにっこりと微笑むと言った。
「先生もご存知の通り淫魔は人間が大好きなんです♡人間の体液が食事になりますし、なによりパートナーである人間とのスキンシップが食事になりますから♡勿論それは乳魔も例外ではありません……♡先生でしたら美夜さんの特徴も分かっているでしょう?そっけない態度ですが、誰かに甘えたくて仕方なくて、それでいて一人でいる事の寂しさも理解している。ふふ♡そんな可愛い子を泣かせるおつもりですか?先生♡」
「ぐ……」
確かに美夜さんは聞き分けも良いし、大人しい生徒だ。だからこそ逆に何故そんな事をしてしまったのかと罪悪感に苛まれる事にもなった。
自分以外に見て貰えば良い、と喉から絞り出したくなるが、それを口にしようとすると胸が締め付けられるように痛んだ。
「ふふ♡私としては、先生以外の家庭教師を捜すより、先生に来て頂きたいのですけれど……♡」
彼女はそう言うと私の目を覗き込むようにしてじっと見つめてきた。その瞳に見つめられるとまるで心を見透かされているような気分になる。
「相性って、あるんですよ♡先生♡」
彼女はそう言うと、私の股間を優しく撫でた。
「あ……ッ」
思わず声が出てしまい慌てて口を塞ぐも、既に遅かった。綾乃さんはくすりと笑みを浮かべると耳元で囁いたのだ。
「ね?先生ならきっと大丈夫ですよ~♡美夜さんの事、よろしくお願いしますね♡もし耐えられないようでしたら、私が『お手伝い』してさしあげますから♡」
その言葉にどきりとしてしまう。そんな自分を誤魔化すように咳払いをした。
「げほ、げほっ!……そ、その心配は不要です。今日は本当に申し訳ありませんでした。ベッドまでお借りして……」
ベッドから起き上がると、身支度を整え始める。もう夜も遅い時間だ、そろそろ帰らねばならないだろう。
「あら♡もっとゆっくりしていってもいいんですよ?ふふ♡お泊りも大歓迎です♡」
「いや……そういう訳にはいきませんから。これ以上は迷惑になりますし……」
そう言うと、綾乃さんは少し残念そうにした。
「ん♡残念ですけど仕方ありませんね♡ではまた、次回もよろしくお願いしますね♡」
「はい、ありがとうございました」
そして扉を開けて廊下に出ると、ゆっくりと扉を閉める。
そのまま大きく息を吸って、つかえた空気を吐き出そうとした時だった。
「先生」
横から声を掛けられ、心臓が跳ねる。慌てて振り返るとそこには美夜さんが立っていた。
「み……美夜さん」
動揺を隠せず上擦った声が出る。パジャマ姿の彼女は袖を所在なさげに弄りながら、こちらを見上げていた。
「……聞いてたの?美夜さん」
「はい……その、ごめんなさい……」
消え入りそうな声で謝罪の言葉を口にする。先程までの淫らで淫らな少女とは打って変わってしおらしい態度だった。
「いや、良いんだ。僕の方こそすまなかったね……」
そう言うと美夜さんはふるふると首を振った。
「美夜さんの事は任せろと、綾乃さんは言っていたよ」
そう言うと彼女はほっとした表情を見せる。
「また来てくれる……?これからも勉強教えてくれる……?」
上目遣いで尋ねる美夜さんの姿を見て、思わず胸が高鳴る。先生として求められる喜びと、乳魔の誘惑に抗えない自分への嫌悪感が同時に湧き上がってきた。
しかしそれを悟られる訳にもいかず、私は平静を装って言った。
「勿論だよ。美夜さんさえ良ければ」
そう言うと彼女は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔は年相応に可愛らしいもので、先程までの淫靡な雰囲気は感じられない。
「……っ」
私はそのギャップにどきりとしてしまう。同時に、またあの快楽に溺れたいと思ってしまう自分が情けなくて仕方がなかった。
「じゃあ……おやすみ、美夜さん。また次の授業でね」
玄関で靴をはきながらそう告げる。すると彼女は寂しそうに俯いた後、意を決したように口を開いた。
「うん……またね先生」
そして扉を開いた瞬間───腰に大きな柔らかい感触が押し当てられる。振り向けば美夜さんがぎゅっと抱き着いてきていた。
甘い香りがふわりと鼻腔をくすぐると同時に、彼女の体温が伝わってくる。
その温かさと柔らかさに一瞬意識が飛んでしまいそうになるも、何とか理性を保つ事に成功した。
「大丈夫だよ、美夜さん。また来るから」
そう言って彼女の頭を撫でると、彼女は気持ち良さそうに目を細めた後ゆっくりと身体を離していった。
「……うんっ」
その笑顔はまるで花が咲いたようで、見ているだけで幸せな気分になれるものだった。そんな彼女の姿を見て安堵感を覚えた私はそのまま帰路につくことにしたのだ。
──そうして初めての家庭教師の授業を終えた帰途は、夢か現か分からぬほどふわふわとした心地であった。
虚脱感と罪悪感、そして背徳的な快楽の残滓。
それらが入り混じった複雑な感情を抱きながら、私は自宅への道をゆっくりと歩く。
夢であって欲しい。しかし、その願いは届かなかったようだ。
ズボンの下、股間に感じる違和感がそれを如実に表していた。
「ああ……」
そんな悪態をつくと私は足早に家路を急いだのだった。
◇
大学の図書館ともなると、蔵書の量も膨大である。
私は本棚とにらめっこしながら、目的の本を幾つも
手に取っていく。そのどれもが淫魔や乳魔に関するものだ。
『淫魔の生態』『乳魔の文化人類学』、『乳魔と人間の歴史』……ぶ厚い本から薄いものまで。
内容的には、とてもではないが小中高や市の図書館には置けるようなものではない。
(確かにこれだと……こうした書籍に触れる機会はないだろう。それにしても……)
乳魔という種族について詳しく書かれているものから、乳魔に魅了されてしまった人間の手記など様々だ。
中には官能小説めいた内容のものもあり、それが余計に自分と重なって現実味を帯びてくる。
『乳魔の乳房は、その大きさと柔らかさから「おっぱい星人」と呼ばれる人間にとってまさに理想郷である』
「いや……確かにあれは……」
あの柔らかくも弾力のある感触を思い出すだけで股間が反応しそうになるが、それを頭を振って打ち消そうとした、その時だった。
鼻腔をくすぐる香り、香水とは違う生々しく、それでいて蠱惑的な香りに思わず振り返る。
「あっ♪エロ本読んでるのー?」
髪をかき上げ、尖った犬歯を見せながら笑う女性。細長い尻尾や腰部に小さな翼、そして頭頂部に生えた角。
「え……あ……」
淫魔だ。確か同じ学部の……名前は。
「ん?どしたの?」
「あ……いや、そのこんにちは、紅瀬さん……だったっけ?」
淫魔なのもあったし目立っていたから印象には残っていた。
紅瀬小夜里。確かそんな名前の淫魔だったはずだ。
「お、新歓以来だけど覚えててくれたんだ!嬉しいな~♡」
そう言って彼女は私の腕に絡みついてきた。
「あ、いや……その……」
(近い……!)
そんな私の様子を楽しむかのように、彼女は悪戯っぽく笑うと言った。
「むふふ♡ねぇねぇ、何調べてるの?淫魔生物学なんて単位でもとってないのに?」
「い、いや……これはその……」
どう答えるべきか迷っていると彼女はくすりと笑みを零した。
「ん~~~、バイトでカテキョでもはじめてぇ、その家に行ったら乳魔だった!……ってとこかなぁ?んふふ♡図星でしょ?」
「え……な、なんでそれを」
思わず動揺してしまう。しかし彼女はそんな私の様子を見てくすくすと笑った。
「なんとなく♪人間でも微弱な電波は出してるから♡そういうのに敏感になるんだよね~……。ヒトが多いとことかケッコーしんどいし」
だから図書館に?そんなことを考えているうちに彼女はずいと顔を寄せてきた。
「本人に聞けばいーじゃん?なのに本から知識を得ようとするなんて……むっつりスケベだな~♡」
「う……」
図星を突かれ何も言えないでいると、彼女は私の耳元に顔を寄せると囁いた。
「ね、どんな娘?乳魔だったら……おっぱいだよねえ♡わたしも結構自信あるけどアレは
反則でしょ!♡ おっぱい好きってゆー男は多いけど……アレは次元が違うって感じ~♡」
「ちょ、ちょっと。そんなじゃないですって」
慌てて否定するも彼女はにやにやとした笑みを浮かべていた。そして上目遣いにこちらを見ると言ったのだ。
「そ・ん・な・の?んふふ♡じゃあ……どんなの? 」
「それは……」
(まずい、この目は)
淫魔特有の瞳。獲物を狩る獣のそれだ。
私は慌てて彼女から離れようとするが遅かったようだ。腕をがっしりと掴まれてしまった。
「ね~え~教えてよ~♡わたし気になるな~」
そのままぐいぐいと迫ってくる彼女。その豊満な胸が押し付けられ、理性が蕩けそうになる。
こちらのうなじに顔をうずめ、すんと匂いを嗅ぐ。
「ん……マーキングされてる……ふたり?……なんだ、もう手ぇつけられてんだ。つまんないの」
ぼそりと呟いた後、彼女はぱっと離れた。
「まあいいや、悩める子羊くん♡知りたい事、なんでも教えてあげる♡」
「え……いやでも」
困惑する私に彼女はにっこりと微笑むと言った。
「いーのいーの♡別に搾り取ってやろうとか、そんなつもりじゃないしぃ。ただちょっと……興味あるだけ♡」
テーブルの向かいに腰かけて胸を机の上にどっかり載せて「さ、なんでも聞いてよ♡」
と彼女は言った。
先程と違ってフェロモンは明確に抑えられているし、距離をとれば意識から外れるので会話に集中できそうだ。
「良いの?淫魔の人がそんな事言って」
ギブアンドテイク、という言葉が淫魔は好きだと言う。対価を得るためには相応の報酬を、という考えが染みついているのかもしれない。
(そのせいで僕は困って居るんだけど……)
「いーのいーの♡淫魔なんて言ってもさあ、別に大した事してないしさ」
気楽に笑う彼女を見ながら、私はこれまでのことをざっくり話した。
家庭教師で行った先が乳魔の家であったこと、聖乳魔女学園の生徒で非常に賢いこと。スキンシップ的な問題で困った事態になっていること。
「ふ~ん……なるほどなるほど。セイジョの子かあ、ガチお嬢様じゃん。お嬢様のおっぱいはやっぱり違う?♡」
「いや……その、まあ、そんなじゃ……」
彼女の言葉に思わず口ごもってしまうと彼女はにやにやと笑った。
「あ~♡や~らしぃなぁ♡お嬢様学校でも乳魔は手が早いんだぁ?んふふ♡」
「いや、その…………」
否定できないのが辛いところだ。
「ま、いーや。セイジョじゃフツーに志望校は万魔秩満国際大学あたり?」
……信じられないほど酷いネーミングセンスの大学名だ。
「そんなのが本当にあるんですか……?」
思わず尋ねると、彼女はぶすっとした表情を浮かべた。
「……淫魔だけが入れるこの国の最高学府なんですけどお?」
「は、はあ」
彼女の憤りがいまいち理解できず困惑してしまう。
「まあHP検索しても出てこないし赤本もないから人間くんは存在知らないかもねえ。淫魔はみんなソコ目指してベンキョーすんの。わたしは勉強なんてしないからココだけど」
さも当然といった様子で言う彼女に、思わず言葉を失う。
(この大学でも……最難関なんですが、それは……)
「まあ、淫魔も乳魔も居るだけでサキュネの基地局やれるから働く必要なんて無いんだけどねえ」
サキュネ、サキュバスネットワークの通信は文字通り淫魔がそれを担当する。彼女らは個人でアクセスポイントのようなものなのだ。
膨大な電力も敷地も要らずに居るだけで通信基地局になれる上に従来の通信とは比べ物にならないほど速く通信安定しているというのだから、その有用性は計り知れない。
「つまり……勉強しなくても大丈夫、と?」
彼女は頷いた。そして溜め息混じりに呟く。
「そーゆーとこあるんだよねえ淫魔ってさあ……頭いいとか悪いとかじゃないというかなんというか。食うに困らなければ何処までも堕落するのもいれば、その逆もいる。淫魔はそういう種族なワケ。で……そんなお気楽種族がさ、勉強して大学行くのっておかしいかもしんないけど、でも……ね?」
彼女はそこで言葉を止めると、じっと私を見つめた。その目は真剣そのもので思わず息を飲むほどである。
「淫魔だって、夢があるんだよ」
「……そう、なんですか」
「うん!だから……さ。キミはその子に勉強教えてあげたいんでしょ?音を上げずに本で淫魔について勉強して、そのこに寄り添いたいと思ってる……だったらさあ」
彼女はにっこりと笑って言った。
「淫魔のこと、いっぱい勉強しないとね?♡人間くん♡」
紫煙のように甘い吐息をふうっと吹き掛けられ、私はぞくりとする。
「は、はい」
(……この淫魔の誘惑にも抗えるようにならないと)
そう改めて決意するのだった。
◇
通常淫魔と呼ばれるのは([i:Succubus alatus])と呼ばれる種の事だ。
乳魔は([i:Succubus magnaubera])と呼ばれる。文字通り『おおきな乳房の』サキュバス、と言う学名の通り乳魔は乳房が非常に大きく、性成熟すると発達した乳腺からは一日20L近い母乳を分泌する。
性格は非常に温和で、人間に対しても友好的。
その温和な性格は淫魔の性としてはかなり珍しく、乳魔と人間は古くから性的な関係を持っている事が多い。
「ま、簡単に言ったら母性がすんごいのよ。好みのオスはみんな自分の子供ってぐらいにね」
紅瀬さんは髪を指先でいじりながら言った。
「乳魔は独占欲が強いから、自分の『子供』を他のメスにとられたくないワケ。だから人間のオスをおっぱいで甘やかして、自分から離れられないようにすんの」
「なるほど……」
確かにあの乳圧は凄まじいものだった。しかし自分はあくまで家庭教師であって、綾乃さんも美夜さんも冗談半分でからかっているだけだろうに。
「む、その顔は……信用してない顔だな?」
「いや、だって……個人によりけりでしょう?淫魔の人だって」
「ん~……ま、それはそうかもね。あくまで参考程度、と覚えときゃいいよ。だって、どんな風に人間のオスを『墜として』るかなんて、それぞれなワケだしさ」
「墜とし方……?」
疑問を口にすると彼女は楽しそうに笑った。
「例えば人間くんの場合なら~♡そのおっぱいでぱふぱふ♡されたとかさ、ほっぺにちゅーされたりとか……直接ミルクを飲ませられたりとか」
「なっ……」
想像しただけで顔が熱くなる。綾乃さんや美夜さんにそんな事をされたらと思うと……。
「あは、顔真っ赤だよ?んふふ♡」
彼女はにやにやと笑うと私の脚を尻尾の先端でつつく。
「っ……失礼」
私は咳払いをしてその場を誤魔化した。
「まっ、乳魔はわたしらと違って翼も尻尾もないから、人間くんをその気にさせるには直接スキンシップ取るしかないからねえ……フェロモンを近くで嗅がされたなら、そりゃ来るのもワケないってわけ。コントロールもあんまし上手くない子多いしね」
確かにあの甘い香りは危険だ。理性を溶かすには十分過ぎる。
「マスクをするのは対策の一つだけど……本気フェロモンはマスク程度じゃ防げないから」
「そう、なんですか?」
「うん。だから人間くんみたいな耐性ない子はイチコロってわけ。ま、でもそのおかげで淫魔と人間は昔から『仲良く』やってこれたワケだしさ。淫魔だって子孫繁栄のためにはなりふりかまってらんないってコトで♡」
「それは……そうでしょうね」
その歴史は知っていた。淫魔とは、言ってしまえば『雌性発生』の生物だ。
他種の精子が卵子に侵入することによって発生する限りなく単為生殖に近い繁殖方法。
人間の精液を求めるように進化した経緯は不明だが、淫魔は人間の精をエネルギーとして取り込むことができる。
淫魔の発するフェロモンは人間の理性を溶かし、性行為を強要する。彼女達にとってはごく自然なことだ。彼女達にとって食事でありコミュニケーションでもあるのだから。
そんな淫魔について少し考えていると、彼女はこちらをじっと見つめながら言った。
「ま……大事なのはわたしらも知性と理性があるってことよ。そんな狩猟本能で男狩りしてるワケじゃないってコト。そんなんだったら人間もわたしらもとっくに絶滅してるしね」
その言葉には一理あった。彼女達の祖先にも理性と知性はあるのだから、それこそ人間の雄は狩り尽されなかった。
淫魔だけになってしまったら絶滅するのは互いにとって理にかなっていないのだ。
「相手をその気にさせるのが上手ってだけ。いわばヒトにウケるやり方を知ってるだけだよ。モテは生存戦略に於いて重要なファクターだからねえ。淫魔だって、人間から学ぶコトはいっぱいあるワケよ」
「なるほど……勉強になります」
私は素直にそう答えた。すると彼女はにんまりと笑うと言った。
「んふふ♡かわいいなあ人間くん……その真面目さ、ますます気に入っちゃうよ」
「それはどうも……」
照れ臭くなって視線を逸らすと彼女はくすくすと笑った。
「ま、そんなワケだからさ?相手のペースに呑まれない、自分のスタンスでしっかり手綱握っとかないとね。人間くん、どう見てもその子らのペースに乗せられてるみたいだし」
「う……」
確かにそうだ。綾乃さんも美夜さんも、自分のペースで私を誘惑してくる。それに流されないよう気をつけなければ、また先日のようなことになってしまうだろう……。
「でもさ」
紅瀬さんは私を見て言った。
「人間くん、その二人におっぱい押し付けられても……イヤじゃないんでしょ?」
「……っ」
図星だった。あの柔らかさと温かさはどうしても忘れられそうにない。それに彼女達の甘い香りも……。
「ま、それは仕方ないよね~♡乳魔に迫られて嬉しくならないオトコはあんまりいないから」
「そうなんですか……?」
「うん。でも……それだけなら普通、そんなだらしない顔してないよ?」
「……っ!?」
思わず口元を隠す。それを見て彼女は楽しげに笑った。
「ほら図星じゃん?んふふ♡人間くんてばわかりやすいんだねえ……♪しかもお金持ち、玉の輿じゃん!」
「そ、それは……」
確かに貴嶺さんの家はかなりの資産家……。
紅瀬さんが言うには乳魔の家柄は総じて金銭的に恵まれた家になるそうだ。その環境にいれば必然的に教育も行き届き優秀な人材になる。
人間により近しかった分、得た知識と経験を活かして乳魔は今の地位を確立したのだろう。
「悪いコトじゃないと思うけどなあ。乳魔とお付き合いなんてコネもできるし、将来も安泰だし」
「それは、そう言うのは……ちょっと」
確かに彼女達は魅力的な女性達ではあるけれど、先生と生徒という立場を抜きにしても軽々しく付き合うべきではないと思う。
「お堅いなあ♡遅いか早いか、どの種にするかって話なだけじゃん?それは人間も一緒、誠実さだとかをいちいち考えてたら人生が窮屈だよ?♡」
「それは……」
確かに、そうかもしれない。しかし……それでもだ。
(僕はまだ彼女達のことをよく知らない。それなのにそんな関係になるなんて不誠実すぎるし……)
「ま、こっから先はキミ次第。失敗したらいつでも言ってね♡た~~~っぷり慰めてあげる♡」
紅瀬さんは妖しく微笑んだ。だがそれも一瞬の事、すぐに元の人懐っこい笑みに戻ると言った。
「じゃ、今日はここまでにしよっか?最後に大事なポイントだけね」
「はい。お願いします」
私は姿勢を正し、彼女に向き直った。彼女はにっと笑って言った。
「んふふ♡いいお返事です♪……淫魔のコト、ちゃんと知ってれば『誘惑』なんて怖くないから。特に乳魔はね……♡」
すっと机の下に消えた彼女が、私の脚の間に顔を近付ける。
「っ……」
思わず身構えると彼女はくすくすと笑った。
手を取って角を触らせてきたのだ。磨かれた艶めくような表面、そして滑らかな手触り。
「あは♡どう?わたしの角」
「……とても、綺麗です。それに……不思議な感触ですね」
その感触に思わず夢中になってしまう。すると紅瀬さんは嬉しそうに言った。
「でしょ?ビンカンだから絶対うかつに触らない事。電磁波で最悪死ぬから」
「え……!?」
慌てて手を離すと彼女はけらけらと笑い出した。
「あはは!冗談だってば、人間くんはかわいいなあもう♡でもホント危ないんだよ?角はね」
そう言って彼女は自分の角を指先でなぞる。
「これは淫魔でも乳魔でもいっしょ、角カバーしてるような子は特にね。あと乳魔は……」
滑るように身を乗り出して膝の上に座った彼女。その柔らかな感触と甘い香りに頭がくらくらする。
「あ、あの……」
戸惑う私に彼女は妖しく微笑む。そして私の耳元に微かな吐息を吹き掛けるように囁いた。
「……が……だから、……をすると……♡」
「……!そ、そうなんですか……」
その情報が正しいかどうかは
分からないが……しかし、今までにない知見だったことは確かだ。
「……んふふ♡また何かわからないコトがあったら……いつでも聞いてね?♡」
スマホが鳴ったかと思うと、アプリに彼女の連絡先が追加されていた。
ネットワーク経由で造作もなく機器を操作出来るのだ。淫魔の技術は、本当に進んでいる。
「ありがとうございます」
「んふ♡またね♡」
彼女はひらひらと手を振ると、煙のように消えてしまった。
◇
「先生、答え合わせして」
小問を解き終えた美夜さんがこちらに向き直るとそう言った。
あれから数回、授業を行ったのだが初日のようなトラブルもなく順調に進んでいる。
(杞憂だった、かな)
紅瀬さんの言う通り、私は淫魔を知らなさ過ぎた。ある程度の知識やアドバイスを教えて貰ったおかげなのか、それとも美夜さんが”人間の雄”に慣れてきたのか……。
「うん。じゃあ、採点するね」
「お願い」
彼女はそう言ってじっとこちらの手元を見る。
この学習能力の高さは美夜さんの天性の才能だ。
淫魔は人間よりも記憶力、計算能力に優れていると言われているが……彼女はその典型例だろう。
「うん、全問正解だよ」
「やった。じゃあ、次は……」
ぱらぱらと教科書を捲って次の問題へ進もうとする美夜さん。
「あ、待って」
私はそれを制止すると言った。
「ちょっと休憩した方が良いよ。集中が切れてきてない?」
淫魔の脳は処理能力が高い分放熱量も多い。角はその為に発達した器官だ。美夜さんはまだ成長途中、集中力も高くインプットも速いけれどその速度に処理能力が追いついていない。
「ううん……まだできるけど」
不服そうな彼女だが、やはり疲れているのだろう。勉強に関してはかなり集中出来ている分、その処理能力のギャップに彼女自身も戸惑っていそうだ。
「休憩を挟んだ方が効率良いからね、綾乃さんがお菓子を焼いてくれてるから一緒に食べよう」
脳の消費カロリーは人間よりずっと多いと言われている。その疲労を少しでもリフレッシュさせるために、綾乃さんはお菓子まで手作りしてくれていた。
「んー……」
美夜さんは少し不服そうだったが素直に従ってくれるようだ。きっと彼女なりに私との時間を大切にしてくれているのだろう。
クッキーをひとつふたつと食べたところで美夜さんが口を開いた。
「ねえ……先生」
「ん?なに?」
「……マッサージして」
「え?」
唐突なお願いに面喰らう。しかし美夜さんは真剣そのものだ。
「……だめ?私、今日全問正解」
確かに彼女は勉強の他にも色々と要求してきたけれど……マッサージは想定していなかった。
ベッドにうつ伏せになった美夜さんの胸が窮屈そうに潰れてその形をくっきりと浮かび上がらせている。
(初日の失敗は彼女のインプット能力に面白がって僕が教え過ぎた所為だ。熱暴走の一歩手前だったからだ。最近は大丈夫だし……)
「先生?」
美夜さんは不思議そうに私を見上げると、少し不満そうに言った。
「はやく」
「……いいよ、どこが凝ってる?」
「ぜんぶ」
「全部かあ……じゃあ、とりあえず肩の方からやっていくね」
美夜さんの肩に触れると彼女はぴくりと震えた。
「ん……」
凝り固まっているとは思えないほど柔らかい、しかし明確に筋肉だと分かる弾力を持った桃色の筋肉。
「どう?」
「うん……気持ちいい……」
彼女はうっとりとした声で言う。
(これはマッサージだから、大丈夫なはずだ)
私は自分にそう言い聞かせると美夜さんの身体をゆっくりと揉みほぐしていった。
肩から首の付け根までを丁寧に指圧する。そしてそのまま背筋を押してやる。あれだけの大質量を支える為に発達したのだろう背筋は畝のような筋肉がついていた。
「先生、そこいい……」
気持ちよさそうに呟く美夜さん。そんな様子を見ているとこちらもなんだか気分が和らいでしまう。
揉み応えが有る、どちらかと言えば人間より獣に近い曲線美をもっと堪能したくなってしまう。
「先生」
「ん?どうかした?」
「もうちょっと、強くしていいよ」
「……いいの?」
尋ねると彼女はこくりと頷く。そんな体勢で居るからなのか彼女の表情は伺いしれないが、髪の隙間から覗く耳は赤くなっていた。
「じゃあ……痛かったら言ってね」
そう言って私は指圧を強める、しかし美夜さんの口からは文句は出なかった。
「んっ……」
少し強めに押すと彼女の口から甘い声が漏れるが、それは痛みからではないようだ。
「ん、先生……そこ、もっと強くして……」
「うん。わかった」
私は指圧を強め、彼女の凝り固まった筋肉をほぐしていく。
「んっ……あ……」
彼女は時折声を漏らしながらも大人しくマッサージを受け入れていた。
「先生、腰も……」
「うん」
私は美夜さんの言葉に従い、彼女の腰回りを指圧する。すると彼女はまた小さく声を上げた。
「んっ……あ、そこいい……」
「ここ?」
私が尋ねると彼女はこくりと頷く。座りっぱなしなのもあるだろう、見た目よりここが凝りやすいらしい。「あ、ん……先生……」
美夜さんはすっかり蕩けた声で私を呼ぶ。
「どうしたの?どこか痛かった?」
私がそう尋ねると彼女は少し恥ずかしそうに言った。その声色は今までにないくらい甘くて、そして熱っぽい。
「……脚も、おねがい」
「……わかった。痛かったらすぐに言ってね」
「うん……」
美夜さんは素直に頷く。お尻もとか言い出さないだけマシか……。
「じゃあ、始めるよ」
私は美夜さんの脚に手を這わせる。
彼女の肌はすべすべで柔らかいが、その筋肉の畝ははっきりと分かる。
ふくらはぎをゆっくりと揉みほぐしていくと彼女は小さく吐息を漏らす。
「んっ……あ……」
上半身を思えば細いぐらいなのに、筋肉が緻密に張り巡らされた下肢。
「先生、そこ……いい……」
美夜さんは切なげに呟く。
「ん?もっと強くする?」
私が尋ねると彼女はふるふると首を横に振った。
「違うの……それは、気持ちいいけど……でも、そうじゃなくて」
「うん?」
「脚、じゃなくて……内腿も、揉んで欲しいの」
美夜さんは恥ずかしそうに言った。
「あ、うん……いいよ」
私は少し動揺しながらも内腿に手を這わせる。
短めのスカートのせいか、眩しいほどに白い彼女の脚は付け根の近くまで露わになっている。その太腿に指圧を加えながら、私は彼女の表情を盗み見た。
美夜さんは枕に顔を埋めている為その表情は見えないが、耳や首筋まで真っ赤になっている。
(……)
これはマッサージだ。だから何もおかしい事はない。
しかし、彼女の体温が上がっていくのを感じると妙な気分になってしまう。
「そろそろ終わりにしようか」
「ん……もっと……もっとして」
「でも、これ以上は……休憩になったから……ね?」
私がそう言うと美夜さんは不満げに言った。
「やだ、もっと……」
ごろんと仰向けになった彼女は、全身を発条のようにしならせて起き上がる。
そして私をベッドに引き込むとぎゅっと抱きしめて来た。
「ちょ、ちょっと!?」
乳肉の重石に頭を押さえつけられて息が詰まる。
「もっと、もっとして……」
ぐりぐりと私の顔に胸を擦りつけながら美夜さんは言う。
(ああもう……やりすぎたんだっ!リラックスしすぎた僕のバカ!)
胸肉で圧迫されながらもどうにか頭をずらすことも出来ない。熱いぐらいの温度と、むせ返るぐらいに濃い美夜さんの香り。
ブラジャーの先端がじんわり湿り気を帯び始めているあたり、もう限界なのだろう。
(こうなったら……!)
紅瀬さんから教わったアドバイスを試さざるを得なくなった。
体重から膂力まで、全てにおいて乳魔の美夜さんの方が勝っているのだ。
振り払う事は出来ない、このままなすがままにされる訳にはいかない。
「はぁ……♡はぁぁ……♡」
ぐにゅりと押しつぶされた乳肉の奥から声がする。その声色は切なげで、どこか苦しそうだ。
私は腕をなんとか彼女の背中に回して腰より下のある一点をぐっと押し込んだ。
「んん……ッ!?」
美夜さんの身体がびくんと跳ねた。
『乳魔はねぇ、退化した尻尾に敏感な神経が通ってるからそこ押してやればイチコロよ♡』
紅瀬さんの言葉を思い出す。
「ん……あ、やっ……!」
(よし、効いてる!)
マッサージの時も触らせたがらなかった理由がよくわかる。敏感過ぎる
から触られたくなかったのだろう。
こりこりと尾てい骨の辺りを押し込んでいく。
「あっ!や、あ……ッ!!」
美夜さんは私の頭を抱きしめながら悶えている。
その反応が面白くてつい何度も押し込んでしまう。
(しかし、これは……)
彼女の尾てい骨は、まるで性感帯のように敏感だ。
「あ♡あ……♡や、やだぁ……♡」
美夜さんは甘い声を上げながら、私の頭を胸に押し付ける。その先端はより湿り気を帯びていて……最早言い訳のしようもなくなっていた。
「うっ……あ……♡」
びくんっと跳ねた後、そのままベッドに寝転がってしまう美夜さん。
「はぁ……♡はぁぁ……♡」
荒い呼吸をしている彼女としても、想定外の責めだっただろう。
「美夜さん、大丈夫?」
そう聞くと彼女は顔を腕で隠したままでこくりと頷く。
「……いちおう、僕は勉強を教えに来てるんだからね?あんまりはしたない事は……」
「ん、わかってる……わかった、うん……」
美夜さんはそう言うと、腕で隠した顔の隙間からこちらを見上げる。
降参したからもうやめて欲しいという合図だろう、そう判断してベッドから下りて勉強机に向かう。
「勉強、再開しよっか」
そう言うと、彼女はベッドの上から恨めしそうにこちらを見つめた。
「意外とスパルタだね、先生」
「それは……うん。ちょっとやり過ぎたのはごめん……」
私は素直に頭を下げる。美夜さんは少し不機嫌そうに言った。
「もうあんなことしちゃダメだからね。反則だから」
「時と場合によりけりだけど……気を付けるよ」
「絶対だよ」
美夜さんは念を押すようにそう告げると、立ち上がって椅子に座る。
リフレッシュにはなったかも知れないが、漂う香りと湿り気は誤魔化せそうにない。
「先生」
そんな私の気持ちも知らずに、彼女は私を呼ぶ。
「ん?」
美夜さんは少し恥ずかしそうに言った。
「また……ご褒美にマッサージしてくれる?」
(これはもう、断れないな)
私はそう確信して頷いたのだった。