※この作品はR-18です。

意外と可愛い根暗陰キャ女子   作:モッチー7

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第2話:爆乳を触る

(もうすぐ中間テストだってのに、なんで俺は今こんな状況にいるんだろう)

 

目の前にはテレビ画面に映し出されたポーカーの役判定アプリ。手元には使い古されたトランプ。そして、向かい側にはパーカー姿で正座する雪澤柊佳。

 

彼女の部屋は想像よりずっと片付いていた。本棚には恋愛小説がびっしり。机の上には可愛らしい文房具。でも全体的に暗めのトーンで統一されていて、まさに柊佳のイメージ通りの空間だった。

 

ことの始まりは三日前。

 

「罰ゲームの期間、とりあえず一ヶ月ってことになったけどよ」

「一ヶ月も雪澤の彼氏とかダルすぎだろ」

「でももう引くに引けねえじゃん。雪澤、マジでお前のこと好きみたいだし」

 

友達との会話で気づいた。俺は柊佳にちゃんと説明すべきだと。罰ゲームのことは言えないにしても、「友達から始めよう」くらいの距離感を提案すればいい。

 

で、土曜日。

 

「家に遊びに来てほしい?」

 

昼休み、手作り弁当(もちろん俺の分まで作ってきてくれた)を食べながら、柊佳は目を丸くした。

 

「彼氏彼女って、家に行き来したりするものかなって思って……。あ、いや、無理にとは言わないけど」

「いいよ。行く」

 

あっさりOKした俺を、柊佳は信じられないものを見るような目で見つめた。

 

「ほ、本当に? 部屋、片付けなきゃ……」

「片付いてるだろ、いつも」

「な、なんで知ってるんですか!?」

「いやなんとなく」

 

こうして俺は土曜の午後、柊佳の家のインターホンを押すことになった。

 

「お、お邪魔します……じゃなくて、いらっしゃいませ!」

「どっちだよ」

「ご、ごめんなさい緊張してて……」

 

玄関で出迎えた柊佳は、さすがに学校よりはラフな格好だった。でもやっぱりパーカー。しかも今日はグレーのスウェット素材で、ふわふわしている。

 

「親は今日いなくて……お茶とお菓子なら用意してあります」

「おう、ありがと」

 

通された部屋で、俺は早速本題を切り出そうとした。

 

「あのさ、雪澤さん」

「は、はい」

「俺たち付き合い始めたばかりだし、無理に恋人っぽく振る舞わなくてもまずは友達みたいに」

「あっ!」

 

柊佳が急に声を上げた。

 

「友達から始めるってことですよね。私もそう思ってました」

「え?」

「だからこれ、読みました」

 

柊佳が本棚から取り出した本。『友達から恋人になるための10のステップ』。

 

「ステップ3:一緒にゲームを楽しむ、だそうです」

「はあ」

「なので、ポーカーしませんか?」

 

なぜポーカー。

 

「恋愛の指南書に書いてあったんです。ギャンブルには男女の駆け引きが詰まってるって」

「どんな指南書だよ」

「だ、だめですか……?」

 

上目遣いで見つめられると弱い。というか、この流れで断れるわけがない。

 

「……わかった。やろう」

 

まあ、普通にポーカーするだけなら問題ないだろ。適当に遊んで、それとなく友達路線で行こうって話をして。

 

ところが。

 

「あの、罰ゲームにしませんか?」

「は?」

「負けた方が、勝った方の言うことを聞くっていう……」

「いや別に普通に」

「お、お願いします! せっかくなので……その……スキンシップ的なことも……」

 

柊佳の顔が真っ赤になる。どうやら例の本に「ステップ4:スキンシップの練習をする」とか書いてあったんだろう。

 

(まあ、俺が勝てばいいだけの話だしな)

 

「わかった。ただし内容は俺が決めるから」

「はい!」

 

こうして始まったポーカー対決。

 

正直、俺はポーカーにはそこそこ自信があった。親父が麻雀やトランプ好きで、小さい頃から付き合わされてたからだ。柊佳はおそらく初心者。楽勝だろう。

 

実際、最初の数ゲームは俺の連勝だった。

 

「また負けた……」

「じゃあ罰ゲーム。今度こそ、友達から始めるってことで」

 

言いかけた時、柊佳が突然顔を上げた。

 

「も、もう一回だけお願いします! 今度こそ勝ちますから!」

 

その目が妙に真剣で、俺は思わず頷いてしまった。

 

運命のラストゲーム。

 

配られた手札を見て、俺はニヤリとした。フルハウス。そうそう負ける手じゃない。

 

「bet」

「コール」

 

柊佳も珍しく自信ありげだ。まあブラフだろう。

 

カード交換の後、最終ベット。

 

「ショーダウン」

 

俺が手札を開く。

 

「フルハウス」

 

柊佳はしばらく手札を見つめていたが、おずおずとカードを開いた。

 

「……ロイヤルストレートフラッシュ」

 

「はあ!?」

 

奇跡としか言いようがない役だった。しかもダイヤで揃えてやがる。

 

「私、こういうのだけは運が良くて……」

「いやいやいや、そんなレベルの話じゃ」

 

「あの、それで……」

 

柊佳はもじもじと指を絡ませながら、消え入りそうな声で言った。

 

「罰ゲーム……何をすればいいですか」

「え」

「なんでもします、から……」

 

(な、なんでも?)

 

頭の中に一瞬よぎったのはダボダボのパーカーの下に隠されたという噂のスタイルのこと。いや待て、俺は友達路線を提案するつもりでここに来たんだ。そもそも罰ゲームで付き合い始めたっていうのに、さらに罰ゲームで何かさせるなんて。

 

「いや、罰ゲームはナシで」

「だめです!」

 

柊佳は食い気味に反論した。あまりの剣幕に俺はたじろぐ。

 

「ルールはルールです。彼女として、負けた罰は受けてもらわないと。さもないと私、私……」

 

目に涙をため始めた柊佳を見て、俺は完全に降参した。

 

「わ、わかった。じゃあ……じゃあ……」

 

俺は深く考えず、口から出まかせを言った。

 

「おっぱい揉ませて」

 

「はい?」

 

一瞬の沈黙。

 

言った瞬間、後悔した。何言ってんだ俺は。

 

「ごめん今のナシ!」

「いいですよ」

 

え?

 

柊佳は俯いたまま、小さく頷いた。

 

「私、白石くんの彼女だし……そういうのも、そのうちあるかなって……むしろ、こんな見た目でよければ……」

「い、いいの?」

「はい。その代わり、目は瞑っててください。私の顔なんか見たら、白石くんが萎えちゃうかもしれないから」

 

(いや、顔見せろよ。というか、なんでそんな自己評価低いんだ)

 

でも引くに引けなくなった俺は、ごくりと唾を飲み込んだ。

 

【挿絵表示】

 

「じゃ、じゃあ……失礼します……」

 

なぜか敬語になる俺。

 

柊佳は正座したまま、ぎゅっと目を閉じた。長い前髪のせいで表情はよく見えないけど、耳が真っ赤だ。

 

俺はおそるおそる手を伸ばす。

 

パーカー越しに触れたそれは、想像以上に柔らかくて想像以上に大きかった。

 

(な、なんだこれ。こんなに隠してたのかよ……!)

 

片手では到底収まらないボリューム。指が沈み込むような弾力。これはもしかして、いや絶対に。

 

「んっ……」

 

柊佳が小さく声を漏らした。その声が妙に色っぽくて、俺の心臓が跳ね上がる。

 

(やばいやばいやばいやばい)

 

「も、もういいだろ! 罰ゲーム終了!」

「ふぁい……」

 

柊佳はへにゃりとその場に崩れた。顔を手で覆って、耳どころか首まで真っ赤だ。

 

「私、変な声出しましたか?」

「い、いや」

「よかった……白石くんこそ、気持ち悪くなかったですか? 私みたいなのにおっぱい揉まれて……」

「そんなわけないだろ! むしろ」

 

言いかけて、口をつぐむ。

 

(むしろめっちゃ柔らかかったし興奮したわアホ)

 

なんて言えるわけがない。

 

「え、むしろ?」

「な、なんでもない」

 

気まずい沈黙が部屋を包む。

 

「あの」

「なに」

「私も罰ゲーム、していいですか」

「は? お前勝っただろ」

「勝ったからこそ、です。彼女としての特権というか……」

「な、なにを……」

 

柊佳は立ち上がると俺の隣にちょこんと座った。そして、おそるおそる俺の肩に頭を預けてくる。

 

「……彼女が彼氏にもたれかかるのは、普通ですよね」

 

パーカーのフードの部分が俺の腕に当たる。ふわりとシャンプーの匂いがした。花のような、甘い香り。

 

「しばらくこのままでいていいですか」

「……いいよ」

 

なんで俺はこんなにドキドキしてるんだ。罰ゲームだろ。遊びだろ。友達路線に持ち込むつもりだったんだろ。

 

なのに今、俺の胸は確かに高鳴っていた。

 

パーカーの隙間から見える柊佳の横顔。いつも前髪で隠れているけど、近くで見ると本当に整った顔立ちをしている。長いまつげ、すっと通った鼻筋ほんのり色づいた唇。

 

(こいつ、もしかしてめちゃくちゃ美人なんじゃ……)

 

「白石くん」

「ん?」

「心臓の音、すごく速いです」

「うるさい」

「私もです。聞こえますか」

 

柊佳が俺の胸に手を当てる。逆に俺の心臓はさらに暴れ出す。

 

「ば、ばかやめろ」

「……えへへ」

 

初めて聞いた柊佳の笑い声。意外に可愛い。

 

こうして俺の「友達路線に切り替える」計画は、見事に玉砕したのだった。

 

帰り際、柊佳は玄関まで見送りに出てきた。

 

「今日は来てくれてありがとうございました」

「おう」

「また……遊べますか」

「……考えとく」

 

そう言って踵を返そうとした時、柊佳が俺の袖を引いた。

 

「あの」

「ん?」

「これ」

 

差し出されたのは小さな袋。

 

「明日の分のクッキーです。あと来週のテスト勉強、よかったら一緒に……」

「わかったわかった」

 

袋を受け取って、俺は早足で柊佳の家を後にした。

 

家に着いて、クッキーを齧りながら考える。

 

(俺、柊佳のこと、どう思ってるんだ?)

 

最初はただの罰ゲームだった。でも今は、明日もアイツに会うのがちょっと楽しみになってる自分がいる。

 

ポケットの中のスマホが震えた。

 

\\\\<雪澤柊佳: 今日は本当にありがとうございました。私、白石くんの彼女でよかったです。おやすみなさい\\\\>

 

「だからそういうストレートなのやめろって……」

 

俺はベッドにダイブして、枕に顔を埋めた。

 

友達路線は、とりあえず延期だ。

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