――洞天でのとある一日。
「空、今日のあなたの星の巡りは素晴らしいですよ。何か良いことが起こる予感がします。まあ、あなたの場合良いことのほとんどが私たち恋人たちとの愛の時間なのですけどね」
モナはそう言って旅人の腕に自分のそれを絡めてくる。黒いツインテールが旅人の腕にさらりと触れ、ピッチリとした服装越しに彼女の体温が伝わってくる。旅人はそんなモナの頭をそっと撫でた。
「じゃあ、モナ。今日もいいこと一緒に起こそうか」
「まあ。あなたという人は、本当に」
モナは顔をほんのりと赤くして、けれど嬉しそうに目を細める。その瞳は深い星空を閉じ込めたようにきらめいていた。
「ご主人様、本日の夕食は何になさいますか? 甘雨様が召し上がりやすいように、苦みのあるお野菜を多めにご用意しようかと存じます」
ノエルがエプロンの紐を結びながらそう尋ねる。銀色の髪が、洞天の柔らかな灯りを受けて輝いていた。旅人はそんな彼女の後ろから、そっと腰に手を回す。
「ノエル、今日も綺麗だ」
「ご主人様、お料理の途中ですよ」
そう言いながらも、ノエルは決して旅人の腕を振りほどかない。むしろ、ほんの少しだけ身体を旅人の方へ預けてくる。その仕草が、彼女の本心を何よりも雄弁に語っていた。
「ご主人様がそう仰ってくださるなら、わたくし、どんなお料理でも心を込めてお作りいたします」
「じゃあ、ノエルの気持ちが一番込もったやつお願いしようかな」
「はい。ご主人様に喜んでいただけるよう、精一杯努めさせていただきます」
その言葉は料理だけに向けられたものではなかった。旅人はその意味を正しく理解して、ノエルの耳元にそっと口づけを落とした。彼女の肩が、微かに震える。
「ノエル、今夜も、よろしく」
「……はい。ご主人様」
ノエルの返事は、いつもの丁寧な口調のままだった。けれどその声は、ほんの少しだけ震えていた。
「空! 今日ね、新しい歌を作ったんだ。聴いてくれる?」
「ああ、ぜひ聴きたいな」
「やった! じゃあ、ちょっと待ってね」
バーバラはそう言ってその場で小さく息を吸い込むと、静かに歌い始めた。その声はモンドの草原を渡る風のように爽やかで、けれどその奥には温かな愛情が込められていた。
歌い終わった後、旅人が拍手を送ると彼女は照れくさそうに笑って、それから少しだけ不安そうに旅人を見上げた。
「ねえ、空。私の歌、ちゃんと届いてた?」
「ああ。バーバラの歌は、いつも俺の胸にまっすぐ届くよ」
「……よかった。それじゃあ、これは空のためだけの歌だから。他の誰にも内緒ね」
バーバラはそう言って、旅人の胸にそっと顔を埋める。その体温が旅人の胸の奥をじんと熱くした。
スカイブルーの髪を静かに揺らしながら、甘雨は今日も洞天の縁側でうたた寝をしている。
旅人はそんな彼女の隣にそっと腰を下ろした。
「甘雨、風邪をひくよ」
旅人がそう囁くと甘雨はゆっくりと目を開けた。その瞳は、三千年を生きてきた仙人のものではなくただの恋する少女のものだった。
「空?ああ、私、また眠ってしまいました。すみません」
「謝らなくていいよ。甘雨の寝顔、綺麗だったから」
「もう、あまり恥ずかしい事を言わないでください……」
甘雨はほんのりと頬を染めてそれからそっと身体を起こした。その動作は、三千年を生きた仙人の血を感じさせるゆったりとした所作だった。けれどその表情は、どこか少女めいた照れを含んでいた。
「空。私、あなたと一緒にいるとどうしても眠ってしまうみたいです。きっと、安心するのでしょうね」
「それは光栄だよ。甘雨が安心できる場所に、俺がいられるなら」
「ええ。あなたは、私にとってそういう人です」
甘雨はそう言って、そっと旅人の肩に自分の頭を預けてくる。スカイブルーの髪が、旅人の腕にさらりと触れた。その温もりとそしてほのかに漂う花の香りが、旅人の胸の奥を静かに満たしていく。
◆◆◆
ニィロウとナヒーダが恋人になって次の日から、他の恋人たちの営みを目の当たりにする。
ある時はキッチンで、ノエルが後ろから犯されてた。
彼女は夕食の準備をしている最中で、旅人が後ろから近づいてきた時も最初は「ご主人様、今お料理の途中ですよ」と抗議していた。けれど旅人の手が彼女のスカートの中に滑り込むと、その抗議の声は次第に甘い吐息へと変わっていった。
「あっ、ご主人様っ、火がっ火を止めないとっ」
「大丈夫。俺が火加減を見てるから、ノエルは俺のことだけ考えて」
「そんなっ、無茶ですよっあぁっ」
ノエルの腰が旅人の動きに合わせて揺れる。銀色の髪が、汗ばんだ額に貼り付いていく。それでも彼女は手に持ったお玉を離さず、必死に料理を続けようとしていた。その健気な姿が、旅人の興奮をさらに煽った。
「ノエル、イッてくれ」
「ご主人様っ、わたくしっ、もうっあぁああっ!」
ノエルの全身が大きくしなる。膣がきゅうきゅうと締まり、旅人を搾り取ろうとする。けれど旅人はまだ射精しない。抜けば、熱い愛液がとろりと出てきて床を濡らした。それを見ていたモナの息が、さらに荒くなる。
「空、次は私の番ですよ」
「モナ、ちょっと待んむっ――」
「んんっ、んぁ……ぉはぁ……」
モナがそう言って、自分から旅人に近づいてくる。その瞳はすでに潤んでいて、ノエルに向かって腰を振る旅人に深く深く口づけを交わす。それに触発されるように旅人はノエルの中へと彼の精を解き放った。
ある時は廊下で甘雨が立ったまま片足を担がれて犯された。
旅人が通りかかった時、甘雨はちょうど自室から出てきたところだった。その手には、読みかけの書物が一冊握られている。旅人は何も言わずに彼女の前に立ちはだかると、そっとその片足を持ち上げた。
「空? あの、私、これから」
「甘雨、少しだけ付き合って」
旅人のその言葉に、甘雨は一瞬だけ戸惑った表情を見せてそれから静かに書物を廊下の台の上に置いた。その仕草が、彼女の答えだった。
「んっ、あぁっ、空っ、ここ、廊下ですよっ」
「誰も来ないよ。それに、甘雨が声を抑えればもっと静かになる」
「そ、それは、そうなのですけどっあぁっ」
甘雨は必死に声を抑えようとしていた。けれど旅人の抽送が深くなるにつれて、その努力は無駄になっていく。スカイブルーの髪が、廊下の壁に押し付けられて揺れた。彼女の内側は、三千年を生きた仙人の血を感じさせる驚くほど熱くそして柔らかかった。
「空っ、私っ、もうっ!」
「まだだ。甘雨、俺と一緒に」
旅人は甘雨の腰を支えながらより深く結合できる体位へと変えた。彼女の片足を高く掲げ、体重をかけるようにして押し込む。亀頭が子宮口に触れると、甘雨の全身が大きく震えた。
「あぁっ、空っ、そこはっだめっ」
「だめじゃない。甘雨、ここが一番感じるんだろう?」
「そ、それはっ、あぁああっ!」
甘雨の絶頂と同時に、旅人も彼女の最も奥へと精を放った。どくんどくんと脈打つように注ぎ込まれる熱い飛沫を、甘雨は子宮の奥で感じていた。彼女の全身が、大きな波に攫われるように痙攣しそしてゆっくりと弛緩していく。
ある時は寝室で、バーバラが子宮で調教された。旅人の寝室の大きなベッドの上で、バーバラは四つん這いになっていた。クリーム色のツインテールが、シーツの上に扇状に広がっている。旅人はそんな彼女の背後から、ゆっくりと自身を沈めていった。
「あっ、空っ、今日はっいつもよりっ」
「ああ。今日は、バーバラの一番奥まで届かせたい」
旅人のその言葉にバーバラの膣がきゅっと収縮した。彼女は、恋人たちの中で最も早く旅人のペニスを子宮の中へ受け入れることが出来た逸材だった。だからこそ、今日は最初から最後まで彼女の子宮を直接愛そうと決めていた。
「んぁっ、空っ、それっ子宮っ、来てるっ」
「ああ。バーバラ、受け入れて」
旅人の亀頭が、子宮口の狭い輪に引っかかる。抜こうとしても抜けず、子宮そのものが伸びて追従する。押し込めば、さらに奥へ入り込み亀頭の先端が子宮の天井を突き上げた。バーバラの全身が、びくびくと痙攣する。
「あっ、あっ、あっ、空っ、私っ、壊れちゃうっ」
「壊れない。バーバラは、もっと気持ちよくなれる」
旅人はそう言って、子宮の中でゆっくりと抽送を始めた。バーバラの口から、普段は決して出ないような声が漏れる。彼女は必死にシーツを掴み、その快感に耐えようとしていた。けれどその努力は、無駄だった。
「空っ、私っ、もうっ何回もっ、イッてるっ」
「ああ。俺も、そろそろ」
旅人はバーバラの子宮の最も奥へと、精を放った。どくんどくんと脈打つように注ぎ込まれる熱い飛沫を、バーバラは子宮の奥で感じていた。彼女の全身が、大きな波に攫われるように痙攣しそしてゆっくりと弛緩していく。旅人はそんな彼女の内側にしばらく留まって、再びその律動を不規則に再開して彼女を啼かせ続けた。
◆◆◆
ニィロウとナヒーダが恋人に加わって共に子作りを日々繰り返すようになって一カ月が経過した。旅人がハーレムを作るようになって約二カ月になる。
洞天の朝は、どこか甘い空気を孕んでいる。
夜の情交の余韻が、まだ廊下の隅や窓辺の帳に溶け残っているかのようだった。旅人は広間の長椅子に腰かけ、朝の果実茶を一口含みながら昨夜の出来事をぼんやりと思い返していた。ニィロウの赤毛が、暗がりの中でゆらゆらと揺れていたこと。彼女の腰の動きが、まるで舞台上の舞のように艶めかしかったこと。そして、その熱に誘われるまま自分も彼女の最奥を何度も突き上げてしまったこと。
「……今日も、また」
小さく呟いて旅人は茶器を置いた。身体の奥に、まだ彼女の温度が残っている気がした。
そこへ、廊下から軽やかな足音が近づいてくる。ノエルだ。銀色の髪をふわりと揺らし、今日もまた別の意匠のメイド服を身につけている。胸元の白いフリルが、呼吸のたびにささやかに震えていた。
「おはようございます、ご主人様。昨夜も遅くまでお勤めでしたね。今朝は何か温かいものをお持ちしましょうか」
「おはよう、ノエル。気を遣わせて悪いな。それじゃあ何か軽いものを頼めるか」
「かしこまりました。ご主人様のお口に合うよう、今日はふんわりと仕上げた薬膳粥をご用意いたします」
ノエルはにこりと笑うとそのまま食堂の方へと歩いていった。その背中を見送りながら、旅人はまた一口果実茶を啜った。甘さの中にほんの少しの渋みが残る。それが妙に今朝の気分に合っていた。
やがてモナが広間へと入ってきた。深い星空を閉じ込めたような瞳は、朝の光を受けてきらめいている。彼女は旅人の向かいに腰を下ろすと、ふっと小さく息をついた。
「おはようございます、空。今朝のあなたはやけに色気を帯びていますよ。昨夜、ニィロウさんとずいぶん励んでいたでしょう」
「おはよう、モナ。見てたのか」
「ええ。洞天の中では、あなたが誰かと愛し合っている気配を感じやすいのです。私の星読みよりも、よほど明確に」
モナは悪戯っぽく笑った。黒いツインテールが、肩の動きに合わせて左右に揺れる。旅人は少しだけ気まずくなって、目を逸らした。
「それで、あなたは大丈夫なのですか。ニィロウさんに搾り取られて、朝から呆けているのでは」
「搾り取られた、なんて人聞きが悪いな。でもニィロウの腰使いには本当に敵わないよ。あれはもう、舞の域を超えてる」
「でしょうね。彼女はズバイルシアターでも指折りの踊り子ですもの。あの腰の動き、並大抵の男なら何秒も持たないでしょうに。……まあ、あなたは並大抵ではありませんけど」
モナはそう言って、自分の胸元に手を当てた。ピッチリとした衣装越しに、小ぶりな胸の膨らみがうっすらと浮かんでいる。旅人の視線がそこに落ちたのを、モナは見逃さなかった。
「……朝から何を見ているのですか。えっちな目をした旅人さんですね」
「モナが見せたんだろ」
「人聞きが悪い。私はただ、こうして胸に手を当てただけです」
「それがもう十分、誘ってるように見えるんだが」
旅人がそう返すと、モナはふいと横を向いた。けれどその耳はほんのり赤くなっている。彼女は照れるとまず耳に出る。それも旅人が何度も抱いてきた末に知った、彼女の素直な反応だった。
やがてバーバラが、明るい声を響かせながら入ってきた。クリーム色のツインテールを弾ませ、その手には小さな花かごがある。中には洞天の草原で摘んだのだろう、色とりどりの花が無造作に盛られていた。
「おはよう、空! モナさんも! 今日はねすごくいい匂いの花が咲いてたの。それで、みんなの部屋に飾ろうかなって思って」
「おはよう、バーバラ。それはいいね。ノエルが喜びそうだ」
「でしょ! ノエルってお花好きだもんね。それに、甘雨さんにも分けてあげようかな。清心はなかったけど、甘い匂いの花なら喜んでくれるかも」
バーバラは無邪気な笑顔でそう言った。その笑顔は、モンドの教会に差し込む朝日のように明るい。けれど旅人は知っている。この少女が、夜になればあの清らかな修道服を脱ぎ捨て自分に抱かれることを望んでくることを。そしてその内側に、どれほど熱い想いを秘めているのかを。
「そうだ、空。甘雨さんまだ寝てるみたい。最近すごく眠たがりで、朝もなかなか起きられないみたいなの」
「ああ、妊娠中だからな。無理に起こさなくていいよ。後で俺が様子を見てくる」
「うん。それなら安心。甘雨さん、空のお子さんを宿してるんだもんね。……なんだか、私まで嬉しくなっちゃう」
バーバラはそう言うと、自分のお腹にそっと手を当てた。まだ何も宿っていないはずのそこを、慈しむように。旅人はその仕草を見て胸の奥が熱くなるのを感じた。
彼女たちはみな旅人との子を望んでいる。それがいつになるかは、それぞれの身体と心の準備次第だ。けれど彼女たちがこうして日々を共に過ごし、愛を重ねていく中でいつか必ずその時が来る。旅人もまた、その日を心待ちにしていた。
朝食の席には、ニィロウも合流してきた。長い赤毛を緩くまとめ、昨夜の情事の名残か少し眠たげな目をしている。彼女は旅人の隣に座ると、こてんとその肩にもたれかかった。
「うぅ……おはよう、空。今日はなんだか身体が重いの。昨日の夜、はしゃぎすぎたのかも」
「おはよう、ニィロウ。……俺のせいだな。無理させた」
「ううん。空のせいじゃないよ。私がもっと、空を感じたいって思ったから。でも今日はゆっくりするね」
ニィロウはそう言うと旅人の肩に頬を寄せた。その温もりが、朝の空気の中でじんわりと広がっていく。旅人はそっと、彼女の髪を撫でた。赤い髪は昨夜の汗を洗い流した後も、しっとりと艶やかだ。
ノエルが運んできた薬膳粥は、優しい味がした。身体の奥から温まっていく。食卓を囲む恋人たちの会話は、たわいもなくそれでいてどこまでも穏やかだった。
甘雨もまた、眠たげな目をこすりながら広間へやって来た。スカイブルーの髪が朝日に透けて、まるで水面のように揺れている。彼女は旅人の姿を認めると、ゆっくりと微笑んだ。
「おはようございます、空。それに、モナさんノエルさん、バーバラさんも。今朝はなんだか皆さんのお顔が眩しく見えます」
「おはよう、甘雨。起きて大丈夫か?」
「ええ、問題ありません。少し、寝坊してしまいましたけれど……」
「妊娠してるんだ気にしなくていい。半仙の甘雨の妊娠状態は俺たち全員何もわからないんだ。だから幾らでも寝ていいんだ。無理はするなよ」
旅人の気遣いに、甘雨は頬をほんのりと染めて頷いた。
その時、廊下からぺたぺたと小さな足音が聞こえてきた。
現れたのは、寝間着姿のナヒーダだった。若草色のメッシュが入った白い髪が、まだ寝癖でふわりと跳ねている。彼女は目をこすりながら、ふらふらと旅人の方へ歩いてきた。その様子は、五百年の時を生きる知恵の神とは思えないほど、あどけない。
「おはよう……空。私、今日はまだ起きるのが少し辛いの」
「おはよう、ナヒーダ。こっちにおいで」
旅人が両手を広げると、ナヒーダは素直にその腕の中へと入り込みちょこんと彼の膝の上に乗った。小柄な彼女の身体は、旅人の膝にすっぽりと収まる。旅人はその背中を優しく支え、まだ眠たげな彼女の頭をそっと撫でた。
「おはようございます、ナヒーダ様。今温かいお茶をお持ちしますね」
「ありがとう、ノエル。助かるわ」
ノエルが軽やかに給仕へ向かう。モナがナヒーダの顔を覗き込み、柔らかな声をかけた。
「ナヒーダ様、昨夜はよくお休みになれましたか? 空と夜更かししすぎては、神様といえど身体に響きますよ」
「ふふ。あなたに言われると、空と夜更かしする口実が減ってしまうわね。大丈夫よ。ちゃんと眠れたから」
「そうですか。それは良うございます」
モナはくすりと笑い、その場に腰を下ろした。
バーバラも近づいて、ナヒーダの白い髪をそっと整える。
「ナヒーダ様、寝癖ついてる。私が直してあげるね。それと、朝ごはんはいっぱい食べようね。今日のノエルのお粥、とってもいい匂いなんだから」
「ありがとう、バーバラ。あなたの手は温かいわね」
「えへへ。そうかな?」
バーバラは嬉しそうに笑い、ナヒーダの髪を丁寧に梳き始めた。甘雨もまた、そんな二人の様子を微笑ましく見つめながら、旅人の隣に静かに座る。
「空。ナヒーダ様は、こうして膝の上に乗せてもらうのがお好きなのですね」
「そうみたいだ。朝は特に甘えん坊になるんだよ」
「ふふ。なんだか、私まで甘えたくなってしまいます」
甘雨はそう言って、そっと旅人の肩に頭を預けた。スカイブルーの髪がさらりと流れ、彼女の体温が伝わってくる。旅人は反対の手で甘雨の背中を支え、二人を同時に抱きしめる形になった。モナがそれを見て、少しだけ唇を尖らせる。
「あら、ずるいですよ甘雨さん。私も今すぐ空の傍に行きたくなってしまいました」
「モナさんも、どうぞこちらへ」
「……では、お言葉に甘えて」
モナは立ち上がると、旅人の背中側へと回りその背にもたれかかるようにして座った。黒いツインテールが旅人の腕に触れ、ほのかに彼女の香りが漂う。
ノエルがお茶を運んできて、その光景を目にすると目を輝かせた。
「まあ。皆さん、ご主人様にぴったりと寄り添われてとても幸せそうです。わたくしもご一緒してよろしいでしょうか」
「もちろんだ。ノエルもおいで」
旅人がそう言うとノエルは嬉しそうに頷き、旅人の正面にちょこんと正座した。バーバラもナヒーダの髪を整え終えると、旅人の隣にぴたりと寄り添う。
「えへへ。みんなで空にくっつくの、なんだか楽しいね」
「本当に。こうしていると、心がぽかぽかします」
「全くです。この洞天が、ますます居心地の良い場所になりますね」
甘雨、バーバラ、モナが口々に言う。ナヒーダは旅人の膝の上で小さくあくびをしながらも、満足そうに目を細めていた。
「空の膝は、世界樹の葉の上よりも安心するわ。ここで二度寝をしてしまいそう」
「いいよ。食べるまで少し寝てても。ノエルの朝食ができたら起こすから」
「ううん。私もみんなと一緒に食べたいから、起きてるわ」
ナヒーダはそう言って、旅人の胸に背中を預けた。旅人はその小さな身体を支えながら、改めてこの空間の温かさを噛みしめる。
朝の光が、洞天の中を満たしていく。草原を渡る風が窓の向こうで草を揺らす音がする。この静かで、けれど確かな幸福に満ちた時間。旅人にとって、この場が何よりも大切な居場所になっていた。
やがてノエルが立ち上がり、朝食の最後の仕上げに取りかかった。
「それでは皆さん、もう少々お待ちくださいね。今朝は薬膳粥と、それから洞天の畑で採れたお野菜の和え物をご用意しました。ご主人様がしっかり元気になれるよう、精をつけていただける献立です」
「ノエルは本当に気が利くよ。毎朝ありがとう」
「もったいないお言葉です。ご主人様や皆さんが美味しく召し上がってくださるのが、わたくしにとって一番の幸せですから」
ノエルはそう言って、台所へと向かっていった。その後ろ姿を見送りながら、モナがぽつりと呟く。
「ノエルさんは、本当に尽くすことが好きですわね。あの献身ぶりには、私も頭が下がります」
「ノエルは、誰かのために動くことが自分の喜びなんだろうな。俺も、彼女のその真っ直ぐさにはいつも助けられてる」
「ええ。それに、ああ見えて情熱的なんですもの。夜になると、ご主人様へのご奉仕に余念がありませんから」
モナがにやりと笑う。旅人は少しだけ気まずそうに視線を逸らした。バーバラがそれを見て、くすくす笑う。
「空、照れてる。でもノエルのあの感じ、私もわかるな。空のために何かしてるとすごく幸せなんだよね」
「俺も、お前たちに何かをしてる時が一番落ち着くよ。だから、お互い様だ」
「うん。そうだね」
バーバラは嬉しそうに旅人の腕に抱きついた。甘雨も静かに微笑み、旅人の肩に頭を寄せたまま目を閉じる。
やがて、ノエルが朝食を運んできて全員が食卓についた。湯気の立つ薬膳粥の優しい香りが、広間に広がる。
今まさに食事を開始しようとしたその時、モナが手を上げてそれを止めた。
「皆さん、少しお待ちください。空そして皆さんに、どうしても先にお伝えしたいことがあるのです」
モナはそう言って深く息を吸った。黒いツインテールが、その肩の動きに合わせて静かに揺れる。深い星空を閉じ込めたような瞳が、真っ直ぐに旅人を見つめていた。
「重大発表があります」
一呼吸おいて、モナは言った。
「妊娠できました」
その言葉が、洞天の朝の空気をふわりと震わせた。旅人は一瞬、何を言われたのか理解できずただモナの顔をじっと見つめ返す。彼女の頬はほんのりと桜色に染まり、その瞳は誇らしさと照れとそして何よりも深い愛情に潤んでいた。
「……モナ、今、なんて」
「ですから、妊娠できました。私のお腹にあなたの子が宿ったのです。今朝、星読みの後に自分の身体の巡りを確かめて確信しました。間違いありません」
モナはそう言うと自分の下腹部にそっと手を当てた。まだ外から見てわかるはずもない、けれど確かにそこに新しい命が宿っている。その仕草があまりにも愛おしくて、旅人は思わず立ち上がっていた。
「モナ……本当に?」
「ええ。私があなたに嘘をついたことがありますか。星読みの結果も、私の直感も、そしてこの身体の内側から聞こえる声も全部が同じことを告げています。私の子宮に、あなたの子供が宿ったと」
旅人はゆっくりとモナの隣に歩み寄ると、彼女の身体をそっと抱きしめた。モナは一瞬だけ驚いたように身を強張らせたが、すぐに旅人の胸に顔を埋めて小さく笑った。
「……嬉しいのかどうか、ちゃんと言葉にしてほしいのですが」
「嬉しいに決まってる。嬉しすぎて、なんて言えばいいのかわからない」
旅人の声は少し震えていた。モナの華奢な身体を抱きしめる腕に、自然と力がこもる。彼女の中に自分の子が宿っている。その事実が、これほどまでに胸を熱くするものだとは旅人自身も知らなかった。
「モナ、ありがとう。俺の子を宿してくれて」
「ふふ。お礼を言うのはまだ早いですよ。これから十月十日、私の身体を大切にしてくださいね。そして生まれてくる子がどんな運命を辿るのか、この偉大なる占星術師がしっかりと見守ってあげるのですから」
モナはそう言って旅人の胸の中で誇らしげに微笑んだ。その笑みは、いつもの神秘的な占星術師のものではなくただ愛する人に妊娠を告げた一人の女性の、柔らかくて幸せそうなものだった。
その光景を見ていたノエルが、両手を口元に当てて目を潤ませる。
「モナさん……おめでとうございます。ご主人様の赤ちゃんが、モナさんのお腹に……。わたくし、嬉しくて涙が止まりません」
「ノエルさん、ありがとうございます。あなたにもきっとそう遠くないうちに同じ喜びが訪れますよ。空のことですから、すぐにでもあなたのお腹にも命を宿らせようと張り切るに違いありません」
「も、もう、モナさんったら……!」
ノエルは真っ赤になって俯いたがその口元は嬉しそうにほころんでいた。バーバラもまた、目を輝かせてモナの元へ駆け寄る。
「モナさん、おめでとう! すごいすごいよ! モナさんのお腹に空の赤ちゃんがいるんだね! 私、なんだか自分のことみたいに嬉しい!」
「ありがとうございます、バーバラさん。あなたは本当に素直で可愛らしいですね。空もきっと、あなたのお腹にも早く子を宿したいと思っていますよ」
「えっ、そ、そうなのかな……。空、そうなの?」
バーバラが期待と照れの入り混じった瞳で旅人を見上げる。旅人は少しだけ困ったように笑って、彼女の頭をそっと撫でた。
「ああ。バーバラとも、いずれ必ずな」
その言葉に、バーバラは顔を真っ赤にしてそれでも嬉しそうに何度も頷いた。甘雨もまた、静かに席を立ちモナの前まで歩いてくると、その手をそっと握った。
「モナさん、おめでとうございます。新しい命が宿るということは、本当に尊いことです。どうかお身体を大切になさってください。私も、同じ身としてこれからはもっと色々とお話しできることが増えるのが嬉しいです」
「甘雨さん……。ええ、こちらこそ、これからはお互い母になる身として支え合いましょう。あなたの経験を、たくさん教えてくださいね」
モナは甘雨の手を握り返し、二人は静かに微笑み合った。ナヒーダもまた、旅人の膝の上から降りるとモナの前に立った。その深い緑の瞳が、モナのお腹をじっと見つめる。
「モナ。あなたのお腹の中に、もう新しい命が芽生えているのね。とても温かい波動を感じるわ。空とあなたの子……きっと、とても強い運命を持った子になるのでしょうね」
「ナヒーダ様にそう言っていただけると、心強いです。どうかこの子の運命を、時々でいいので見守っていただけますか」
「ええ、もちろんよ。この子が生まれてきたら私も精一杯、その成長を手助けするわ。だってこの子は空の子であり、そしてこの洞天で生まれる新しい家族の一員で、言わば私たちの子供なのだから」
ナヒーダはそう言ってモナのお腹にそっと手を当てた。その小さな手のひらが、まだ何も見えない命を確かめるようにゆっくりと動く。
旅人はその光景を胸がいっぱいになる思いで見つめていた。甘雨に続いて、モナまで妊娠した。自分の子が確かにこの世界に増えていく。その事実が、旅人にとって何よりも大きな喜びだった。
「モナ」
旅人は改めて彼女の名を呼んだ。モナが顔を上げる。その瞳は、期待と愛情に満ちてきらきらと輝いている。
「改めて、おめでとう。そしてありがとう。俺はお前と、この子のためにこれからもずっとそばにいる。何があっても、お前たちを守る」
「ええ。信じています。あなたはいつだって、そうやって私の予言を越えて私の想いを叶えてくれる人ですから」
モナはそう言って旅人の胸にそっと身を寄せた。洞天の朝の光が、二人を優しく包み込む。ノエルバーバラ、甘雨、ナヒーダそしてニィロウも、それぞれの場所からその幸せそうな二人の姿を微笑ましく見守っていた。
朝食の席はしばらくの間、モナの妊娠を祝う温かな空気に包まれていた。湯気の立つ薬膳粥は、いつの間にかすっかり冷めてしまっていたけれど、そんなことは誰も気にしていなかった。
旅人は、モナの隣に腰を下ろすと彼女の手をそっと握った。モナはその手を握り返し、ほんの少しだけ照れくさそうに笑う。
「空。これからは、私のことも、甘雨さんのことも二人分の命を支えることになるのですよ。覚悟はできていますか?」
「ああ。むしろ、これからが本番だと思ってる。俺はお前たち全員と、その子供たちを幸せにするためにこの世界で生きていく」
旅人の言葉に、モナは満足そうに目を細めた。
「ふふ。それでこそ、私が選んだ男です。さあ皆さん。せっかくの朝食が冷めてしまいました。温め直しますから、少し待っていてくださいね」
ノエルが慌てて立ち上がり、台所へと向かう。その背中を見送りながらバーバラがにこにこと笑った。
「今日は、なんだかとってもおめでたい日だね。空モナさん。本当におめでとう。私も、いつか空の赤ちゃんを宿せるようにもっともっと頑張らなくちゃ」
「バーバラはそのままで十分可愛いし、焦らなくていい。お前のペースでゆっくりでいいんだからな」
「うん……。でも、やっぱり私も空の子供が欲しいな。モナさんや甘雨さんみたいに、お腹の中に空との赤ちゃんを感じられたらどんなに幸せだろうって、前から思ってたの」
バーバラはそう言って、自分の下腹部をそっと撫でた。その仕草は昨夜の草原での行為を思い出させるほどに切実で、けれどあどけなくもあった。旅人は彼女のそんな想いを受け止めるように、そっとその肩を抱き寄せた。
「大丈夫。お前にも必ず、その時が来る。俺がちゃんとお前の望みを叶えるから」
その言葉にバーバラは嬉しそうに笑って、旅人の胸に顔を埋めた。甘雨もまた静かに二人の様子を見守りながら、自分のお腹に手を当てていた。ニィロウは眠たげだった目をすっかり覚まして、モナの隣に駆け寄っていく。
「モナ、おめでとう! すごいねお腹に赤ちゃんがいるなんて。私、踊りでお祝いしたいくらいだよ!」
「まあ、ニィロウさん。それは素敵ですね。ぜひ今度お祝いの席で、あなたの舞を見せてください。きっとお腹の子も喜びます」
「うん! 空とモナの赤ちゃんのためなら、いくらでも踊るよ。それに私もいつか空の子供が欲しいから、その時はまた踊るんだ」
ニィロウの無邪気な言葉に、その場の空気がふわりと和らぐ。ナヒーダもまた、静かに微笑んでいた。
こうして、洞天の朝は、新たな命の報せとともにいつもより一層温かく、賑やかに過ぎていった。旅人は改めて自分の周りにいる恋人たちの存在の大きさを噛みしめながら、これから迎えるであろうもっと多くの命と、もっと深い愛の日々に思いを馳せていた。
賢者タイムで読み切った人へ。どんな部分が癖に刺さりました?
もし、こんなシチュエーションで子作りしてる女の子の姿が見たいというのがあれば全部読んだ詳しい感想と一緒により詳しく書いてあったら、
もしかしたら参考にするかもしれない。
でも感想とかよりお気に入りにしてくれる方が嬉しいので、感想が面倒な人は、お気に入りにしてくれると嬉しいです。
さて、次の恋人、だーれだ……サイコロころころ~……
やっぱり簡単にコスプレエッチできる理由が欲しいよな