塵歌壺の内部で過ごした三日三晩は、旅人にとって正気の沙汰ではない時間だった。
モナの占星術が引き起こした悪影響──星の動きが狂い、旅人の内にある根源的な「渇望」が増幅されたあの数日間は、もはや記憶の底に沈めたい黑歴史に等しい。恋人たちを片っ端から捕まえ、理性的な判断力を完全に喪失したまま、ただひたすらに互いの体温と蜜を貪り合う。獣のような有様だった。
ようやく精神が肉体に戻り、平謝りに謝罪を重ねながら恋人たちの身体を清め、マルが完璧に整備してくれた自動清掃機能に任せて部屋の後始末を終えた頃には、旅人の精神は砂漠のように干からびていた。
――なお、恋人たちは多少なりとも文句はあれど、旅人に可愛い可愛いと求められて
(とりあえず、外の空気を吸わないと……)
逃げるように、胡桃の自室に設置された壺の出口へと飛び込んだ。
塵歌壺から現実世界へと戻る瞬間、特有の浮遊感とともに空間が歪む。足が固い床に着地した感触を確認し、旅人は安堵の息を吐き出そうとした。
──だが、その息は喉の奥で凍りついた。
「あ」
間の抜けた、しかし鈴を転がすような可愛らしい声が、至近距離から響いた。
旅人が顔を上げると、そこには正午の太陽の光を浴びて輝く、あまりにも扇情的な光景が広がっていた。
胡桃だった。
往生堂七十七代目堂主。璃月の有名な詩人であり、死を自然なものとして受け入れる陽気な少女。彼女が、そこにいた。
ただし、いつもの漆黒と朱赤の装束ではない。着替えの最中だったのだ。
彼女の滑らかな色白の肌に、黒いレースのランジェリーが食い込んでいる。布地は蜘蛛の巣のように薄く、まるで異性を性行為に誘うためだけにデザインされたかのような、スケスケな布切れだった。正午の眩しい日差しが窓から差し込み、その黒いレースを透過して、下の白磁のような肌の色を余すところなく露わにしていた。
胸元を覆うべき布地は、その小振りながらも形の良い双丘を隠すどころか、むしろ強調するように窪みを作り、先端の薄い色が透けて見えるほどだった。腰回りも同様で、細い紐が食い込む腰骨のラインと、その下に広がる平坦で無毛な聖域が、黒い布地の隙間から妖しく光を反射している。
それは、葬儀屋というよりは、死者を冥府へと誘う妖女の衣装だった。
旅人の目は釘付けになった。視線が、レースの隙間から溢れる白い肌の上を滑り落ち、その扇情的なシルエットを脳裏に刻み込んでいく。喉の奥で、喉が鳴った。ゴクリ、という生々しい音が、静かな部屋に響き渡る。
「……えへへ。見られちゃった」
胡桃は悪戯が見つかった子供のように舌を出し、しかし全く隠す素振りを見せなかった。むしろ、その瞳──鮮やかな緋色に、白い花型の瞳孔が揺らめく瞳──を細め、旅人の反応を楽しむように少し体重を移動した。その動きに合わせて、黒いレースが擦れ、微かな摩擦音を立てる。
(──まずい。これ、完全に計算じゃないか?)
旅人の理性が警鐘を鳴らすが、身体は正直だった。三日三晩の暴走で性欲を消費し尽くしたはずなのに、視覚からの刺激が脊髓を伝って下半身へと直接電流を流し込んでいく。
「いや……その、胡桃。俺はちょっと、外の空気を吸いに……」
「ん? どうしたの、空。顔が赤いよ? 熱でもある?」
胡桃はふわりと近づいてきた。シャンプーや香水ではない、彼女自身の甘い体香が鼻をくすぐる。黒いレース越しに伝わる体温が、肌と肌の間のわずかな距離で混ざり合う。
「べ、別に熱はないけど……」
「嘘。目が泳いでるよ。それに、こんなに近くにいるのに、私の顔を見てくれないなんて。私の体、変なところでもある?」
彼女はさらに一歩踏み出した。旅人の胸に、レース越しの柔らかい感触が触れる。心臓が早鐘を打った。まるで交通事故の瞬間に目の前に迫るヘッドライトを見つめているような、逃げ場のない魅力に心臓が握りつぶされそうになる。
「……胡桃、着替え中なんだろう? 俺は一旦退いた方がいい」
「なんで? 折角久しぶりに会えたのに。ねぇ、空。海灯祭の時、助けてくれたよね。その時からずっと……思ってたんだ」
彼女の声が、少し低く、甘く変わった。
陽気な葬儀屋の仮面が剥がれ落ち、その下にある一人の少女の顔が覗く。緋色の瞳が、真っ直ぐに旅人を射抜いた。
「私の初めて、空に捧げてもいいよ? ……ねぇ私と、姓、一緒にしない?」
挑発的な言葉と共に、胡桃の腕が旅人の首に回された。黒いレースの冷たさと、その下の肌の熱さが、首筋で交錯する。旅人の手は、無意識のうちに彼女の腰へと伸びていた。
「……胡桃」
「ん?」
「俺、今は自制心が効かないかもしれない。数日前から、ずっと……こういう状態で」
「知ってるよ。パイモンから全部聞いた。……だから、こんな恰好で待ってたの」
胡桃の唇が、いたずらっぽく歪んだ。彼女の真紅の瞳の奥で、火が灯る。それは死者を送る火ではなく、生者の欲望を焼き尽くす情熱の炎だった。
「往生堂のサービス、無料で特別なプレゼント。空の全部、私の一生と身体と心を…あなたにあげる。……存分に、楽しんでほしいな」
胡桃の揺れる瞳の奥に、微かな戦栗を見た。
いつも通りの余裕たっぷりな破天荒な振る舞いの裏に隠した、小さな小さな恐怖。もし拒絶されれば、もう言葉を交わすことすらできなくなるかもしれない──そんな予感が、緋色の瞳の奥で水面に浮かぶ油膜のように揺らめいていた。普段の陽気で図太い振る舞いは、彼女の心を守るための薄い鎧だったのだ。
──なんて、健気で愛しいんだろう。
旅人の胸の奥で、灼熱の炎が静かに、しかし確実に形を変えた。欲情の炎が、底なしの慈愛と執着の熱へと移ろっていく。勇気を振り絞っていつもの余裕で自分を誘惑している彼女が、どうしようもなく愛おしくてたまらなかった。この悲しいほどに真っ直ぐな想いを、これ以上不安で曇らせたくない。
旅人の手が、黒いレースに包まれた華奢な腰へと滑り、強く引き寄せた。
そして、唇を重ねる。
「んっ……!」
熱く、深く、長い口づけだった。胡桃の小さな体がビクリと跳ね、すぐ後に旅人の胸に縋りつくように力が抜ける。唇越しに伝わる彼女の体温と、微かに甘い吐息。触れ合った部分から互いの鼓動が重なり合い、背骨を駆け上がって脳脳髄を蕫した。
長い、長い口づけの後、名残惜しげに唇を離す。唾液の銀糸が二人の間で揺れ、正午の光を反射して煌めいた。胡桃は息を弾ませ、潤んだ瞳で旅人を見上げている。
「胡桃、君を愛したら二度と手放さないよ。それでもいいかい?」
旅人の声は低く、そして真摯だった。それは警告であり、同時に永遠の誓約でもあった。逃げ道を塞ぐ甘い宣告に、胡桃の瞳が大きく見開かれる。
恐怖の霧が、瞬時に晴れた。
残されたのは、安心しきった、心の底から嬉しそうな笑み。緋色の瞳が三日月のように細められ、白い花型の瞳孔が愛らしく輝く。
「はい、私の英雄さん♡」
旅人の腕が胡桃の華奢な身体を包み込んだ。黒いレース越しに伝わる体温は、まるで夕暮れの砂漠が一日の熱を蓄えたようにじんわりと熱く、旅人の胸に染み込んでくる。力を込めれば壊れてしまいそうなほど細い身体。だがその中に宿る魂は、黄泉の境界を見つめる者としての強靭さを秘めている。
旅人は胡桃を抱き上げた。まるで壊れ物を扱うかのような慎重さで、しかし迷いのない動作で。胡桃が小さく「わっ」と声を上げ、旅人の首に回した腕に力を込める。その仕草が愛おしくて、旅人の口元が自然と緩んだ。
数歩でベッドに辿り着く。胡桃の背中を、ふわりとした白いシーツの上に預ける。スプリングが微かな音を立てて沈み込み、彼女の体重を受け止めた。正午の陽光が窓から斜めに差し込み、黒いレースと白い肌のコントラストをより一層際立たせている。
「空……」
胡桃が上目遣いで旅人を見つめる。緋色の瞳が微かに潤み、白い花型の瞳孔が揺らめいた。期待と、そして初めてを委ねる少女としての微かな震えが、その瞳の奥に透けて見える。
旅人はその震えを抱き留めるように、再び唇を重ねた。
「んっ……ぅ……」
今度の口づけは、先ほどよりも深く、そして貪るような激しさを孕んでいた。舌先が胡桃の唇を割り開き、口腔内へと侵入する。彼女の舌を捉え絡み合う、口内を余すところなく味わう。唾液が混ざり合い、互いの熱が粘膜を通じて直接流れ込んでいく。
旅人は吸い上げた。胡桃の甘い吐息も、唾液も、全てを自分の中へと引き込みたいかのように。喉が鳴り、ちゅくちゅるぢゅう、という湿った音が静かな部屋に響く。胡桃の指が旅人の背中に爪を立て、シーツを握りしめる手が白くなるほど力が込められた。
「ぁ……はっ……んぅ……」
息継ぎの隙間に漏れる嬌声が、旅人の理性を更に削り取っていく。彼女の唾液は、ピリピリとした僅かな刺激と、さっぱりとした清涼感を喉に残していく。後味の良さが、逆に際限ない渇望を呼び起こした。もっともっと、彼女を味わいたい。
唇を離さぬまま、旅人の指先が胡桃の身体を滑り始めた。首筋から鎖骨、そして黒いレースが覆う胸元へ。左手が背中へと回り、ブラのホックを探り当てる。
──外してしまおう。この甘美な禁忌の布を。
指先に掛けた力で、ホックを外す。ふわり、と張り詰めていた布地が緩み、弾力のある感触が指から消えた。旅人は唇を離し、身体を少し起こして、その布切れを胡桃の肌から剥ぎ取った。
黒いレースが滑り落ち、白磁のような肌が露わになる。小振りながらも形の良い双丘が、ふるりと揺れ、先端の淡い色が正午の光の下で可憐に主張していた。旅人の視線がそこに留まり、息を呑む。幼さを残しながらも、確かに女性としての成熟を予感させるその姿は、胸を締め付けるほどに美しかった。
「……見すぎだよ、空」
胡桃が顔を赤くし、腕で胸元を隠そうとした。だが、旅人はその手首を優しく掴み、ベッドに押し付ける。逃げることを許さない、けれど決して乱暴ではない、ただ愛おしさが溢れる拘束。
「綺麗だよ、胡桃」
旅人の声は低く、そして真摯だった。その言葉に、胡桃の抵抗が溶けたように力が抜けていく。
「……えへへ、変なの」
照れ隠しに笑う胡桃の唇に、再び軽く触れる。そして視線を下へと落としながら、残る最後の布地へと指をかけた。腰回りを包む黒いショーツ。細い紐が腰骨に食い込むその布地の下には、何も生えていない無垢な聖域がある。
指先で布地を少しずらし、その感触を確かめる。滑らかな肌、産毛一本ない滑らかさ。旅人の指先が布地の隙間から入り込み、直接彼女の秘裂に触れた。
「んっ……!」
胡桃の腰が跳ね、甘い声が漏れた。既にそこは微かに湿り気を帯びていた。旅人はショーツの端を掴み、ゆっくりと下へと引き下ろしていく。黒い布が白い太腿の上を滑り落ち、足首から離れてシーツの上に力なく落ちた。
全ての隠しごとが剥がれ落ち、胡桃の全裸が陽光の下に晒される。色白の肌、滑らかな下腹部、そして無毛の秘所。そのあまりにも無防備で、純粋な姿が、旅人の瞳に焼き付いた。
──これが、胡桃の全てだ。
旅人の胸の奥で、熱い塊が膨れ上がった。それは欲望であり、そして彼女を守りたいという深い愛情だった。この美しい魂を抱きしめ、二度と離さない。その誓いが、心臓の鼓動と共に全身を駆け巡る。
「胡桃……」
「……うん」
胡桃は両手を広げ、旅人を迎え入れた。その表情には、もう恐怖の影はなかった。ただ、信頼と愛情に満ちた、穏やかな笑顔があるだけ。
旅人は再び覆い被さり、その華奢な身体の胸元に顔を埋めた。
舌先が、左の小さな膨らみの下側からゆっくりと這い上がる。滑らかな肌の表面を舐め上げる感触は、まるで朝露に濡れた花弁を舌で転がしているかのようだった。塩気はない。ほんのりと甘く、さっぱりとした味道が口内に広がる。果物の果肉を思わせる清涼感が、旅人の舌を休むことなく誘い続ける。
「んっ……ぁ……」
胡桃の喉から細い声が漏れた。旅人の舌が頂点の淡い色の突起に辿り着いた瞬間、彼女の背中がシーツの上で微かに浮き上がる。まるで琴の弦を弾かれたような、即座で素直な反応。
旅人は舌の腹で乳首を包み込むように押し当て、ゆっくりと円を描いた。そして口全体でその小さな隆起を吸い込む。ちゅ、という湿った音が静寂を破った。
「ぁっ…そこ……だめ…っ」
胡桃の指が旅人の金髪に絡まり、無意識に引き寄せる。痛みではない。痺れるような快感が頭頂部から全身へと走り、彼女の手に理性を失わせていた。
──小さい。けれど、手の中で形を変えるこの感触は確かに女性のそれで。
旅人の左手が右の胸を包み込んだ。掌に収まるほどの大きさだが、指に食い込む弾力は十分にある。柔らかく、温かく、指の動きに合わせて形を変えていく。親指で乳首を転がすように弄びながら、口では左側を貪る。舌で舐め、吸い上げ、時折歯先で軽く挟んで刺激を与える。
「ひゃっ……んぅ……あっ、あっ……」
胡桃の呼吸が荒くなっていく。普段の陽気で図太い声はどこへやら、今はただ快楽に翻弄される一人の少女の声だけが部屋に響く。白い肌が桜色に染まり、鎖骨の窪みに薄く汗の粒が滲み始めていた。
旅人は唇を離さぬまま、右手を下方へと滑らせた。
肋骨の一本一本を指先で数えるように撫で下ろし、平坦な腹部の滑らかさを楽しみながら、臍のくぼみを軽く掠め、そして──無毛の聖域へと到達する。
そこは既に熱を帯びていた。
指先が秘裂に触れた瞬間、胡桃の腰がびくりと跳ねた。旅人の口内で乳首が硬く立ち上がる。身体の二箇所で同時に与えられる刺激に、彼女の神経回路が追いつかなくなっているのだ。
「や……空、そこ……っ」
旅人の指が秘裂の上をゆっくりと上下に往復する。布越しではない、直接の肌の感触。熱く、微かに湿った粘膜のひだが指先に伝わる。何も生えていない滑らかな恥丘から、秘裂の奥へと指を滑らせると、蜜が指先を迎えた。
──もう濡れている。
旅人の胸の奥で、欲情と慈愛が混ざり合い、熱い蜜のように脈打つ。暴走していた三日間とは違う。今は確かに理性がある。その上で、彼女を味わいたい。隅々まで、慈しむように。
中指の指腹で、秘裂の奥にある小さな突起を探り当てた。
「あぁっ!」
胡桃の身体が弓なりに反った。旅人の口を離した乳首が、空気に晒されてひんやりと硬く立ち上がる。だが旅人はすぐに口を戻し、今度は反対側の胸を攻め始めた。舌で乳首を転がし、吸い上げ、同時に右手の指で秘裂の上の突起を円を描くように弄ぶ。
「んっ、ぁっ、だめ……両方、同時に……っ……んぅッ!」
胡桃の太腿が無意識に擦り合わされる。だが旅人の手がそれを許さない。右手の肘で片方の脚を軽く押し開け、指は休むことなく秘所を愛撫し続ける。
旅人は指を一本、ゆっくりと挿し込んだ。
「──ぁあッ」
胡桃の内壁が指を締め付ける。熱い。きつい。処女の証とも言える狭さが、指一本でも抵抗を見せる。だが旅人は急かさなかった。指を根元まで埋め込んだまま、内部の感触を確かめるように静止する。そして徐々に、ゆっくりと動かし始めた。
中指の第二関節で前壁を圧迫しながら、親指で外側の突起を擦る。口では乳首を吸い上げ、空いた左手でもう片方の胸を揉みしだく。三点同時の攻撃。
「あっ、あっ、あっ……んっ……なにか……くる……っ!」
胡桃の指がシーツを掴む力が強くなる。旅人の髪を掴んでいた手が、今はただシーツの上で彷徨う。快楽の波が彼女の小さな身体を飲み込もうとしていた。
旅人は指の動きを少しだけ速めた。内部で指を曲げ、前壁を引っ掻くように刺激する。同時に口の中の乳首を強く吸い上げた。
「──ひッ、あッ、あああッ!」
胡桃の背中がシーツから浮き上がり、華奢な身体が震えた。内壁が旅人の指を痙攣するように締め付ける。大量の蜜が指の間から溢れ出し、シーツに染みを作っていく。
──イッた。
旅人は口を胸から離し、指もゆっくりと引き抜いた。指先には透明な蜜が糸を引いて光っている。それを口に含み、味わう。
──甘い。砂糖ほどではないが、確かに甘く、とろみがある。そして後味はさっぱりとしていて、いくらでも味わえそうだ。
旅人は無意識のうちに、指に残った蜜を舐め取りながら胡桃の顔を見下ろした。彼女は快楽の余韻で息を弾ませ、潤んだ緋色の瞳で旅人を見上げている。白い花型の瞳孔が、潤んだ光の中で揺れていた。
「……空」
掠れた声で名前を呼ぶ。その声は、いつもの陽気な葬儀屋のものではなく、ただ旅人に全てを委ねた一人の少女のものだった。
「……もっと、感じていい?」
旅人の問いに、胡桃は小さく頷いた。その仕草が、深く降り積もった雪のように静かで、けれど確かに温かい。
旅人の唇が、胡桃の胸の頂に深く押し当てられた。一度だけ強く吸い上げると、ふるりと彼女の身体が震える。その反応を掌で確かめるように脇腹を撫でながら、旅人はゆっくりと唇を離した。
赤く熟れた果実のような痕が残された乳首から、舌先を這わせ始める。滑らかな肌の上を、水脈が流れるように。鎖骨の窪みを掠め、肋骨の一本一本を数え上げるように丁寧に舐め下りていく。華奢な腹。へその窪みで舌先をくるくると回せば、胡桃がくすぐったそうに身を捩った。
「ぁっ……くすぐったいよぉ……」
甘えたような抗議。だが旅人は止まらない。旅人の唇が、胡桃の胸元から離れた瞬間、そこに残された濡れた痕跡が正午の光を反射して小さく煌めいた。まるで白磁の器に落とされた朱色の釉薬のように、口づけの跡が薄く染まっている。
「ぁ……」
胡桃の唇から漏れたのは、名残を惜しむような微かな吐息だった。だが旅人はそこで止まるつもりはなかった。唇を離した乳首から、舌先を滑らせるようにして徐々に下方へと下がっていく。
肋骨の一本一本が、薄い皮膚の下に浮かび上がっている。舌がその谷間をなぞるたび、胡桃の呼吸が浅く速くなった。華奢な身体は、旅人の舌の動き一つ一つに反応してしまもう。
「くすぐったい……? それとも……」
旅人は言葉を発さず、ただ舌の動きで答えた。鎖骨の窪みを掠め、胸の谷間を通り抜け、滑らかな腹肌の上をゆっくりと這い下がる。臍のくぼみで一度舌先を止め、円を描くように舐めると、胡桃の腰が微かに揺れた。
──甘い。
肌そのものから、微かな甘い香りがする。汗の塩気はない。まるで成熟した果実の表面のような、さっぱりとした清涼感。旅人の舌は休むことなく、その味を追い求めるように下へと進んでいく。
平坦な下腹部。無毛の滑らかな聖域。舌先が恥丘の緩やかな丘を越えた時、胡桃の太腿が無意識に閉じようとした。
「だめ……そこは……っ」
羞恥と本能的な抵抗。だが旅人の両手が、その華奢な膝を外側へと優しく押し開いた。力では決してなく、ただ逃げ道を塞ぐ温かさで。胡桃の抵抗が、溶けた砂糖のようにゆるりと崩れていく。
「足を開いて、胡桃」
低く、けれど穏やかな声。命令ではなく、懇願に近い響き。その声の温度に、胡桃の最後の迷いが消し飛んだ。
「……ん」
小さく頷き、自ら足を開く。正午の日差しが、その奥に隠されていた秘裂を照らし出した。淡い色の粘膜が、微かな蜜の糸を引いてひくひくと震えている。何も生えていない、無垢で滑らかな聖域が、旅人の眼前に全てを晒していた。
──美しい。
旅人の息が止まるほどの美しさだった。陽光の下で輝く蜜の粒。淡い色のひだひだ。その奥に潛む小さな突起。全てが、胡桃という少女の全てだった。
旅人は顔を寄せ、まずは内腿に唇を押し当てた。
「んっ……!」
太腿の内側の、特に敏感な部分。そこに口づけを落とし、舌で舐め上げる。白い肌に赤い口づけの跡が咲く。右の内腿、そして左の内腿。交互に唇を寄せ、舌を這わせながら、少しずつ中心へと近づいていく。
「空……もう……いじわる……」
胡桃の声が震えている。焦れているのだ。旅人がそこに辿り着くことを待ちながら、同時にそこに辿り着くことへの恐怖も抱いている。その矛盾した感情が、彼女の声に甘い震えを与えていた。
──焦らなくていい。君の全てを味わいたい。
旅人は心の中でそう呟き、ついに舌先を秘裂の中へと滑り込ませた。
「──ぁッ!」
胡桃の背中が反った。シーツを掴む指が白くなる。舌が秘裂の上を、下から上へとゆっくりと這い上がったのだ。
熱かった。指で触れた時とは比べものにならない直接の熱が、舌の表面を焼く。そして味が広がった。甘くとろみのある蜜が、舌先から口内へと流れ込んでくる。砂糖ほどの甘さではない。けれど確かに甘く、そして後味は驚くほどさっぱりとしていた。
──いくらでも味わえる。
旅人の理性が、また一つ融解した。舌は休むことなく動き続ける。秘裂の左右のひだを丁寧に舐め上げ、奥から溢れ出る蜜を啜り取る。ちゅく、じゅる、という湿った音が静かな部屋に響き渡り、胡桃の嬌声と混ざり合う。
「あっ、あっ、そこっ、んぅッ……!」
胡桃の腰が、逃げるように揺れる。だが旅人の両手がその腰を押さえ、舌は執拗に秘裂を味わい続ける。やがて舌先が、秘裂の最上部にある小さな突起を捉えた。
「ひッ──!」
胡桃の身体が跳ねた。まるで電流が流れたかのように、華奢な身体が痙攣する。旅人は舌先でその突起を優しく撫で、そして口全体で包み込むように吸い上げた。
「ああっ! だめっ、だめっ、そこだめぇっ!」
胡桃の両手が旅人の髪に絡み、押し退けようとする。だがその力は弱く、むしろ引き寄せているようにも見えた。口では拒み、手では求める。その不器用な矛盾が、胡桃という少女の本質だった。
旅人は吸い上げる力を強め、舌先で突起を転がすように刺激した。溢れ出る蜜が顎を伝い、シーツに染みを作っていく。甘い香りが鼻孔を満たし、思考を甘い霧で包み込んでいく。
「んっ、あっ、なにか……くる……っ! 空、空……っ!」
名前を呼ぶ声が切迫している。旅人は舌の動きを速め、同時に右手の指を秘裂の入り口に添えた。中指をゆっくりと挿し込む。内壁が指を締め付け、痙攣するように収縮する。
──もう近い。
指を曲げ、前壁を圧迫しながら、舌で突起を吸い上げる。二点同時の刺激が、胡桃の身体を波のように揺さぶった。
「──ぁあああッ!」
胡桃の背中がシーツから浮き上がり、華奢な身体が弓なりに反った。内壁が旅人の指を激しく締め付け、大量の蜜が溢れ出す。痙攣する身体がシーツの上で小さく震え、やがてゆっくりと力が抜けていった。
旅人は唇を離し、指を引き抜いた。口の中には胡桃の甘い蜜が溢れている。その味を嚥下し、再び舌で唇を舐めると、まだ止まらない蜜が秘裂からゆっくりと流れ落ちていた。
──まだ足りない。
旅人の瞳が昏い光を宿して胡桃の秘裂を見つめていた。止めどなく溢れる蜜。その甘さはいくら味わっても飽きることはない。むしろ味わうほどに渇望が増していく。舌先に残る清涼感が理性を麻痺させただ甘い沼へと誘い込む。
胡桃の掠れた声が鼓膜を震わせる。快楽の余韻で潤んだ緋色の瞳が旅人を見下ろしていた。白い花型の瞳孔が揺らめき理性の向こう側にある感情を透かして見せた。その瞳は明確に旅人を求めていた。
「空……私、もう我慢できない…」
胡桃の手が旅人の頬に添えられる。指先は微かに震えていたがその眼差しには迷いがない。彼女は自ら足を大きく開き旅人を招き入れた。
旅人はゆっくりと身を起こした。まだ足りない。口と指だけでは到底満たされないこの渇望を癒やせるのは彼女の最深部だけだ。旅人の手が自分の衣服に掛かる。外套を脱ぎ捨て上衣を引き抜く。晒された筋肉の起伏に正午の陽光が影を落とした。
そして最後の布地を下ろした時そこから現れたのは猛々しいほどに屹立した旅人の剛直だった。太く長く脈打つその姿は彼の理性が既に限界にあることを雄弁に物語っている。先端からは透明的な先走りの雫が滲み鈴口を濡らしていた。
「っ……」
胡桃の喉が小さく鳴った。その視線は旅人の剛直に釘付けになっている。驚きとそして本能的な期待が入り混じった表情。
「……私の中に来て」
胡桃の甘い懇願が火種となった。
旅人は胡桃の両脚を己の腰に抱え上げるようにして大きく開かせた。無毛の秘裂が露わになりその奥にある窄まりがひくひくと震えているのが見て取れる。旅人は剛直の先端をその濡れた割れ目に押し当てた。
「んっ……!」
熱と硬さが直接触れた瞬間胡桃の背筋が反った。旅人は亀頭で秘裂を上下に擦り溢れる蜜と先走りを混ぜ合わせる。ぐちゅぐちゅという水音が再び響き始める。
「胡桃……入れるよ」
旅人の声は低く掠れていた。それは警告でありそして愛の言葉だった。
「うん……きて空」
旅人は腰をゆっくりと前に押し出した。
――熱い。
それが最初の感覚だった。猛々しいほどに脈打つ剛直の先端が、胡桃の秘裂の奥へと沈み込んでいく感触は、まるで溶岩が雪原を侵食していくかのような熱量を孕んでいた。ひくひくと収縮を繰り返す内壁が、異物の侵入を拒むように、あるいは歓迎するように押し寄せては離れていく。繊細な襞が一枚一枚、剛直の表面を舐め尽くすように擦り上げ、その摩擦が火花のような快楽を脊髄へと送り込んだ。
「んっ……あぁっ……!」
胡桃の喉から、悲鳴とも甘えともつかない声が漏れる。白磁のような太腿が旅人の腰に食い込み、無意識に締め付ける力が強くなる。その圧倒的な締め付けに、旅人の呼吸が荒くなった。
さらに奥へと進む。濡れた粘膜が誘うように蠢き、剛直を飲み込んでいく。だがその進行は、ある一点で阻害された。
──薄膜。
指先で触れた時にはわからなかった微かな抵抗が、剛直の先端に触れた瞬間、明確な障壁として立ち塞がる。それは処女の証であり、これまで誰にも踏み入れたことのない聖域の境界線だった。
旅人の動きがぴたりと止まった。九人いる恋人たちとの初めてのセックスの経験を経て鋭敏に彼女の永遠に失う乙女と女の境目だ。乱暴に踏み入る場所ではない。
突然訪れた静止に、胡桃が戸惑ったように目を開けた。潤んだ緋色の瞳が、問いかけるように旅人を見上げる。
「空……? どうして……止まっちゃったの……?」
掠れた声が響く。不安と期待がない交ぜになった表情。旅人は剛直を押し当てたまま、真剣に胡桃の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。額に浮かんだ汗が顎を伝い落ちる。
「胡桃」
旅人の声は低く、そしてひどく真摯だった。夜の湖面に石を投げ込んだような重みを持つその声に胡桃の心臓が小さく跳ねた。
「この先は……もう戻れないよ」
旅人の手が胡桃の頬に添えられる。親指の腹で目尻に滲んだ涙を拭いながらその温もりを確かめるように優しく撫でた。
「君の初めてを……俺が貰うよ。いいんだね?」
それは確認であり祈りだった。一度壊してしまったものへの畏怖と二度と傷つけまいとする誓約。言葉以上の想いがその短い問いの中に凝縮されていた。最後の猶予、後悔しない選択かどうかを問うた。
そしてその問いに対して胡桃の瞳が、真っ直ぐに旅人を見つめ返した。
潤んだ緋色の奥で、白い花型の瞳孔が揺れていた。だがその揺らぎは迷いではない。水面に落ちた石が波紋を広げるように、彼女の決意が瞳の奥から外へと溢れ出していたのだ。
「空」
彼女の声は震えていた。けれどそれは恐怖の震えではない。三日月が雲間から顔を覗かせる時のような、静かで確かな光を孕んだ声だった。
「後悔なんて、しない」
胡桃の手が旅人の頬に添えられる。小さくて華奢な指先が、旅人の肌の上を辿っていく。その指先は微かに熱を帯びていて、まるで焚き火の残り火のように心許なく、けれど確かに温かかった。
「私の初めてを空に捧げる事。空の恋人になる事。空の赤ちゃんを産む事」
ひとつ、ひとつ。言葉を噛みしめるように紡がれる告白 was だった。陽気な葬儀屋の仮面が完全に剥がれ落ち、その下にある一人の少女の素顔が、正午の陽光の下に晒されている。褪せた赤の化粧が施された目尻が微かに震え、白磁の頬に薔薇色の紅潮が広がっていく。
「全部、私の願いだよ」
胡桃の唇が、優しく歪んだ。それは笑顔であり、そして祈りだった。黄泉の境界を見つめる者として培った強靭さと、初めて男に全てを委ねる少女の脆さが、その表情に奇跡のように共存している。
「だから──お願い。私を、空のものにして」
──ああ。
旅人の胸の奥で、何かが音を立てて砕けた。それは理性の最後の堤防だった。慈愛と渇望が溶け合い、マグマのような熱流となって全身を駆け巡る。この少女の、悲しいほどに真っ直ぐな想い。隠すことも飾ることもなく、ただ全てを差し出してくれる健気さ。
──応えなければならない。言葉ではなく、行動で。
旅人は胡桃の唇に、自分の唇を押し当てた。
「んっ……!」
深く、そして激烈な口づけだった。舌先が彼女の唇を割り開き、口腔内へと侵入する。胡桃の舌を捉え、絡め取り、口腔の隅々まで舐め回す。彼女の甘い唾液を啜り上げ、喉が鳴る音が静かな部屋に響き渡った。
そして──口づけに胡桃の意識が奪われたその瞬間、旅人は腰を一気に前に押し出した。
「──んぐッ!」
鋭い痛みが胡桃の身体を貫いた。薄膜が引き伸ばされ、限界を超えて裂けた瞬間、華奢な身体がベッドの上で跳ねた。旅人の剛直が処女の証を突破し、そのまま一気に最奥へと突き進んでいく。狭く熱い内壁が、侵入する異物に驚愕して痙攣するように収縮を繰り返す。繊細な襞が剛直の表面を削り取るように擦り、その摩擦が焼け付くような熱を生み出した。
「ぁッ、あッ、ああッ……!」
唇が離れた瞬間、胡桃の口から悲鳴に近い嬌声が迸った。白磁の背中がシーツから浮き上がり、華奢な身体が弓なりに反る。旅人の首に回した腕に力が込められ、爪が背中の筋肉に食い込んだ。痛みではない。処女膜が破られた鋭い痛楚が、背骨を駆け上がり脳髄を白く焼き尽くしたのだ。
──狭い。そして熱い。
旅人の剛直が、胡桃の最深部に辿り着いた。子宮口の柔らかな感触が先端に触れる。九人の恋人たちとの経験の中でも、これほどの締め付けを感じた相手はいなかった。指一本でさえ抵抗を見せた狭さが、旅人の剛直を許容しようと必死に広がりながら、同時に異物を排除しようと痙攣を繰り返している。内壁が波のように収縮し、剛直の表面を蠢く様は、まるで生き物だった。
旅人は最奥まで埋め込んだ状態で静止した。胡桃の呼吸が整うのを待つ。唇を離した彼女の顔には、涙が数筋流れていた。正午の光を反射して、白磁の頬を伝う涙が小さな川のように煌めいている。
「……痛かったかい?」
旅人の声は低く、そしてひどく優しかった。額に浮かんだ汗が顎を伝い、胡桃の鎖骨の窪みに落ちた。
胡桃は目を開けた。潤んだ緋色の瞳が、まだ涙で霞んでいる。だがその奥にある光は、痛みに屈してなどいなかった。
「……痛い」
正直な言葉。だが彼女はすぐに続けた。
「でも……空がいる。空が私の中にいる」
その声は、痛みの向こう側にある喜びを捉えた瞬間の、初めての光を見る者の囁きだった。胡桃の手が旅人の背中を撫で下ろす。爪の跡が残った背中の筋肉を、労わるように優しく指先が辿っていく。
「嬉しい……私、空の女になったんだ」
その言葉が、旅人の胸を貫いた。
──この少女は、痛みの中に喜びを見つけたのだ。
甘雨との初めてが黑歴史として心に刻まれている旅人にとって、その言葉は救いだった。傷つけることを恐れるあまり躊躇した自分の選択が、正しかったのだと。彼女の覚悟が、その痛みを喜びに変えたのだと。
「ああ。君は俺のものだ、胡桃」
旅人の声が、少し震えていた。その震えを隠そうともせず、旅人は胡桃の額に唇を落とした。汗と涙が混じった塩気はない。ただ甘くさっぱりとした彼女の肌の味道が唇に残る。
「そして俺は、君のものだ」
胡桃の瞳が大きく見開かれた。緋色の瞳の奥で、白い花型の瞳孔が揺れ、そして歓喜に輝いた。唇が震え、何か言いかけたその瞬間──旅人はゆっくりと腰を引き戻し、そして再びゆっくりと奥へと押し込んだ。
「──ぁッ!」
胡桃の背中が再び反った。痛みはまだあるはずだ。だがその声に混じっているのは、痛みだけではない。微かな、けれど確かに存在する、未知の感覚の芽生えだった。
旅人はゆっくりと、丁寧にピストン運動を開始した。最初は浅く、優しく。胡桃の内壁が旅人の剛直に慣れるまで、時間をかけて。繊細な襞が一枚一枚剛直の表面を舐め尽くすように擦り、その摩擦が火花のような快楽を脊髄へと送り込んでいく。
「んっ……ぁっ……空……っ」
胡桃の声が、少しずつ変化していく。痛みに混じっていた怯えが薄れ、代わりに微かな甘さが滲み始めた。内壁の収縮が、痛みを伴う痙攣から、快楽を求める蠕動へと変わっていく。旅人の剛直が前壁の敏感な箇所を掠めた瞬間、胡桃の腰が無意識に揺れた。
──もう感じ始めている。
旅人の手が胡桃の腰を掴み、角度を少し変えた。剛直の腹が秘裂の最上部にある小さな突起を擦るように、密着度を高める。同時に右手の親指で、その突起を円を描くように弄び始めた。
「ひッ──! そこ、だめっ!」
胡桃の声が跳ね上がった。痛みが快楽に摩り替わる境界線を、旅人は見つけていた。内壁の収縮が激しくなり、蜜が溢れ出して剛直の動きを滑らかにしていく。ちゅぽ、ぐちゅ、という湿った水音が静かな部屋に響き始めた。
「空、空……っ! なにか……変なの……っ!」
胡桃の指がシーツを掴む。白磁の背中がシーツの上で小さく弓なりに反り、華奢な身体が微かに震えている。未知の快楽に翻弄される少女の表情は、苦悶と恍惚の間で揺れていた。
「大丈夫だ。感じていいんだよ、胡桃」
旅人の声が、熱に浮かんだ胡桃の意識を繋ぎ止める錨になった。低く、優しく、そして確かな響き。その声が鼓膜を震わせるたび、胡桃の内壁がきゅうきゅうと旅人の剛直を締め付ける。
「んっ、あっ、あっ、あっ……!」
旅人のピストン運動が少しずつ深くなっていく。浅いところから徐々に奥へ、奥へ。胡桃の内壁が旅人の剛直の形を覚え、飲み込んでいく。最初は指一本でも抵抗を見せた狭さが、今は旅人の剛直をしっかりと包み込み、熱い蜜で潤しながら歓迎している。
そしてついに、旅人の剛直の先端が胡桃の最深部にある子宮口の柔らかな感触に触れた。
「──ぁッ!」
胡桃の身体が跳ねた。子宮口に触れられた衝撃が、処女膜を破られた痛みとは全く異なる、痺れるような快感となって背骨を駆け上がった。華奢な身体がシーツの上で小さく痙攣し、内壁が旅人の剛直を激しく締め付ける。
「そこ……っ! そこ、だめっ! 変になるっ!」
胡桃の声が裏返った。子宮口を弄られることに弱い。それは彼女の身体の秘密だった。旅人の剛直が子宮口を押し、擦り、時に軽く貫くように突くたび、胡桃の全身に電流が走る。
「ひッ、あッ、ああッ! 空っ、空っ、なにかくるっ!」
旅人は腰の動きを速めた。深く、強く、子宮口を狙い澄ましたように突き上げる。胡桃の華奢な身体がベッドの上で揺さぶられ、正午の陽光が揺れる黒髪と白い肌のコントラストを際立たせている。
「──一緒に、イこうか」
旅人の低い囁きが、胡桃の耳元で響いた。その瞬間、旅人の剛直が子宮口を一層深く押し開き、その狭い窄まりを貫いた。
「──ぁあああッ!」
胡桃の背中がシーツから完全に浮き上がり、華奢な身体が弓なりに反った。内壁が旅人の剛直を痙攣するように激しく締め付ける。子宮口がきゅうきゅうと旅人の先端を締め上げ、注ぎ込まれるであろう精を一滴も逃すまいとするかのように収縮を繰り返す。
その強烈な締め付けに、旅人の理性がついに焼き切れた。
「──胡桃……!」
旅人の低い唸り声と共に、剛直が胡桃の子宮の奥深くで爆発した。熱い精が子宮口を押し開け、子宮内へと注ぎ込まれる。どくっ、どくっ、という脈動が胡桃の子宮内で直接響き渡り、その熱さが処女膜を破られた痛みを完全に塗り替えていく。
「あッ、あッ、熱いっ! 空のが……私の中に……っ!」
胡桃の瞳が見開かれ、涙が溢れ出した。だがそれは痛みの涙ではない。初めて男の精を受け入れた喜びと、温かさに満たされた感動の涙だった。注ぎ込まれた精の熱さが、子宮の中で広がり、華奢な身体の奥底を満たしていく。旅人の存在を、熱として、命として、直接感じる。
──十七年間の人生で培った強さの裏に隠された寂しさを溶かす熱だ。
旅人の精が注ぎ止まるまで、二人はそのままの姿勢で抱き合っていた。旅人の剛直はまだ胡桃の中で脈動し、子宮口がそれを逃すまいと締め付けている。余韻の波が二人の身体を交互に揺さぶり、やがてゆっくりと引いていった。
「……空」
胡桃の掠れた声が、旅人の胸に伏せた顔の下から漏れた。声は震えていたが、その震えには喜びが混じっていた。
「私……空のものになったんだ」
その言葉は、確信に満ちていた。
旅人は胡桃の華奢な身体を強く抱きしめた。子宮の中に残された精の温もりが、二人を繋いだまま離さない。額を合わせ、鼻先が触れ合うほどの距離で、旅人は胡桃の緋色の瞳を見つめた。
「ああ。君は俺のものだ。二度と離さない」
その誓いは、甘雨に向けたものと同じ重みを持っていた。だが、甘雨の時のような後悔はここにはない。確かな手応えと、深い愛しさだけが、旅人の胸を満たしていた。
胡桃の唇が、いたずらっぽく歪んだ。
「えへへ。……じゃあ、私にも赤ちゃん……ちょーだい。 甘雨様を孕ませたの知ってるんだよ?」
璃月港は一時基礎の話題で持ち切りだったからね。と旅人を揶揄うように最近の璃月港での状況を口にする。その言葉に、旅人の口元が自然と緩んだ。
「……その噂、どこまで広がってるの」
旅人の声は低く、咎める響きではなくむしろ諦念を含んだ苦笑だった。璃月港の情報網の密度は、往生堂の棺桶の桐材と同じくらい堅牢で隙がない。甘雨のお腹が目立ち始めた頃には、半月も経たずに港中の茶館で話題になっていたらしい。
「堂主たるもの、街の情報は把握しておかないとね。甘雨様のお腹が少し膨らんでるのを、万民堂の若旦那が目撃したって話」
胡桃の指先が旅人の胸板の上で無意味な図形を描いている。爪の跡が筋肉の溝をなぞるたび、微かな痒みと心地よさが混ざり合う。
「それで? 皆なんて言ってた?」
「『英雄様は昼も夜も忙しいねぇ』って。お婆ちゃん方の感想が一番面白かったかな。『若い頃の岩王帝君もあんな感じだったよ』だって。流石に帝君に失礼だと思うんだけど」
旅人は短く笑った。笑い声が喉の奥で震える感覚が、まだ熱の残る身体に心地よく響く。胡桃の冗談めいた語り口の裏に、確かな嫉妬と憧憬が滲んでいることを旅人は感じ取っていた。
彼女は知っていたのだ。甘雨が旅人の子を宿したことを。そして、その事実を抱えたまま、ずっと待っていた。自分の番が来ることを。自分もそうしてほしいと願う気持ちを、陽気な仮面の下に隠して。
「胡桃」
旅人の手が胡桃の頬を包み込んだ。親指の腹が目尻の褪せた赤の化粧�を優しくなぞる。正午の陽光が二人を照らし、シーツの上に交わった影が一つに溶けていた。
「君が望むなら」
声は低く、けれど灯火のように確かだった。
「俺の子供を、君に」
胡桃の緋色の瞳が見開かれた。白い花型の瞳孔が揺れ、光を弾く。その瞳の奥で、期待と不安と歓喜が万華鏡のように回転していた。
「……本当に、いいの」
掠れた声。陽気な葬儀屋の声ではない。黄泉の境界を見つめる者の声でもない。ただ、愛した男に全てを委ねようとする一人の少女の声。
「本当に。……ただ、まだ中に出したばかりだから、少し休憩してもいいかな」
「……えへへ、そうだよね。ごめんね、欲張りすぎたかな」
胡桃の顔が旅人の胸に埋められた。黒髪の毛先が真紅に染まった部分が、旅人の鎖骨の窪みで微かにくすぐったい。
「でも空。一つだけ約束して」
「ん?」
「私のお腹に赤ちゃんができたら……ちゃんとお葬式の準備、手伝ってね。往生堂の仕事じゃなくて、私のために」
その言葉の意味を理解するまで、旅人の思考は二拍ほど遅れた。
──妊娠期間のことか。神の目を持たない胡桃の妊娠は、通常の人間と同じ期間が必要だ。だが胡桃は半仙ではなく、純粋な人間の少女だ。甘雨とは違い、十ヶ月近くのその重みを背負うことになる。その十ヶ月の間、彼女の華奢な身体は変化し、生活は制限され、やがて新しい命がこの世界に生を受ける。
「当たり前だ。……いや、それ以前に、葬式の準備って何だよ」
「えへへ、やっぱり変な反応」
胡桃が顔を上げ、鼻先を旅人の鼻先に押し当てた。至近距離で揺れる緋色の瞳が、いたずらっぽく細められる。
「私の初めての葬式は、自分の子供の誕生祝いの準備だよ。……なんか、往生堂らしいと思わない?」
旅人は答える代わりに、胡桃の額に唇を落とした。温かく、乾いた、誓いの口づけ。
「往生堂らしいよ。君らしい」
胡桃の笑い声が、旅人の胸の中で小さく震えた。
「……空」
「ん?」
「もう一回、して?」
その声は、甘雨が清心の花弁を愛でるような静けさで、けれど確かに欲求を孕んでいた。旅人の剛直はまだ胡桃の中に在る。半勃ちになりかけていたそれが、熱を帯びた粘膜の感触に呼び覚まされ、再び硬度を増し始めていた。
「……君、さっき処女を失ったばかりだよ。大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないとどうなるの? 私の英雄さんが、優しくしてくれるんでしょ?」
挑発的な笑み。だがその笑みの裏に、確かな信頼がある。痛みを共有し、精を受け入れ、互いの体温を知った後の信頼。その信頼が、胡桃の瞳の奥で静かに燃えていた。
旅人の手が、胡桃の腰を掴んだ。まだ華奢で、力を込めれば壊れてしまいそうなほど細い。だがその中に宿る魂は、生前の葬儀を司る者としての強靭さを秘めている。
──断れない。この少女の覚悟に、断ることなどできない。
旅人は、まだ胡桃の中にある剛直を、ゆっくりと動かし始めた。
「──んっ!」
胡桃の背中がシーツに押し付けられ、華奢な身体が微かに反る。まだ処女を失った直後の敏感さが残る内壁が、旅人の動きに即座に反応して収縮を繰り返す。
「痛くない?」
「痛い……けど、空の動きに合わせると、なんか……変な感じ」
その「変な感じ」こそが、痛みが快楽へと摩り替わる境界線だ。旅人はゆっくりと、丁寧にピストン運動を続けた。胡桃の内壁が旅人の剛直の形を覚え、一枚一枚の襞が異物を異物としてではなく、自分の一部として受け入れ始めていく。
「空……もっと近く」
胡桃の腕が旅人の首に回され、華奢な身体が密着する。胸と胸、腹と腹、そして結合部。互いの鼓動が重なり合い、背骨を駆け上がって脳髄を蕫かす。旅人の唇が胡桃の耳元に寄せられ、耳朶を軽く啄んだ。
「──ひゃっ!」
耳元への刺激に、胡桃の内壁がきゅうきゅうと締め付ける。耳は性感帯だ。普段の陽気な葬儀屋の帽子で隠されている、秘密の敏感部位。
「ここ、感じるんだ」
「だ、だめ! 耳はずるいよぉ……っ」
旅人の舌が耳朶の裏側をなぞる。同時に腰の動きを少し深くする。二箇所同時の刺激に、胡桃の呼吸が乱れ始めた。
「んっ、あっ、空……耳と……下、同時にだめぇ……っ!」
胡桃の指が旅人の背中で爪を立てる。だがその力は弱く、むしろしがみついているようだった。白磁の背中がシーツの上で小さく弓なりに反り、華奢な身体が微かに震えている。
旅人は耳元を攻めながら、腰の動きを少しずつ速めていった。胡桃の内壁が十分に潤い、剛直の動きを滑らかに受け入れ始めている。先ほどの処女喪失の痛みはまだ残っているはずだが、それを上回る快楽が彼女の身体を満たし始めていた。
「空っ、空っ、なんか……くるっ! さっきの……またくるっ!」
胡桃の声が裏返る。旅人は耳元から唇を離し、代わりに胡桃の顔を見つめた。快楽に歪んだ表情。潤んだ緋色の瞳。開いた口から漏れる荒い息。白磁の頬に薔薇色の紅潮が広がり、額に浮かんだ汗の粒が正午の光を反射して煌めいている。
──愛おしい。
旅人の胸の奥で、その一言だけが響いていた。守りたい。この少女の全てを、二度と離さない。その誓いが、心臓の鼓動と共に全身を駆け巡る。
旅人は胡桃の両脚を己の肩に担ぎ上げた。角度が変わり、剛直が更深く奥へと侵入していく。折り畳まれた華奢な身体がベッドの上で小さく揺れ、黒髪がシーツの上に扇のように広がる。
「──ぁあッ! 深いっ! さっきより深いっ!」
胡桃の声が跳ね上がった。旅人の剛直が子宮口に触れ、その柔らかな感触を先端で確かめる。前回の射精の余韻でまだ敏感になっている子宮口が、旅人の先端に触れた瞬間、きゅうきゅうと収縮を繰り返した。
旅人の腰がゆっくりと引き抜かれ、剛直の先端が膣口付近まで戻る。内壁が剥がれるように収縮し、名残惜しそうに旅人の幹を締め付けていく。そこで旅人は再びゆっくりと奥へと押し込んだ。
「んっ……ぁ……」
胡桃の喉から細い吐息が漏れる。浅い場所と深い場所、その往復のリズムが胡桃の身体を丁寧に梳りほぐすように広がっていく。
──味わいたい。この少女の内側の全てを。
旅人の意識は剛直の先端に集中していた。胡桃の内壁が持つ襞の一枚一枚、その温度と圧力の微妙な変化を、真皮を通して読み取るように感じ取る。深く押し込んだ時、子宮口の柔らかな感触が亀頭の先端に触れる。そこを優しく押し上げた。
「──っ! そこ……!」
胡桃の華奢な身体が跳ねた。子宮口への刺激が背骨を駆け上がり、脳髄に甘い電流を流し込む。だが旅人はそこで留まらず、剛直の先端で子宮口を円を描くようにゆっくりと擦り始めた。
「あぁっ!? な、なに…それぇえっ!」
胡桃の声が裏返る。子宮口をぐりぐりと擦られる感覚は、これまでの突き上げとは異なる種類の快楽だった。痺れるような、じんわりと浸透するような熱が下腹部の奥から全身へと広がっていく。太腿が無意識に旅人の腰を締め付け、爪が背中に食い込む。
「……胡桃、ここ……感じやすいんだね。ほら」
旅人の声は低く、楽しんでいるような響きが混じっていた。剛直の先端で子宮口を突き上げ、円を描き、そして再び浅い場所へと引き戻す。その不規則なリズムが胡桃の身体を翻弄していく。
「あぁんっ…! ずるいっ……そんなとこ、ずるいよぉ……んんっ!」
胡桃の抗議は甘い悲鳴に変わっていた。深く突かれたと思えば浅く擦られ、子宮口を押し上げられたと思えば今度は円を描いて擦られる。次に来る刺激が予測できない。その不確定性が、快楽を増幅させていた。
旅人は胡桃の耳元に唇を寄せ、囁くように尋ねた。
「どこが気持ちいい? 深いところ? それとも……」
剛直を一気に最奥まで押し込んだ。子宮口が先端に触れ、その窄まりがきゅうきゅうと収縮する。
「──ぁあッ! そこっ、そこがっ!」
胡桃の背中がシーツから浮き上がり、華奢な身体が弓なりに反った。旅人はそのまま子宮口を強く突き上げた。一撃。二撃。三撃。
「あっ、あっ、あっ──!」
胡桃の嬌声が高くなる。内壁が旅人の剛直を激しく締め付け、蜜が溢れ出して結合部から滴り落ちる。シーツに染みが広がり、甘い香りが部屋の空気を濃く染めていく。
──まだ足りない。
旅人は腰の動きを緩め、再び浅い場所へと戻した。剛直の先端が膣口付近を擦る。内壁の入り口付近の敏感な襞が、異物の退出に名残惜しそうに収縮する。
「や……もどって……奥に……っ」
胡桃が腰を突き出し、自ら旅人の剛直を深く受け入れようとする。だが旅人はそれを許さず、浅い場所でゆっくりとピストンを繰り返した。意地悪なリズム。
「欲しい? 奥が欲しい?」
旅人の問いに、胡桃の頬が薔薇色に染まった。羞恥と欲求が混ざり合い、その矛盾が緋色の瞳の奥で揺れる。
「……欲しい。空のが奥に欲しい……っ」
掠れた懇願。陽気な葬儀屋の仮面はとうに剥がれ落ち、ただ一人の男に全てを委ねる少女の素顔だけがそこにある。
「何が欲しいの?」
「…せ、精液っ! 空の精液が奥に欲しいの!」
旅人はその答えに満足げに口元を緩め、再び剛直を最奥へと押し込んだ。子宮口が亀頭を迎え、柔らかな感触で包み込む。
「──ぁッ!」
胡桃の身体が再び跳ねた。旅人は子宮口を優しく押し上げ、円を描くように擦り、そして強く突く。三つのリズムを不規則に繰り返す。胡桃の身体がそのリズムに翻弄され、快楽の波に溺れていく。
「空、空っ! なにか……またくるっ! さっきより……強いのっ!」
胡桃の指が旅人の背中で爪を立てる。白磁の太腿が旅人の腰に食い込み、無意識に締め付ける力が強くなる。内壁が波のように収縮し、剛直の表面を舐め尽くすように蠢く。
「大丈夫だよ胡桃。それが絶頂だから。ちゃんとイクって言うんだよ」
旅人は腰の動きを速めた。深く、浅く、子宮口を突き上げ、円を描く。その複雑なリズムが胡桃の身体を追い詰めていく。蜜が溢れ、結合部から湿った水音が静かな部屋に響き渡る。
「──ぁあッ、あッ、ああッ!」
胡桃の背中がシーツから完全に浮き上がり、華奢な身体が弓なりに反った。内壁が旅人の剛直を痙攣するように激しく締め付ける。子宮口がきゅうきゅうと旅人の先端を締め上げ、注ぎ込まれるであろう精液を一滴も逃すまいとするかのように収縮を繰り返す。
──イッた。
旅人は胡桃の絶頂を感じ取り、腰の動きを緩めた。だが止まらない。絶頂の余韻が残る敏感な内壁を、ゆっくりと丁寧に擦り続ける。
「やっ……まだ……っ」
胡桃が過敏になった身体を小さく震わせる。絶頂の後の刺激は強すぎる。だが旅人はそこで止めるつもりはなかった。剛直の先端で子宮口を優しく撫でるように擦る。
「ちゃんとイクって言わなないと、ほら」
「──ひッ! だめっ、いま、だめぇっ!」
胡桃の声が裏返る。絶頂の直後の子宮口への刺激が、別の快楽の波を呼び起こす。内壁が再び収縮を始め、蜜が溢れ出した。
旅人は胡桃の顔を見下ろした。潤んだ緋色の瞳が、快楽の泥沼に沈みかけている。白い花型の瞳孔が揺れ、開いた口から舌がだらしなく覗いている。正午の陽光が汗ばんだ白磁の肌を照らし、その扇情的な姿を際立たせていた。
──まだ味わいたい。もっと。
旅人の理性がまた一つ融解した。剛直の先端で子宮口を強く突き上げた。
「──ぁああッ!」
胡桃の身体が跳ね、内壁が激しく収縮する。旅人はその締め付けを感じながら、再び深い場所と浅い場所を往復し始めた。
「──ぁあッ! 深いっ! さっきより深いっ!」
胡桃の声が跳ね上がった。折り畳まれた華奢な身体がベッドの上で小さく揺れ、黒髪がシーツの上に扇のように広がる。子宮口が旅人の先端に触れ、きゅうきゅうと収縮を繰り返している。
旅人はそこで留まらなかった。
剛直の先端で子宮口を優しく押し上げ、そしてゆっくりと円を描くように擦り始めた。ぐり、ぐり、と粘膜同士が擦れ合う感触が剛直の先端から脳髄へと直接伝わっていく。子宮口の柔らかな感触。まるで熟れた果実の表面を指先で転がしているかのような、弾力と熱を孕んだ感触だった。
「──っ! そこ……! そこだめぇっ!」
胡桃の背中がシーツから浮き上がり、華奢な身体が弓なりに反った。子宮口を擦られる刺激が背骨を駆け上がり、脳髄を白く染めていく。
「可愛いよ、胡桃。もっと可愛い所を見せてくれ」
旅人の胸の奥で、慈愛と渇望が混ざり合った熱い塊が膨れ上がった。この少女の全ての反応を、一つ残らず味わいたい。その原始的な衝動が、腰の動きを支配していく。
旅人は子宮口を円を描くように擦った後、不意に腰を引いた。剛直が最奥から膣口付近までゆっくりと引き抜かれる。内壁が名残惜しそうに収縮し、旅人の剛直を逃すまいと締め付ける。
「や……抜いちゃ、だめ……っ」
胡桃が不満げな声を漏らす。だが旅人はそこで止まらなかった。浅い位置で二、三度ピストンを繰り返し、膣口付近の敏感な襞を擦り上げる。それから再びゆっくりと、最奥へと押し込んだ。
「──ぁッ、あッ!」
胡桃の声が跳ねる。浅い場所と深い場所、その往復のリズムが胡桃の内壁を丁寧に梳りほぐすように広がっていく。剛直の表面が前壁の敏感な箇所を掠め、そして子宮口に到達する。その一連の動作が、胡桃の身体に予測不能な快楽の波を次々と打ち付けていた。
「空っ、空っ……なんか、変なのっ! 深いのも浅いのも、両方だめぇっ!」
胡桃の旅人の背中を掴む力が強くなる。白磁の背中がシーツの上で小さく弓なりに反り、華奢な身体が微かに震えている。予測不能な刺激に翻弄される少女の表情は、苦悶と恍惚の間で揺れていた。
旅人はその反応を楽しみながら、再び最奥で剛直を止めた。子宮口に先端を押し当て、優しく押し上げる。そして──今度は強く、一突き。
「──ひッ! あッ!」
胡桃の身体が跳ねた。子宮口への強い刺激が背骨を駆け上がり、全身を痙攣させる。内壁が旅人の剛直を激しく締め付け、蜜が溢れ出して結合部から滴り落ちる。
旅人はそこで再び円を描くように子宮口を擦り始めた。優しく、ゆっくりと。先ほどの強い刺激の余韻が残る子宮口に、丁寧で執拗な愛撫を施していく。
「や……そこ、ぐりぐりしないで……っ! 変になるっ!」
胡桃の声が裏返る。子宮口を円を描くように擦られる感覚は、突き上げられる刺激とはまた別の種類の快楽だった。じんわりと浸透するような熱が下腹部の奥から全身へと広がり、手足の先まで痺れさせる。
──この感覚、彼女は初めてだ。
旅人は剛直の先端で子宮口の周囲を丁寧になぞった。子宮口の窄まりがきゅうきゅうと収縮し、旅人の先端を締め付ける。その感触が、旅人の理性を又一つ削り取っていく。
「胡桃……ここ、すごく可愛いよ」
旅人の低い声が鼓膜を震わせる。その声に胡桃の内壁が反応し、収縮が激しくなる。
「だ、だめ……そんなこと言わないで……っ!」
羞恥と快楽が混ざり合い、胡桃の頬がさらに紅潮する。だが旅人は止まらない。再び腰を引き、浅い場所へと戻る。そして深く押し込む。子宮口に到達し、優しく押し上げ、円を描く。不規則な三つのリズムが胡桃の身体を翻弄していく。
「あっ、あっ、あっ──んっ、んあぁっ!」
胡桃の太腿が旅人の肩の上で震え、白磁の背中がシーツから浮き上がる。内壁が波のように収縮し、剛直の表面を舐め尽くすように蠢く。蜜が溢れ出し、シーツに大きな染みを作っていく。甘い香りが部屋の空気を濃く染め、思考を甘い霧で包み込んでいく。
旅人は胡桃の反応を一つ一つ確かめながら、腰の動きを少しずつ速めていった。深く、浅く、子宮口を突き上げ、円を描く。その複雑なリズムが、胡桃の身体を確実に追い詰めていく。
「空、空っ! もっと……もっと奥……っ!」
胡桃の懇願が火種となった。旅人は剛直を最奥まで押し込み、子宮口を強く突き上げた。一撃。二撃。三撃。そして再び円を描くように擦る。優しさと強さが交互に波のように押し寄せ、胡桃の華奢な身体がその都度ベッドの上で跳ねる。
「──ぁああッ! だめっ、だめっ、いくっ! イクっ!」
胡桃の背中がシーツから完全に浮き上がり、華奢な身体が弓なりに反った。内壁が旅人の剛直を痙攣するように激しく締め付ける。子宮口がきゅうきゅうと旅人の先端を締め上げ収縮を繰り返す。
旅人は胡桃の絶頂を感じ取り、腰の動きを緩めた。だが止まらない。絶頂の余韻が残る敏感な内壁を、ゆっくりと丁寧に擦り続ける。子宮口を優しく撫でるように。
「──ひッ! いま、だめぇっ! いまイッたばっかりでぇ……っ!」
胡桃が過敏になった身体を小さく震わせる。絶頂の直後の子宮口への刺激が、別の快楽の波を呼び起こす。内壁が再び収縮を始め、蜜が溢れ出した。
旅人は自分の腕で胡桃の華奢な身体を抱き起こした。結合したままの姿勢で、胡桃を膝の上に乗せる。対面座位。重力で剛直が更深く奥へと沈み込み、子宮口が亀頭を飲み込むように収縮する。
「──ぁッ! 深いっ! さっきより……もっと深いっ!」
胡桃の声が裏返る。旅人の首に腕を回し、縋りつくようにしがみつく。密着した胸と胸、お腹とお腹。互いの鼓動が重なり合い、背骨を駆け上がって脳髄を蕩かす。
旅人は胡桃の腰を掴み、ゆっくりと上下に動かし始めた。重力を利用したピストン運動。剛直が膣の最深部を往復し、その都度子宮口を突き上げる。
「あっ、あっ、あっ……! 空、イクっ…空っ!」
胡桃の嬌声が旅人の耳元で響く。潤んだ緋色の瞳が至近距離で揺れ、白い花型の瞳孔が快楽に歪んでいる。汗ばんだ額が旅人の額に押し当てられ、鼻先が触れ合う。
旅人は胡桃の腰の動きを速めた。下から突き上げるように腰を振る。剛直が子宮口を強く突き上げ、円を描くように擦り、そして引き抜く。そのリズムが胡桃の身体を波のように揺さぶる。
「一緒にイこう、胡桃!」
旅人の低い囁きが胡桃の耳元で響いた。その瞬間、旅人の剛直が子宮口を一層深く押し開き、その狭い窄まりを先端が貫いた。
「ぁああッ! イクぅぅうう!!」
胡桃の背中が反り、華奢な身体が旅人の腕の中で痙攣した。内壁が旅人の剛直を激しく締め付け、子宮口がきゅうきゅうと旅人の先端を締め上げる。その強烈な締め付けに、旅人の我慢がついに焼き切れた。
「──胡桃っ、出すよ!」
旅人の低い唸り声と共に剛直の先端が胡桃の子宮の口を僅かにこじ開けて爆発した。熱い精が子宮口を押し開け、子宮内へと注ぎ込まれる。どくっどくっという脈動が胡桃の子宮内で直接響き渡り、その熱さが全身を満たしていく。
「あッ、あッ、熱いっ! 空のが……また、中にっ!」
胡桃の瞳が見開かれ、涙が溢れ出した。注ぎ込まれた精の熱さが子宮の中で広がり、華奢な身体の奥底を満たしていく。旅人の存在を、熱として、命として、直接感じる。その快楽に溺れる姿は、いつもの陽気な葬儀屋の面影を完全に失っていた。
胡桃の子宮内に食い込んだ亀頭の先端から、何度も脈打ちながら熱い精が注ぎ込まれ続ける。どく、どく、どく──と剛直が脈動するたびに、子宮口がきゅうきゅうと収縮し、注がれる精を一滴も逃すまいと締め付ける。その切実な蠕動が、旅人の背骨を下から上へと震わせた。
(胡桃に…種付け…してる…)
旅人は自分の腕の中に収まる少女の胎の中に、自分の種が満ちていく征服感に浸っていた。狭く熱い内壁が波のように収縮を繰り返し、剛直の表面を舐め尽くすように蠢く。注がれた精と混じり合った愛液が結合部からとろりと溢れ、白磁の太腿を伝い落ちていく。甘い香りが、汗と熱の混ざった部屋の空気を濃く染めていた。
「ぁ…ん…っ……はぅ」
まだ絶頂の余韻から降りてこない胡桃は、旅人の首に必死にしがみついている。爪が背中の筋肉に食い込み、華奢な身体が微かに震えていた。その震えが、快楽の波が引いていくに従って、少しずつ別の種類のものへと変わっていく。呼吸が整い、強張っていた筋肉がゆるゆると解けていく。だが、旅人から離れようとする気配は微塵もなかった。
やがて精の注入が止まり剛直の脈動も静まっていく。それでも旅人は胡桃の中から抜かず、子宮口に先端を押し当てたまま、その柔らかな感触を確かめるように静止していた。胡桃の内壁が、まだ名残惜しそうにきゅうきゅうと収縮を繰り返している。
「はぁ……はぁ」
胡桃の唇から深く長い吐息が漏れた。汗ばんだ額が旅人の肩に押し当てられ、黒髪の毛先が鎖骨の窪みをくすぐる。旅人は胡桃の背中に回した手をゆっくりと上下させ、その華奢な身体を労わるように撫でた。
「これが……種付けされるって奴?」
胡桃の掠れた声が旅人の胸元で小さく震えた。その言葉の選び方が、往生堂の堂主らしいと旅人は思った。生と死の境界を日常的に見つめる少女だからこそ、性行為の後のこの感覚をそう表現するのだろう。
「胡桃」
旅人は低く名前を呼び彼女の顔を覗き込んだ。潤んだ緋色の瞳が、まだ快楽の霞がかったままゆっくりと旅人を見上げる。白い花型の瞳孔が、涙の膜の向こうで揺れていた。目尻の褪せた赤の化粧が、汗で少し滲んでいる。
「……えへへ。私、今どんな顔してる?」
胡桃が照れ隠しに笑う。だがその笑みは、普段の陽気な葬儀屋の仮面とはまるで違う。素顔の、年相応の少女の笑みだった。
「綺麗で幸せな顔してる」
旅人はそう答え、胡桃の額に唇を落とした。汗の塩気はない。ただ、甘くさっぱりとした彼女の肌の匂いが、鼻腔をくすぐる。
「……ずるい。そういうこと、さらっと言うんだ」
胡桃が拗ねたように唇を尖らせる。だが、その声は喜びを含んでいた。旅人は少しだけ口元を緩め、胡桃の腰を支えていた手をゆっくりと動かし始める。結合したまま、胡桃の身体を少しだけ浮かせそしてまた下ろす。小さな、けれど確かな刺激。剛直が子宮口を優しく押し上げる。
「んっ……まだ、動くの?」
「胡桃が、もう一回って言ったんだよ」
旅人の声は低くけれど穏やかだった。胡桃は一瞬きょとんとした表情を浮かべ、それから観念したように肩を竦めた。
「……そうだった。私が言ったんだった」
胡桃の腕が旅人の首に回され、ぎゅっと抱き着く力が強くなる。汗ばんだ胸が旅人の胸板に押し当てられ、その小さな双丘の頂が旅人の肌に微かに擦れた。その感触に、胡桃の内壁がきゅうと反応する。
「空の、まだこんなに……硬い」
胡桃が小さく呟いた。その声に含まれる驚きと、そして微かな悦び。旅人はその呟きに応えるように、胡桃の腰をゆっくりと上下させ始めた。対面座位のまま、重力を利用した深く確実なピストン運動。剛直が膣の最深部を往復し、その都度子宮口を突き上げる。
「あっ……あっ……んぅ」
胡桃の声が先ほどまでの激しい嬌声とは違う、甘く掠れた吐息混じりのものに変わっていく。敏感になった内壁が、旅人の剛直の形を確かめるように、ゆっくりと収縮を繰り返す。先ほど注がれた精と愛液が混ざり合った液体が、結合部からとろりと溢れ胡桃の太腿と旅人の下腹部を濡らした。
「胡桃」
旅人は彼女の耳元に唇を寄せ、囁くように呼びかける。胡桃の華奢な身体が、微かに震えた。
「ん……なぁに、空」
「気持ちいい?」
その問いに、胡桃は少しだけ間を置いて小さく頷いた。顔を上げた彼女の表情は、快楽と羞恥が混ざり合った何とも言えないものだった。だが、その瞳の奥には確かな信頼と、そして愛おしさが宿っている。
「……うん。空の、あったかい」
胡桃の言葉は、先ほどまでの淫靡な嬌声とは対照的に、ひどく静かでそして真摯だった。旅人はその言葉に、胸の奥が締め付けられるような感覚を覚える。彼女は今、快楽だけを求めているのではない。旅人の存在そのものを、身体の内側で感じ取ろうとしているのだ。
旅人は胡桃の腰を支える手に、ほんの少しだけ力を込めた。そして、ゆっくりとしかし確実に、彼女の身体を上下に動かし続ける。剛直が子宮口を優しく押し上げ、円を描くように擦りそしてまた引き抜かれる。その一連の動きが、胡桃の身体に穏やかな波となって広がっていく。
「あ……ぁ……空……」
胡桃の腕に少しずつ力が込められていく。旅人の背中に回した手が、無意識にしがみつくように動く。汗ばんだ肌が、互いの体温を確かめ合うように密着する。心臓の鼓動が、胸と胸の間で重なり合う。胡桃の呼吸が、少しずつ速くなっていく。
「……なんか、さっきとは違う」
胡桃が、旅人の肩口に顔を埋めたまま小さく呟いた。その声は、快楽に溺れるものではなく何か新しい感覚を発見した者の、驚きと戸惑いを含んでいた。
「どう違う?」
旅人が静かに問い返す。胡桃は少しだけ考えてから、言葉を選ぶようにゆっくりと答えた。
「……さっきは、身体の奥で、ばちばちって火花が散るみたいだった。でも、今は……なんか、あったかいお湯の中にゆっくり浸かってるみたいな」
その比喩が旅人の胸を打った。往生堂の堂主として、死と隣り合わせの日常を送る少女。彼女にとって、性行為の快楽は生きていることを実感するための、激しい火花のようなものだったのかもしれない。だが今、彼女はその先にある静かで深い充足を感じ始めている。旅人はそれが、何よりも嬉しかった。
「それも、気持ちいい?」
旅人の問いに、胡桃は今度はすぐに小さく頷いた。
「うん。……すごく、落ち着く」
胡桃の声が少しずつ穏やかになっていく。先ほどまでの荒い呼吸が、ゆっくりと深いものへと変わっていく。旅人は胡桃の腰を動かす速度を、さらに少しだけ落とした。剛直が子宮口に触れるか触れないかの、ぎりぎりの深さでゆっくりと往復する。その繊細な刺激が、胡桃の内壁を優しく梳り彼女の全身から、少しずつ力を抜いていく。
「空」
胡桃が、旅人の名前を呼ぶ。その声はもう快楽に溺れるものではない。ただ、そこにいる旅人を確かめるような、静かな呼びかけだった。
「ん?」
「私、空の子供、産みたい」
その言葉は、先ほどよりももっと深いところから出てきたものだった。性行為の延長としてではなく、彼女自身の確かな意志として。旅人は胡桃の腰を支える手を止め、少しだけ身体を離して彼女の顔を見つめた。潤んだ緋色の瞳が、真っ直ぐに旅人を見返している。白い花型の瞳孔の奥に、揺るぎない決意の光が宿っていた。
「……本当に?」
旅人の問いに胡桃は今度は迷わず、しっかりと頷いた。
「うん。さっきも言ったけど、私、空の赤ちゃん欲しい。往生堂の仕事も、詩人の仕事も全部続ける。でも、空の子供も欲しいの」
その言葉に、旅人は少しだけ考え込んだ。胡桃は人間の少女だ。神の目を持つ者たちのように、意志の力で妊娠をコントロールすることはできない。妊娠すれば、十ヶ月の期間身体は変化し、生活は制限される。だがその覚悟を、胡桃はすでに固めているのだ。
「……わかった。でも、無理はしないでくれ。君の身体が一番大事だ」
旅人の言葉に胡桃はふわりと微笑んだ。それは、先ほどまでの快楽に溺れた笑みでも、照れ隠しの笑みでもない。ただ、愛する人に自分の願いを受け入れてもらった、心からの喜びの笑みだった。
「ありがとう、空」
胡桃が旅人の首に回した腕に、ぎゅっと力を込める。汗ばんだ華奢な身体が、旅人の胸にしっかりと抱き着く。その温もりと、そして子宮の奥にまだ残る旅人の精の熱を、彼女は全身で感じ取ろうとしているようだった。
旅人は胡桃の背中に手を回し、ゆっくりと彼女の身体を抱きしめ返した。結合したままの姿勢で、二人はしばらく静かに抱き合っていた。胡桃の呼吸が、旅人の胸元で穏やかに繰り返される。その寝息のような静けさに、旅人はようやく自分の中の欲情が、少しずつ鎮まっていくのを感じた。
やがて、胡桃が小さく身動ぎした。
「……ねぇ、空」
「ん?」
「まだ、入ってる」
胡桃の声に、少しだけ照れが混じる。旅人は小さく笑い、胡桃の腰を支えていた手をゆっくりと動かした。剛直を少しずつ引き抜いていく。ぬぷ、ぬぷ、と粘つく音を立てて亀頭が子宮口から離れ、膣壁を擦りながら外へと出ていく。胡桃の内壁が、名残惜しそうにきゅうきゅうと収縮し、旅人の剛直を最後まで締め付けた。
「……んっ」
完全に抜けた瞬間胡桃の唇から小さな吐息が漏れた。結合部から、白濁と愛液が混ざり合った液体が、とろりと溢れ出しシーツの上に新たな染みを作る。旅人は胡桃の身体をベッドの上にそっと横たえ、自分の剛直を確認した。まだ完全には萎えておらず、先端には胡桃の蜜と自分の精が混ざり合ったものが、糸を引いて光っている。
「……すごい量」
胡桃が、自分の下腹部を見下ろしてぽつりと呟いた。白磁の肌の上に、旅人の精と自分の愛液が混ざり合った液体が、とろりと広がっている。その光景を、胡桃は少しだけ恥ずかしそうに、しかしどこか満足げに見つめていた。
「拭くよ」
旅人がそう言って手を伸ばすと、胡桃は首を振った。
「んーん。このままでいい。……空の女になった、証拠だから」
その言葉に旅人は少しだけ面食らった。だが、すぐに胡桃らしい表現だと思い、小さく笑みを零した。旅人はベッドサイドのタオルを手に取り、胡桃の下腹部と太腿を優しく拭いていく。その手つきは、ひどく丁寧でそして労わるようなものだった。
「……空って、本当に優しいよね」
胡桃が、されるがままに旅人の手を眺めながら、ぽつりと呟く。その声には先ほどまでの快楽の余韻とは別の、深い安心感が滲んでいた。
「そうかな」
「そうだよ。だって、こんなに丁寧に拭いてくれる人、他にいないもん」
胡桃の言葉に、旅人は少しだけ照れくさそうに視線を逸らした。その仕草がおかしくて、胡桃は小さく笑う。その笑い声が、静かな部屋に柔らかく響いた。
「……胡桃」
「ん?」
旅人はタオルを置き胡桃の隣に横たわった。天井を向いたまま、静かに言葉を紡ぐ。
「今日のこと、後悔してない?」
その問いに、胡桃は少しだけ間を置いてそれから旅人の方へと寝返りを打った。華奢な身体が、旅人の腕の中にすっぽりと収まる。汗ばんだ肌が、まだ少し熱い。だがその熱は、先ほどまでの欲情の熱ではなく、ただ、互いの体温を確かめ合うための、柔らかな温もりだった。
「後悔なんて、一つもないよ」
胡桃の声は、ひどく静かでそして確かだった。旅人は胡桃の髪に頬を寄せ、その匂いを嗅いだ。汗とそして微かに残る、彼女自身の甘い体香。その匂いが、旅人の心を落ち着けていく。
「むしろ、もっと早く言えばよかったって思ってる」
「……どうして?」
「だって、こんなに気持ちいいんだもん。もっと早く知ってたら、もっと早く空に会いに行ってた」
胡桃の言葉に旅人は小さく笑った。その笑い声が、胡桃の髪を微かに震わせる。
「……そうだな。俺も、もっと早く胡桃に会いたかった」
旅人の言葉に、胡桃が少しだけ顔を上げた。潤んだ緋色の瞳が、至近距離で旅人を見つめる。白い花型の瞳孔が、静かに揺れていた。
「……空」
「ん?」
「私、これからも往生堂の仕事、続けるよ。でも空に会いたい時は、いつでも洞天に行く。それでいい?」
その問いに、旅人はしっかりと頷いた。
「ああ。それがいい。胡桃の生活を大事にしてほしい。その上で、俺と一緒にいてほしい」
旅人の言葉に胡桃は満足そうに微笑んだ。それから、少しだけいたずらっぽい表情を浮かべる。
「じゃあ、空も約束して」
「何を?」
「私が空の子供を産んだら、ちゃんと往生堂の仕事手伝ってね。葬式の準備とか、そういうの」
その言葉に、旅人は少しだけ考え込んだ。胡桃は往生堂の堂主だ。彼女が妊娠して、出産してそして育児をしながらでも、往生堂の仕事は続けていくつもりなのだろう。その覚悟を、旅人は尊重したいと思った。
「わかった。約束する」
旅人の返事に、胡桃は嬉しそうに笑った。それから、旅人の胸に顔を埋め小さく呟く。
「……えへへ。なんか、変な約束だね」
「そうだな。でも、胡桃らしい」
「でしょ?」
胡桃の笑い声が旅人の胸元で小さく震える。その振動が、旅人の心臓の鼓動と重なり合う。二人はしばらく、そのままの姿勢で静かに抱き合っていた。窓から差し込む正午の陽光が、汗ばんだ二人の肌を優しく照らしていた。
やがて、胡桃が小さく欠伸をした。
「……眠くなってきちゃった」
「無理もない。今日は、いろいろあったからな」
旅人の言葉に、胡桃は小さく笑う。
「空のせいだよ。こんなに気持ちよくしてくれたから」
その言葉に旅人は少しだけ照れくさそうに視線を逸らした。胡桃はそんな旅人の反応を楽しむように、もう一度小さく笑ってから旅人の腕の中に深く身体を預けた。
「……空」
「ん?」
「おやすみ」
胡桃の声が少しずつ遠くなっていく。旅人は胡桃の背中を、ゆっくりと優しく撫で続けた。その手のひらから伝わる温もりが、胡桃の呼吸を少しずつ深いものへと変えていく。やがて、胡桃の呼吸が完全に寝息へと変わった。
旅人は、腕の中に眠る少女の顔を静かに見下ろした。汗ばんだ黒髪が、額に貼り付いている。目尻の褪せた赤の化粧が、少しだけ滲んでいる。その寝顔は、普段の陽気な葬儀屋の仮面を完全に脱ぎ捨てた、ただの少女のものだった。
旅人は胡桃の額に、そっと唇を落とした。
賢者タイムで読み切った人へ。どんな部分が癖に刺さりました?
もし、こんなシチュエーションで子作りしてる女の子の姿が見たいというのがあれば全部読んだ詳しい感想と一緒により詳しく書いてあったら、
もしかしたら参考にするかもしれない。
でも感想とかよりお気に入りにしてくれる方が嬉しいので、感想が面倒な人は、お気に入りにしてくれると嬉しいです。
因みにその後、旅人は洞天に眠った胡桃(全裸)をそのまま抱っこして連れていき、マルに彼女用の個室を用意させてそこで寝かせました。
まお、既に復活していたノエルにお世話を買って出た彼女に、胡桃の事を知らないメンバーへの説明や恋人同士での挨拶などを任せて、旅人は璃月にもどります。