※この作品はR-18です。

息抜きロドス   作:ね。@skeb募集中

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初めてskebで受けた依頼になります。
フランカってえっちですよね。
納品ボタンを押す時の緊張は今も相変わらずです。


おどけの要らぬ、月の裏側

 辺境。

 言い換えるならば、生き抜くことすら困難な自然環境。

 或いは、人類の文明という名の手垢がついていない地域。

 

「あーあ。サーミってほんっとなにもないわよねぇ」

「おまけに相棒までいないとなるととことん暇だな」

「ならリスカムも一緒に呼んでほしかったな~」

 

 積雪に覆われる極寒、サーミ。

 いかなる汚れも瞬く間に真っ新な白に染め直される白銀から身を守るように、二人の男女が部屋の中で作業をしていた。

 

「私が相手じゃ不満か?」

「そうは言ってないじゃない」

 

 そしてその作業もつい今しがた片付き、彼らはクルビアのロドス事務所に移動するだけなのだが——

 その迎えが来るのは明日の昼頃の予定となっている。

 つまり丸一日の時間ができた。

 なにもないサーミの、なにもない事務所にて。

 

「せめてレコードくらい置いてあってもよくない?」

「そういうのはもうしばらく先だな。近くに店はあるんだし、その辺でもぶらついてくるか?」

「こんな寒いんだもの、無駄に出歩きたくはないわね」

 

 サーミにてロドスが活動していくための足掛かりとして建設した新事務所。

 そこで一人、ドクターは頭が痛くなるような利権絡みの書類から物資の手配書など多岐に渡る事務処理をしていた。フランカは助っ人として派遣されたのだ。

 そして予定よりも早く片が付いた。よって、かえって不都合が生じたのだった。

 

「寒い、のか……」

「なぁに?」

「いや……」

 

 椅子に座ったまま頬杖をつくフランカをまじまじと眺めるドクター。

 彼女の装いは風雪の中にいると嫌というほどに目立つ色で染まっている。

 

 黒。もこもことしたダウンジャケットも、指先を守る手袋も、場違いに感じるホットパンツも、肌の色が全く見えない厚いタイツも。

 陽の光が降り注ぐ時間帯であればまず見失うことはないであろう、闇色の塊。

 夜空を切り取り、塊となったその人に付き従うように、艶やかな栗色の髪と尻尾が揺蕩う。

 

 ドクターは知っている。傭兵である彼女が髪の手入れを欠かさないことを。

 ドクターは知っている。尻尾に鼻先を埋めた時の花畑に包まれるような多幸感を。

 本音を言ってしまえば、平静を装ってお喋りに興じることすらも息苦しい。

 だが我慢だ。彼女の間合いは独特なのだ。

 

「そんな足を剥き出しにしているのに寒いと言われてもな」

「どこかの誰かさんが自分で自分の身を守ってくれるなら、もっとオシャレであったかい服で来れたのにな~」

「うっ……あー、コーヒーでも淹れようか」

「さっき飲んだばっかりじゃない」

 

 呆れたように笑われ、お手上げだと言うようにドクターは両手を上げた。

 源石ストーブの上でやかんがシューシューと吠えている。

 サーミとクルビアの境目は観光客の訪問の窓口でもある。

 事務所の外からは和やかな喧騒が僅かに聞こえるが、ドクターにはほとんど気にならない。

 

「そういえば、ここって他に誰もいないのよね」

 

 果たしてフランカはどうか。

 事務所はブラインドを閉め切り、鍵も閉めてある。

 誤って誰かが入ってこられないように。

 

「ドクターに襲われちゃったらどうしよ~……なぁーんてね」

 

 おもむろに椅子から立ち上がった彼女の尻尾は、珍しく大きく揺れている。

 珍しく。彼女からこうしたお誘いを醸すのは本当に珍しい。

 ドクターがその信号を見逃すこともなかった。

 

「…………」

 

 何も言わず、同じように立ち上がり。

 背中を向けるフランカをゆっくりと抱き寄せる。

 

「で、この場合どうするんだ?」

「え~……あたし、ドクターに腕っぷしじゃ敵わないからな~」

「後ろを取っているのに全然勝てる気がしないのはどうしてだろうな」

 

 首だけでフランカが振り向く。

 ドクターと視線が重なり、気恥ずかしさを紛らわすように笑い、誤魔化し、しかし——獲物を前にする獣のような瞳がゆっくりと細くなり、唇が重なる。

 

 ちゅっ。

     ちゅう。   ちゅうぅっ。

 

 軽くつき合わせて、離さず、唇を吸い合う。

 

「ッ、ん………………。ねえ……広すぎると落ち着かないとは思わない?」

 

 貪り合うなら、広さは不要だ。

 

「じゃあ個室に」

「そうね……あんまり汚さないでよ?」

「一緒に気を付けるんじゃなくて?」

「だって……あたしが汚すとしたら、それってドクターのせいでしょ?」

「あー……大丈夫だ。気を付けるから」

 

 どこか歯切れ悪く応えながら、ドクターはフランカと共に別室へと向かう。

 まだ太陽が高い頃合い。二人が密かに接近するのは決まって夜。

 蜜月が宵闇に包み込まれるのだが。

 

 今日は、二人は月の裏側にいる。

 

 

 

  ◇

 

 

 

「   あ゛ッ♡     あ゛ぁ゛、ぉ゛♡   ア゛、ん゛ッん゛ん゛ぅ゛ぅ゛♡   」

 

 まだ一時間も経っていないというのに、ドクターはすでに自分の発言を忘れてしまったのかもしれない。

 四つん這いのまま執拗に突かれるフランカは、他の誰にも聞かせたくない下品な声で喚きながら呆れていた。

 

 腕の力が抜け、枕へと頭を突っ込む。へっぴり腰になったように臀部だけを突き出したまま、なおも行為は続く。ドクターはフランカのことなどお構いなしなのか、目の前の女体を玩具として認識しているのか、迸る獣欲にブレーキはかからない。

 

「大丈夫か」と短く訊くだけの理性は残っていた。

「な゛ら、とまっへ——♡」

「それは無理だ」

 

 バシィンと強烈な平手が鳴り響く。

 フランカは「きゃう♡」と枕の中で吠えた。

 必死に枕を掴むも、それ以上のことをしようとは思えなかった。

 

「ほら、もっと、尻、高くしてっ」

 

 ドクターの両手がむりやりに腰を持ち上げ、なんとかバックの姿勢はキープできているものの、崩壊するのは時間の問題であろう。

 

 

 

 派遣オペレーターたちに用意したベッドの一つで、激しく、ねちっこく、潤い、汚らしいやり取りが続いている。

 一方的な貪食とも呼べる行為が。

 シーツをぐっしょり濡らす愛液。飛び散ったとろみのある『白』から発せられるケダモノの匂いは、果たして証拠隠滅しきれるのかどうか。

 

 そういった後始末を一切忘れた激情はまだ始まったばかりで。

 中々に終わりそうにない。

 

 

 

  ◇

 

 

 

 開幕は、粘ついた接吻と愛撫。

 部屋を移って三秒後、互いに向き合い唇を貪り合いながら、相手の体を乱暴に撫でまわしていく。髪を掴み、梳き、肩から背中、臀部。もう探り合いはお腹一杯であると両者ともに合意しているのか、互いに相手の衣服を剥いでゆく。

 

 ダウジャケットとセーターを脱ぎ捨て、ホットパンツもぱふんと床へ滑り落としたフランカのシャツを無我夢中で解除していくドクター。

 彼もまた常用するロングコートを床へ投げ捨て、慌ただしくボタンと格闘している内にベルトを解かれスラックスがずり落ちていた。

 

 その間、言葉はなく、慌ただしい呼吸がせめぎ合い、ぬめりとした物体同士が絡み合うことで生じる粘着質な効果音だけが絶えず部屋を反響している。

 

「ん、んむ……ちゅぅ……ねぇ、これ……何日、我慢してたの……」と、奇妙なテント状となったアンダーパンツを擦りながら訊くフランカ。

「忙しかったから、どうだろう。もう覚えてないな」そう答えるドクターの手によって、フランカのワイシャツががばりと開封される。

 

 ワインレッドを凝縮したようなブラジャーは漆黒のレースを纏っていた。Tバックも同様の色合いで、女性にとって最も大切な部分を目立たせるかのように紅色のクロッチが輝いている。

 

 突然視界に映りこんだ真紅を前にしてごくりと唾を飲み込むドクター。布地によって完成する芸術的な谷間を前にして、しかし辛抱たまらず、フロントホックをぱつんと外していく。

 

「あっ、もう……せっかちさんなんだから」

 

 ぷっくりと膨らむ乳首がご挨拶。

 釣鐘を逆さまにしたように伸びるデカ乳を手の平で覆うように鷲掴み、その柔らかさに意識をまるごと埋没させたように、ドクターは夢中になっていた。

 

 ボタンが全開となったシャツ。ぶらさがるブラジャーと股の間の三角形。

 それこそがドクターの求める芸術だった。

 

 性感帯の一つを好き放題にされてばかりのフランカではない。

 バキバキに勃起していることが明白なペニスをあえて御開帳することなく、パンツの上から手の平ですりすりと媚びを売り、指先でかりかりと挑発する。

 布地が奇妙に濡れていく様を楽しみながら、二つの突起をこねくり回されることを良しとする。

 

「ねーえ、そろそろ……このイケないソーセージ、食べたいなぁ♡」

 

 パンツのゴムに両手をひっかけ、ゆっくりと屈みながらついに牡の象徴を解放させる。

 ゴムに先端が引っかかり、思い切りずり下げた拍子にボロンと鳴き声を上げるようにして顔を出した赤黒く野太い棒は、凶器と言っても差し支えない。

 

 こうする度、禁じられた儀式で悪魔を呼び覚ましてしまったような気持ちになる。

 

「……なら、座った方が食べやすいだろうな」

 

 床にパンツを捨て置き、ドクターがベッドに仰向けに寝転がる。

 その意味を察して、フランカはドクターの真上に跨った。

 彼の頭に臀部を差し出すように。

 

「ほんと……おっきいわよね」

 

 三十センチはあるのではないかと思わせる肉突起。自分の顔を覆いつくすほどの長さを右手で持ち支える。ビキビキと浮き出る血管を凝視するように近づけば、すえた臭いが自然と入り込む。

 

「いただきまーす♡」

 

 チョコスティックを咥えこむように、真っ赤に充血する先端をぱくりと。

 口の中に料理を詰め込みすぎたように呼吸がしづらくなり、酸欠に似た視界の霞みがこみ上げる。

 顎が外れそうなほどの巨棒を、それでも唇をすぼめて迎え入れる。

 

 喉奥に達するほどに呑み込んでも、せいぜい巨体の半分に届くかどうか。

 しかし傭兵として、そして一人の女として、こういう場合にすべきことをフランカは理解している。

 

 竿を右手でゆっくりとスムーズに、途切れなく上下に擦りつつ——主張の激しい先端のエラ部分だけを口に含み、そこを徹底的に舌で絡めてゆく。ぐっぽ♡ ぐっぽ♡と音を立てながら唇でしごくたびにドクターの足指がピンと張る。

 好感触を確かに感じながら、しごくのではなく、含む。

 そのままぢゅうぅぅぅぅ~~~♡ っと……。両腕で頭を抱きとめ胸の中に埋めて窒息させるように。アイスをぱっくり咥えこんで熱でゆっくり溶かして味わうように。

 ご無沙汰で張りつめる怒張を圧迫させながら、はやく楽になれと勧告するように右手で耐久値を減らしていく——

 

「う゛ぁ゛……♡」

 

 捕食行為へ無我夢中になっていた意識を引っ張り上げられる。

 相手と同様に、ここしばらくほとんど構ってあげられなかった、己の本能を刺激させられて。

 尻肉を鷲掴み、ショーツのクロッチを間近から眺めてばかりだったドクターの舌先が前触れもなく突き刺さった。それだけで電流が流れたように腰が跳ねる。

 

 ずっと貯め込んできた弾薬をすぐに放ちたくはない。

 そう主張するように、ショーツをずらして露わとなった肉花弁にドクターが顔を埋めた。尻肉に埋める指先の力が緩むこともなく。

 フランカの戦術を妨害する。

 

「ん゛っ……♡ ふ゛、ぉ゛……♡」

 

 質量を持った紙がするりとドアの隙間を潜り抜けるように、来た。

 狭い穴の中を堪能するように突き刺さり、ついで入り口である膣口の周辺、剥き出しの肉をでたらめに貪る。はしたない食事の様子は、びちゃびちゃと響く水音のせいで嫌なくらい想像できてしまう。

 

「ちょっと……♡ がっつきすぎっ……♡」

 

 囁くような抗議の声が届くことはない。

 視界が肌色で染まっているせいか、両耳を太腿で塞いでいるせいか、食事に夢中なせいか。

 脳に直接届く、電気信号。それは腰の辺りから生じて背骨を伝い、脳を追い越すようにどこかへ発散してしまう。

 口に力が入らなくなり、フランカは右手で緩慢な抵抗を示すくらいしかできなくなっていた。

 

「んひっ……!」

 

 痛みにも似た刺々しい違和感に神経をガッと掴まれたように、固まる。

 ドクターの手が尻尾の付け根を鷲掴み、尻尾の先端を上に掲げている。

 つい動いてしまうから、邪魔だったのだろう。

 しかしそこもまた立派なデリケートゾーンである。

 

「ちょっ、ドクター、それダメ……♡ 離して……!」

 

 股の間で暴れ回る勢いは止まることを知らない。

 あるいはフランカの食事を妨害するかのように、際限なく加速していく。

 吸われるほどに分泌してしまう牝の蜜で彼の顔はびしょ濡れだろう。

 湿度に塗れた反響がより潤っている。

 

「あッ、っ♡ ちょっ……コラッ……ッ~~……♡」

 

 恐ろしい存在と相まみえた際、本能が強張るように。

 手足が言うことを利かなくなり、首筋が凍る。

 素っ頓狂な呼吸をしてしまい、恥の重ね塗り。

 眼前の肉棒から漂う鼻を塞ぎたくなるような臭いで、くらくらする。

 

「フランカ」と、のぼせた声が呼んだ。

「そろそろいいか。もう我慢の限界なんだ」

「……ほんと、どれだけ溜め込んでたのよ」

 

 普段の茶化すような返事も忘れ、フランカは真横へごろりと転がった。

 待ちきれない子供が飛びつくように、途端にドクターの体が覆い被さる。

 するりとショーツを脱がされて。衣擦れが足を伝う。

 ぴたりと、凶器の硬さがアソコに寄り添う。

 

「……こんなおっかない武器でいまからぐちゃぐちゃにされちゃうって思うと、怖くて逃げたくなっちゃうなぁ」

「そんな笑いながら言われても説得力ないぞ」

「ふふっ」

 

 戦場での命のやり取りを楽しむフランカだが。

 一連の行為における最初の通過においては、どうも身構えてしまう。

 何度も貫かれてきたのに、初めて体験するように。

 

 くちゅり

 

「ん…………」

 

   ぬぷ……

 

「あッ……あ……♡」

 

        ぬくんっ

 

             「お゛ッ……ッ~~……♡♡♡」

 

 フランカはこういう時、自分がどれほど情けなく緩み切った表情をしているのかを知らない。知らないことは幸運だった。もし鏡なんて見せられたら、彼女はそれを問答無用ではねのけていたに違いない。

 

 ただこの世で一つ、遠ざけようのない鏡があり。

 それはいま、自分をまっすぐ見下ろしており、やがて距離をゼロにした。

 身も心も分厚い毛布で包み込まれて身動きが取れなくなるような正常位のまま、お互い、しばし呼吸だけに専念する。

 

「ちょっとぉ……♡ ぐりぐり……い゛ッ……だめ……やめ、てェ……♡」

「なんだ、フランカも我慢してたんじゃないか」

「ばっ……ちがう、からぁ……」

「……そうか」

 

 咄嗟の照れ隠しとは正反対の抱擁が内と外でドクターを雁字搦めにしている。

 内とはつまり、膣内で。

 外とはつまり、両足で。

 

 スムーズな侵入を果たした牡棒を襞肉は盛大に歓迎している。きゅうきゅうと締まり、久しぶりにほじくられ、凝り固まっていた肉の畦道がほぐれる。

 根元が突き刺さるより前に先端の出っ張りが奥の壁にぶつかり牝の本能が歓声を上げたというのに、それより先、膣道の拡張を嘆願するようにフランカのすらりとした美脚がドクターの腰に絡みつき離さない。

 

 ひ弱なドクターなどものの数秒で組み伏せられる実力者は、今この瞬間だけは、どう足掻いてもこの拘束から脱出できる自信がない。

 

「私はずっと楽しみにしてたんだけどなぁ」

 

 誰かの真似のように間延びした口調で心境を吐露したドクターが、動く。

 垂直に腰を持ち上げ、そのまままっすぐ、穿つように振り下ろす杭打ちピストン。

 

「ん゛ぁ゛♡♡♡」

 

 場所を移さず、ただひたすら地面の一箇所に鍬を振り下ろし続けるように。

 柔らかな腐葉土よりもどろどろに蕩け切った肉を耕す。

 耕せば耕すほどに水が排出され、抽挿のたびに跳ねる淫水が肌と肌に飛び散る。

 

「ちょ、ちょっと、まって♡ ねッ、まって♡ っ、てば、どくたぁ♡♡♡」

 

 呼びかけに応じてはくれない。

 フランカが耳元で叫んでいるというのに、ドクターは耳栓でもしているのか「ふっ……! ふっ……!」と呼吸に専念するばかり。

 まるでなにかを誘い出すための作戦のようなわざとらしさ。

 

「わかった、言うからっ♡ ほんとのこと、言うから、まって……♡」

 

 ぴたり。

 亀頭をべったりと子宮口《ボルチオ》にくっつけたまま、止まる。

 腹の底からじんじんと響く言葉にしがたい悩ましさに苛まれながらも、フランカはおずおずと白状した。

 欲望と本能で充満した熱気に当てられて、自分らしさが剥がれていくのを自覚しながら。

 

「……たかった、わよ……」

「ん?」

「だから……」

 

「ドクターとえっちするの……楽しみにしてたって、言ったの……」

 

 言ってしまった。

 後悔という名前の熱が耳の付け根から生じて、視界の両側を熱する。

 ここへの助っ人を要請された時点でなんとなくそんな予感があった。

 ただ、それを赤裸々に告白してしまうのは、なんだか癪だった。

 

「よかった」

 

 熱が滲んで正常とは言い難い聴覚が拾ったのは、それだけ。

 

「ん゛ぅ゛う゛あ゛っ♡♡♡」

 

 ビリビリと脳内をわななかせる痺れが背骨を駆け巡る。

 外から強い干渉はなかったのに、なぜか。

 随分と遅れてから、ドクターがぐりぐりと執拗なほどに体を擦りつけていることに気づく。駄獣の求愛行動のように、すりすり、すりすり、ぐりぐり♡

 おまんこの深い深い場所をドリルで削るように、ぴたりと密着して離れない。

 

「ひ゛ぃ゛っ♡ あ゛っ、あ゛♡ い゛ッ、ちょ゛ぉ゛……♡ だめ、だめだめ、だめぇ……♡」

 

 胃袋の中が突然からっぽになって異常なほどの空腹に襲われて力が抜けるような。

 正気でいようと思っているのに一気に、急速に、早急に、脱力してしまう。

 大事なものが、ぽろりと。

 胸の辺りから零れ落ちて、弾ける。

 

「い゛、く゛ぅ゛ぅ゛う゛……ッッ~~~~♡♡♡」

 

 なにか危ないクスリを吸引してしまったような幸福感。

 幽体離脱とでも言うべきか、ほんのわずかの間だけ肉体から意識が切り離されるかのような浮遊感に満たされて——しがみつく。

 手足で、そして牝穴で。

 ギュウギュウと、きゅうきゅうと。

 

 ドクターは、依然として稼働したまま。

 フランカが達したことは視覚と聴覚と触覚から明らかであるはずなのに、ぐりんぐりんと穴を掘るように腰を押し付ける動きは止まらない。

 そして逆に、苛烈な種付けプレスを再開しさえした。

 

「射精《だ》すぞっ……フランカ……!」

「へ、ぇ!? だめ、だめっ♡ いまはだめ♡ イったばかり、なのにィ……!」

 

 だめだめと言いながらもフランカの両足はドクターを拘束していた。

 荒い吐息が絶えず耳朶を叩く。

 覆い被さられ、一方的に辱められるように腰を押し付けられ、喘がされる。

 重なる肌と、いつの間にかギュッと握られていた手の平から流れ込む体温が熱い。

 まだ序盤だというのに蕩け切った瞳と止まらない涎を凝視されていないのが不幸中の幸いか。

 

 ベッドの金具が悲鳴を上げる。

 その音色に牝の嘆きも交ざる。

 飄々としつつも頼りがいのある女傭兵はここにいない。

 全開となったワイシャツ、フロントホックを外されてまろびでた柔乳、すべてをひっぺ剥がされた下半身。

 

 牡を悦ばせるためだけの、どろどろと粘ついた鳴き声。

 

「お゛ぅ゛、ぉ゛ッ♡♡♡ お゛ーッ♡♡♡ い゛く゛、やらッ、い゛く゛、イ゛ク゛、う、ぅうぅ、ッ、う゛う゛う゛う゛う゛♡♡♡♡♡♡」

 

 個室に移動しておいて正解だった。

 もしロビーでおっぱじめていたら、外を通りがかった人が通報されていただろう。

 建物の中に獣が侵入している、と。

 

 

 

  ◇

 

 

 

「お゛ッ……お゛ほ゛ッ……♡♡♡」

 

 どぷどぷどぷ、と熱い塊が雪崩れ込む。

 人体の構造上、本来であればありえない話だが……まるで子宮口の中へ肉棒に直接侵入されてしまったのではと思わせるほどの充足感がフランカを侵す。

 膣内に吐き出されたどろどろの白濁液は、多少は中に残るにしても、肉棒本体を引き抜かれれば自然と体外へ排出される。

 

 だが……例えばそう、間違ってプールの水を飲んでしまったような。

 歯磨き粉をうっかり嚥下してしまったような。

 不注意によるのど越しに似たものが、フランカの胃の辺りにじくじくと滞留しているのだ。

 

 粘膜が火傷してしまいそうな熱の余韻に浸るフランカから、ドクターが起き上がる気配はない。

 ずりっ……。ずりっ……。管の中に残った残滓までも刻むように、緩慢に腰だけを浮かせては沈ませる。メーターが二回転半したような熱と鋭敏が残った膣内では、わずかな身じろぎさえも致命的な刺激だった。

 悪い夢でも見ているようなうわごとがフランカの喉を経由して散布していく。

 

「っ、はぁ~………………。さいこう………………」

 

 壁時計すらもなく、二人の呼吸だけが時間の証明であるこの空間。

 果たしてどれだけの時間が空白のまま降り積もったか。

 ドクターが身を起こしても連結部分を解除する気はなく、腹の中に居座る外来種は依然としてその存在感をフランカに主張していた。

 ふと視線を下げてみれば、腹部の中央がわずかに盛り上がっている。

 

「出しすぎよ……もう~……」

「あー……もしかして今日って、駄目な日だったり?」

「ちゃんと薬は飲んでるけど、そうじゃなくて。ベッド、汚したら後が大変でしょ」

「あー……ごめん、フランカがエロすぎて」

「あたしがそんな言葉で絆されるチョロい女に見えるの?」

「いや、本心だ。ほら」

 

 おどけた風にドクターはフランカの腹部の盛り上がりを指し示す。

 射精してもなお興奮が冷めていないという言葉の証拠が、今も張りつめている。

 ドクターの指先がその切れ目に着地する。

 

「こうなると思って準備はしてあるから」

「え~……? ドクターってたまに信用できな……ッ、ア……♡」

 

 屹立の終着点は、白濁で満たされている袋小路。

 すなわち、子宮口《ボルチオ》。

 

「ちょ、っ……それ、だめ……」

「じゃあ信用してくれる?」

「するから、ぐりぐり、やめてっ……♡」

 

 人差し指と中指で二色の絵具を馴染ませるようにぐるぐると弧を描くドクター。

 指の旋回に合わせて肌がわずかに沈み、だぷんと音が鳴る。

 水を飲みすぎた直後に動くと聞こえる音に似ていて、しかし、ずっしりと重い。

 

「じゃあこのまま続けていいよな?」

「……こんなあっさり終わらせるつもり、最初からなかったでしょ?」

「もちろん」

 

 フランカも同様に。

 まして、周囲に誰もおらず、なにをしても許される時間がまだまだ残っている。

 これを利用しないのはあの優等生サマ並みの頭でっかいくらいじゃないかしら。

 

「次はバックでいいか?」

「ん、りょーかい。……あ、ゆっくり——」

 

 フランカがなにかに気づくよりも先にドクターは体を後ろに引いていた。

 何のためらいもなく。

 

「はぅ゛っ……!」

 

 膣口にカリの出っ張ったエラが引っかかり、つい無防備な声を晒してしまった。

 ほんの一瞬だけ呆け、文句の一つでも言ってやろうとした矢先——

 

 ぶびゅッ!

 

「…………」

「……えろいな」

「……ドクターのバカ」

 

 フランカの局所は小さな白の噴水となっていた。意図してそうしているわけではない。注がれた量があまりにも、そう、あまりにも馬鹿げた量のザーメンが狭い肉洞に詰まっていた。

 栓が抜けた途端、ぬかるんだ汁が我先にと駆け出したせいだろう。

 

 ぶびゅッ、ぶびゅッと盛大な産声を上げながら粘ついた水が噴き出る。その音は一言で言えば下品に尽きた。可憐であるフランカにはあまりに似合わない。

 しかし特別な時間が流れるこの瞬間においてのみ、最高に似合っていた。

 

「……なぁ、フランカ」

「なによ、謝罪なら聞いてあげないわよ」

「今から動画撮ってもいいか?」

「………………は?」

 

 いつの間に上着から拾っていたのか、ドクターの手にはデバイスが。

 奪い取っちゃうかしら。

 咄嗟に思いつつも、今しがたの行為のせいで判断力が妙に低下しているのか、動いたのは口だけだった。

 

「他の人に見られたらどうするのよ」

「そうならないように気を付けるよ」

「わざわざ撮らなくてもいいでしょ」

「独りの夜は寂しいじゃないか」

「…………だめ」

 

 動画を自分の代わりにしてほしくなんかない。

 独占欲、いや嫉妬に似た感情が湧きあがり、デバイスを奪い取ろうとして。

 しかし、起き上がることはできなかった。

 

「まぁまぁ」

 

 ドクターの二本指が、腹部の一点を押さえつける。

 

「フランカにも動画渡すから」

「そういう意味じゃ……あっ……♡」

 

 ぐりぐり

         ぐりぐり

    ぐりっ

          ぐりぐりぐりぐりぐりぃぃぃぃぃいいい~~~♡♡♡

 

「あ゛っ……♡ あ゛ぁ゛っん゛……♡」

「それに……こっちの方が興奮すると思わないか?」

「あたしは、あなたほど変態じゃっ……はうぅぅ゛う゛……♡」

 

 指圧をより強めながら、ドクターの体が迫る。デバイスの録画機能を立ち上げながら。ぽんっ、という起動音がフランカの悲鳴の隙間を潜り抜け、ドクターの強攻的な姿勢を報せた。

 

「ほら、フランカ」

 

 強烈な臭いが鼻先に差し出される。

 赤黒く膨張した、グロテスクな肉の直剣。塗料かなにかを塗ったかのようにぬらぬらと濡れそぼった原因の八割は、自分にも馴染み深い潮の香り。青臭さとのブレンドによって、通常なら鼻を押さえたくなるほどの悪臭だ。

 

 そそり立つ剣の向こう側に、赤いライトが点滅するデバイスの眼。

 

 そもそも自分に選択肢などないことを今更ながら痛感したフランカは——

 

「……あむっ♡」

 

 提案を飲んだ。

 

 だらしない自分を誰かに見られているという特殊な状況から生じる奇妙な居心地が、彼女の背中を押したのだった。

 

 

 

 ドクターのデバイスが最初に見たのは、ペニスを口に含みながらお腹の一点を圧迫されるうちに絶頂を迎えたフランカの濁った喘ぎ声だった。

 

 

 

  ◇

 

 

 

 そして現在——

 

「イ゛く゛っ♡ ひ゛、ク゛ぅ゛……♡♡♡」

 

 ティッシュ箱などを用いて机の上に固定したデバイスが、ベッドの上で行われる甘美とは言い難い劣情のオンパレードを飽きることなく記録している。

 

 バックという体位も様々だ。

 四つん這い、片足上げ、立ちバック、あるいは寝バック——

 フランカの現在の姿勢は四つん這いに近いものでありながら、寝バックとしての側面も含んでいる。

 

 最初こそ由緒正しき四つん這いであったものの、フランカの両腕は力を失って役割を失っていた。戦闘中は決してレイピアを離さない傭兵が、今この瞬間だけは全力で向けられる雄の欲望に屈していたのだった。

 高く突き出す臀部と、天井を突き刺さんと言わんばかりに真上に伸びる尻尾は「もっと虐めて♡」とおねだりしているかのよう。

 

 四つん這いならぬ二つん這い。

 しかし顔は枕に突っ伏している。支えである腕が役割を放棄してしまったのだ。顔だけが不格好な寝バックを演じさせ、本来なら部屋中に甲高い悲鳴が響くであろう牝声を、暴走する闘獣さながらの濁った遠吠えに変質させていた。

 

「ん゛お゛っ♡ オ゛、お゛ん゛ッ♡」

 

 どちゅっ、どちゅっと膣道の奥、俗にAスポットと呼ばれる壁を掘削させるたびに手足に電流が走ったようにわななく。

 出したり入ったりがしきりに繰り返される結合部からは絶えず透明な液体が零れてシーツを濡らしていった。

 もはやマットレスを天日干ししないと解消しようのないほどにびしょ濡れだ。

 ペッローが入室すれば一瞬でなにが起きたのか理解されてしまいそうなほど。

 

「ほらフランカ、腰を下げない。挿れづらいぞ」

「ふ゛ぉ゛っ……♡ ひょ、って゛ェ゛……♡」

「頑張れ頑張れ」

 

 ベチンッ!

 どこか白々しい口調でエールを送りながら、ドクターの手の平は応援とは真逆、叱咤と表するべき平手打ちがフランカの大きな臀部に張り付いた。

 一度ならず、二度三度。

 

「ん゛ぁ゛っ♡♡♡ や゛、ぁ゛あ゛ん゛♡♡♡」

「尻を叩かれるのが好きだって知ったらジェシカはどんな顔をするだろうな」

「い゛わ゛な゛い゛れ゛ぇ゛ェ゛……♡♡♡」

 

 日焼けも傷もない色白の美尻に、赤い葉っぱの模様が浮かぶ。

 右に、左に、一枚ずつ。

 二枚、三枚、重なり続けて——一面真っ赤な腫れ模様。

 真っ赤な雲が、尻山に浮かんでいる。

 

「ん゛ん゛ぁ゛ぁ゛あ゛…………♡♡♡」

 

 プレスされて、ペイントされて。

 背中を奪われた致命的なミス。戦場ならば決して犯さない愚行。

 傭兵が地に伏せる。

 

 勢いよくベッドに寝そべった拍子で接続が解除され、体の中から異物を排除した時に似た排泄感と、痺れ切った足を撫でまわされたようなビリビリと伝う電流がフランカを襲う。

 

 頭の中が真っ白になり、我慢しなければならないなにかが緩む。

 下腹部の辺りで、堰き止めていた流れがぢょろぢょろと決壊する。

 

「おぉ……」

「ひッ……♡ ひッ……♡」

 

 親に粗相を発見された子供が抱く感情にとてつもなく近い恥ずかしさが首回りを熱する。びしょ濡れのシーツと接する肌から伝わる居心地の悪さは、じくじくと生ずる体内の熱でうまく認識できていない。

 

「おーい、フランカ? 立てないのか?」

 

 お尻をぺちぺちと甘く叩かれてもフランカはまともな返事をできなかった。

 潮吹きをしたことへの羞恥か、乱れた呼吸を整えられないのか。事実としてその両方である。

 

 溺れかけた遭難者が丈夫な樹にしがみつくように枕に抱き着き、なにかを耐えている。いまさら声を我慢したところで体裁を取り繕えるわけでもないというのに。

 或いは、残り僅かな理性がどこか遠い場所へ溺れるのを防いでいるのかもしれない。

 

「じゃあこのまま続けるよ」

「ふ゛ぇ゛ッ……まっ、へ……」

 

 そんな遭難者を上から抑え込み、水中へ沈ませるような影が。

 覆い被さったドクターは、フランカの調子もお構いなしにぬかるんだ壺の中へと潜り込んだ。

 

「お゛ぉ゛っ……♡ お゛、ぉ゛ーーッッッ♡♡♡ あ゛~~~~♡♡♡」

 

 不格好な四つん這いを経て、完全な寝バックへ。

 フランカの顔は上へ上へと向いて凝り固まっており、その情けなく下品な嘆きを枕では塞げない。エビの尾のように曲がった足の先端がピンと張りつめている。

 

「あ~……フランカの尻最高……」

 

 散々いたぶって晴れ上がった尻を慰めるように撫でまわす。

 ヒリヒリと痛む肌を刺激されているのに、フランカはそれを喜ぶ自分を自覚していた。

 

「でも尻のせいでちゃんと入ってるのかわからないんだよな」

「入ってる、おくまで、ふかいからぁ……!」

「ならいいんだが」

 

 下腹部と尻肉がぶつかり音をわざと立てるかのようにドクターが大振りで腰を振るう。内側から零れる蜜と肌から生成される汗とですっかり濡れた肌。その音色は艶を帯びている。獣の匂いに塗れた艶で。

 

 わざとらしい腰使いのせいで終わりの見えないよがりを強いられるフランカからすればたまったものではなかった。

 

「ふ゛ゥ゛ッ……♡ ん゛、ぉ゛……♡」

 

 せめてあっけなくイってしまわないようにと全身に力を込めている。

 下手な相手と命のやり取りをする時よりも余計に力んだ眼。

 それが、飛ぶ。

 

「お゛ッお゛ぉ゛ッ♡♡♡ あっ、イ゛く゛、イ゛っ゛て゛る゛、まッ、あ゛ッ♡ イ゛っ゛た゛、イ゛、あ゛ぁ゛あ゛~~~♡♡♡」

 

 肌同士のど突きあいはなくなっていた。

 ふんわりとした毛並みの尻尾はぶんぶん振るうことすらなくなっていた。

 ドクターの体はフランカの背中にぴっちり張り付いている。

 

「ぐりぐりらめぇ……♡♡♡ や、ァ、ぁああぁああ……♡♡♡」

 

 ドクターと密着する度、『一番奥』を常に更新されているような感覚に陥る。

 内臓をせり上げられるような圧迫感。吐き気にも似た苦しみ。

 一番深い場所に鎮座したまま、自分のテリトリーを拡充するようにぐりぐりぐりぐりぐりぐりぃぃいぃぃぃぃぃぃ♡♡♡♡♡♡

 

「お゛ッ♡ お゛ッ♡ お゛ッ♡ お゛お゛ぉ゛ッ♡」

 

 寂しがりな子供が母親に抱き着き頬ずりするように。

 実際、ドクターのそれもまた求愛行動と呼べるものだろうが。

 それによって織り為される結果のすべてが不純を極めている。

 

 摩擦する箇所が鳴らすぐっちょぐっちょという粘り。

 脳味噌を空っぽにして互いに情欲だけを求めあうはしたない呼吸。

 獣の交尾を思わせるような叫び声は、ここがマンションだったら苦情が殺到していただろう。

 

 なめくじのような粘っこいドクターの攻めは止まることを知らない。きゅうきゅうと襞肉が締め付けて射精を促しているというのに、決して尽きることのない耐久力を誇るかのように、狭苦しい通路の中で暴れ回る。

 

「ぢゅうぅぅぅぅ……」

「あっ♡ ちょぉ♡」

 

 時折、フランカが秘書担当になることがある。本当にタイミングがあえば。

 悪戯好きの彼女は、ドクターがぼーっとしている隙に気づくや、驚かせようとあの手この手を駆使するのだ。例えば「手首に蚊が止まっている」とか。

 いま、フランカの首には悪い蚊がへばりつき、中々離れようとしなかった。

 

「すっちゃだめっ♡ だめだってばぁ♡」

 

 母乳を求める赤子のように。

 首筋に吸い付き、わざと音を立てるように。

 己の所有物に名前を書くように。

 

「人前で服を脱がなければバレないさ」

「う~~っ……ばかぁ……♡」

 

 子宮口《ボルチオ》の辺りをすっかりどろどろに溶かされたフランカはなすすべなく、されるがままドクターの愚行を受け入れるしかない。

 上は涎、下は愛液でぐちゃぐちゃになった両方の口。そこはまだまだ乾けない。

 

「ふぅ~……うっ」

 

 おもむろにドクターの腰が持ち上がる。

 そこでフランカは理解した。

 さきほどまでの擦り付けるような挙動は休憩だったのだと。

 膣壁を押しのけようとする怒張に宿る精力がまだまだ底を尽きないのだから、腰を動かす体力が残っている限り、自分に休む暇など訪れないだろうと諦観するフランカ。

 その推測を裏付けるように、重みが垂直にのしかかる。

 

「う゛ぉ゛——♡♡♡」

 

 これまでの攻めを、目的地だけを見据えた直線的なものと喩えるならば。

 これは、回り道を経由しつつ目的地にもしっかりと到着するような、入念な攻め。

 お腹の裏側がごりごりと削れていくのがわかる。

 

「まっへ♡ どくたぁ♡ それ、だめ♡」

 

 お腹の裏側の弱点《Gスポット》を亀頭で削るように進み、奥へ着地する。動作が多少緩慢になっているせいもあって、その歪な質感がどこを通っているのかが如実に伝わってくる。

 触れてほしくない、けれど触れられると本能が歓喜の渦を巻きあげてしまう地点を触れられる度に「お゛ッ♡」と喉がしなり、終着点に接地する度に「ん゛お゛ぉ゛♡♡♡」と唸ってしまう。

 

 フランカの体はドクター好みの肉人形《ラブドール》となっていた。

 

 そして、丁寧に鑢《やすり》をかけるような動きが粗雑になっていく。

 速度に磨きがかかる。

 

「ふッ……! ふッ……!」

 

 なにかを耐えるような、しかしその忍耐を自ら食い破りたそうにしている、悩ましい呼吸。

 フランカにはドクターの思惑が透けて見えていた。

 

「だめっ♡ ドクター、まって♡ いまはだめぇ♡」

 

 フランカは知っている。

 拒否を示せば示すほどに、彼の本能が、筋肉が、欲望が前向きになることを。

 フランカは知っている。

 自分の理性《建前》は恐れているが本能《本音》はそれを望んでいることを。

 

 恐ろしいほどに硬い屹立が、一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、泥のようにしなる。

 

「あ゛ッ♡ あ゛ッ♡ だめ♡ だめだめだめ、だめえぇぇぇェェェえええ♡♡♡」

 

 すべてが白く染まる。

 視界も、思考も、膣内も。

 吹雪のように。

 

 

 

  ◇

 

 

 

 二度目の射精もまた盛大であり、余韻は生クリームを引き延ばしたようだった。

 ずりっ、ずりっと腰を蠢かせながら熱に満ちる膣内に入り浸るドクターに、フランカはキスを望んだ。上から多い被らされたまま、ちゅぱちゅぱと。啄み、絡め合う。声なきピロートークのような時間を経て、そしてまだまだ終わらない。

 

 ずっと動きっぱなしだったこともあり疲弊したドクターを仰向けに寝かせ、今度はフランカの番。

 受け身ばかりに回っていた体をほぐすように騎乗位を始め、しばし経つ。

 フランカはドクターの胸板に手を突きつつ、腰振りと痙攣を繰り返していた。

 

「ん゛ふ゛ぁ゛っ……♡」

 

 体重をかけずともあっさり奥まで届く極太ちんぽを咥えながら持ち前の持久力を発揮できるフランカでは、ない。

 障害物が一切ないグラウンドを駆け抜けるのと重量武器を携えて戦場を駆け抜けるのとでは前提が異なるように。

 ドクターに見上げられながら、何度目か分からない甘イキにまた昇る。

 

「ほんと、ドクターのおっきすぎ……」

「小さいほうが良かったか?」

「馬鹿言わないで。相手が強い方が、倒し甲斐があるってものじゃない……♡」

「ならよかった」

 

 言いつつ、ドクターは上体を起こす。フランカの手を肩に移させながら、顔面で谷間へと突っ込んだ。

 騎乗位の最中、ゆっさゆっさと揺れる巨乳。脱ぎ掛けのブラジャーがなおさら淫靡さを際立てている。だらしなくはためく役割を失った布地は、闘牛を挑発する布のよう。

そしてだらしなさは、この空間において美徳なのだ。

 

「すうぅぅぅ……あぁ~……」

「ちょっと、そこ吸わないで」

「んー……このままちょっと動いてみてくれないか」

「……ほんと、ドクターって頭の回転がはやいよねぇ」

 

 せめてもの皮肉を口にしつつ、要望を叶えるフランカ。

 肩に置いた手に力を込めつつ膝を動かし、上へ下へ。

 まるで谷間で汚れを拭きとるように、むにゅりと形を変えながら顔をなぞる。

 

「ん゛……♡ ん゛ぁ゛、はぁ、ん゛ッ……♡」

 

 腰を落とすたびに桃色の吐息を漏らすフランカに、ドクターはしがみついている。

 肌に吹きかかる熱い吐息の量と長さから、渓谷の香りを存分に堪能しているに違いない。ここに来るまでで少々汗ばんだ隙間に余分な湿度が盛り込まれていく——

 熱の供給の代わりに、むしろこちらの熱を奪い取るような違和感が鳴り響く。

 

「ぢゅうぅぅぅっ……」

「んっ……」

 

 首筋に走ったのと同じ僅かな痛み。自分を構成する要素の欠片が奪われていく。

 強奪の印を気軽に捺しては、また別の場所。

 赤と赤で彩り、その隙間を埋める勢いでさらに赤を捺す。

 そして満足して、本命へ。

 

「あ゛、んっ……♡」

 

 ぷくぷくと育った肉の芯。ボタンと見間違えてもおかしくないほどに肥大化し、その付け根、乳首と肌の色が混ざった色合いに近い乳輪はぷっくりと赤らんでいる。

 二つの内の一つがドクターの口の中へと消える。

 生暖かい温度が小さな突起越しに伝播し、不快感に近い感触を纏わせるしなやかなベロが、礼儀も忘れて貪った。

 

 フランカはもう動くことを忘れていた。肩を掴む手に力が勝手にこもる。ぢゅうぢゅうと音が鳴る方を見下ろせば、反対側、手つかずの乳房に手が伸びる。

 指先がゆっくりと深く食い込む。内包する魅惑的な柔らかさを確かめるように。

 

「あ、はぅ、ぅあ……♡」

 

 襞壺の奥を散々弄られたせいで、たかが乳首を吸われるだけでも声が漏れる。

 ドクターに触れられるだけで体が勝手に喜んでしまうように。

 獣の牙のようにかぶりついた口の中、爬虫類のように舌が暴れ回る。吸盤に引っ張られるようにぶぼっ、ぶぼっと乳首を吸い上げられるだけで背中から腰へと甘ったるい電気が流れていく。

 

 そして反対側へ。

 くっきりと光を反射するほどの涎の橋が唇とピンク色の突起を繋いで、落下する。

 指でこねくり回されていた方を、生暖かい空間に閉じ込められて、なぶられる。

 そして唾液まみれとなってテカテカと輝く乳首を今度は指先がこねくり回す。

 

 濡れた部分は空気にあたるとひんやり感じるものだ。

 例えここが暖房の効いている室内であっても、咥内の激しい欲望まみれの暖かさに比べれば冷える。ツンと張りつめる鋭敏さが乳房の頂点に宿る。岩石をハンマーで砕くと反動が骨を伝う時に似た、ぎくしゃくとした悩ましさまでもが生じる。

 

 吸われて、こねくり回されて。

 母乳など出るはずもないのに、ドクターは夢中で目の前の肉果実を甘噛みする。

 

「ちょっと、ドクター……♡」

 

 このまま乳首だけで達してしまいそうで。

 しかしそれだと自分が節操のない女みたいで情けない。

 そんな懸念を払しょくするように、フランカの背中に腕を回したドクターが倒れる。

 フランカもろとも。

 

「へっ、あ、ちょッ……」

 

 突然体位を変えられたことでつい腰を落としてしまい、痺れた声を奏でる。

 そしてフランカの穏やかな時間は終わった。

 

「う゛ぁ゛ん゛ッ♡♡♡」

 

 一突き。そう、たった一突き。

 下から突き上げられて、焦らされていた牝まんこをビタンと叱られただけで、フランカは腰をガクガクと震わせながら媚びた声を荒げて絶頂した。

 ドクターの鎖骨の辺りに顔を埋めながら「はひッ♡ あひっ♡」と愛らしい声で囀る。まるでおっかない存在から逃げ惑う少女のごとき無力さが露呈している。

 

「だめっ♡ とまって♡ どくたぁ♡ とまっ——」

 

 びたんびたんと激しく揺れる尻尾をドクターの手がむんずと掴む。

 

「オ゛…………♡♡♡♡♡♡」

 

 牝としての最たる弱点《秘匿》。

 ヴぁルポとしての致命的な弱点《露出》。

 二点を同時に攻められ、壊され、辱められて。

 

「は゛ぇ゛、あ゛っあ゛ぁ゛♡♡♡ い゛ぃ゛、い゛く゛、う゛ぅ゛ぅ゛、エ゛、ぉ゛、ォ゛オ゛……ッッッ~~~~♡♡♡」

 

 フランカではない、なにか悪い霊でも憑りついたのではないか。

 後に録画を見返したドクターがそう疑うほどの遠吠えだった。

 

 

 

  ◇

 

 

 

「ねぇッ♡ そうじ、するのッ♡ わすれて、ないよねっ♡」

「大丈夫、たぶん、間に合うはずだっ」

「あとで、どうなってもッ、お゛っ♡ しらないんだからねぇッ♡」

 

 二人はついにベッドから立ち上がっていた。

 もちろん、楽しい時間の延長線の上に。

 

 身だしなみを整えるという意味はもちろん、客観的な視野で装備品のチェックをするためにも壁に長方形の姿見が埋め込まれている。

 よほどの高身長でもない限り、全身が収まる鏡が。

 

「あ゛ッ♡ あ゛ぁ゛♡ あ゛ぁ゛ん゛♡♡♡」

 

 鏡の前に連れられて、フランカはそのまま立ちバックを強制された。

 ベッドで散々動き回ったせいでシャツは皺がひどい。自分の顔の蕩け具合はもっとひどい。肩を掴まれていることでなんとか姿勢は維持できているものの、生まれたての駄獣のようにカクカクと震える足は内股のまま。腹底をどちゅっどちゅっと突かれるたびに呼吸が乱れた腹部がべっこんばっかんへこんだり膨れたり。体幹はずたぼろで、前屈みのせいで張りのある自慢の豊満はだらしなく垂れていた。

 

 鏡には映っていないが、俯くフランカにはよく見える。足元の水溜りが。

 ぼたぼたと零れてその面積を増やしているのは、紛れもなく自分のせい。

 いや、この場合はドクターの仕業ともいえるが。

 

 雨漏れの元凶さんはと言えば——限界寸前であることが丸分かりなくらい、獣のような熱い吐息を振りまき、体を動かすことだけに専念している。

 牝を悦ばせる牡としての余裕さはない。

 いますぐ吐き出してしまいたいドロドロの精力を限界まで溜め込み、熟しているのだ。

 他の誰にも触れられない、自分だけがアクセスできる他人の領域を、自分色に染めるために。

 

 乱雑に腰を密着させて、ドクターはフランカの肩をぐっと引っ張った。

 フランカの腹部の一部がわずかに盛り上がる。

 

「お゛ぅ゛…………♡♡♡」

 

 手綱を強く引っ張られた馬のように天井を仰がされる。

 嘶きは野太く、ドライアイスの冷気のように床へ零れ落ちる。

 その状態を維持したまま、ふしくれだった片手が滑らかな下腹部へと伸び、不自然な盛り上がりが指し示す明確な弱点を指圧する。

 

「う゛ぁ゛♡ だめっだめだめ……♡ ぐりぐり、だめっ……♡ だめぇぇぇ…………♡♡♡」

 

 ガニ股のまま激しく痙攣し、下半身が暴れ回る。接続が途切れ、突如生まれた開放感に身を任せるようにしてじょぱじょぱと潮を吹き散らす。

 両足がぐっしょりと濡れ、たちまち形容しがたい匂いが部屋に加わる。

 

「お゛~……♡ お゛、ォ゛……♡」

 

 抑圧する枷が外れたような、天にも昇るような気持ち。フランカは今すぐベッドに倒れこみたかったが、ドクターがそれを許さない。

 機械的に、再び収めるべき場所へ収めるべきモノを嵌めこんだ。

 

 さながら暴走列車のような挙動。

 挿入した途端に荒々しい腰使いで肌を打ち鳴らす勢いがなにを意味するのかは、朦朧とするフランカでも察しが付く。

 

「射精《だ》す……! ふっ……! ふぅっ……!」

 

 合図はそれだけだった。

 いや、もはや言葉など不要だったとフランカはぼんやりと思っている。

 

 自分はいま、喘ぐことしかできない。

 相手の行動に対してなんらかの意思表明ができるほどの余力は残っていない。

 されるがままの立場を甘んじて受け入れることさえ、悦びだった。

 

「お゛ッ♡♡♡ い゛く゛ッい゛く゛ッッッ♡ い゛、く゛っ♡♡♡ う゛、う゛ぅ゛~~♡♡♡ う゛ぉ゛、オ゛、オ゛ぉ゛~~~~♡♡♡」

 

 びゅゥッ♡♡♡     びゅーーッッッッッ♡♡♡

        どびゅ♡   

                  びゅるるるるぅッ♡

    びゅるっ………………♡♡♡

 

                     ぶぽんっ♡

 

「は゛う゛っ♡」

 

 いったいどこで製造しているのか問いたくなるほどの、熱く、夥しく、恐ろしいほどの白濁を流し込まれる。

 栓を抜かれ、連結解除の拍子に膝から崩れ落ちた牝壺からとろとろとクリームのように零れて、すっかり汚れ切った世界にまた新しい汚れを加えた。

 

 のぼせたように一点を見つめるフランカ。

 すっかり疲弊しきたったように口をあんぐりあけて壁を見上げるが、その視界を、この小さな世界で最も穢れた存在が立ちふさがる。

 

「……ちょっとぉ……なんで、まだ、こんな……」

「掃除、頼めるか?」

「もうっ……。…………むぶっ♡ ぶ、ぶぼっ♡ ちゅうぅぅ……ぢゅる、ぐぽっ♡」

 

 粘液まみれの汚物に目元を隠された瞬間、自分はどんな表情をしていたのか。

 それもすべてあのデバイスに見られていると思うと、肋骨の辺りで疼く妙な熱がぶり返す。

 青臭さと甘い塩がブレンドした臭いで意識を埋め尽くされた途端、どうでもよくなった。

 

「ほら、フランカ。もう一回」

 

 この惨状の後始末は、未来の自分にお願いしましょう。

 

 

 

  ◇

 

 

 

「あー、ほんっと……疲れた……」

「お疲れ」

「お疲れ、じゃないわよ。ドクターがもう少し早めに切り上げてくれればもっと余裕あったのに」

「あー……あはは」

「笑って誤魔化そうとしないで」

 

 結論から言うと、証拠隠滅は無事に終わった。

 事務所にどういった掃除器具があるのか把握していたドクターは、おそらく実現するであろう汚れを予測し、それが時間内に処理可能であると踏んだからこそ、思うままにフランカと戯れることができたのだ。

 フランカは気が気でなかったことは、コーヒーを飲みながらも睨みつける彼女の目つきが物語っている。

 

「ケダモノモードになったドクターってなに考えてるのかわかんないだもん。ちゃんと教えてよね」

「ハラハラする方が君好みかと思ってね」

「そういうのは求めてないから。……あと、あれ。録画したデータ」

「……待ってくれ、それだけは」

「……あとであたしの端末に送っといてよね」

 

 ぷいとそっぽを向きながら、フランカは言った。

 

「フランカ……!」

 

 お気楽な感動を露わにしたドクターがコーヒーを置いて抱き着こうと歩み寄る。

 しかし軽やかなステップでいなされて——黒い水面に波一つ立てずにドクターを後ろから抱き寄せたフランカが、耳元で囁いた。

 

「ドークーター。いまあたしがどんな気持ちなのか聡明なあなたならわかるよねぇ?」

「うっ、お……あぁー……近くの土産屋でなにか買いたいものでもないか?」

「もっとロマンチックな言い方の方が嬉しいなぁ~」

「……迎えが来るまでデートしよう!」

「そうこなくっちゃ♡」

 

 するりと背中から抜けて躍り出るフランカ。

 屈託のない満面の笑み。フランカが戦場で見せる欠け月を思わせる剣の迸りは、太陽のごとき快活さを反射させた、いわゆる本音なのかもしれない。

 

 ドクターはコーヒーを飲み干して、手を差し出した。

 

「じゃあ、行こうか」

「エスコートよろしく」

「守ってもらうのはむしろ私の方だけどな」

「そこは胸を張るところじゃないでしょ」

 

 腕に抱き着く柔らかさから、熱が生まれる。

 このサーミの積雪を一息で溶かしてしまいそうなくらいの熱を。

 潜ませながら、表の顔で外へ出た。

 

 裏側を裏返せば、すなわち表。

 夜が訪れれば、また裏返る。

 

〈終〉

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