※この作品はR-18です。

旅人を愛する孕神たちの純愛   作:ニコネーム、フラフラ

19 / 20

絹のように滑らかな生地が指先をすり抜けていく。

織り目一つ一つに光が宿り、まるで水の都の運河を映したかのように揺らめいた。

千織はその布を愛おしげに撫でながら、けれどその瞳の奥にはただの職人ではない、

一人の女としての熱が灯っていた。


フォンテーヌのデザイナーと民族衣装1(千織)

 

 フォンテーヌの朝は、どこか潮の香りを孕んでいる。運河を渡る風が、石畳の路地をすり抜け商店の看板をかたこと揺らしていく。旅人はパイモンと共に、その風の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。モンドや璃月とはまた違う、水の都独特の空気。しっとりとしていてそれでいてどこか華やいだ、香水的な何かが混ざっている。

 

「おいら、フォンテーヌって久しぶりだぞ。千織の店ちゃんと見つかるかな」

「大丈夫さ。前に行った時も、あの看板は目立ってたからな」

 

 旅人は苦笑しながら記憶の中の千織屋の佇まいを思い出していた。黄色を基調とした大胆な意匠の看板。着物をモチーフにした斬新なデザイン。あれは確かに、一度見たら忘れられない。

 

「でもさ、旅人。急にどうして千織に会いに行くんだ? 恋人に加えたいって言ってたけど、おいらてっきり次はナタのシトラリかと思ってたぞ」

「シトラリも考えてるよ。でもその前に、まずは千織に会っておきたいんだ。彼女の作る服には、いつも助けられてきたから。それに――」

 

 旅人は少しだけ言葉を切った。運河沿いの店先に、鮮やかな色彩の布が並んでいるのが見える。風に揺れるそれを目で追いながら、彼は続けた。

 

「前にフォンテーヌに来た時、千織が言ってたんだ。『あなたの旅の記録を、いつか衣装にしたい』って。それで俺もちゃんと答えを返したくて」

「ふぅん。旅人も、そういうの気にするんだな」

「当たり前だろ。俺だって、好きになった相手には誠実でありたいからな」

 

 パイモンはそれ以上何も言わずただ旅人の肩の上で小さく頷いた。その表情は、どこか誇らしげでもありからかうような色も混ざっていたけれど、旅人は気にしなかった。

 千織屋は、フォンテーヌの中心街から少し外れた静かな通りに面していた。千織屋の扉をガチャリと開けて店内へと、店の奥から聞き覚えのある声がした。

 

店の奥には千織にその衣装を熱心に観察され、あれやこれやと質問攻めにされて困惑しているシトラリの姿があった。

 

「だから、これはナタの伝統的な織り方で……って、そんなに引っ張らないでよ! 生地が伸びる!」

「伸びやしないわよ。この織り、見たことない構造してる。経糸と緯糸の交差が普通と逆じゃない。どうやって織ってるの? この模様は染め? それとも織り込み?」

「お、織り込みだけど……ちょっと、そんなに近くで見ないでってば! ワタシの肌にも模様が描いてあるから、服と一緒に見られると……」

「あら、本当ね。肌に直接描いてるの? この色何で出してるの? 顔料? それとも入れ墨?」

「ち、違う! これは儀式で使う特別な絵の具で……ってキミ誰!?そんなにじろじろ見て――」

 

シトラリが千織から逃れるように一歩下がったところで、ようやく彼女は店の入り口に立つ旅人の姿に気づいた。その瞬間、シトラリの薄ピンクから紫へのグラデーションが美しい長髪がふわりと揺れる。彼女の顔には、安堵とそれからほんの少しの気まずさが混ざった表情が浮かんだ。

 

「た、旅人!? 何でここに!?」

「お久しぶり、千織。それからシトラリも」

 

旅人は静かにそう言って店内へと足を踏み入れた。千織屋の中は、相変わらず美しい布と完成した衣装で溢れている。壁に掛けられた鮮やかな色彩のドレス。棚に並んだ精巧な刺繍の施された布地。そして店の中央には、仕事台の上に広げられたナタの民族衣装があった。

 

千織は旅人の姿を認めると作業の手を止めて優雅に振り返った。ダークブラウンの長い髪が、その動きに合わせてさらりと流れる。簪でまとめられた髪の隙間から、色白のうなじが覗いた。

 

「あら、空。来たのね。ちょうどよかったわ。今この子の衣装を解体して研究してたところよ」

「解体って……キミ、ワタシの服をバラバラにする気だったの!?」

「するわけないでしょ。織り方を見てただけよ。それより空、あなたも見てみなさい。この織り本当に珍しいの。ナタの織物は何度か見たことあるけど、これは別格。経糸の密度が均一でしかもこの模様の部分だけ糸の撚りが変わってる。これ、作った人は相当な腕よ」

 

 千織はそう言って、旅人の腕を掴むとぐいぐいと仕事台へと引っ張っていく。その動作はあまりにも自然で、まるで彼が来ることを最初から待っていたかのようだった。旅人はされるがままに近づきながら、ちらりとシトラリの方を窺った。

 

 シトラリは、少しだけ不満そうに口を尖らせていた。だがその瞳の奥には、旅人が来たことへの安堵が滲んでいる。彼女は自分の衣装を守るように、そっと胸元に手を当てた。その仕草が旅人には妙に可愛らしく映った。

 

「シトラリ、千織に何か困ったことでも?」

「別に……困ってない。ただ、この人、質問がしつこくて」

「しつこいんじゃないわ。プロとして当然の確認よ。あなた、この衣装をどこで手に入れたの? 誰が作ったの? この織りはあなたの部族の伝統なの?」

「……ワタシが自分で作ってるのよ。部族の伝統の織り方と、ワタシの家に代々伝わる技法を組み合わせて……って」

 

 その言葉に、千織の目がすっと細くなった。彼女はシトラリの顔をじっと見つめると、それからもう一度仕事台の上の衣装に視線を戻す。指先で布地を優しく撫で、織り目を確かめるように何度も往復させた。

 

「あなたが、作ったの」

「――悪い?」

「いいえ。むしろ、感嘆してるのよ。この完成度で自分で織って自分で仕立てたのなら、あなたは相当な才能の持ち主よ。ナタの伝統を守りながら、自分の感性を織り込んでる。こういうの私は好きよ」

 

 その言葉は、千織にしては珍しく素直な賞賛だった。シトラリは少しだけ面食らったように目を瞬かせ、それから照れ隠しなのかそっと顔を背けた。その頬には、ナタの民族模様とは別のほんのりとした赤みが差している。

 

「……べ、別に、大したことじゃないから」

「大したことよ。私が言うんだから間違いないわ」

 

 千織はそう言い切ると今度は旅人の方を向いた。その金色の瞳が、まっすぐに彼を捉える。先ほどまで布に向けていた熱とはまた違う、けれど同じくらい真剣な光がその瞳の奥に灯っていた。

 

「それで、空。今日は何の用? わざわざフォンテーヌまで来たんでしょ。私に会いに来たのなら、それなりの理由があるんでしょう?」

 

 旅人は少しだけ息を吸った。千織の問いはあまりにも率直で、けれどその声音にはどこか彼女なりの期待が滲んでいた。シトラリもまた、横でじっと旅人の言葉を待っている。

 

「ああ。千織に会いに来たんだ。前に、俺の旅の記録を衣装にしたいって言ってただろ。それで、俺もちゃんと答えを返したくて」

「答え?」

「うん。俺の旅を、千織の手で形にしてほしい。でもただの衣装じゃなくて……俺がこれから先、この世界で生きていく証として。俺の家族を、恋人たちをそしてこれから生まれてくる子供たちを守っていくための、そういう意味のあるものを作ってほしいんだ」

 

 その言葉に、千織はしばらく沈黙した。彼女の視線が旅人の顔から胸元、そして手へと流れていく。まるで彼という人間を、服を仕立てるように採寸しているかのようだった。

 

 やがて千織はふっと小さく笑った。それは、普段の彼女が見せる自信に満ちた笑みとは少し違う、どこか柔らかくてそれでいて確かな温度を持った笑みだった。

 

「いいわ。あなたの旅を、私が形にしてあげる。でも条件がある」

「条件?」

「そう。まず一つ、あなたの旅の記録を全部見せてもらう。日誌でも、記憶でも何でもいい。あなたが何を見て、何を感じて何を選んできたのか。それを全部、私に教えて。服は着る人の魂がなければただの布よ。あなたの魂を、心を、私に預けて」

 

 旅人は少しだけ考えて、それから静かに頷いた。

 

「わかった。俺の旅の記録は、洞天に全部置いてある。あとで持ってくるよ」

「ええ。それと、もう一つ」

 

 千織はそう言うと、一歩だけ旅人に近づいた。その距離は彼女の吐息が旅人の胸元に触れるか触れないかというくらいの近さだった。ダークブラウンの髪から、ほのかに花のような香りが漂う。彼女はそっと、自分の手のひらを旅人の胸に当てた。

 

「あなた自身も、私に預けて。あなたがどんなふうに笑ってどんなふうに怒って、どんなふうに相手を愛するのか。それを知らないと、あなたの服は作れないわ。だって服はあなたの肌に寄り添うものだから」

 

 その声は、いつもの千織の率直な口調のままだった。けれどその手のひらは、少しだけ熱を帯びていた。旅人は彼女の指先が自分の胸の上で微かに震えていることに気づいた。それは緊張なのか、それとも――。

 

「千織」

「なによ」

「君の手、少し震えてるよ」

 

 千織はぱっと手を引いた。その動作があまりにも素早くて、旅人は思わず笑みを零した。彼女はふいと横を向き、仕事台の上の布を意味もなく整え始める。その耳は、ほんのりと赤く染まっていた。

 

「震えてなんかないわよ。ただ、あなたの心臓の音がうるさくて集中できなかっただけ」

「それは俺のせいか?」

「あなたの心臓でしょ。あなたのせいよ」

 

 そのやり取りをシトラリが少し離れた場所からじっと見つめていた。彼女の瞳には、複雑な光が揺れている。自分でもよくわからない感情。けれど、旅人が千織と話している姿を見ていると胸の奥がきゅっと締め付けられるような気がした。

 

 シトラリは、自分の胸元にそっと手を当てた。ナタの民族衣装越しに、自分の鼓動を感じる。旅人と初めて会った時から、彼女の中にはずっとこの感覚があった。近くにいると、彼の考えていることがわかってしまう。彼の心の声が、自分の内側に直接流れ込んでくる。それはシトラリの術のせいで、けれど彼女はその術を解く気になれなかった。だって、そうすれば旅人の本当の気持ちがわからなくなるから。

 

「……旅人」

 

 シトラリは小さく彼の名を呼んだ。旅人が振り返る。その金色の瞳が、シトラリをまっすぐに映した。彼女はその視線だけで、彼が自分をどう見ているのかを悟ってしまう。だからこそ、余計に胸が苦しくなる。

 

「ワタシも、そろそろ帰らないと。部族の仕事があるから」

「もう帰るのか?」

「うん。長居しすぎた」

 

 シトラリはそう言うと、仕事台の上の自分の衣装を手早く畳み始めた。その手つきは、少しだけ乱れていた。旅人はそんな彼女の様子を見て、何か言いたげに口を開きかけたが結局何も言わなかった。

 

 千織は、二人の間に流れる空気を敏感に感じ取っていた。彼女はシトラリの方をちらりと見て、それから旅人の腕をそっと掴んだ。

 

「空。あなた、今日は泊まっていくんでしょ?」

「ああ。そのつもりだ」

「なら、今夜は私の仕事場に来なさい。あなたの旅の話、詳しく聞かせて。それと……」

 

 千織はそこで一度言葉を切りシトラリの方を向いた。その表情には、先ほどまでの職人としての真剣さとはまた違う、どこか挑むような色が混ざっていた。

 

「シトラリも、よかったら来なさい。あなたの織りの技術もっと詳しく知りたいの。それに、空の話を一緒に聞けば彼のことをもっとよくわかるでしょ?」

 

 その誘いは、あまりにも自然だった。けれどシトラリには、千織の本当の意図が見え透いている気がした。彼女は、旅人がシトラリに対して何か特別な感情を抱いていることを、見抜いているのだ。

 

「……ワタシは」

 

 シトラリは言いかけて、旅人の方を見た。彼は何も言わずただ静かに彼女を見つめている。その瞳は、行くなとも来いとも言っていない。ただ、彼女の選択を待っている。その態度がシトラリには少しだけ恨めしかった。けれど同時に、その誠実さが彼女の心を強く掴んで離さない。

 

「……わかった。行く」

 

 その言葉に、千織は満足そうに頷いた。旅人はほんの少しだけ口元を緩めた。シトラリはそんな彼の表情を見て、自分の顔がまた熱くなるのを感じた。

 店の外では、フォンテーヌの運河を渡る風が柔らかな午後の光を運んでいた。水面に映る街の影が、ゆらゆらと揺れている。その光景を旅人はしばらくの間、ただ静かに眺めていた。

 千織の仕事場の窓からは、夕暮れが近づくにつれて空の色が少しずつ移ろいでいくのが見えた。それは、彼がこれまで歩んできた旅の記憶の色とどこか似ていた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

夜の帳がフォンテーヌの街を包み込む頃運河の水面には街灯の光がゆらゆらと揺れていた。石畳の路地を歩く旅人の足音が、静かな夜に柔らかく響く。昼間とは違うしっとりと落ち着いた空気。潮の香りは薄まり、代わりにどこか花のようなそれでいて金属的な匂いが混ざり合っている。それはこの水の都が持つ、独特の夜の匂いだった。

 

 千織屋の扉を叩くと、すぐに中から軽やかな足音が近づいてきた。扉が開くと、そこには昼間とは違う装いの千織が立っていた。黄色を基調としたあの斬新な衣装ではなく、深い藍色の着物を崩したような部屋着。簪を外したダークブラウンの髪が、肩の上でさらりと流れている。化粧も落としているのか、色白の肌が夜の灯りを受けて昼間よりもずっと柔らかく見えた。

 

「いらっしゃい。待ってたわ」

 

 その声は、昼間の仕事モードのものではなくどこか寛いだ響きを帯びていた。旅人は小さく会釈をして、店の奥へと通される。仕事場の中央には大きな作業台が置かれている。その上には、昼間見たナタの民族衣装が丁寧に畳まれそしてその隣には――。

 

「シトラリ、まだいたのか」

 

 旅人の声に作業台の向こう側からひょこりと薄ピンクの頭が現れた。シトラリは、少しだけ居心地悪そうに肩をすくめる。その手には、千織屋のものとは違う自分が持参したのだろう布の端切れが握られていた。

 

「……帰るって言ったんだけど、この人がどうしてもって」

「だって、あなたの織りの技術まだ全部聞いてないもの。それに――」

 

 千織はそう言って旅人の方をちらりと見た。その金色の瞳に、昼間とは違うどこか企むような光が宿っている。

 

「空も来るって言うから、シトラリも気が変わったのよ」

「なっ……ち、違うわよ! ワタシは別に、キミが来るからってわけじゃ」

 

 シトラリの顔が一瞬で赤く染まる。彼女は慌てて作業台の上の布を手に取り、意味もなく折り畳み始めた。その手つきはやはり少しだけ乱れていて、旅人にはそれが妙に可愛らしく映った。

 

「まあ、いいわ。それより空そこに座って。お茶でも淹れるわ」

 

 千織はそう言うと仕事場の隅にある小さな給湯設備へと歩いていく。その背中を見送りながら、旅人は促されるままに作業台の横の椅子に腰を下ろした。シトラリも、少し迷った様子を見せたが結局旅人の向かい側にちょこんと座った。その距離は、昼間よりもずっと近い。

 

「それで、空。あなたの旅の話聞かせてくれるんでしょ?」

 

 千織がお茶の入った器を三人分持って戻ってくる。湯気の立つそれは、フォンテーヌのものとは違う稲妻の茶葉を使っているらしい。香ばしい香りが、作業場にふわりと広がった。

 

「ああ。でもその前に、一つ聞いてもいいか」

「何?」

「千織は、俺の旅の記録を衣装にしたいって言ってたよな。それって、どういう意味で?」

 

 旅人の問いに、千織はお茶を一口含んでから静かに器を置いた。その仕草は、昼間の仕事ぶりからは想像できないほどゆったりとしている。

 

「言葉通りの意味よ。あなたがこの世界で見てきたもの、感じてきたこと選んできた道。それを、一着の衣装に織り込みたいの。服は着る人の人生そのものよ。特に、あなたのように多くのものを見てきた人の服はね」

 

 千織の言葉に旅人は少しだけ考え込んだ。彼女の言わんとしていることは、なんとなくわかる。けれど自分の旅のすべてを一着の服に収めるというのは、想像もつかないことだった。

 

「そんなこと、できるのか?」

「私がやるのよ。できないわけないでしょ」

 

 千織は自信満々にそう言い切った。その瞳には、職人としての誇りとそしてどこか挑むような光が宿っている。

 

「あなたの旅の記録を全部見せて。日誌でも、記憶でも、何でもいい。それからあなた自身のことも。あなたが何を思い、何を感じどう生きてきたのか。全部、私に預けて」

 

 その声は、昼間と同じように率直でけれどどこか熱を帯びていた。旅人は、彼女の真剣な眼差しに思わず息を呑む。

 

「それで、空。あなたの旅の話だけどどこから聞かせてくれるの?」

 

 旅人は、お茶を一口含んでから静かに語り始めた。モンドでの出会い、璃月での戦い稲妻での別れ、スメールでの救い。彼がこの世界に来てから経験した、数多くの出来事。その一つ一つを彼は丁寧に、けれどどこか懐かしむように話していく。千織は、時折質問を挟みながら、彼の言葉を一言も逃さないように聞いていた。シトラリもまた、最初は少しだけ距離を置いていたが話が進むにつれて、次第に身を乗り出していく。

 

 やがて、旅人の話が一段落したところで千織は静かに口を開いた。

 

「ねえ、空。あなたの話を聞いていて一つわかったことがあるわ」

「何?」

「あなた、本当にこの世界のことを愛し始めているのね」

 

 その言葉に旅人は少しだけ驚いたように目を瞬かせた。けれど、すぐに静かに頷く。

 

「ああ。この世界には、たくさんのものが詰まってる。美しいものも、悲しいものも嬉しいものも。全部ひっくるめて、俺はこの世界が好きだって思ってる」

「でしょうね。だからこそ、あなたの服は特別なものになる。あなたの旅のすべてを織り込んだ、この世界でただ一着の衣装よ」

 

 千織はそう言うと、作業台の上に広げられた布にそっと手を触れた。その指先は、まるで宝物に触れるかのように優しく、そして確かだった。

 

「それと、もう一つ。あなたの話を聞いてて思ったんだけど」

「何だ?」

「あなた、自分が思ってるよりもずっと誰かを愛することに貪欲よね。そして、愛されることにも」

 

 その指摘に、旅人は少しだけ言葉に詰まった。確かに彼は多くの女性を愛し、そして愛されてきた。それが自分の望んだこととはいえ、こうして面と向かって言われると少しだけ照れる。

 

「……そうかもしれないな」

「ええ。だからこそ、あなたの服にはあなたの愛も織り込まれる。それはきっと、この世界で一番温かい衣装になるわ」

 

 千織の言葉に、旅人は静かに微笑んだ。その笑みは昼間の穏やかなものとは違い、どこか自分自身を認めたようなそんな色をしていた。

 

 シトラリはそんな二人のやり取りを、少しだけ羨ましそうに見つめていた。自分も、旅人のことをもっと知りたい。彼の心の内側に触れたい。けれど、それをうまく言葉にできないもどかしさが胸の奥で渦巻いている。

 

 やがて、夜も更けてきた頃。千織はお茶の器を片付けながら、何気ない様子で言った。

 

「そういえば、シトラリ。あなた今日はどこに泊まるの?」

「え? あ、ワタシは……宿を取ってあるから」

「そう。なら、いいんだけど」

 

 千織はそう言うとちらりと旅人の方を見た。その視線には、昼間と同じどこか挑むような色が宿っている。旅人は、その意図を正確に理解した。けれどあえて何も言わない。ただ、静かにシトラリの方を見つめた。

 

 シトラリは、二人の視線を感じて少しだけ居心地悪そうに身じろぎした。その頬は、またほんのりと赤く染まっている。

 

「……ワタシ、そろそろ行くね」

 

 シトラリはそう言うと、立ち上がり、自分の荷物を手早くまとめ始めた。その手つきは、やはり少しだけ乱れている。旅人はそんな彼女の様子を見て、何か言いたげに口を開きかけたが結局何も言わなかった。

 

 千織は、そんな二人の間に流れる空気を敏感に感じ取っていた。彼女は、シトラリが仕事場の扉へと向かう背中にそっと声をかける。

 

「シトラリ。明日も、来なさい」

「……何で?」

「あなたの織りの技術、まだ全部教えてもらってないから。それに――」

 

 千織はそう言って旅人の方をちらりと見た。その瞳には、確かな企みの色が浮かんでいる。

 

「空も、明日もここに来るから」

 

 その言葉に、シトラリの足がほんの一瞬だけ止まった。けれど、すぐにまた歩き出す。その背中はどこか逃げるようにも、あるいは何かを期待するようにも見えた。

 

「……気が向いたら、来るから」

 

 そう言い残して、シトラリは静かに扉を閉めた。その足音が夜の路地に溶けていく。旅人は、彼女の去った扉をしばらくの間、ただ静かに見つめていた。

 

「空」

 

 千織の声に、旅人は振り返る。彼女は作業台の上に広げられた布を、丁寧に畳みながら静かに言った。

 

「あなた、シトラリのこと気になってるでしょ?」

「……そう見えるか?」

「ええ。だって、あなたが彼女を見る目は他の誰かを見る時とは少し違うもの」

 

 千織はそう言うと畳んだ布を作業台の隅に置き、旅人の方へと歩み寄った。その距離は昼間と同じくらい近い。けれど、今は夜の闇が、二人の間の空気をより濃密なものに変えていた。

 

「私も、あなたのことは気になってるわ。あなたの旅の記録を衣装にしたいと思うくらいには」

「千織」

「何よ」

「君も、十分に特別だよ」

 

 その言葉に千織は少しだけ目を丸くした。けれど、すぐにふっと小さく笑う。その笑みは昼間の自信に満ちたものではなく、どこか柔らかくてそれでいて確かな温度を持っていた。

 

「口が上手いのね。でも、私はそういうお世辞は嫌いじゃないわ」

 

 千織はそう言うと旅人の胸に、そっと自分の手のひらを当てた。その手はもう震えてはいない。ただ、確かな熱を帯びて彼の鼓動を感じている。

 

「あなたの事、まだまだ知りたいの。だから――」

 

 旅人の瞳を覗き込む様に見つめてくる千織の瞳には、とても見覚えのある情欲の炎が燃えているようだった。

 

「今日は帰さないわよ」

「それは、光栄だな」

 

 旅人はそう答え千織の手のひらに、自分の手を重ねた。その温もりが夜の作業場に、静かに広がっていく。

 

 千織はゆっくりと旅人に顔を近づけていき、その唇を重ね合わせる。千織の唇は、昼間のきつい物言いからは想像もできないほど柔らかかった。けれどその口づけは、彼女の性格をそのまま映すように遠慮というものを知らない。旅人の首に回された腕にぐっと力がこもり、逃げる隙を与えない。舌先が旅人の口腔を探るように動き、歯列をなぞり上顎をくすぐる。そのたびに、彼女の鼻から抜ける甘い吐息が旅人の頬をかすめていった。

 

 旅人はそんな彼女の背中にそっと手を添えた。藍色の部屋着越しに、千織の体温がじんわりと伝わってくる。背骨のラインをなぞるように指先を滑らせると、千織の肩がわずかに震えた。けれど彼女は口づけを止めない。むしろ、より深く舌を差し入れ旅人の舌を絡め取ろうとしてくる。その必死なまでの貪欲さが、彼女がどれほどこの瞬間を待っていたのかを物語っていた。

 

 やがて、千織がゆっくりと顔を離した。二人の唇の間に、細い銀の糸が架かる。夜の灯りを受けてそれがほんの一瞬だけきらめいて、そして消えた。千織の頬は昼間の凛とした面差しからは想像もできないほど赤く染まっている。金色の瞳は、深い森の湖のように潤んでいた。

 

「……なによ、その顔」

 

 千織は少しだけ拗ねたようにそう言った。けれどその声は、いつもの歯に衣着せぬ調子ではなくどこか照れ隠しのような響きを帯びている。

 

「千織が、思ったより情熱的だったから」

「悪い?」

「いいや。むしろ、もっと見ていたいと思った」

 

 旅人がそう言うと千織はふんと鼻を鳴らして横を向いた。けれどその耳は、やはり赤い。彼女は照れるとまず耳に出るらしい。それは、これから先の関係を築く上で旅人が覚えておくべきことの一つだった。

 

「あのね、空。私は、あなたの服を作るの。あなたの旅のすべてを織り込んだ、この世界にただ一着の衣装を。だからそのためには、あなたのことを全部知らなければならないの」

 

 千織はそう言うと作業台の上に置かれていた布を一枚手に取った。藍色のそれは、彼女が今着ている部屋着と同じ色合いだ。彼女はそれを旅人の胸元に当て、まるで採寸するように目を細める。

 

「あなたの肌に触れて、あなたの匂いを嗅いであなたの鼓動を感じて。そうして初めて、あなたに本当に寄り添う服が作れる。私はそういうデザイナーなの」

「つまり、もっと俺に触れたいと」

「そういうことよ。悪い?」

「いいや。むしろ、光栄だ」

 

 旅人がそう答えると千織はようやくふっと笑った。その笑みは、昼間の仕事場で見せた自信に満ちたものではなく、どこか柔らかくてそれでいて確かな温度を持っていた。

 

 千織は旅人の手を取ると作業台の横にある小さなソファへと導いた。二人並んで腰を下ろす。彼女は旅人の肩にそっと寄りかかり、その手のひらを旅人の胸に当てた。先ほどと同じように、彼の心臓の鼓動を確かめるように。

 

「あなたの心臓、まだ少し速いわね」

「千織のせいだろ」

「ふふ。そうね。私のせいよ」

 

 千織はそう言って、目を閉じた。その横顔は昼間の仕事場で見せる鋭い職人のそれではなく、ただ一人の女のものだった。旅人はそんな彼女の髪にそっと口づけを落とした。簪を外したダークブラウンの髪からは、ほのかに花のような香りが漂う。それは彼女が愛用しているのだろう、稲妻の花の香りだった。

 

 しばらく、二人はそのままの姿勢でいた。千織の呼吸が、少しずつ穏やかになっていく。旅人もまた彼女の体温を感じながら、この静かな時間を噛みしめていた。

 

 やがて、千織がぽつりと呟いた。

 

「ねえ、空。さっき、シトラリのこと気になってるって言ったけど」

「ああ」

「彼女も、あなたのこと好きよ。それは私の目から見ても明らか」

「……やっぱりそう見えるか?」

「ええ。だって、あなたが来た時のあの子の顔といったら。嬉しさと照れと、それから少しの嫉妬。あれはただの知り合いに向ける顔じゃないわ。貴方が好きで好きでたまらないのに、それを表に出したくないって顔」

 

 千織はそう言うと旅人の胸に当てていた手のひらを、そっと彼の頬へと移した。ひんやりとした指先が、旅人の輪郭をなぞる。

 

「私も、あなたのことをもっと知りたい。けれどシトラリのことも、ちゃんと見てあげて。あの子は自分から素直に言い出せないだけ。あなたが気づいてあげなければ、ずっと一人で抱え込んでしまうわ」

「千織は、シトラリのことを心配してるんだな」

「当たり前でしょ。彼女は、私が認めた数少ない織り手の一人よ。それに――」

 

 千織はそこで一度言葉を切り、旅人の瞳をじっと覗き込んだ。その金色の瞳には、夜の闇よりも深い確かな光が宿っている。

 

「あなたが本気で向き合おうとしている相手なら、私も本気で向き合いたいと思うの。それは服を作るのと同じ。中途半端な気持ちじゃ、良いものは生まれないから」

 

 その言葉は、千織の職人としての信念とそして一人の女としての想いの両方が込められていた。旅人は、彼女の手のひらに自分の手を重ねそっと頷く。

 

「わかった。シトラリのことも、ちゃんと向き合うよ」

「ええ。そうしてちょうだい」

 

 千織は満足そうに微笑むと再び旅人に口づけをした。今度は、先ほどよりもずっとゆっくりと確かめるように。唇の柔らかさを味わい、互いの体温を交換するように。夜の作業場に、布が擦れる微かな音と二人の吐息だけが響いていた。

 

 やがて、千織が旅人の膝の上にそっと乗り上げた。藍色の部屋着の裾が、彼女の動きに合わせてたくわえられる。花の意匠を取り入れたストッキングに包まれた細い脚が、旅人の腰の両側に回った。彼女は旅人の顔を両手で挟むと、上から見下ろすようにしてその瞳を覗き込む。

 

「私は、上から見るのが好きなの。あなたの顔がよく見えるから」

「それは、千織が優位に立ちたいからか?」

「それもあるわ。でも、それだけじゃない」

 

 千織はそう言うと少しだけ照れくさそうに目を逸らした。その仕草は、昼間の彼女からは想像もできないほど可愛らしくて、旅人は思わず笑みを零した。

 

「なによ、笑わないでよ」

「ごめん。でも、千織のそういう顔もっと見ていたいと思っただけだよ」

「……そういうこと、さらっと言うのね。あなたって本当に口が上手いんだから」

 

 千織は拗ねたようにそう言いながらもその口元は緩んでいた。彼女は旅人の首に腕を回すと、自分の身体を少しだけ浮かせそしてゆっくりと下りてくる。その動きに合わせて、旅人の下半身に彼女の柔らかな部分が触れた。藍色の部屋着越しに、千織の熱が伝わってくる。彼女がどれほどこの瞬間を待っていたのかが、その体温だけでわかった。

 

「空。あなたの全部を、私に預けて」

 

 千織の声は、いつもの率直な口調のままだった。けれどその奥には、確かな熱とそしてほんの少しの緊張が混ざっていた。旅人は彼女の腰に手を添え、そっと頷く。

 

「ああ。千織に、俺の全部を預けるよ」

 

 その言葉に、千織は満足そうに微笑んだ。そして再び旅人に口づけを落とす。夜は、まだ始まったばかりだった。

 旅人の首に回した腕に力を込め、まるで彼の呼吸ごと奪うように舌を絡めてくる。藍色の部屋着の前合わせが、彼女が身を寄せるたびにわずかに開き色白の胸元が夜の灯りに浮かび上がる。旅人は彼女の腰に手を回したまま、指先で背骨のラインをゆっくりとなぞった。千織の肩がぴくりと震え、唇の端から小さく甘い吐息が漏れる。

 

 千織の指先が、旅人の服の合わせ目をするりと滑り込んできた。器用な指が留め具を探り当て、ひとつまたひとつと外していく。デザイナーの手は服を脱がせるのも巧みだ。旅人の胸元が開かれ、彼女のひんやりとした手のひらが素肌に触れる。そのまま鎖骨から肩へ、胸の輪郭を確かめるように指が這った。

 

「……鍛えてるのね。意外と」

「旅は歩くだけじゃないからね」

「ふふ。でも、あんなに綺麗な顔してるのに身体は結構逞しいのね。ギャップで落ちる女もいるでしょうね」

 

 千織はそう言いながら、旅人の服を肩から引き剥がすように脱がせていく。露わになった旅人の上半身を、彼女はじっと見つめた。その金色の瞳には職人が極上の素材を前にした時のような熱い輝きが宿っている。

 

「ねえ、空。触ってもいい?」

「千織が触きたいならいくらでも」

「……ありがと」

 

 千織は遠慮なく旅人の胸に手を当てゆっくりとその輪郭を確かめるように撫でた。手のひらで胸板の厚みを確かめ、指先で腹筋の溝をなぞる。剣を振り翼を広げ、幾度も生死の境を越えてきた旅人の身体は彼女が想像していたよりずっと雄々しい。その体温に触れているだけで、彼女の下腹の奥がきゅっと疼いた。

 

「空。あなたの肌、思ってたより熱いのね」

「千織の手が冷たいからそう感じるのかも」

「そう。なら、もっと温めて」

 

 千織は挑むような笑みを浮かべると自分の藍色の部屋着の帯に手をかけた。するりと布が解け、彼女の白い肩が露わになる。さらに衣が落ちていくと、淡い灯りの下で千織の美しく艶のある上半身が浮かび上がった。普段は派手な意匠の服に隠されているそれは、絹のように滑らかでけれど確かな熱を孕んでいる。旅人の眼差しが、彼女の身体をゆっくりと滑っていくのを千織はひたと見つめ返していた。

 

「どう? 私の身体は服を作る時の、参考になった?」

「……参考にしかできないのはもったいない」

「口が上手いこと」

 

 千織は笑いながら胸の下着を外すと旅人の膝の上へ再び跨った。二人の肌が直接触れ合い、互いの体温が溶け合っていく。彼女の豊満な胸が、旅人の胸板に押し当てられその柔らかさがたまらなく甘い。

 

「空。私はね、あなたに一番近い服を作りたいの。あなたの体温をそのまま閉じ込めたような。だから……もっとあなたを知りたい」

「ああ。俺も知りたいよ、千織の全部」

 

 旅人はそう言うと千織の胸の先に指を這わせた。小さな蕾に触れると、彼女の背中がびくりと仰け反る。千織は唇を噛み締めるようにして声を堪えた。旅人は彼女の反応を確かめるように、左右の蕾を指の腹で優しく転がす。

 

「ん……っ、そこ……」

「ここが気持ちいいのか?」

「……当たり前でしょ、触られれば、誰でも」

「でも千織のここ、もう硬くなってる」

「だから何よ……んんっ!」

 

 旅人が、彼女の乳輪の縁を指でなぞりながら左右の蕾を同時に抓り上げると、千織の腰が浮いた。彼女の呼吸が荒くなり目元がじんわりと赤らんでいく。それでも旅人の顔から目を逸らさない。むしろ、その快感を真正面から受け止めている。

 

「千織は感じてるところ、隠さないんだな」

「……隠したって無駄でしょ。どうせ、あなたにはバレてる。それに私を良く知ってから作る服の方が、きっといい」

「……君は本当に職人だな」

 

 旅人は感心したような呆れたような口調で呟くと、彼女の胸に顔を埋めた。蕾を唇で含み舌先で弄る。汗の味はせず、ほんのりと甘い香りが鼻腔に届く。彼女の肌はとても清潔で、どんなに汗をかいてもそれは快楽の水気でしかなかった。

 

「ひ、っ、そんな……舐めるなんて……」

「舐められたくないのか?」

「……舐められて、くない、じゃなくて……あっ!」

 

 千織の抗議の声は旅人の舌に掻き消される。彼女の小さな蕾が舌の上で転がされるたびに、その声はみっともなく甘い悲鳴へと変わっていった。

 千織の小さな蕾は旅人の舌の上でいっそう硬く尖っていく。吸い上げるたびに、彼女の腰がびくりと跳ね喉の奥から堪えきれない吐息が零れた。指を絡めるようにして旅人の髪を掴み、胸を押し付けるようにしてくる。その仕草は、自分から感じることをねだっているようでいじらしいほどだった。

 

「ん……っ、そんなに吸われたら……あっ」

 

 千織の声が夜の作業場に甘く溶けていく。旅人は片方の蕾を舌先で転がしながら、もう片方を指の腹でゆっくりと捏ねた。彼女の背中がしなり、藍色の部屋着が肩から落ちかける。露わになった鎖骨の窪みに、うっすらと汗が浮いていた。

 

 その時、千織の指がするりと旅人の胸元へ伸びてきた。彼女の細い指先が、旅人の乳首をそっと抓り上げる。

 

「……っ」

 

 思わず旅人の口から短い息が漏れた。千織はその反応に気を良くしたのか、今度は指の腹でくるくると円を描くように刺激してくる。

 

「ふふ。あなたも、ここ感じるのね」

「千織……それは、反則だ」

「何が反則よ。私ばかり感じてるのは不公平でしょ」

 

 千織は悪戯っぽく笑いながらもう片方の手でも旅人の胸を愛撫し始めた。指先で乳首を挟み、軽く捻り時折爪の先で引っ掻くようにする。その度に、旅人の腰が無意識に浮いた。千織はそんな彼の反応を楽しむように、金色の瞳を細める。

 

「ねえ空。あなたが私にしたこと、そのままお返ししてるだけよ。文句はないでしょ?」

「……千織は、意地悪だな」

「ええ。私はもともと、可愛げのない女よ」

 

 千織はそう言うと、旅人の乳首から手を離し代わりに彼の胸板をゆっくりと撫で下ろした。手のひら全体で、彼の体温と鼓動を確かめるように。その指先は、彼の腹筋の溝をなぞり腰骨のあたりで一度止まった。

 

「空。さっき、私の胸を勝手に味わったでしょ」

「勝手にって、千織だって満更でもなさそうだっただろ」

「それは……そうだけど」

 

 千織は少しだけ口ごもりそれから旅人の顔をじっと見つめた。金色の瞳が、夜の灯りを受けてゆらゆらと揺れている。

 

「だから、今度は私があなたに触れる番。それで……その……」

 

 千織は言葉を切り、視線をわずかに下へと落とした。彼女の頬は、先ほどよりもずっと赤く染まっている。意地っ張りな彼女が、自分の欲を口にしようとしている。そのもどかしさが、旅人にはたまらなく愛おしかった。

 

「千織、何がしたいんだ?」

「……あなたの口で、私の一番感じるところを味わってほしいの」

 

 千織の声は、消え入りそうなほど小さかった。けれどその瞳は真っ直ぐに旅人を見つめている。恥ずかしさと期待と、それからほんの少しの不安。それらが混ざり合った複雑な色が、彼女の金色の瞳の中で渦巻いていた。

 

 旅人は、彼女のその言葉に応えるように静かに頷いた。

 

「わかった。でも、その前に」

 

 旅人はそう言うと千織の身体をそっと抱え上げ、自分の膝の上から降ろした。そして彼女の藍色の部屋着を肩から完全に滑り落とす。はらりと床に落ちた布の向こうから、千織の白い肢体が露わになった。夜の灯りに照らされたその肌は、まるで絹のように滑らかでうっすらと汗ばんでいる。

 

「綺麗だ、千織」

「……そういうこと、真顔で言わないで。こっちが照れるでしょ」

 

 千織はそう言って旅人の胸に手を当てた。その手は、もう震えてはいない。彼女はゆっくりと旅人をソファへと押し倒す。背もたれに身体を預けた旅人の上に、千織が覆いかぶさるような体勢になった。

 

「見てなさい。私だって、恥ずかしいだけの女じゃないんだから」

 

 千織はそう言うと、自分のストッキングに手をかけた。花の意匠が織り込まれた薄い布が、彼女の指先によってするすると下ろされていく。白い太ももが露わになり、やがて足首から抜け落ちた。彼女はそれを床に落とすと、今度は下着に手をかける。一瞬だけ迷うように動きを止めたが、すぐに覚悟を決めたようにそれを脱ぎ去った。

 

 完全な裸体になった千織が旅人の上に跨る。彼女の豊かな胸が、呼吸のたびにゆっくりと上下する。その頂にある二つの蕾は、先ほどの愛撫でまだ硬く尖ったままだった。そして、彼女の太ももの奥。そこにはすでに蜜を湛えた花弁が、夜の灯りの中でしっとりと輝いている。

 

「千織……」

「なによ。見るだけなら、いつでも見せてあげるわよ。でもあなたが望むなら……」

 

 千織はそう言うと自分の腰をゆっくりと前へと進めた。彼女の膝がソファの背もたれの両側に置かれ、旅人の顔のすぐ上に彼女の花弁が迫る。その蜜の匂いが、ふわりと旅人の鼻腔をくすぐった。甘くて少しだけ潮の香りが混ざったような、女の匂い。

 

「……ここを、舐めて。空」

 

 千織の声は、震えていた。けれどその瞳はまっすぐに旅人を見下ろしている。意地っ張りな彼女が、自らその場所を差し出している。その事実が、旅人の胸を熱くした。

 

「ああ。千織の一番感じるところ、俺に味わわせて」

 

 旅人はそう言うと、千織の太ももに手を添え彼女の花弁にそっと唇を寄せた。閉じられた花びらを舌先で割り開き、蜜を掬い取るように舐め上げる。

 

「あっ……!」

 

 千織の背中が、弓なりに反った。彼女の手が旅人の頭をぎゅっと押さえつける。その指先は、微かに震えていた。旅人は彼女の反応を確かめるように、花弁の割れ目に沿って舌を這わせる。上から下へ、何度も何度も。その度に千織の喉から甘い声が漏れた。

 

「や……っ、そんな、舐め方……あっ」

 

 旅人は、彼女の花芽を見つけるとそこを唇でそっと包み込み、舌先で転がすように刺激した。千織の太ももが、びくりと跳ねる。彼女の蜜が旅人の口の中に溢れ出した。その味は、ほんのりと甘くけれど後味はさっぱりとしている。旅人は、その蜜を味わい尽くすように彼女の花弁全体に舌を這わせ続けた。

 

「千織の蜜、美味しい」

「そ、そんなこと、言わないで……っ!」

 

 千織は恥ずかしそうに顔を背けた。けれど、彼女の腰は無意識のうちに動き旅人の舌に自分の敏感な場所を押し付けている。彼女の身体は、もう旅人の愛撫なしではいられないほどに火照っていた。

 

「空……もっと……もっと舐めて……」

 

 千織の声が切なげに掠れる。旅人は彼女の太ももを支えながら、その花芽を吸い上げ花弁の中に舌を差し入れた。狭い蜜口を舌先で押し広げ、内壁を優しく撫でる。

 

「あっ、あっ、そこ……! あっ、だめ……!」

 

 千織の身体が、大きく跳ねた。彼女の蜜が旅人の顔を濡らすほどに溢れ出る。旅人は、彼女の一番感じる場所を舌先で押し上げそのまま吸い続けた。

 

「んああっ……!」

 

 千織の背中がこれ以上ないほど反り、彼女の身体が小刻みに震えた。そのまま彼女は旅人の顔の上で絶頂を迎える。溢れ出した蜜が、旅人の唇を伝い顎を濡らしていく。旅人は、彼女の震えが収まるまでその花弁を優しく舐め続けた。

 

「はぁ……っ、はぁ……っ」

 

 千織は荒い息を吐きながら旅人の上でぐったりと脱力していた。汗ばんだダークブラウンの髪が、彼女の頬に張り付いている。旅人は彼女の太ももに口づけを落とし、ゆっくりと顔を離した。

 

「千織、すごく可愛かったよ」

 

 その言葉に、千織はようやく顔を上げた。金色の瞳は涙で潤んでいる。けれど、その口元には満足そうな笑みが浮かんでいた。

 

「……当たり前でしょ。私が、可愛くないわけがないんだから」

 

 千織はそう言うと旅人の上からゆっくりと降り、彼の隣に腰を下ろした。彼女の脚はまだ少しだけ震えている。旅人は、そんな彼女の身体をそっと抱き寄せその額に口づけを落とした。

 

「千織。俺は、君のそういう強がりも全部愛してるよ」

 

 千織は、その言葉に一瞬だけ目を見開いた。それから、ふっと小さく笑う。

 

「……あなたって、本当に口が上手いわね。でも私もあなたのそういうところ、嫌いじゃないわ」

 

 千織はそう言うと、旅人の胸に顔を埋めた。

 千織は旅人の手を取るとその指を一本一本確かめるように握りしめた。彼女の手のひらは、先ほどまでの熱を孕んだまま微かに汗ばんでいる。金色の瞳が、夜の灯りの中で真っ直ぐに旅人を映していた。

 

「私の初めてを、あげるわ」

 

 その声は震えていなかった。いつもの千織らしい率直で凛とした響き。けれどその瞳の奥には旅人だけに向けられた柔らかな熱が確かに灯っていた。

 旅人は彼女の言葉に応えるようにゆっくりと身を起こした。二人の指が恋人のように固く結び合わさる。千織はそのまま旅人の肩にそっと手を添えると、彼の上に跨るようにして腰を落としていく。彼女の蕾が旅人の熱に触れた瞬間、千織の肩がびくりと跳ねた。

 

「……ん」

 

  小さくけれど確かな声が漏れる。旅人は彼女の腰に手を添え、ゆっくりとその沈み込む動きを支えた。千織の内側は驚くほど熱くて狭い。旅人の先端をくわえ込んだ瞬間、彼女の眉根が寄りそれでも彼女は決して目を逸らさない。自分の意思で自分の身体を彼に差し出しているのだ。

 

「あ……っ」

 

  亀頭が花弁を押し開き最奥へと進んでいく。千織の内壁が旅人の形を確かめるようにきゅうっと締まった。痛みと快感が混ざり合った声が彼女の唇の間から漏れ出る。

 

「千織、苦しいか」

「……平気よ。私が望んだことだから」

 

  千織はそう言うと旅人の首に両腕を回した。彼女の胸元が旅人の胸板に押し当てられる。鼓動が互いの身体を通じて伝わり合う。

 

 やがて旅人の一部が千織の最も深い場所へと収まった。彼女の下腹部が熱い。身体の芯まで埋め尽くされているという感覚に、千織は小さく息を吐いた。

 

「……入ってるわ。全部、あなたのものを感じてる」

 

  その言葉にはいつもの強気な響きはなかった。快楽と充足に震える素直な女の声があった。

 

 旅人は彼女の腰を抱き寄せるとその耳元にそっと囁いた。

 

「千織、愛してるよ」

 

 千織は一瞬間を置いて、それからゆっくりと笑った。

 

「……知ってるわ。だから、私もあげるのよ。ぜんぶ」

 

 夜の作業場に布の擦れる音と、二人の吐息が静かに溶けていく。旅人は彼女の動きに合わせて、ゆっくりと腰を押し上げた。初めての快感に千織の背中がしなる。金色の瞳が涙で揺れていた。

 

「あっ……こんなの……っ」

 

 千織の爪が旅人の背中に食い込む。彼女は必死に腰を沈め、自らも彼を求めるように揺らし始め。意地っ張りな彼女らしい貪欲でひたむきな動きだった。

 千織が自分の腰を沈め切った瞬間互いの間にできた結合部から、微かにぬかるんだ音が漏れた。それは決して大きい音ではない。それでも静まり返った作業場の中では、とても淫らでとても甘い、ふたりだけの旋律に聞こえた。

 

 「っ……はぁ、っ……入って、るわ……空のが、私の奥に」

 

 千織は震える声でそう言うと、ゆっくりと瞳を開けた。彼女の金色の瞳はすでに快楽の色に蕩けて、夜の灯りを反射しながらゆらゆらと揺れている。肩で息をしながら、それでも彼女は旅人の胸に手をつくと少しずつ腰を上下に動かし始めた。

 

「千織、無理しなくていい」

「無理じゃないわ。気持ちいい……空。もっと、感じて。私のこと……もっと」

 

 その言葉に応えるように、旅人は彼女の腰を抱え下から静かに突き上げる。千織の声が夜の空気を甘く震わせた。布の柔らかな匂いと、二人の汗の香りが混ざり合い、やがて部屋中を満たしていく。

 

 「んっ、あ……っ」

 

 彼女の内壁が旅人の形をまるごと覚え込もうとするように、ぎゅうと絡みつく。初めて男を受け入れたというのに、千織の身体はすでに旅人に応じていた。いや、応えようとしている。この気高くて意地っ張りなデザイナーは、愛を交わすことすら“自分のもの”にしようとしていた。

 

 「は、ぁ……私の、ペースで動くから…… 黙って、感じてなさい……」

 

 そう言いながらも千織の動きはどこか拙く、それでいて必死だった。彼女の豊かな胸が上下に大きく揺れる。その頂に尖った二つの蕾が、灯りに照らされて淡く光った。

 旅人は、彼女の腰をそっと支えながら指の腹で柔らかな肌を、ゆっくりと撫で上げた。すると千織の口から、短い悲鳴が漏れる。

 

 「やっ、あ……! こ、腰、触っちゃだめ……っ」

 「痛いか?」

 「違う……っ、びりびりして腰に力入らない……!」

 

 千織は旅の肩に両手を乗せると上目遣いのようにこちらを見下ろした。その瞳は先ほどよりもずっと艶やかに潤み、頬は火照っている。強がりはすでに崩れかけていた。

 

 「それでも……やめないわよ。私から、感じるんだから……っ」

 

 彼女はそう言うとゆっくりと腰を落とし、自分から旅人を最奥へと咥え込んでいく。そのたびに、二人の結合部から蜜と愛液の混ざった水音が響いた。ぬちゅ……くち……と、いやらしいほど明瞭な音が夜のしじまに溶けていく。

 

 「ん、あっ、んんっ…… は、あ…… どう……? 私の、中……」

 「すごく、いい。千織の中熱くて締まってる」

 「……そう。なら……もっと、良くしてあげる……」

 

 千織は、それまでの慎重な動きから一転一気に腰を打ちつけ始めた。その速さは、彼女がこれまでどれほど情熱を内に秘めてきたのかを物語っていた。長い黒髪が波のように踊り、着物も寝乱れて肩から滑り落ち露わになった白い肌が、暗がりにぼうっと浮かび上がる。

 

 「あっ、あっ、ああっ……!」

 

 音が途切れず漏れ続ける。千織は最早自分の声を止めることが出来なかった。彼女の膣が、旅の熱棒を根元まで受け入れて締め付けを強めていく。

 やがて限界が近いことを感じ取ったのか、千織の腰が僅かに震えた。彼女は荒い息のまま、旅人の目を見据えてそして言った。

 

「中に出して……。私の、いちばん奥に空の……!」

 

 旅人は、彼女の細い腰を掴んで下から何度か強く突き上げる。パン、パンと肉が重なる音が静かな作業場に鳴り響いた。千織がそれに合わせて短く啼き、彼女の首が仰け反る。

 

 「千織、――出すよっ」

 

 旅人の低い声に、千織はこくりと頷いた。

 

「……んっ、出して……空……!」

 

 その瞬間、旅人は彼女を深く抱きしめながら彼女の中で果てた。熱い精が千織の奥底に注がれていく。千織の身体がびくびくと震え、内壁が彼を離すまいと激しく収縮した。

 

 「っ、あ、……ああ……っ」

 

 千織は、あまりの深い快楽に全身を旅に預けた。彼女の胎内に、愛する男の熱いものが広がっていく。初めての経験、それは彼女にとって予想よりもずっと、優しくてそして強烈な熱だった。

 

 やがて二人はしばらくの間、互いの汗を感じながら抱き合ったまま呼吸を整えた。千織の耳元には、旅の鼓動がまだ聞こえている。

 

 「……はぁ、……ねえ、空」

 

 「ん?」

 

 「……私、これからも、あなたを感じたい。仕事のこともあるから毎日とはいかないけれど……でも、あなたの一番近くに私の服を置いてほしいの」

 

 その声にはいつもの勝気さはなかった。柔らかくて、どこか弱さを帯びた愛しい彼女の本音があった。

 

 「俺の方こそ、千織が望でくれるなら、これから一生、俺のとなりにいてくれ」

 

 旅人がそう答えると、千織は少しの間黙ってそれから、小さく笑った。

 

 「……ええ。そうさせてもらうわ」

 

 彼女はそう言うと、旅人にまるで誓いの様な口づけをする。千織の口づけはまるで彼女の生き方そのもののように熱く、そして真っ直ぐだった。絡め取られた舌先から、布を裁つ指の情熱が流れ込んでくるようで旅人の胸の奥にまでその熱が染み渡っていく。彼女の細い腕が旅人の首に回され、逃がさないとばかりに力を込める。その必死なまでの強さが、かえって旅人の劣情を激しく掻き立てた。

 

 旅人は千織の背中に回していた手に力を込めると、ゆっくりと彼女の身体の位置を入れ替え押し倒した。作業台の横に置かれたソファの柔らかな布地が、二人の重みで沈み込む。体勢は逆転し今度は旅人が千織の上に覆いかぶさる格好になった。千織は、突然のことに一瞬だけ目を見開いたがすぐにその金色の瞳を細め、口元に挑むような笑みを浮かべた。

 

「……あら。私が上にいるのが好きだったんじゃなかったの?」

「どっちでもいい。今は、こうしたい気分なんだ」

「ふふ、そういうの、案外悪くないわね」

 

 千織はそう言うと、旅人の首に回した腕に再び力を込め彼の頭を引き寄せて唇を重ねた。今度は、彼女の方から深く舌を差し出してくる。旅人はその舌を吸い、彼女の口内を甘く蹂躙しながら体勢を変えたために離れてしまった腰を彼女の中心へと押し当てた。千織の花弁は、先ほどの初めての交わりと絶頂の余韻でいまだに潤み、熱く開きかけている。旅人の亀頭がぬかるんだ入り口に触れると、千織は唇を離し小さく喘いだ。

 

「ん……っ、また、来るのね」

「ああ。千織の中、もっと俺でいっぱいにしたい」

 

 千織は潤んだ瞳で旅人を見上げ、それからゆっくりと彼の背中に両足を回した。花の刺繍が施されたストッキングはとうに脱ぎ捨てられ、その白い脚が旅人の腰をぎゅっと挟み込む。

 

「……来なさいよ。私も、もっとあなたを欲しいと思ってるの」

 

 旅人は、その言葉を合図に腰を静かに沈め始めた。彼女の花弁を押し広げ、蜜で濡れた隘路へと旅の熱い刃が少しずつ潛り込んでいく。千織の内壁が、彼の先端を絡め取るように締まりあつい粘膜が絡みついてくる。初めての痛みはとうに消え、今はただもっと奥へ、もっと強くという願いだけが彼女を突き動かしていた。

 

「あ……っ、ふか、い……」

 

 千織の喉の奥から震えるような吐息が漏れる。旅人は、彼女の脚をより深く抱え直し一気に、根元まで突き入れた。

 

「く、あああっ!」

 

 千織の背中がソファの上で大きく仰け反り、白い喉が晒される。彼女の胎内は旅の形をじゅわじゅわと呑み込んで離さない。その狭さと熱に、旅人も思わず息を呑んだ。

 

「千織……」

「ん……空、動いていいわ……」

 

千織は潤んだ瞳のまま、旅人を見上げる。その表情はいつもの気丈な彼女のものではなく、愛しい男に全てを委ねた一人の女の顔だった。旅人は、彼女の腰をしっかりと掴みゆっくりと腰を動かし始める。粘ついた水音が、夜の作業場に再び甘い連鎖を刻み始めた。

 千織の内壁が旅の動きに合わせて蠢き蜜が溢れていく。彼女の喘ぎ声は先ほどよりも幾分か落ち着きを取り戻し、しかし深く熱を帯びていた。

 

「あっあっ空……私の中……あなたの形になっちゃってる」

「千織っ……君の中、さっきより締まって気持ちいいよっ!」

「当然でしょ私はあなたのための服を作りたいのだから……っ! 私の身体も、あなたのために、作り変えられたって、ことでしょ…?」

 

 その言葉に旅人の動きが早くなる。千織の長い黒髪がソファの上で乱れ彼女の豊かな胸が旅の胸板に押し潰されながら揺れる。

 

「んぅっ…!あぁぅ…んあっ……ひぅ!」

 

 彼女の爪が旅の背中に食い込み跡を残す。痛みすらも今の旅人には甘い刺激にしかならない。千織の膣がぎゅうぎゅうと締まり旅の肉棒を奥へ奥へと引き摺り込もうとする。子宮口が亀頭に吸い付き先端をくすぐる感覚に旅人の限界が近づいていた。

 

「千織……もう!」

「出し、なさい。私のっいちばん奥に!あなたの熱いの……出し、てぇぇええ!!」

 

 その言葉に応えるように旅人は最後の一突きを最奥へと叩き込んだ。熱い精が千織の子宮へと迸る。同時に千織も絶頂を迎え喉の奥から引き攣った声を漏らしながら全身を震わせた。結合部から溢れた蜜と精が混ざり合い作業台の脚にまで伝い落ちていく。千織は荒い息を吐きながら旅人の胸に顔を埋め彼の鼓動を感じていた。

 

「はぁ……はぁ……こんなに感じるなんて思わなかったわ」

「俺もだよ千織。君との時間がすごく愛おしい」

 

 旅人はそう言うと千織の汗ばんだ額に優しく口づけを落とした。彼女のダークブラウンの髪が乱れてソファの上で広がっている。千織は少し気怠げに視線を彷徨わせそれからふっと小さく笑った。

 

「ねぇ空……私今とっても満たされてる気がする」

「それは良かったよ」

 

 千織はゆっくりと身体を起こすと旅の上に跨るような体勢に戻った。彼女の脚はまだ少しだけ震えているがその瞳にはもういつもの強気な光が戻っていた。

 

「でもこれで終わりじゃないでしょ?」

 

 彼女はそう言うと旅人の唇に自分のそれを重ねた。今度は短い口づけ。すぐに離れると彼女は妖艶に微笑んだ。

 

「今度は、私の番よ」

 

 千織はそう宣言するとゆっくりと腰を動かし始めた。先ほどとは違い彼女が主導権を握る。その動きはまだ辿々しいが彼女の身体はもう旅の熱を完全に受け入れている。膣壁がきゅうきゅうと締まり旅の肉棒を離さない。

 

「んっ、あっ」

 

 千織の声が小さく漏れる。彼女は自分の身体の奥から湧き上がる快感に戸惑いながらもさらに強く腰を打ちつけ始めた。パンパンと肉のぶつかる音が夜の作業場に響く。

 

「千織そんなに動いたら」

「うるさいわね私はまだまだ平気よ! ほらもっと感じなさいよ!」

 

 千織は意地になったように激しく腰を振る。長い黒髪が乱れ豊かな胸が上下に大きく揺れる。その頂にある二つの蕾が旅の胸板に擦れてさらに硬くなっていく。彼女の膣からは絶え間なく蜜が溢れ出し結合部を濡らしていく。

 

「あっ!あっ!すごいっ!こんなにっ気持ちいいなんて……っ!」

 

 千織の声が甘く上擦る。彼女は自分の動きで自分を追い詰めていることに気づいていない。ただ本能のままに腰を振り続けた。旅人の手が彼女の腰を支え彼女の動きに合わせて下から突き上げる。

 

「千織っ出る!」

「いいわよ来て! 私の中で果てなさい!」

 

 その言葉に応えるように旅人は最後の一突きを最奥へと叩き込んだ。熱い精が千織の子宮へと迸る。同時に千織も絶頂を迎え喉の奥から引き攣った声を漏らしながら全身を震わせた。結合部から溢れた蜜と精が混ざり合い作業台の脚にまで伝い落ちていく。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 千織は荒い息を吐きながら旅の上にぐったりと倒れ込んだ。彼女の汗ばんだ肌が旅の胸板にぴったりと密着する。二人の鼓動が互いの身体を通じて伝わり合う。

 

「はぁ……はぁ……これで本当に終わりね」

 

 千織はそう言うと旅の胸に顔を埋めた。彼女の声にはまだ微かな余韻が残っている。

 旅人は彼女の髪を優しく撫でながら、彼女の熱と逃がさないという程に何度もきつく収縮を繰り返す膣壁の感触を味わいながら余韻を楽しんだ。

 





賢者タイムで読み切った人へ。どんな部分が癖に刺さりました?

もし、こんなシチュエーションで子作りしてる女の子の姿が見たいというのがあれば全部読んだ詳しい感想と一緒により詳しく書いてあったら、

もしかしたら参考にするかもしれない。

でも感想とかよりお気に入りにしてくれる方が嬉しいので、感想が面倒な人は、お気に入りにしてくれると嬉しいです。


さあ次はシトラリおばあちゃんの番だよ?
ん?怯えなくていいんだよ?
…さあ、旅人と子作りしよぉ~ねぇ~。
大丈夫だよぉ?
ちょぉ~っと、ぐちゃどろになるまで旅人に子宮犯されて旅人の子種を種付けされて旅人の絶倫デカチンポに理性壊されて24時間旅人と子作りしか考えられないオナホになるだけだからねぇえ~!!


――シトラリ は 逃げ出した。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。