俺の知らないMODが適用された『ZERO Sievert』の世界に転生したようだ。 作:シコルスキー・ジョボジョボヴィッチ
「ゼロ・シートベルト」は誤字になります。
「ゼロ・シーベルト」が正しいです。
紛らわしくて本当にすみません…!
全体で合計50個くらいこの誤字が見つかりました。やばすぎてワロタ。
*
到着した時点では、森林エリアの南部寄り・やや東側に降り立ったようだ。
マップの中央には、おそらくエリアボスの「ラザール」という盗賊がいるであろう「廃村」。
その廃村の西…森林エリアを縦断するカタチで敷かれている道路を挟んだ向こう側には、ラザールの部下たちなのではないかと思われる盗賊団が占拠する「製材所」。
本日の脱出ポイントは、北西か東南の2箇所。
…ほとんど真逆の位置に配置されていて、探索中どこからでもそう遠くない距離に脱出ポイントがあるという安心感があると考えていいだろう。
目星をつけていた、猪の群れが湧いているはずの「茶色い円」は南西にあり、どちらの脱出ポイントからもそこまで近くはない。
あえて言うなら、脱出を目的にするなら確実に遠回りすることになるということだ。
移動ルートは、まずはこのまま線路沿いに東へまっすぐ向かい、森林エリアの端…地形変動の影響により切り立った崖のように土壁・岩壁が露出している壁面沿いに南下する。
線路沿いに移動するのは、そのように移動すれば盗賊団の小規模拠点と遭遇する可能性が極めて低いためである。
というより、線路に重なるカタチで何らかのオブジェクトや施設が発生・移動してくることはないので、急いでエリアの端まで移動したいときはこの方法が便利だ。
…ただし、障害物も何もない場所を突っ切ることになるので、序盤ならまだしも「ウォッチャー」と呼ばれる敵性存在が徘徊するようになったら、この方法での移動はおすすめできない。
ウォッチャーどもの発生のタイミングがゲームの仕様と同じなら、まだこの方法が有効なはずだ。
東の端までたどり着いたら、今度はそのまま南下して南西にある脱出ポイントの近辺まで近づき、その付近でハイエナ狙いのハンターが居ないかを確認・捜索し、まずはソイツを仕留めておく。
その後、西へ移動しつつ、小規模な盗賊の拠点があれば、相手の武器の質を遠目で確認してからにはなるが、仕留められそうならキッチリ殺しきり・拠点を制圧。
そうして、猪の群れと脱出ポイント、そして脱出ポイントから線路沿いまでのルートの安全を多少なりとも確保してから、猪の群れでの狩りを行う。
途中、撤退が必要なほどのダメージを負ったり、道中に避けるしかない問題が確認されたら、猪狩りは諦め、森林エリアに点在しているはずの「空き小屋(ゲームでは、小屋の中にはNPCがおらず、一時的な安全地点として利用できる他、小屋の中でアイテムが発見できる場合がある。)」を探し、そこで物資漁りなど試みる。
予定通り移動できる限りは、空き小屋などを発見してもいったん放置し、猪狩りを終えるまでは内部の探索はしない。
するにしても、帰りがけに余裕があれば立ち寄る程度だろうし、絶対に覗いていきたいと言うほどでもない。
道すがらの探索に時間をかけすぎて、そのせいで脱出ポイントに辿り着く前に夜更けになってしまい、この世界においては主に夜中に発生するという地形変化に巻き込まれてしまっては、こうした段取りや道中の安全確保の意味がなくなってしまう。
タイムテーブルの管理は、しっかり意識していこう。
*
「…なあ、一応納得はしたけど、アタシは今回本当にリハビリのつもりっていうか…少なくとも、盗賊団の相手をすることなんて微塵も考えちゃいなかったんだ。 何度でも言うけど、アタシは本当に戦闘では役立たずなんだからね、ちゃんとわかってるんだよねえ?」
移動し始めたところで、先程は渋々納得してくれたという様子のシャオシュンが、それでもやはり不安だという様子で、愚痴混じりの疑問を投げかけてくる。
今の俺の装備なら、スナイパーやフルオートライフル持ちが相手でなければ、ほんとど一方的に瞬殺できるはずなので、大丈夫だろうとは思う。
…いや、あくまでゲーム知識が前提にあるというだけで、リアルファイトでその知識がどれだけ役に立つかは、まだまだ未知数なところがあるが。
ETSというマシンピストルの良いところは、弾薬の安さもそうだが、ゲームシステム的に言えば「エルゴノミクス」というステータス値の高さと、反動の低さ、そして何よりピストルなのにフルオート連射ができるという点にある。だからこそ、今回の強気の判断ができているとも言えた。
もう少し詳しく解説するなら…。
まず、そもそもピストルという銃器種は、他の銃器よりリロードが早いという特性がある。
その上で、エルゴノミクスが高いほどリロードが早くなるため、コイツ(ETS)のリロードは実際爆速だ。試してみたが、1回のリロードに2秒もかからない。
そして、反動が低いというのが連射を行う上でとてもいい。
照準・弾道がブレにくく、ダメージを通しやすいということになるからな。
リロードが早く、反動が低く、フルオート連射ができる。
それらは、本来ならサブマシンガンやライフルに期待するべき・求めるべき性能であり、その性能をピストルなのに備えているというのが、コイツの良いところであり、イカれたところでもある。
弱点は、そもそも武器種がピストルなので仕方ないことだが、貫通力が低い小口径弾薬しか使用できず(だからこそ弾代が安いのだが…)、クラスの高いアーマーを装着している相手には微塵もダメージを与えられないという点だろう。
盗賊が装備している「バンデッドアーマー」というシリーズのアーマーですら、クラス1までならギリギリなんとか通るものの、クラス2以上になるともうカスダメージしか与えられなくなる。
ちなみに、アーマーの防御力の目安は、ざっくりと「クラス1 = 貫通力10までを防御」「クラス2 = 貫通力20までを防御」…って感じになっていて、その基準値に対して「アーマーの損耗率で防御性能が低下していく(だんだん貫通しやすくなっていく)」という扱いになっている。
…ブーツやヘッドギアにまでアーマークラスがあるのは、よくわからない。
アーマークラスがあるっていうことは、それらにも防御性能があるっていうことなのか?
でも、高級品とはいえ、所詮はただのスポーツ用シューズでクラス4の装備って…防御性能が高いってわけじゃなさそうだけどなぁ…。
ともかく、だ。
森林エリアの時点で盗賊たちが装備するアーマーはクラス1~3(または、アーマーなし。正気か…?)が標準であり、どのクラスのアーマーも同じくらいの割合で見つかるはずだから、ピストルだけで盗賊団を討伐するのは、これまでの想定で言うなら結構難しいはずだ。
ただし、それはあくまで「装備しているアーマーが万全の状態だったなら」という話であり、NPCたちが装備しているアーマーは…ボスキャラを除けば、概ね・最初から40~80%くらいまで損耗率が下がってしまっているため、クラス2までのアーマーが相手なら意外とピストルだけでもなんとかなってしまうのだ。
それでも、クラス3以上のアーマーにはやはり歯が立ちそうにないし、クラス2のアーマーだって損耗率が80%までしか下がっていないなら貫通できない(一応どんなアーマーでも、ダメージを与え続ければ損耗率が下がっていき、そのうち貫通するようにはなる)はずだから、過信はできない。
クラス3のバンデッドアーマーは「緑色」か「赤色」で塗装されて区別されているはずなので、それらのアーマーを着込んでる盗賊が現れたら確実に即撤退とだけは考えておこう。
なお、野良ハンターに関してはどんなアーマーを着込んでいようとも、例外なくぶち殺しておいたほうが良い。
特に、脱出ポイントの付近でウロチョロしているやつは、放置すると極めて危険だ。
脱出間際を狙うゴミカス野郎のことなんて、生かす価値はない。交渉の余地もない。絶対に殺そう。(憤怒)
幸いなことに、野良ハンターは基本的に単独行動を行っているため、クラスの高いアーマーを着込んでいようが落ち着いて攻撃し続ければ、そのうちアーマーが破損してピストルでもダメージがしっかり通るようになり、その状態にまで持ち込めればETSの連射性能のおかげで瞬殺も叶う。
または、同じようにフィールドを徘徊している「緑軍」や「研究者チーム」と野良ハンターが遭遇し、多対1の状況になって殺してくれることを期待したい。
「…そういうことなら、脱出ポイントの確認というか、そこにいる危険な外部のハンターを仕留めるっていうのは、後回しにしても良いんじゃないのか? もしかしたら、そこに辿り着く前に、他の奴らが始末しといてくれるかもしれないんだし」
シャオシュンは、疑問に思ったことを素直に言葉としてこぼす。
シャオシュンの言い分には一理あり、そういう立ち回りをした方が実際に効率がいい。
ただ、それは装備が潤沢で、野良ハンターを仕留めることが労せずに行える状況ならばこそ、実現可能性の高いという選択肢になるのだ。
探索時間に実質的な限度がある状況で、かつ装備が貧弱だと、脱出ポイントにたどり着く間際に大きく手間取り、脱出の機会を逃す可能性がある。
ならば、最初に脱出ポイント近辺とそこまでの経路の可能な限りの安全(地形の詳細把握と、道中の野生動物のや盗賊の排除など)を行い、探索時間の限度が近づいたら来た道を急いで戻り、さっさと脱出する。
そのためにも、真っ先に行うべきは、脱出ポイントの近辺の安全確保になる。ということである。
「…なるほど。そういうことなら、もう否はないよ。せいぜい死なずに…できれば大きな怪我もなく、その危険なハンターとやらを仕留めて見せて、アタシを安心させておくれよね」
シャオシュンはそう言い切ってから、「はああ…」という、少し重い溜息を吐いた。
これまでの会話や態度などから、シャオシュンは知識も頭の回転も持ち合わせているが、脅威に敏感でそういうものに近づきたがらないことは理解できた。
なら、先程のため息は…出発する前より想定以上に危険が伴う探索になるのであろうということと、それでも俺の言うこと・この対応フローに納得できてしまうので強く拒む事もできないという状況の板挟みにあい、不安と心労から出てきたものだと思われる。
…うっ。
そう考えると、急に凄く申し訳ない気持ちが湧いてきてしまうな…。
自分の発言を振り返ってみると、そこそこ強引に話を進めてしまっているところもあると思うし…。
シャオシュンには、せめて報酬に色を付けるというか…ヴィクトルにもそうしたように、欲しいものがあれば率先して報酬に加えてあげよう。
ひとまずこの場ではそれだけ、心のメモ帳に刻んでおいた。
*
まずは、東へまっすぐ。
…その道中、何回か「野ウサギ」を発見し(ただし、俺の持つ透視能力のおかげであり、シャオシュンは俺が野ウサギを発見するたびに「なんでわかるんだい…?」とドン引きしてた)、発見するたびに仕留めていったので、最初に仕留めた2羽は解体せずに丸のまま持ち運び、それ以降に仕留めたものはその場で解体して、その解体するところをシャオシュンに見せつつ、東の端まで移動した。
エリアの端っこは、警戒する範囲を360度から180度に…つまり半分に減らすことができるので、比較的安全だと言える。
エリアの端っこからグルリと回るようにして目的地を目指すのは、ソレが理由の一つだしな。
ということで、東の端にたどり着いたところで、先ほど入手できた2羽の野ウサギの死骸をさっさと解体してしまおう。
必要な部分だけを取り出し・重量を減らし、持ち運びやすくしたい。
…欲を言えば、空き小屋を発見してから、その小屋の中で持ち運んでいた2羽の解体を行いたかったのだが…この野ウサギども、丸のままだと1羽につき10kgもあって、いつまでも持ち運べるようなモノではない。
10kgって、ちょっとした子犬と同じくらいの重さ・大きさだぞ?
いや、確かにゲームのドット絵では実際の大きさはよくわからなかったが、こんなにデカい野ウサギだったのか…。
既に3回、草むらの中で実演してはいたが…今回は1羽を俺が、それと同時にもう1羽をシャオシュンが、同時に解体を行い、シャオシュンの分からないところを詳しく解説しながら進めていく。
およそ10kgもある野ウサギの死骸だが、しかしそこから取れるまともな可食部位は3~5kgほどしかない。
内蔵や骨・皮を含めれば10kgに達するということだ。
状態の良い「野ウサギの皮」は、まあまあな値段で売れる。
別に率先して集めたいほどの値段ではないが…。
しかし、シャオシュンが言うには、「獣の皮」には色々と使い道があるし、全体的にうっすら寒い(地域的に西欧~北欧のどこかに位置しているはずなので、気温が低め)ゼロ・シーベルトでは、こういった毛皮は案外需要があるのだそうな。
…ゲーム知識が前提になると、正直ゴミアイテムと言って良いものなのだが、シャオシュンが欲しいというのなら積極的に集め・持ち帰ろう。
これが、無理に連れ回すようになってしまったことの、ちょっとしたお詫びになってくれたらと思うが…。
シャオシュンの手際は悪くはなかったが、やはり1度目の実技練習では上手く行かず、肉と皮を半分以上ダメにしてしまった。
シャオシュンは見るからに悔しそうにしながらも、「ま、まあ…これでもクズ食料品としての価値はあるから、アタシにはありがたいけど、ね…!」と、ちょっとだけ強がりを言った。
一応、シャオシュンが解体に失敗したことは、報酬の分前とは関係のない部分になるので、ちゃんと俺が解体して手に入れた綺麗な「生肉」も報酬に加えると、この時点で約束しておく。
「え゛っ。い、いいの? …いや、アンタ、流石にお人好しすぎるって言うか…良くないんじゃない、そういう、一方的に不利になる約束とかしちゃうの。 …まあ、アタシは、くれるって言うなら貰うけど…アンタが損してばっかりになるんじゃないのかい?」
シャオシュンはそう言うが、しかし俺が解体した4羽の野ウサギから取れた生肉の合計は、既に15kgに達する。
シャオシュンが解体して得ることが出来た1kgほどの生肉も加えれば、合計で16kgだ。
この時点で、半々で分け合っても、正直多すぎるくらいである。
ここからさらに、順調に探索を進めることが出来たなら、後で猪を狩って得られる分の生肉も追加されることになる。
それに加えて、先程シャオシュンが言ったように、「クズ食料品(ゲームでは、スクラップフードと呼ばれるもの。クズ肉・野草やクズ野菜・キノコ・虫肉…など)」も回収できている。
こうなるともう、最終的に持ち帰ることができる食料品の戦利品が過剰になるのは目に見えている。
ぶっちゃけ、食料品が分け前に含まれることになるのは、俺がシャオシュンになるべく分けてあげたいからと思う以上に、必然に近いカタチでそうなるだろうというだけの話なのであった。
「…なるほど、言われてみれば、たしかにその通りかもね。 いや、わざわざ猪狩りに行くっていうのに、ソレより前にこんなにポンポンとウサギ狩りできるところを見せられるなんて、そんでこんな簡単に肉が手に入ると思ってなかったから、ちょっとビックリして頭が働いてなかったというか…いや、ほんとに、どうしてこんな草が生い茂る中でウサギを的確に仕留められたんだい?普通に怖いんだけど…」
シャオシュンは、俺の説明を聞いて納得しつつ、冷静になって考えてみたら「お前の狩猟技術エグくね?」とドン引きしてきた。
…いやぁ、視えるから、つい…。
などと、俺の身体に備わる謎の能力まで教えてしまうのは、流石にバケモノ能力過ぎて信用を損ないそうだ思い、代わりに「かすかだけど、動いたときの足音や、草が不自然に動いてこすれ合う音がするから、そこを狙った」と、それっぽい言い訳を返しておいた。
シャオシュンはそれを聞いて、「こわぁ…。頼もしいけど、アンタは絶対に野良ハンターなんかになるんじゃないよ…」とさらにドン引きした。
俺が教えるばかりではなく、道中ではシャオシュンから、森林エリアの歩き方とクズ食料品の拾い集め方を教えてもらっている。
これがなかなか侮れず、「疲れにくいバックパックの背負い方」とか、「野外・道中で食べ物をなるべく傷ませない保管術(言われて気づいたが、この世界では時間の経過で食料品が腐敗していくらしい。…いや、時間の経過で腐敗しない、原作の仕様の方がおかしいといえばそうなのだが…。)」とか、「食べられるキノコや野草の見分け方(クズ食料品を拾い集めることができる技術)」とか、俺の教える解体技術なんかよりもよっぽど汎用性があって便利に使える技能を教えてもらった。
「こんなのをありがたがるなんて、つくづく奇特なやつだねぇ、アンタってやつは…」
これが、「隣の芝は青い」ってことなのか、シャオシュンはその技術に大きな価値を見出してはいない様子で、俺が言うのも何だが、価値観がチグハグだなあと感じた。
まあ、タバコに対して異常なまでに執着するヴィクトルとかの例もあるし、個人の好みによって物や技術の価値が大きく異なるってことなのかなぁ…?
*
東の端に沿って、南へまっすぐ。
…脱出ポイントが近づき、歩行速度を下げて、周囲をとても強く警戒しながら、進む。
ジリジリと、ナメクジが這うようなスピードで少しずつ移動し…予想していた、野良ハンターを発見することが出来た。
距離は離れており、相手はこちらに気づいていない。
…付近に、狼や猪やグールなど、他の敵対生物の気配もない。もちろん、徘徊する盗賊のようなやつも。
野良ハンターの手持ちの武器は…あれは恐らく、ショットガンだ。
なら、射程距離はETSの方に分がある。焦らなければ、一方的に仕留められるはずだ。
今なら、奇襲できる。
…が、まずは冷静に、シャオシュンには遮蔽になるような場所に身を潜め・隠れていてもらうよう伝える。
ショットガンの適正な射程距離はかなり狭いが、攻撃範囲・幅という点では広く、直線では無くある程度面での攻撃を行うという特徴がある。
その特徴のため、流れ弾が後方に流れていきやすく、それがまともなアーマーを着込んでいないシャオシュンに被弾するとことになったら、致命傷になりかねないダメージを叩き出すはずだ。
万が一にも流れ弾に被弾しないように、銃撃音が鳴っている最中は絶対にそこから動くなと強く忠告する。
「……だ、大丈夫なんだよね…?」
シャオシュンが、心配するような・不安そうな声を漏らす。
ああ、大丈夫だとも。
一応、ちょっと余分に回復アイテムも持ち込んでいるし、ヤバいと判断したらすぐに逃げる。
逃げた後、相手を十分引き離してから、シャオシュンと合流し、より遠くへ離れる。
諸々、手筈通りにいこう。
シャオシュンがしっかりと身を隠したことを確認し、その最中も野良ハンターの姿を見失わないように、目を凝らし・光らせる。
大丈夫。相手はまだ、こちらのことに何も気づいていない様子だ。
…シャオシュンには大丈夫だと言ったが、実際はどうなのか、俺にもよくわからない。
この世界はゲームのようで、ゲームではない。
そもそも、俺の生身がリアルにここにあり、生身の体で撃ち合いをするのだ。ゲームであるはずがない。そんなのはわかっている。
でも、こんな世界であっても、それでもゲームの仕様を信じると思えば、少し安心できた。
俺は、ゼロ・シーベルトというゲームを、なかなか結構やり込んでいるのだから、その腕前を信じるのなら、こんな状況はわけもないことなのだとも信じられる。
それは、良くない盲信だという気もする。
でも、不安になりすぎて、緊張しすぎて、手が震えて、ただ一方的に殺されるだけになってしまうくらいなら…俺はもうしばらく、この盲信を上手く利用したい。
覚悟はできた。
身体のどこにも震えはないし、心に怯えもない。
ETSを構える。
弾薬は、間違いなくフル装填されている。
あとは照準を合わせ、20連射を即座に叩き込むことだけを考える。
弾切れしたら、もしくはジャムったらその場でリロードは行わず、すぐに後退。
…すぐそこの遮蔽に身を隠してリロードや修理などしてから、また少し後退し、距離を開けながら相手の位置をもう一度確認。
そして、相手の視線とは別の方向から近づき、再度20連発を斉射する。
仕留めきるまで、この繰り返しを行うだけだ。
頭の中で、いつもの手順が組み立てられる。
これ以上考え悩むのは、時間の無駄だ。…手早く行こう。
*
まあ、トチらなければこんなもんだなと、そんな感想が漏れる結果となった。
20発を撃ちきらないくらいで相手が倒れ伏し、リロードのための後退を挟むことなく、しっかり仕留めきった。
ただ、まあ、やはり少し緊張していたということなのか、最後まで引き金を引き続けてしまい、少し無駄弾を撃ったのは勿体なかったな…。
相手は、どこから誰が撃ってきているのかも気づいていないような様子で、一方的に銃弾の雨を浴びて、死んだ。
…そりゃそうか。
よく考えたら、俺のETSにはサプレッサー(消音器)も付いているし、ピストルはそもそも発砲音が他の銃器より小さいため、サプレッサーまでつけると本当にどこから撃たれているのかわかりにくくなる。
これは、相手がそういった装備を使っている場合には、クソほど厄介になるという話でもあるのだが…。
ともかく、そのおかげで相手は「どこから!?」と驚いている間に、すぐにアーマーがボロボロになり、何発もの弾丸が身体を貫通していった。
銃を構える余裕すら与えず、一発の反撃ももらわず、あっけなく。
うん。
実際に使ってみて思ったけど、やっぱETS、いいわぁ~、好きだわぁ~。
貫通力が低すぎることと、マガジンに入る弾数が少なすぎるのが玉に瑕だが…貫通力は、ゲームの仕様通りなら銃器スキルを習得すればなんとかなるはずだし、マガジンに多く入らない分はリロード速度でカバーできる部分はあるし、まったくもって悪くない。
さて、ハンターから剥ぎ取りを行う前に、シャオシュンを迎えに行こう。
…こういうとき、デバイスのメッセージ機能を使えたら便利だと思うんだが、デバイスのメッセージ機能はベースキャンプ内じゃないと送受信できない…つまり、伝言用としてしか使えないのが、もったいないと思う部分だな。
「…おお、お…本当に仕留めたのか…。 …いやぁ、やっぱすっごいんだなぁ、アンタ…」
仕留められた野良ハンターを見て、シャオシュンが感嘆の声を漏らす。
「いやあ、そんなオモチャみたいな銃で本当になんとかなるのかと思ったけど…すごいもんだねぇ」
続けて、シャオシュンは改めてまじまじと、俺の体つきやら手元の銃やらを観察し、なんだか犬みたいに俺の周りをグルグルと周り、安心して・嬉しそうにしている。
フッフッフッ…いいだろう、コイツ(ETS)は。
どこかでもう一丁手に入ったら、それに俺と同じカスタマイズが出来たら、シャオシュン用にしてあげてもいいぞ。
ETSは、確かにちょっとレア武器だが、実はそんなに買値も売値も高くないので、入手できる機会があったとして、それを譲ってしまっても惜しくはないのだ。
「えー?うーん…いらないよぅ…って言いたいところだけど、ウサギ狩りのコツとかも教えてもらえるんだったら、やっぱアタシもほしいよなぁ…銃…!」
ゴワゴワの髪の隙間から、わずかに見えた瞳が、少しキラキラと光って見えた。
おうおう、もちろん教えようとも。
その代わり、今後も俺に色々と、シャオシュンの知ってることも教えてほしいぜ…!
さて、野良ハンターについてだが、クラス1アーマーと、ショットガンは「NB153」を装備していたようだ。
NB153は、ショットガンの中では最も威力が高い銃器になる。
その代わりに反動も凄まじく高く、取り扱いには少しコツがいる。
マガジンに6発まで同時に装填可能で、引き金を連続して引くかなければならないが連射速度はそれなりに高い。
攻撃されてたらやばかったな…あっぶねぇ~…。
アタッチメント(改造パーツ)は基本のモノ以外何も装着されていないが、損耗率が全然減っておらず、このまま使用できる状態と言って良い。やったぜ。
もしかして、おろしたてだったのだろうか?
ヘッヘッヘ…すまないねぇ、コイツは俺がいただくよぉ…。
脱出ポイント付近でハイエナするようなやつからの文句は受け付けないからねぇ…!
所持品の方は、ショットガン弾薬に、「綺麗な水」が入ったボトルと、タバコとマッチ、いくつかの食器、あとは腐った食料品が大量に…。
大量ではあるが、腐った食料品はいらないかな?
…と思って残していこうとしたら、シャオシュンが「なんでだよぅ、もったいない!」と言ってその場で解体し(腐敗部分を取り除き)、クズ食料品…スクラップフードを作り出した。…おお!?
これまたゲームの仕様の話になるが、プレイヤーはアイテムをスクラップ素材に変えて、その素材を元に色々作ったりできる。…のだが、そのスクラップ化は拠点でなければ行えないのだ。
シャオシュンは、食料品に限るのかもしれないが、どうやらその場で食料品のスクラップ化が可能なようである。
これは良い。クズ食料品が大量に欲しくなったら、絶対にシャオシュンを連れて行こう。その方が効率が良い。
ここまで。
俺の立ち回りは事前の想定通りであり、まったく問題ない。
そして、シャオシュンの技能や知識は、想定以上で感動するほどだ。
順調すぎて怖いくらいだ。
そう思いながら、軽く一息ついてから、今度は西を目指して移動する。
日はまだ、中天ですらない。
時間に余裕はあるが、だからといって浪費は出来ない。
焦らず、しかし遅くなりすぎないように。
そして、俺とシャオシュンは、先程までより少し自信を持って、意気揚々と次の目的地へ歩を進めた。
*
▼ファイル_01:野良ハンター
前提クエストをクリアしている状態で、「死体(瀕死体)」を丸ごと持ち帰ることができれば、科学者チームから喜ばれる。(本作のMODによる影響であり、原作のゲームにはないクエスト・仕様になる。)
傭兵化するには、上記の前提クエストをクリアしていなければならない。
というのも、野良ハンターの瀕死体を科学者チームに預けた後、その蘇生に成功したうえで、交渉次第でゼロ・シーベルトの仲間に加わり、傭兵として雇用できるようになるという条件があるのだ。
なるべく各組織からの評価を下げずに「ミュータント化していない純粋な人間の傭兵」を集めたい場合は、「野良ハンター」か「盗賊」を仕留めて持ち帰らなければならず、盗賊は基本的に性能も装備もショボいので、集められるなら野良ハンターから集めたほうが良い。
野良ハンターは、そこそこの確率でちょっとレアな武器を装備しており、その他には「食料品」か「回復アイテム」を多く持っているケースが多い。
野良ハンターは単独行動を好む・単独行動しかできない者が多いので、多めに食料や回復薬を持ち歩くというような「所持アイテムの偏り」があるのかもしれない。
本作・今回は、食料品を特に多く持っているパターンだったが…そのことごとくが腐っていたようだ。
まあ、そんなこともある。