※この作品はR-18です。

息抜きロドス   作:ね。@skeb募集中

3 / 4
スルトみたいにツンツンしたキャラの純愛依頼も受けますというメッセージを込めて転載します。
「言動が攻撃的な女性がベッドの上で乱れたらどうなるかと想像している時間」と書いて幸福と読みます。


信頼度2,000%ラグナロク

「最高だ……やっぱりスルトは最高にエロイな……!」

「…………後で覚えてろ」

「その怒った顔もいいな……待ってくれ、剣を抜くのはやめてくれ」

 

 スルトを知る者は皆、総じて「そっけない」という印象を抱くだろう。

 言葉を選ばず、自分を曲げず――ロドスに着任して内面に多少の変化は見られるものの、人間よりもアイスが好きであることに変わりはない。

 

 故に、メイド服に近いフリフリのコスプレ姿を撮影されているこの状況を見たならば、誰もが自分の眼を疑うに違いない。

 

「でも本当に良かった。燃やされなくて」

「燃やさなかったことを後悔しているところだ」

 

 

 

 メイド服発祥の地であるヴィクトリア出身が見れば、千人中千人がスルトの格好をメイド服ではないと否定するであろう。そしてそれは確かにメイド服ではない。

 スケベなシチュエーションに適したメイド服もどきである。

 

 

 

 色艶を湛える上質なウールでできた黒シャツは要所を薄ピンクのフリルがあしらわれている。その彩色を十倍増しにしたマゼンタのネクタイが黒シャツの膨らみに沿って垂れて山稜の質感を生々しくしていた。

 

 目を惹くのは腕の部分で、手首に向けて徐々に幅が広くなっており、ややぶかぶか気味。

 

 スルトの指もまた黒く染まっていた。

 ネイルが、という意味ではなく。まさに手全体が。

 レースを素材とした黒手袋がうっすらと闇色に広がり、彼女の指先をすべて妖しく染めているのだ。

 

 スカートもシャツと同じ闇色。しかし丈が異常に短く、少し揺れるだけでヒップが露呈するほど。

 

 そして足全体を覆う網ガータータイツの煽情さは筆舌に尽くしがたい。不規則な幾何学模様を形作る網の繋がりが、元々美しいスルトのレッグラインを夜色に装飾していた。

 

 やけにゴテゴテとした作りの厚底ヒールがコスプレ感を強めている。

 

 普段はそのままにして振りまく赤髪は、ポニーテールにまとめられてすっきりしている。

 

「誕生日だからなにをしても多めに見てもらえると期待していたんだが」

「ツケみたいなものだ。日付が変わったら代償を払ってもらう」

「余命数時間ってところか。なら……せめてしっかり楽しまないと損だな」

 

 あらゆる角度からデバイスのシャッターを切るドクター。

 しかしスルトを捉える眼はもう一つある。

 

 

 

 机の上にあるスタンドに固定するされたビデオカメラ。

 すでに録画が始まっているサインを報せる赤いランプが点灯していた。

 

 

 

 撮影に満足したドクターがデバイスをポケットにしまい、服を脱ぎ捨てながら迫る。スルトは腕を組んだまま微動だにしない。

 

 その鋭い睨み方は警戒心の表れ、あるいは威嚇とも受け取れる。

 が、ドクターは止まらない。

 近寄り、腕を握り、顔を近づけ、やっと止まる。

 

 驚くべきは、スルトがわずかに顔を前に出して応じたこと。

 

 やがて粘ついた水の入った容器をかき混ぜるような音が響くようになり、スルトの腕は解け、ドクターの指を受け入れ、握りしめ、指と指の隙間を埋め尽くす。

 

 まるで恋人のように――否、事実として、恋人である。

 もちろんこの関係を知る者は一人も存在しない。

 しかしなんの準備もなくスルトがドクターの不埒な提案を受け入れたわけでもない。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

「そろそろあんたの誕生日か」スルトはなにげなく言った。「なにか欲しいものはあるか?」まるで明日の天気予報を確認するようにスルトは言った。他人の誕生日など欠片も興味を示さないようなあのスルトがそう言ったのだ。

 

「うぅ……スルトぉー!」

「今は抱き着くな。暑苦しい」

 

 つい先ほどまで粘つく温度で絡まり合っていたことを忘れたように感動を露わにするドクターに対し、スルトは茹だった頬のままつっけんどんな態度に戻る。

 ベッドの上で抱き着こうとしたドクターは鼻先に手のひらを押し付けられ、潰れた蛙のような声を上げた。

 

「あのスルトが誕生日を祝ってくれるなんて夢のようだから……」

「……それで、ないのか? ないならないで、私もなにもしなくて楽だけど」

「いや、ある。すごくあるぞ。星の数ほどある」

「そんな馬鹿みたいな数の頼みを聞くわけないだろう」

「それもそうか。……じゃあ、一ついいか?」

 

 やや真剣な佇まいへと改まるドクターから手を退ける。

 しかしとスルトは思った。

 この男は仮にもロドスの最高責任者の一人だ。それに自分と違って見聞も広い。欲しいものがあるとして、それを自分で用意してやれるだろうか。

 

「コスプレハメ撮りセックスをさせてほしい」

「…………」

 

 もしかするとこいつの頭はミジンコ以下の知能なのかもしれないとスルトは評価を改めた。

 

「……? スルト、コスプレハメ――」

「二回も言わなくていい! 馬鹿!」

「返事がなかったからな」

「……呆れて言葉も出ないっていうのがどういうことかよくわかった」

 

 スルトは今にもレーヴァテインを顕現させてしまいそうな怒りを必死に堪えながら訊いた。「誕生日プレゼントってそういうものじゃないだろう。もっとマシなのはないのか」ドクターはどうしてか胸を張って答えた。「いやいや。これには合理的な理由があるんだ」スルトは今すぐドクターを引っ叩きたくなった。

 

「……ふざけた理由だったらあんたを殺す」

「ならまだ死なずに済むな」

 

 その謎の自信を品定めするように無言で問うと――

 

「まずスルトは普段セックスしている時に録画させてくれないからな。これだけでも誕生日プレゼント足りえる。それに君はいつも薄着だから、たまにはがっつり服を着た君とのプレイがしたい。でもその後に薄着の君と延長戦をしたい。あっ、行為中に服を脱ぐのは無しで頼む。せっかくコスプレしているのにプレイの最中で全裸になるのは興ざめ――」

 

 問答無用のグーがスルトの体を操っていた。

 スルトは決してドクターを殴るつもりはなかった。

 しかし彼女の体は自然とその選択肢を選んでいたのだ。

 

「一つ良いことを教えてやる。私の部屋にコスプレなんて物は一着もない」

「安心してくれ、私が用意する」むくりと起き上がったドクターはなぜか誇らしげだ。

「……………………」もっと力を込めてもよかったかもしれない。スルトは後悔した。

 

 このロドス製薬という会社には奇妙な風習がある。

 例えば、着任したばかりのオペレーターに既に水着衣装が用意されていたりするのだ。

 ちなみにスルトが着任したと同時に部屋にはサイズぴったりの私服が用意されていた。

 

「…………だめ、か?」

 

 恥ずかしい台詞を恥ずかしげもなく言い切りかけた癖に突然雨に濡れた子犬のような表情をできるのだから、目の前にいる男は役者でもあるのかもしれない。

 

「………そんなに、見たいのか? 私の、その……」

「コスプレ」

「だから急に真顔になるな」

「もし拝めるなら死んでもいい」

「死ぬな馬鹿」

 

 呆れつつも、心底呆れつつも、しかし用意することはそこまで難しくないことに気づいたスルトは、いっそ許してやってもいいのではないかと思い始めた。

 どうせコスプレ衣装はドクターが喜んで用意するだけだろうから、自分はそれを着さえすれば良い。録画データは、最悪燃やしてしまえば良い。

 

 迂闊にも気を緩ませてしまったのだ。

 

「……衣装はあんたが用意しろ」

「いいのか!?」

「……ふざけた衣装だったら燃やすからな」

「安心してくれ。最高の一着を用意する」

 

 むしろその一言のせいで不安しかない。

 スルトはあえて口にしなかった。せめてこの予感が思い過ごしであれと願って。

 そしてその予感は無事に的中するのだった。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 それから時が流れて本日。

 つまりドクターの誕生日当日。

 

 ロドスでは盛大な誕生日会が開催された。アーミヤが張り切って準備をすると宣言したところ、多くのオペレーターが参加したためである。

 

 パーティーは問題なく進行した。ドクターも心の底から楽しんだ。これは嘘ではない。

 

 しかし脳裏にはある懸念事項があった。

 後頭部に釣り竿の糸が引っかかったかのように、うずうずと。

 

 スルトから返信がなかったのだ。送ったコスプレ衣装に関する。

 

 ドクターから離れた場所で独り黙々と甘味を貪るスルトをなるべく見ないようにしつつも、意識はついスルトに向いてしまう。

 

 衣装、燃やされたかもな。

 

 最悪の可能性を想定しつつも、パーティーに来てくれたオペレーターたちと挨拶していく内に時間はあっという間に過ぎていき――喉を潤している時、デバイスにメッセージが一件。

 

『早く来い』

 

 淡々とした文面が誰の物なのかは発信者を見なくてもすぐにわかった。

 

『待たせたら衣装燃やすからな』

 

 誰にも見られないようにこっそりと送られた画像を見てみれば――

 

 

 

 いつもとは真逆のテイストな衣装に身を包むスルトの自撮り写真。

 

 

 

 それからのドクターの記憶は朦朧としている。

 パーティーが無事に幕を閉じたことだけは覚えており――

 気づけばスルトの部屋をひっそりと訪れていた。

 

 そして冒頭へ至る。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

「おひ、ふぁっつひすひ、ら……!」

 

 本日初めての口づけから、十分。

 

 繋いでいた手を離し、されど接続は途切れず、ドクターはスルトの肩を抱いていた。突き飛ばされることなく言葉だけの抗議で済んでいるのは奇跡と呼んでもいいのかもしれない。

 

「初めての録画だからな。一つ一つ入念にやらないともったいないだろう?」

「唇がヒリヒリする」

「それはすまない」

 

 気安い謝罪をしながらまたもや顔を近づけるドクター。

 スルトは唇を庇うように顔を背けるも、ドクターはそのまま唇を這わせた。

 耳へ。

 

「ひ、ぁ……」

 

 耳たぶを軽く食まれ、穴の中へと舌をねじ込まれる。

 それだけでスルトは肩を強張らせ、キュッと瞼を瞑る。

 

 体を向き合わせながらも口づけを拒否された絵面だけを見れば、男に迫られる強気な少女といった具合だ。しかもそれを大胆に覗き見る『眼』があることを思い出したかのように、スルトは垂直に固定されたカメラを睨んだ。

 

 感情を持たぬ機械にはその目つきの恐怖が伝わるはずもなく、その鋭さは一瞬にして軟化する。

 

 ドクターの悪戯によって。

 

「おっ、これは……下着もアレをつけてくれたんだな」と感動めいた言葉を囁きつつ、スルトに『ちょっかい』をかける両手は止まらない。

 

「うるさいっ……!」

「着心地はどうだ?」

「最悪だ。今だって……スースーするし……!」

「そっちは後のお楽しみだな。今は――」

 

 黒シャツの上から膨らみの中身を堪能されているスルトは異様な敏感さを醸している。ブラジャーの上から揉まれた程度で喘ぐ女性はそうそういない。

 

「ああん♡」

 

 気丈に振舞うスルトらしさが剥がれ落ちた、生娘同然の艶やかな声が木霊する。

 スルトの声帯から漏れ出たとは信じがたいほどに甲高い喘ぎ。

 それはシャツの上から二つの豊満の頂点を摘まんだドクターの指先によってもたらされたのだ。

 

「このデザインを考えた人にお礼を言いたいくらいだ。いいな、これ……シャツの上から乳首触れて」

「この……ヘンタイ……ッ!」

 

 罵りながらもスルトは受け身であり続けた。「スルトも触って」とドクターに催促されるや、慣れた手つきで彼のボトムへ手を這わせる。

 不自然なテントが形成されていた。その頂きの妙に硬い感触へと指先を立てて、扉を引っ掻く獣のようにカリカリと引っ掻き挑発する。

 

『萌え袖』とも呼べるほどに大きな袖から伸びる大人色の指先。

 躊躇うように着地して、しかし動き出すのは早い。

 

「んフっ……♡ は……はッ、あ゛ッ……♡」悩まし気に腰をくねらせながら。

 

 誘惑するような音色に触発されたのか、ドクターの悪戯が悪化する。

 乳首を摘まむのとは別の手でシャツのボタンを一つ、二つと外していった。

 

 ドクターの眼前で。

 カメラの映す世界の中で。

 真っ赤な徒花が咲き誇る。

 

「実際に着ている姿は一味違うな」

 

 スルトの髪よりも彩度の強い赤。サテンの光沢がドクターの心臓をどくんと昂らせる。その花弁の中央は煽情的な花びらの型に切り取られ、ぷっくりと起立するピンク色の芯が顔を覗かせている。

 

 ドクターは持ち支えるように赤い果実に手を這わせ、親指で肉芯を押しつぶした。

 

「そこ、ばかり……♡ やめろ、バカ……♡」

「んー……じゃあ『止めてくださいご主人様』って言ってくれたら止める」

「は、ぁあ……? 私は、あんたのメイドじゃ、ないっ……!」

「せっかくこんなえっちなメイド服着てるのに……。じゃあ、ご主人様って呼んでくれるまで悪戯を続けることにするよ」

「なに、馬鹿なことを言って――」ぐにぃ♡「ぇいイインッ♡♡♡」

「私は至って真面目だぞ?」

 

 ドクターに乳首を強めにつねられただけで情けない声を上げてしまうスルト。

 これは珍しいことではない。

 むしろ、二人きりの夜が深まるほどに頻度が高まり、常態化していく。

 

 日中の面影が霞んでいくのだ。

 

 

 

  ◇

 

 

 

「さて、じゃあ……」

 

 片方の牝突起をぐにぐにと摘ままれるだけでスルトは身動きを封じられていた。ドクターはスルトの背後に回って抱き着くように腕を回し、遠慮なくスカートの中へと手を忍ばせる。

 

 くちゅり――「んうッ……♡」

 

「じゃあご主人様って呼ばなくていいから、スカート持ち上げて」

「…………ッ…………それなら、まあ……」

 

 ドクターの言い方に疑問を抱かない時点でスルトの理性が軽く溶けていることに、きっと本人は気づいていないのだろう。

 

 カメラに見せつけるようにスルトのスカートの中が露わとなる。

 

 女性にとって最も恥ずべき部位。魅惑の秘所。とっておきのハニートラップ。

 そこを守護する薄布もまた赤い。テカテカと輝く生地そのものが淫靡で、男の指を誘う。同時にそれは守るという役割を最初から手放していた。

 

 膣口を視認されないように覆うクロッチがぱっくりと切り取られているせいで。

 大きな唇は丸出しで、ぽたりと、涎が垂れ落ちるのをビデオカメラは綺麗に捉えた。

 

「手、放すなよ?」

「言われなくてもそれくらい――」ぬぷぅぅぅっ♡「あ゛、あ゛ぁ゛ッ♡ なん、れッ……♡ おい、スカート、持ってれば、良いって言っただ、ろ、ォッ♡♡♡」

「スカートを持ったらなにもしないとは一言も言ってないぞ」

「ふざ、け、ぁ、あ゛ぁ゛っ、ま゛ッ、あ゛ッッッ……~~~ぁああ♡♡♡」

 

 指先が痺れ、幕が下りる。抗議するようにドクターの腕を掴む。しかし、戦場で炎の剣を振るう腕力を失った細腕は、その猥雑な動きを支えるように寄り添うばかり。

 

 つま先立ちをして腰を突き出す姿勢のまま、ビクンッと肩をわななかせる。

 

 ドクターの腕は止まらない。

 

「お゛ぃ゛、な゛、んれ、ェ゛え゛え゛♡♡♡ ま゛ッ、とま、ぁ゛ッ――♡♡♡」

「さっき言っただろう?」

 

 ドクターは耳元で囁き続ける。カメラの耳に届かぬ小声で。

 

「ご主人様って呼んでくれるまで悪戯するって」

 

 

 

 スカートが垂れさがり見えなくなった局所。太腿の付け根でナニが行われているのかカメラには見えない。見えないが、想像は容易につく。

 

 クチュクチュクチュと止まることなく部屋に反響する水鳴り。

 その効果音と相殺し合うように喚き散らされる牝の懇願。嘆願。破裂。

 

 いつからかスカートの中からぽたぽたと雨が落ち始めた。

 屋根から大きな水玉が滴り落ちて、どことなく風情を思わせる音色に似た。

 

 やがて眼差しから鋭さが消え、力強さが失われ、のぼせたように視点が合わなくなったその時、自然的な意味合いは埋もれ、濁った本能の混ざりあう鼻を突く芳醇が本性を露わした。

 

 噴水が、逆噴射する。

 

「あ゛ッ……っっァ~~~……♡♡♡ は゛、は゛ッぁ゛……♡♡♡」

 

 ガクガクと膝が笑っている。

 スルトは今にも崩れ落ちそうなほどに表情を緩ませていた。

 ドクターが片腕を巻きつかせていなければ立っていられないほどに。

 

「スルトのココは今日もキツキツだな」

「うるさっ……ばか……♡ しねぇ……♡♡♡」

「一回でいいからご主人様って呼んでみて欲しいんだが」

「ふざ、けるにゃぁ……♡♡♡」

「んー……生意気メイドってコンセプトも悪くはないが……」

 

 グイッと、深くスルトを抱き寄せる。

 

 忠実な撮影者は、ただ愚直に記録に残す。耳元で口が動くたびに、スルトの緩んだ口が弱弱しく反論する光景を。

 

 スカートの中へ隠れた右腕の先が蠢くたび、操り人形が如く、スルトの全身が力む。

 

「もう少し続けるか」

 

 クチュ、が、グチョへ。

 

 ドクターの右腕が上下に揺れる。水が掻きまわされる。

 

「お゛っ♡ お゛、ぉ゛ッ♡ や゛め゛、ぁ゛ォ゛オ゛――♡♡♡」

 

 高らかに唄い上げるように首を反らすスルトの口が全開となる。牝の悦びを唄いながら腰を突き出す様は踊り子のようだった。つま先立ちをする両足がガクガクと揺れ、今にも壊れてしまいそう。

 

 凌辱し続ける右腕を両手で掴んでいるものの、握力はすっかり失われているのだろう、猛攻が止む気配はなく、足元にできる水溜りがどんどん領域を広げていく。

 

「う゛、ぁ゛……~~~ッッッ♡♡♡ い゛ッ――あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛♡♡♡」

 

 網タイツが煌びやかに照明の明かりを反射している。水に濡れた良いおみ足。もはや脚力は尽き、ドクターに背中を預けてすらいた。このまま尻もちをついてしまえばせっかくのスカートが水浸しになってしまうだろう。

 

 他でもない、スルトの水で。

 

 

 

「立てないのか?」

「ちが、う……からぁ……♡」

「とりあえずベッドに座ろう」

 

 ドクターの数歩後ろにはベッドがある。女性らしい置物などはない、シンプルなベッド。

 

 無造作に置かれたブランケットなどは人が生活している気配を纏っており、その生々しさに非日常的な時間が割り込んできたようなちぐはぐさがベッドの上で形成されていった。

 

 ドクターに引きずられるように後ろへ下がったスルトはどかりとベッドに座り込むと、安堵したように手足を投げ出している。

 

「ご主人様?」

「……よば、らい……」

「ふむ……」

 

 またしてもスカートの中へ土足で踏み入るのかと思いきや、そうではなく。

 スルトを運ぶために肩に回していた両手を腹部へあてがう。

 

 赤い果実をまろびだしているシャツは中途半端にボタンを解かれている。

 ドクターの両手がそれを慣れた手つきで外していくと、深呼吸に合わせて膨らんでは萎む滑らかなお腹が曝け出される。

 

 おへそよりも少し下の辺り。下腹部。その中心に指を立てる。

 

「あっ……♡ ソコ、やめっ……♡♡♡」

 

 ぐ~りぐり。

 

 弧を描き、なにかを探し当てるように肌を滑る。

 すでに目的地の見当はついているが、朝の挨拶のように、儀式にしきたりがあるように、ドクターがスルトのお腹を『撫でる』時は必ず決まった動作をする。

 

 それは挨拶であり、慣習であり、宣戦布告であった。

 

「お゛ッ、お゛お゛ォ゛♡♡♡」

 

 後ろからドクターに抱き着かれ、お腹を撫でまわされ、ある一点に人差し指を突き当てられ、そこをひたすらぐりぐりと押し潰されている。

 

 記録に残るのはそれだけ。

 

 スルトは、直接的にスカートの中を弄られていた時と同じ反応を示した。

 なにかに耐えるように足をM字で固めるも意味はない。

 

 プシュッ。水が弾ける。

 

「そこ、やめッ、ォ゛♡♡♡  はッ、なせぇえ、ェ゛エ゛♡♡♡ あ゛、あ゛ぁ゛ぅ゛ぅ゛う゛う゛う゛♡♡♡」

 

 ドクターの指の真下にあるのは子宮口ボルチオ。

 

 本来ならば、膣口から棒状のモノを挿入することで直接的な刺激を送ることでしか虐めることのできない、部位。

 

 しかし度重なる性交の中で、直接的に抉られ、時には奥底へ挿入されたまま腹の上から指圧され、徐々に慣らされていったスルトの体は、特定の地点を指で強く押されるだけでも達してしまう牝へと改造されてしまったのだ。

 

 後ろから抱き着かれたまま仰け反りアクメをキメるサルカズに、日頃の面影はない。

 

 剣を振るう時の勇ましさも、敵に手こずっている仲間に割り込む時の殺意も、アイスを前にした時の可愛らしさも。

 

 すべてがどろどろに蕩け切った眼差しが濡れている。

 溶けたアイスよりも、どろどろに。

 

 

 

 局所をすり潰すのは片手で事足りる。

 手持ち無沙汰なもう一方の手が、スカートの中へ。

 

「あ゛、こら――」

 

 しかしデバイスはその瞬間を捉えた。

 女性が簡単には晒してならない極秘の穴。牡の欲情を駆り立てるだけのすけべ下着のせいで晒された蜜壺に指が差し込むことはなく。

 

 穴の上、赤々と並ぶ雑草の中を探り当てる。

 

「イ゜ん――♡♡♡」

 

 クリトリス――性感を浴びるためだけに存在する部位。小さな可愛らしいお豆。

 

 そこを指の腹でゴリッと押しつぶすと、スルトの匂いで湿度が増した。

 床の掃除がさらに大変になったが、観測者には被害がなかったことは不幸中の幸いだろう。

 

「あ゛ッ……~~~ッッッ……♡♡♡ お゛――あ゛は゛ァ゛……♡♡♡」

 

 甘イキで手足をびくびくをカクつかせるスルトの股からはちょろちょろと雨漏りが続き、シーツを濡らす。

 両足の付け根を起点としてシーツに描かれた黒い染み。

 それを確認したドクターが耳元でなにかを囁いた。

 

 

 

「ごしゅじん、さまぁ……♡♡♡」

 

 

 

 スルトはようやく折れた。

 しかしこの現場に初めて遭遇したカメラはもちろん知らないことだが。

 これは前準備に過ぎないのだ。

 欲求は募っても素直に警戒を崩さないスルトと長い夜を過ごすための。

 

 そろそろ時計の短針が十二へ届く。

 

 日付が変わっても、誕生日は終わらない。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

「スルトがデレる瞬間って可愛いな」

「……しね」

 

 悔しさの滲み出た罵声はなんの脅威でもない。

 まして、今この瞬間のスルトの体位は、彼女が持ち合わせている恐ろしさというものを完全に否定している。

 

「ほら、さっき言った通りにカメラに向けて言ってみて」

「……………………」

 

 スルトは今、蹲踞の姿勢になっている。

 姿勢自体は問題ない。しかし丈の短いミニスカートでその姿勢となることが問題であり、なによりスルトの真下にドクターの顔があることが大問題だった。

 

 鼻息がかかる距離。

 

 スルトはドクターに襞壺を見せつけるようにして足を広げている。

 そして全開となったシャツ。ブラジャーは脱がされていないものの露出を強制された二つの芯は今もぷっくりと膨らみ、その真ん中の谷間には一枚のカードが載っている。

 

 ロドスのオペレーターである証のIDカードだ。

 覇気を失った牝顔を、仏頂面の美人が見上げている。

 

「……私は、スルト……い、いまから……」

 

 はだけた服を直すことも許されず、丸出しの谷間に顔写真付きのカードを載せながら両手を頭の後ろで組み、至近距離で性器を見せつける体勢のままに、「お仕置き宣言」をする。

 

『ご主人様』が『メイド』に向けて最初にした指示がこれだ。

 

「……この、変態の、下品なお遊びにつきあう――」

 

 ちなみにドクターの台本では「私はメイドのスルト。ご主人様にご無礼を働いたお詫びとして、これからおまんこをお仕置きして頂きます♡」だったが。

 

 もちろんスルトがそんな屈辱的なセリフをそらんじるはずもなく。

 ドクターもそれを見越していた。

 

「う゛ぅ゛ン゛ン゛♡♡♡ あ゛、な゛、も゛ゥ゛ゥ゛ウ゛♡♡♡ お゛、あ゛、あ゛ぁ゛、イ゛、く゛ぉ゛お゛――♡♡♡ お゛~~~♡♡♡」

 

 スルトが言いつけを破るや否や、ドクターはスルトの腰をがっしりと掴み、自分の顔と接着するように引き寄せた。

 

 その接合部にて為されている所作はスカートに覆われて見えない。

 しかし何が起きているのかは一目瞭然だ。

 眼の焦点が合わないスルトが、人間らしい言葉を失っている様子から。

 

「イ゛く゛、ン……♡♡♡ オ゛ッ、ほ゛…………♡♡♡ ぁ゛――♡♡♡ あ゛ッ!? お゛、ッい、は゛な゛、あ゛ッ♡♡♡ あ゛あ゛あ゛あ゛♡♡♡」

 

 スカートの内側から鳴り響く、音を立ててスープを飲み干すような粗雑。

 それが始まった時点でスルトは体を前に倒し、袖を圧し潰すようにベッドに手を突いていた。

 

 頭から手を離してはいけない。

 胸からIDカードを落としてはいけない。

 

 二つの指示を破ったスルトは、一際野太い悲鳴を上げながら腰を突き上げた。

 涎をぼたぼた零しながら痺れるような余韻に浸っていた――

 

 その離れていった腰を、ドクターはむりやり引き寄せ、吸引を再開したのだ。

 まるで群れから離れた家畜を連れ戻すように。

 

 瞳をチカチカと瞬かせながら、痛々しいほどに甘い鳴き声。

 スルトは拒否の意を含んでいそうな叫びをまき散らしながら絶頂し、また腰をガクンと持ち上げ――また引き寄せられ、吸われ――

 

 何度もその行為を繰り返される内に、彼女の股の真下は真っ黒に染まるほどに濡れていた。

 

 

 

「いやぁ、スルトのおかげで顔がびしょ濡れになったよ。溺れ死ぬかと思った」

「うる、ひゃいっ……♡」

「それにカードは落ちてるし体勢も変わってるし……まだお仕置き、続けようか」

「っ……変態」

「……そろそろ、挿れていいか?」

「……………………」

 

 ドクターはスカートの中から喋っている。

 敏感な部位に吐息がかかってくすぐったいのか、ドクターが喋るごとにスルトは腰をくねらせているが、邪な両手に掴まれて逃れることができずにいた。

 

 最後の提案を聞くや、ぴたりと止まる。

 そして、互いに何も言わない時間が十秒続く。

 

 ドクターはそれが了承であると知っている。

 

「背中向けて、自分で挿れてくれ」

「ッ~~~……あとで覚えてろよ……!」

 

 その強がりに興奮するかのように、放埓な肉剣が硬く直立している。

 

 中腰を上げて、指示通りに移動する。

 スルトの表情が記録に残ることはない。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 ガニ股となった網タイツを纏う両足。真っ赤なパンティーが丸見えのミニスカ。

 その中心に聳えるどす黒いモノが、ミニスカの中へとゆっくりと飲み込まれる。

 

「お゛、ぁ゛、ぁ゛――♡♡♡」

 

 まず先端が大きな唇とキスをした。

 

「ぁ゛あ゛あ゛ん゛ッッッ♡♡♡」

 

 そのまま中の襞肉を掻き分けて押し進む。否、この場合は穴がペニスを抱きしめんと迫っているのだ。指で入念に解きほぐされ、舌で徹底的に清掃されたマン肉は、突起物のために道を譲るように、侵入者の形状に合わせて形を変えていった。

 

 一番奥の硬くも脆い壁に触れるのに苦労はしないが。

 スルトはそれを拒むように、途中で降下作業を止めた。

 

「オ゛ッ……は゛、ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛――♡♡♡」

 

 ガニ股のまま、スルトは固まった。

 前屈みになってベッドに両手を突いたままぷるぷると震えている。

 カクカクと桃尻が蠢き、ポニーテールも揺れる。

 

 ドクターは眼前に突き出されたデカ尻を撫でまわしている。ショーツはTバックの形状を基にしている。柔尻の肌面積はほぼそのまま露出しており、隠れているのはせいぜい真ん中の割れ目くらい。

 

「スルト、まだ途中だぞ?」

「うる、はいっ……♡」

「ほらほら、頑張ってくれ」

 

 肌に指を食い込ませるように掴み、引きずり下ろす。

 先ほどのクンニ地獄のように。

 きゅうきゅうと締め付けてくる襞に亀頭を擦られる感触が、わずかに。

 ドクターは行き止まりへとタッチした。

 

「やめっ――あ゛ぁ゛~~~♡♡♡ あ゛ッ――あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ♡♡♡」

 

 カメラが映す世界の中で、二人はある意味で勝負をしている。

 少しでも腰を持ち上げたいスルトと、腰を深々と固定するように掴むドクター。

 単純な腕っぷしでは絶対にドクターに勝ち目などないはずなのに――

 スルトはドクターに負け続けていく。

 

「う゛、ぉ゛――オ゛~~~♡♡♡ オ゛、ぉ゛、ぉ゛ぉ゛お゛ッッッ♡♡♡」

 

 奥の部位をぐりぐりと触られるだけで果てる、果てる。

 結合部からぷしゃぷしゃと匂い立つ水をまき散らしながら。

 

「ホ゛ォ゛ッッッ♡♡♡」

 

 最後の最後、死に物狂いで脱出を試みたようにスルトの腰が持ち上がる。

 バネ仕掛けのバネが壊れる勢いで跳ね上がったように。

 

 火災を探知したスプリンクラーの如き水がベッドを濡らした。

 

「オ゛~~~……ッッ♡♡♡ ぉ゛、ぉ゛お゛……♡♡♡」

「……駄目じゃないか、スルト」

 

 ぬるぬるの汗まみれとなったドクターの剣が倒れる。ドクターは柔尻を掴む手を離すも、それを再び持ち上げることはない。

 軽く引いた手の平。それを――

 

        バシィン♡「ア゛ん゛ん゛♡♡♡」

 

「ご主人様を汚したらまず謝らないと」

「らま、れ――」パシィン♡「ェあ゛あ゛ッ♡♡♡」

「まだ私はイってないんだから、休憩する時間なんてないぞ」

 

 ミニスカートは丈の短さのあまり、スルトが前屈みになるだけでケツ丸出しとなる。わざわざ捲らなくても叩きたい放題なくらい。下品なくらい。

 

 仕事をさぼるメイドを叱りつけるように、生意気な顔をするデカ尻を交互に引っ叩く。叩かれるたびに色艶を含んだ反論が木霊して、ドクターを逆上させていく。

 

「ほら、このまま腰落として」

「ま、まへ――」

 

 腰を引っ張られ、垂直に持ち上げられるどす黒いグロテスクな異物と再会。

 女性が主体的に動くべき体位でありながら、もはやなにからなにまでがドクターの思うまま。

 

「い゜ッ――ア゛ッッッ――♡♡♡」

 

『お座り』を強いられたスルトは、ドクターの分身が見えなくなるまで――

 根元まで深々と、座った。

 

 

 

「ほら、スルト。頑張って動いてく……スルト?」

「ヒ゜~~~……♡♡♡ ッッッぁ……♡♡♡ オ゛、ほ゛っ……♡♡♡」

「……しょうがないな」

 

 まるで動物の真似をするように手足を大きく広げて『座った』きり動かなくなったスルト。

 こうなったらスパンキングをしようがテコでも動かなくなることをドクターは知っている。

 

 自分で動いた方が早いことも。

 

「よいっ、しょ」

「お゛ぁ゛♡♡♡」

 

 上半身を起こす。足を折り曲げ、スルトを押し出しながら立ち上がる。その拍子に根元まで刺さっていた剛直がゴリッと壁に擦れる。

 

 このままバックの体位で続けようと狙っていたドクターの読みは外れた。

 スルトの体がうつ伏せに寝そべってしまったからだ。

 野太くも掠れた喘ぎを、瀕死の獣のように漏らすスルトを起こすのは難しい。

 そう判断したドクターはそのまま覆い被さることにした。

 ぱくぱくと呼吸をするように開閉する淫らな唇を、塞ぐ。

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛――♡♡♡」

 

 短い悲鳴が破裂する。濁っていながらも、空気に溶けていく音は高い。

 

「そろそろ射精だしていいか?」

「勝手に、しろォ……ヘ、ンタイ……!」

「さっきみたくご主人様って呼んでくれないのか?」

「二度と、呼ぶか……ばかっ……!」

「さっきのデレスルトも良かったんだけどな」

 

 ぶかぶかな袖を少し捲り、硬く握りしめられる拳を上から握る。

 右、左――レースを纏う細指はいつもと感触が違う。

 

 角が刺さらないようにと注意して、うなじに鼻先に突っ込む。いつものスルトはほんのりと甘くも爽快感のある香りを纏っているが、今は顔中に浴びせられた蜜の香りでよくわからない。

 

「エロカワ生意気メイドというのも悪くないな」

 

 耳元で囁き、顔を埋める。首筋へ。

 

「あ゛っ――おい、痕、残るだろっ……!」

「髪が隠せばなんとかなるさ」

「そういう問題じゃ――」

 

 君に拒否権はないよ。

 そういいくるめるように、あるいは非難の声から耳を塞ぐように。

 ぢゅうぢゅうとやかましい騒音を奏でながら棍棒を叩きつける。

 

「お゛、ィ゛ッ♡ すい、にゃ、ら゛あ゛あ゛♡♡♡ うごく、に゛ゃ゛ァ゛ア゛♡♡♡」

 

 バチュンッ――

 湿った布を叩きつけるような効果音が休むことなく続く。

 それでも覆い隠せぬ荒れ狂った調べを鎮めるように、ドクターはスルトの両手を上から握りしめた。

 

 指と指の隙間を埋め尽くして。

 振動を振舞うたびに締め付けてくる指の感触が痛々しいほど。

 それを超越した圧迫感に絶えず晒される肉の剣から、炎を吐き出すことをついに堪えきれなくなった。

 

 

 

      ごめん、このまま――

 

 ま゛……!は゛ぁ゛ぁ゛ッ……♡♡♡

 

      パンッ! パンッ! パンッ!    ばちゅんっ♡♡♡

 

  びゅーッッッ♡♡♡   あ゛あ゛あ゛ッ♡   ドビュッ♡♡♡

 

    お゛ッ♡ びゅるるるるッ!    ビュッ♡♡♡

 

びゅぶッ♡♡♡     びゅ~~~ッ!  ホ゛ォ゛ォ゛……♡♡♡

 

     ずり……♡ ずり……♡  ひぃー…………ヒィ~……♡♡♡

 

 

 

「こするなぁ……ばかっ……♡♡♡」

「ごめん、これ、気持ちよすぎて……」

 

 膨大な熱を吐き切った直後。わずかな接触すらも危機的刺激になる、刃こぼれした剣をドクターは緩慢にズる。

 

 腹の中の隙間を固形物と白濁液で埋め尽くされたスルトも疲れ切った顔をしつつ、その余韻に浸るのはまんざらでもなさそうだった。

 

「だいぶ汚れたし……一回シャワー浴びないか?」

「……もう、誕生日は……終わってるぞ」

「延長は?」

「…………」

 

 思案する間が数秒。

 

「……変な事したら怒るから」

「大丈夫。変なことはしないさ」

 

 じくじくと蔓延していた熱は引きつつあるのに、スルトの指はドクターの指を離していない。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

「おいっ、変なことはしないって、ッ、約束だっただろ……!」

「スルトの体をちゃんと綺麗にしているだけだろう?」

「乳首ばかり、引っ掻くな……ばかっ……♡」

 

 

 

 シャワールームにて。

 互いに服という服を脱ぎ捨てて生まれた時の姿となり、洗い合いを始めた二人。

 この状況でドクターがなにも仕掛けないはずがなく、スルトの上半身を泡まみれにするやさっそく悪巧みを実行に移し始めていった。

 

「泡まみれのスルトがエロすぎてな」

「じゃあさっさと流せ」

「でも私の体にはまだ汚れが残っているだろう? 流すなら一緒がいいじゃないか」

「……ふんっ」

 

 腕や腹よりも入念に乳房を揉み洗ういやらしい手つきに呼吸を乱されながらも、スルトはドクターの体において最も汚れた部位を掴んだ。

 

 散々出し尽くした愛液と精液の匂いがこびりついた汚物を。

 

「……なんでまだこんなに硬いんだ」

「泡手コキが気持ちよすぎるから、かな……ぉっ……」

「変な声出すな……んっ……」

 

 ソープで真っ白にコーティングされた長物は、一擦りされるだけでも甲高い鳴き声を波紋させる。左手でゆっくりと皮をしごきながら、右手の平を押し付けて先端をぐりぐりと擦り洗う。

 

 カリ首や裏筋が弱点であることはスルトも熟知している。

 すっかり硬くなり、段々と間隔を狭めていくドクターの呼吸を聞きながら、どこか楽しそうに嗤っていた。

 

 

 

「スルト、このままキスしていいか?」

「はあ? なんで」

「キスしてもらいながら手コキされたら最高に気持ちよさそうだから」

「……好きにすれば」

 

 スルトがそう言うや、ドクターは首だけを前に突き出すようにして唇を重ねる。

 スルトはそれを受け止めるだけでなく、侵入してくる舌の戯れに応じてさえいる。

 誕生日だからなのか。

 あるいは日々の積み重ねによる理解、はたまた呆れか。

 

 なにはともあれ、あのスルトが正気を保ったままべろちゅー手コキをしているというだけでも奇跡の所業であった。

 

「あっ、やばい、射精でそう」

「……まあ、ここなら別に」

「いや、待て。射精だすなら膣内がいい」

「はぁ? ばかっ……ここじゃやりづらいだろっ」

「まぁまぁそう言わず」

 

 どこか粘ついた笑みを浮かべたドクターが姿勢を正す。そして一歩踏み込み距離を縮めれば至近距離は零距離となり、むっちりと実る肉房を堪能していた両手が降りる。

 

「ひゃぁんっ♡」

 

 手つかずだった下半身。べとべとの蜜ですっかり汚れてしまった股の間を前と後ろから同時に撫でる。

 つまり、膣口と肛門。その両方を、侵入はせず、入り口を擦る。

 

 ぬるぬると擦られるだけで露骨に反応してしまう前門を、泡まみれの指先でぐりぐりと擦ればどうなるか。

 本日はまだ触れていないものの、これまでの夜ですでに開発済みの後門を、脅すようにグイッグイッと圧すればどうなるか。

 

 スルトはドクターの肩にしがみついていた。

 今度は彼女がへっぴり腰になる番だった。

 

「あー、泡がついてたら良くないな。すまない」

「おいっ――」

 

 わざとらしい謝罪とともにシャワーヘッドを掴んだドクターが、湯気を充満させるために垂れ流していたお湯を一点へ集中させた。

 

「やめっ……♡ あ゛、ぁ゛、ぁ゛ぁ゛あ゛ン゛♡♡♡」

 

 一定の水量を維持し続けるシャワーヘッドがスルトの股の間へと差し込まれる。

 逆さ向きに。

 

 鋭敏な部位にお湯の束が当たった途端、太腿を閉じられる。みっちりと挟み込まれたシャワーヘッドがムチムチの空間の中へとお湯を吐き出し続けた。まるでスルトがお漏らしをしているように、温水が床へと落ちる。

 

 

 

 ドクターはそれを引き抜いて壁に戻しつつ、スルトの背後に回った。

 

「ほら、スルト。お尻突き出して」

「っ……しね……」

 

 悪態をつきつつもドクターの望むようにしてくれるスルト。

 睨みつけながらもぐいっと臀部を突きつけてくる様はある種のギャップを孕み、見る者の加虐趣味を増幅させるばかりだ。

 その鋭さが柔らかく潤む瞬間に興奮しない男はいない。

 

 ドクターも例外ではない。

 

「うぁんっ……♡♡♡」

 

 徹底的な掘削作業で形を憶えさせられた襞壺は、その顔なじみを拒むことはない。

 ピカピカに磨かれた黒剣がヌルンと入り込む。

 スルトは壁に突いた手を力ませ、耐えるように瞼を瞑った。

 

「あ~……ぬるぬる……」

「言う、なっ……♡」

 

 露骨な指摘に反論しようにも、声がくねる。

 ドクターにはスルトの顔が見えない。しかしぷるぷると震える背中がすべてを語っている。

 

 ここならどれだけ汚れてもすぐに洗える。

 透明だがべとべとに粘つく蜜も。一度拭き出せば止めようがない牡汁も。

 快楽を貪ることだけを考える腰使いは遠慮を忘れた。

 

 狭いシャワールームは反響が著しい。

 喘ぎも。肌の打ち合いも。なにもかもが倍増して鼓膜を揺るがす。

 

「お゛ゥ゛♡♡♡」

 

 一際深く打ち据えてドクターが止まる。

 スルトはつま先立ちをして刺突の圧から逃れようとするも、細い腰にしがみつくすけべな両手がそれを許しはしない。

 

「こっち、向いてくれ」

 

 一方的な要請を突きつけて挿入物を引き抜くドクター。

 

 カリ首が引っかかって悶えるスルトの気も知らぬまま、彼女の体を半回転させ、片足を持ち上げる。スルトを壁へ押し付け、背中をくっつけさせる。姿勢の安定性を高めるや、早く早くと意気込むような怒張を濡れ穴へあてがった。

 

 腹の隙間を埋め尽くされて蕩ける顔を、スルトは隠しようがない。

 

「やっぱりスルトの喘いでる顔を見ないのはもったいないな」

「ばかっ、言うな……!」

「他の皆が知ったらびっくりするだろうし」

「……見せたいのか……?」

「いいや」

 

 念を押すように、腰を打ち据える。

 

「あ゛ぁ゛ん゛ッッッ♡♡♡」

「誰にも見せたくない」

 

 スルトはもうなにも隠さなくなっていた。

 情けない声を出す口を食いしばることも。

 ドクターをその気にさえてしまう緩んだ眼差しも。

 

 行き場のない両腕は、じゃれつくように、甘えるように、首へと回っている。

 

「キスしてくれ」

「っぁ、すきに、ィッ、すればぁ……♡♡♡」

「スルトからシテ欲しいんだ」

「……ばかっ……♡」

 

 鼻先が擦れる距離感。鋭利な刃物の如き美貌がなまくらとなり、迫る。

 

 弱弱しくも侵入してきた、硬くもぬめりとした感触を受け身になって堪能しながら、焦らすように腰を擦り付ける。唇を強く吸いつけられた途端に腰回りでなにかがどくりと滾る。ドクターは足腰に力を込めた。

 

 唇の隙間から異質な熱が漏れる。

 それは湯気とは違って、重い。

 

「このまま、射精だすぞっ……」

「かっれに、ぃいっ♡ ひろっ、ぉ゛ッ♡♡♡ あ゛、ぁ゛ぁ゛♡♡♡」

 

 乱暴なドアのノック音が響く。空気に張り付くような質感で。

 なにかに急かされているような速度。相手の事情も鑑みない自分勝手なその横暴さに応える声は、その乱暴さこそを求めているかのように姦しく応答する。

 

 どんどん速まり、どんどん高まり、どんどん緩まり――

 

 二つの弛緩がぶつかり合い、注がれる。

 

 また洗い直しだ。

 しかしそれを遅延させるかのような唇の求め合いが、降り注ぐシャワーの下で暫し続く。

 

 

 

「ちゅっ、はっ……ぁ……♡ 出しすぎだ、ばか……♡♡♡」

「誕生日だし、許してくれるだろ?」

「ふんっ……ちゅぅぅ……いつも、許してやってるだろ……」

 

 

 

 既にのぼせたように両者の顔は赤い。しかしその赤さが引くのはまだ先だ。

 

「実は別の衣装も用意してるんだ。……着てくれるか?」

「…………変なのだったら燃やすからな」

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

「おいドクター」

「最高だスルト。もう、なんだ、言葉が見つからない」

「……燃やすぞ」

「待ってくれ。さっきのメイド服はすっかりびしょ濡れだし」

「まだあっちの方がマシだ! なんだこれは、服ですらないぞ!」

「水着だからなぁ……」

「水着ですらないだろッ! しねっ!」

 

 シャワールームでの甘々なべろちゅータイムが嘘のような怒声。

 このやり取りだけを聞けば破局間際のカップルの如し。数日もしない内に二人の関係性は元通りに修復できない事態に陥ってしまうのでは。

 

 しかし女性がマイクロビキニを着て顔を真っ赤に染めているのであれば話は別だ。

 

 

 ここは室内。

 

 しかもビキニは白黒の牛柄。

 

 豊満な果実は肌色をまったく隠せておらず、勃起したエロ頂点は薄布一枚を貫通しそうなほどに存在感を浮き彫りにしている。入念に洗い流した股を覆う布は心もとなく、ちょっとでも歩けばスジが見えることは間違いない。

 

 紐と遜色ない『衣装』を手にした時点でスルトは嫌な予感をしていたに違いない。

 

 それでもちゃんと着用する辺り、衣装を要してくれたことに対して誠実なのか――その破廉恥な姿を舐めまわすように視姦するドクターになにか期待しているのか。

 

 ともかく。

 髪色と同一化しそうなほどに茹で上がった顔色のまま、胸の前で腕を抱き、今にも剣を振るって襲い掛かりそうな目つきで睨むスルトは、これまでドクターが観測してきた中でも最高級に愛らしい表情であると断言できるであろう。

 

 

 

  ◇

 

 

 

「ともかく裸よりはマシじゃないか?」

「裸の方がまだマシだ、バカ」

「まあまあ。それに実はまだオプションが残ってるんだぞ」

「……オプション……?」

 

 訝しむスルトへ見せるは、クリップ。クリップには鎖がついており、鎖の先には小さな輪がぶら下がっている。更には涼し気な音色を鳴らすベルのついた首輪。市販のローション。そして――フォルテの体から生える尻尾の模造品。その模造品は取っ手にいくつものビーズが連なっている。

 

「角は要らないよな。かっこいいのが付いてるし」

 

 スルトは威嚇するフェリーンのように睨んだ。

 サイドテーブルに並べられる『オプション』の数々と、ドクターを。

 

「おいドクター。遺書の準備はできてるんだろうな」

「前にもやったじゃないか」

「あれっきりだって言ったはずだ」

「なんだかんだで二十回くらいはアナルプレイもした気がするが」

「うるさい。……………………百歩譲るとしても、あれに見られるのは嫌だ」

 

 ちらり。

 スルトの視線を追えば、相変わらず机の上でお行儀よく鎮座する機械が。

 

 シャワーを浴びている最中も録画しっぱなしだった無機質な眼。

 スルトのあられもない姿はすでに収められているわけだが……六つの丸い玉がビーズ状に連なる玩具を挿入した場合の崩壊っぷりはこれまで以上になってしまうと、本人も理解しているのだろう。

 

「スルト」

「っ……」

 

 ドクターは卑猥な目的のために使用されるクリップを片手に握ったまま迫る。

 先ほどのシャワールームでそうしたように。

 

 甘い言葉で篭絡されてたまるものかと主張するような目つきのスルト。腕を組んで身構えるその姿を攻略できる男はこの世に存在するのか。

 そんな威圧感はものの数秒で溶解した。

 

「私は後悔しているんだ。今まで一度も君との夜を撮影しなかったことを」

「っ……ッ♡ おい、やめろ――」ぐちょぐちょぐちょ♡♡♡「あ゛ん゛♡♡♡」

「このまま続けて良いだろう?」

 

 真正面。鼻先が擦れ合う近さ。そのまま唇が重なってもいい距離。

 ドクターはいくつもの感情が混ざって濡れた瞳を見据えながら、小声で囁く。

 その声を自分でかき消すように手首を規則的にしならせる。

 

「ふざ、けッ……ぁ゛♡♡♡ それ、ずる――ぅ゛ぅ゛~~~♡♡♡ ォ゛オ゛~~~♡♡♡」

 

 べたつきを洗い流した下半身がまたもや水浸しになる。

 ドクターの腕を必死に掴むも抵抗虚しく、ビキニパンツからじょばじょばと愛液をまき散らしながらスルトは絶頂へと強制連行された。

 

 軽く意識が飛びかけているようにビクビクと震え全身でつま先立ちをするスルトの背後へ回るドクター。パンツに突っ込んだ手はもちろん離さない。

 

 そしてクリップを持った手でマイクロビキニを上へずらし、ぷっくりと色めき立っているピンク色の突起物を晒し、クリップをあてがう。

 

 かき回される肉壺に連動して揺れ動くウシ乳にぴったりくっつけて。

 

「挟むよ」

「やめ……しね、ばか……へんたい……♡♡♡」

「でも……スルトが本当に私を殺すことはないよな?」

「ッッッ~~~~~~~~~♡♡♡ ばかっ、ばかっ……♡♡♡」

 

「スルト、好きだよ」耳の穴の中へ直接放り込むように囁いた。

 

「それ、いま、言うなッ――」水浸しの壺をぐちょぐちょと掻きまわす指に意識が向いている隙を狙った、容赦ない奇襲。「んに゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛♡♡♡」鉄の輪が一つ。スルトに家畜らしさが加わった。

 

「はい、こっちも」と言いながら、サイドテーブルに置いてあったもう一つを手に取り、躊躇なく乳首を挟むドクター。

 両方の果実を装飾し終える頃には小さな洪水が完成していた。

 

 

 

「ん゛ん゛~~~ッッッ♡♡♡ う゛、う゛ぅ゛~~~ッッッ♡♡♡」

 

 全身で踏ん張りながら、腹の奥底からひねり出したような呻き。

 

 ぐぢょぐぢょと品性の欠片もない、水たまりを踏みしめるような騒ぎをまき散らす腰は故障した精密機械のように暴れている。砕かれた蛇口から漏水するように、両足を伝ってとめどなく清水が零れていく。

 

 パッ、とドクターが指を引き抜き、腕を離しても、今も片手による撹拌を続けられているかのように、スルトはガニ股で立ち尽くしながら甘イキに熱中していた。

 

「それから、これだな」

 

 カウベル付きの首輪。

 ドクターが腕を離した理由はこれである。

 

 金具を外し、無防備なスルトの首へ巻きつける。

 息苦しくないよう緩めに装着すれば、さっそくベルがカンカンと声を上げた。

 

「さて……じゃあベッドに行こうか。さすがに立ちながら挿入するのは無理だし」

「や……だ……♡♡♡」

「こらこら」店のショーケースの前で駄々をこねる子供を諭す親のような微笑みを浮かべながら「ヒャンッ♡♡♡」ドクターはデカケツを思い切り引っ叩いた。「スルトはいま私の牛さんなんだから、我儘言っちゃだめだろう?」

 

 有無を言わせぬ調子で腕を引き、真後ろにあるベッドへ連行する。

 スルトは四つん這いになったものの、手足は今にも崩れ落ちそうだ。

 

 そしてこの時、つまりスルトが傍観者に対して背中を向けたことで判明した事実が一点。

 

 彼女が履くビキニパンツには穴が空いていた。

 メイド服を着用した際は割れ目が露呈していたのに対し――

 今回は、花びらの渦。

 

 尻穴のみがぽっかりと見えている。

 

「あんた……あとで……おぼえて、ろ……♡」

「それは未来の自分に任せるよ」

 

 キャップを開けて手の平にローションを落とし、アナルの入り口をまずはほぐす。さらにローションを追加して指先が入りやすくなったのを確認して、今度はアナルプラグの挿入部をローションまみれにしていった。

 

 尻穴に装着すればよほどのことがない限り抜けることはないであろう、六つのビーズ。

 入り口から根元にかけてサイズが段々と大きくなっていく連なりの先っぽを、菊の門へと当てる。デリケートな部位なので力加減を間違えてはならない。しかし、ローションでほぐした排出口は簡単にビーズを迎え入れた。

 

「う゛ぅ゛~~~……ッッッ♡♡♡」

「まずは一個目」

「いわなく、てェ……♡ いいからぁ……♡」

「ほら、二個目いくよ」スルトの要望が聞こえなかったかのように挿入が続く。

 

 

 

 ミチッ――ぐぐっ――ぬぽんっ♡♡♡ ふ゛ぅ゛ぉ゛オ゛オ゛♡♡♡

 

   はい、三個目   ず、ずずっ♡♡♡  ぶちゅんッ♡♡♡

         

       あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ♡♡♡  カンッ♡ カンッ♡

 

  ぬぶっ♡ ぬぶっ♡  ぬぶぶぅぅぅ♡♡♡   あ、ごめん四個目

 

    う゛ォ゛ッ♡ お゛ッ♡ お゛ッ♡ お゛お゛お゛ッ♡♡♡

                  

五個目もいくぞ   ずぬぅ……ずぷ……ぬぷぷぷ――  どちゅっ♡♡♡

 

     お゛ッ…………~~~~~ァ゜♡♡♡  カンカンッッッ♡♡♡

 

 ラスト、入るぞ          やだ♡♡♡ やだぁ♡♡♡

         ぶちゅんッッッ♡♡♡

 

   あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~♡♡♡

 

 

 

 その容赦ない挿入作業の過程で、スルトは何度果てたことか。

 おそらく本人には皆目見当もつかないだろうし、ドクターも数えるつもりなどなかった。

 数えるまでもなかった。

 

 最初の一個目を挿入した時点でビキニパンツはぐっしょりと濡れて重々しささえ纏っていた。そこから滴る水滴がぽたりと落ちてはシーツを濡らす。二個目、三個目が挿入した時点でお漏らしを止められない子供のように、びしゃびしゃと水が流れてシーツに大きな影ができていた。四個目でいよいよダムが決壊し、シーツが吸収しきれなくなった水が浮かぶ。最後の大玉を挿入することでついにスルトはサルカズでありながらフォルテにもなったが、代償として手足は曲がることを忘れたくらいにまっすぐ伸び、スルトもドクターも濡れた地面に足をついているような居心地に陥ることとなった。下敷きになったカウベルは最後の最後で身動きを取れなくなった。

 

 明日になったらマットレスを外で干さないと。

 しかしその理由をどう取り繕えばいいだろうかと呑気に考えながら、ドクターはスルトを抱き起こして仰向きにさせた。

 

 薬物を過剰の吸い込んだ中毒者のように瞳がイっているスルトを見ても、ドクターは心配する素振りすらしない。

 

 これまで何度もアナルプレイをしてきたが、スルトが壊れなかったことなど一度もないからだ。

 

 

 

  ◇

 

 

 

「さて、じゃあそろそろ」

「あ゛っ……おぃ……♡♡♡」

 

 スルトはすでに水着を所有している。

「極彩の楽園」という名の、黒ビキニと白のカーディガンがセットになった水着だ。そちらのビキニも中々煽情的だが、人前に出ても恥ずかしくないしっかりとした面積で肌を守っている。

 

 それに比べてこのマイクロビキニの脆さと言えば。

 ほんの少し、くいっとずらすだけで、涎まみれの唇が覗けてしまうほど。

 

「さっきからずっと我慢していたんだ」

「あ゛――は゛、ぅ゛――♡♡♡」

 

 すでに頭は口の中。

 もはや手で支えなくとも、腰を真下に振り下ろすだけで事足りる。

 

「それに二穴攻め、好きだろう?」

 

 ソフトクリームをコーンにまっすぐ流し込むように、ドクターの腰が垂直に落下した。

 

 隣室に先客がいるおかげで襞肉がごりごり削ってくるような圧迫感。

 下腹部を濡らされながらも、奥の壁を拡張するようにぐりぐりと擦り付ける。

 

「お゛~~~ッッッ……ォ゛――ォ゛ォ゛――♡♡♡」

 

 スルトは早速達した。

 もはやなにをされても快楽に変換してしまう状態に突入していることは明白だ。

 口を開けながら窒息しているような顔を間近から見つめるドクターは、抽挿に合わせて変わりゆく表情を楽しむように、いたぶるような腰使いを開始した。

 

 

 

「エロイなぁ」

「うる……ひゃい……!」

「黙ったままなのは味気なくないか?」

「にゃらっ……きす、しろォ……♡」

 

 蕩け切った顔を見つめられるのが相当屈辱的なのだろう。

 しかし自らキスを要求するその態度。なにかに屈してしまったような敗北感。

 

 そういう悔しさのようなものを滲ませる方がよほどスルトにとって恥辱的であり、録画を見返せば赤面必死なことを、当の本人は見落としているらしい。

 

 スルトらしかぬ誘惑はドクターの股間を情熱的に奮い立たせた。

 が、彼がその要望を飲むことはなかった。

 素直には。

 

「じゃあ鳴き真似してくれないか。モォ~って」

「は、ぁッ……!? ふざ、け……」

「んー、じゃあこのままずっと……」

「ッッッ~~~……! ま、て! いう、からぁ……!」

 

 軽く腰を引き、軽く沈ませる。ドクターの身じろぎに脅されたスルトは数秒の長考を経て妥協した。

 

 客観的にはたったの数秒。されど、スルトの脳内ではプライドと損得が天秤にかけられスムージーを作るミキサーの如く荒れ狂っていたに違いない。

 

 ゆえにそれは長考と呼ぶに値した。

 

「……もぉ……」

 

 カメラに一切顔が映らないようそっぽを向き、呟く。

 好きな女の子に悪戯をして思わぬ事態を招いてしまった男子が気まずさの中で必死に振り絞った謝罪。そんな心細さと気恥ずかしさに似ている。

 

「カメラに届くくらいの声で頼む」

「っ~~~……!」

 

 ドクターは口元のにやけっぷりを隠せなかった。隠すつもりすらなかった。

 

「モォ――!」いつまでも玩具を片づけない子供に稲妻を落とす母親の如く、スルトが口を大きく開いた。「ぉ゛ぉ゛お゛オ゛オ゛~~~ッッッ♡♡♡」間髪入れず、ドクターが下腹部を打ち付ける。顔はそのままに。

 

 天に昇っていそうな鳴き声が何秒も続いた。

 

「よくできました」

 

 言うことを守った子供を褒めるように囁き、やがてドクターはスルトの顔が見えなくなった。

 

 彼の世界はアメジストの鏡に覆われていた。

 頭の中に喘ぎ声が反響する。唾液の中に罵声が混じっていた。なだめるようにゆっくりと腰を前後させるとその怒りは倍増していった。その怒りに身を委ねるようにドクターの自意識も乱雑になっていく。

 

 下腹部に滾る苛立ちが限界を迎えていたために。

 

「ふ゛ぉ゛♡♡♡ ぉ゛、お゛オ゛♡♡♡ あ゛、ぅ゛オ゛~~~ッッッ♡♡♡」

 

 

 

 吐精の前触れに気づいたスルトがなにかを訴えかけるように喚く。

 その訴えから耳を塞ぐようにスルトの両手に指を絡みつかせるドクター。

 

 ギュウゥと握り返されるだけで全身を飲み込まれているような錯覚を抱いてしまうのは、分身とも呼べるほどに敏感な部位を文字通り飲み込まれているからだった。

 

 頭蓋骨の隅々までも蝕む甘い嘆きに、金具と、鈴の音の合いの手が混ざる。

 

 BGMのように。

 そのBGMが止まっても、頭の中は残響まみれだった。

 

 ドクターもほんのわずかに意識を手放して、その囀りに同化していた。

 

 

 

  ◇

 

 

 

「あ~……斜めで挿れるのもいいな」

「ん゛っ……♡ ふ゛ッ……♡」

 

 ベッドが壊れそうなほどの杭打ちピストンの末の射精を経ても、二人の連結が途切れることはなかった。

 溜め込んだ膂力を解き放って多少は萎んだドクターの大樹は、狭苦しい肉壺の滑らかさの中で、微睡むように前後しているだけであっという間に回復してしまったから。

 

 腹の中で異物が膨らんでいく過程で切なそうな声を上げるスルトがドクターを刺激したのも要因の一つである。

 

 

 

「ふ゛ーっ♡♡♡ ふ゛ーっ♡♡♡」

 

 スルトは枕を抱きかかえて顔を埋めていた。

 

 これ以上、らしくない顔を見られまいと。欲情に支配された振る舞いを記録させまいと。首に装着したカウベルはすっかり振動を失い、喜びを表現する権利をはく奪されていた。

 

 極東に「頭隠して尻隠さず」という諺があるが――今のスルトにぴったりだった。

 

 顔は隠せてもそれ以外の痴態のすべてはオープンなまま。

 

 乳首からぶら下がる二つのニップルクリップはぷらぷらと揺れ、その下に伸びる鉄の輪が勃起しっぱなしの丸い首を刺激するように自重をかける。

 

 通常の呼吸とは明らかに異なる速度で膨らんではへっこむ腹部がスルトの心情を物語っている。

 

 結合部、そして真っ赤な茂みも半分ほど露呈し、抽挿の度に蜜壺の中で質量の大移動が起きているのを知らしめるようにぷしゃぷしゃ漏水している。

 

 片足はドクターの肩にかけられているため負担は少ないものの、つま先はずっと痙攣しっぱなしだ。その内吊ってもおかしくないほどに。

 

 M字開脚しているのにせめて顔だけは隠そうとしている儚い抵抗。

 それがかえって現場の淫靡さを際立たせていた。

 見えない部分があると、人間はその不可視の正体を想像してしまう。

 

 それこそがエロスの本質なのかもしれない。

 ドクターはあえて枕をひっぺ剥がさなかった。

 スルトが自ら、興奮材料を提供してくれているから。

 

 むりやりそうすれば冗談抜きでブチぎれられるという考慮も含めて。

 

 

 

「ふ~……さすがにちょっと疲れたな……」

 

 メイド服のバックから始まり、シャワールームでの挿入、牛柄マイクロビキニに着替えてからの猛攻。

 デスクワークばかりで鈍った体を性欲で誤魔化しきるのが怪しい道のりを辿ってきた。

 

 そしてふと、ドクターの視線は尻尾へ向く。

 

 フォルテの尻尾を模したそれは値段も結構張ったおかげでクオリティが高い。

 ビーズを取っ払って廊下に落としてみれば、誰かの尻尾がちぎれたのではないかと騒ぎになってもおかしくないくらい。

 

 なにか狙ったわけでもなく、ドクターはそれを引き抜いた。ビーズ一個分だけ。

 

 にゅぽん――「ほ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛♡♡♡」

 

 枕越しにくぐもった悲鳴が一際際立って鼓膜へ届く。

 そして今度は差し戻す――「ん゛ぉ゛ぉ゛ォ゛ォ゛♡♡♡」

 

「そうだった」

 

 ドクターはよい休憩方法を見つけたと言わんばかりに、右腕に力を込め、反復作業に勤しみ始める。

 

「こっちを動かせばいいんだ」

 

 ズンッと腰を前に突き出して固定。

 グラインドをしなくなった代わりに右腕で掴む尻尾の付け根をゆっくり引き抜き、ゆっくり押し込む。時にはビーズ二つ分引き抜くことも。

 

 ローションなのか腸液なのかわからない透明なぬめり汁を滴らせながら、丸玉が顔を覗かせてはまた消える。その都度、野太い棒で栓をした穴からも透明な液体がたえずジョロジョロと漏れてくる。

 

 小さい波が数回。そして大きな波が来る。

 ベッドはもはや湿原だった。

 頭をくらくらさせて思考を惑わせる桃色の湿度に満ちた。

 

 ドクターにとっての楽園とは、こういう場所なのかもしれない。

 

 

 

  ◇

 

 

 

「ほら、頑張れスルト。もうちょっとだぞ」

「フーッ♡ フーッ♡ あとで……あんたにィ、おなじの、ォっ♡♡♡ ……ぶっ刺してやる……!」

「私には似合わないよ」

 

 アナルプラグを抜き刺しすることで多少の休息は取れたものの、疲労感が残ったドクターは、スルトに『頑張って』もらうこととした。

 

 仰向きに寝そべるドクターにスルトが跨っている。

 先ほどは後ろ向きだったが、今回は向かい合って。

 

 極最低限の局所のみしか隠せていなかった紐の如き衣装は、もはや正規の位置からずらされ、ただただスルトの美貌を妖しく染める補助にしかなっていない。

 

 ガニ股になって突起物へと腰を下ろそうとしているこの瞬間、尻から垂れさがる疑似尻尾がドクターの網膜に焼き付く。

 

 股の間から蜜が流れ落ちる様に惹かれるように。

 中心からなにかが垂れる光景というものは、男の下心をひどく刺激するのかもしれなかった。

 

「フ゛ゥ゛ッ……♡♡♡ オ゛、オ゛ォ゛……♡♡♡」

 

 先端の出っ張りを飲み込み、そのまま半分まで降りる。腹の中で狭苦しい壁が落ちながら棒全体をにゅるにゅると取り囲んでくる。今この瞬間だけは、貫くのではなく、舐め尽くされる側だった。

 

「お゛~~~ッッッ♡♡♡ あ゛、ぅ゛ぅ゛ッ、ッほ゛……ッ♡♡♡」

 

 腰が完全に降り、両手をドクターの胸板に突いたままスルトが吠える。

 絢爛と表現できたほどの厚着から一転、紐を体に巻き付けただけの肌色全開の様は、ヒトから獣へと成り下がったほどの転落ぶりだ。

 

 ドクターとしてはまだ浅く感じられるが、尻尾を挿入したままなんとか体を起こしているスルトにそこまで求めるのは酷だろうと思う良識は残っていた。

 

 カウベルはカンカンと鳴っている。

 

 ドクターが指を広げながら手の平を差し出す。

 スルトは無言でそれを見つめてから、指の間に指を通し、自重をかける。

 

「このまま射精だしてしまいそうだ」

「さっき、出した、ばかりだろっ……」

「スルトがきつく搾り取ってくるおかげで」

「……ばかっ……!」

 

 

 

 蕩けた眼がわずかに力む。きっと睨んでいるつもりなのだろうが、逆効果であった。

 呼吸を整えたスルトが両足を踏んばる。「ふ゛、ぅ゛……♡♡♡」結合部がしっかりと見えるガニ股。ほんのちょっと腰を浮かせるだけでぷるぷると足腰が震え、カウベルの鐘の音に合わせてスルトが唄う。

 

「お゛ぉ゛ッ……ォ゛~~~♡♡♡」棒の半分が見えたほどでスルトの足腰は悲鳴を上げた。耐えられない。そう訴えるように帰ってくる。ほんの半ズリ。それだけでもゆっくりと爆発への準備へ向かうカリ首には充分な刺激だが、ドクターには物足りない。

 

 同じ往復を数回繰り返しただけで全力疾走したかのように止まってしまったスルト。

 襞穴のようにぎゅうぅっと握りしめてくる手の平は力む一方で、その内ドクターの指を粉々に砕いてしまいそうなほど。

 

 飼い主を満足させられない駄獣を叱るような刺突が、突き上がる。

 

「フ゛ォ゛♡♡♡」

「浅いところばかり使って、だめだろっ、スルトッ。もっと、奥、使ってっ!」

「むりっ♡♡♡ や゛、ぁ゛♡♡♡ あ゛、あ゛ッ、い゛く゛♡♡♡ イ゛ク゛ゥ゛♡♡♡」

 

 手を握りながらクリームたっぷりの柔乳を揺らす姿は、暴れ馬に戸惑う騎手を思わせる。

 さっきから惑わされっぱなしで、すっかり腰が落ちていた。

 

 一回、二回、三回。

 カンッ、カンッ、カンッ。

 ぷしゃあぁぁああ♡♡♡

 

 届かせまいと守っていた壁をいきなりド突かれて壊れる。

 水流を押しとどめていた堰が決壊したように、潮の波しぶきがドクターの顔へ降りかかる。スルトは赦しを乞うようにドクターの鎖骨へ顔を埋めた。

 膝に溜まっていた、鬱屈に似たエネルギーが爆発して、両足が伸び切る。

 

「また後でシャワー浴びないとな」

「うる、ひゃい……♡♡♡」

 

 手を離し、背中へ腕を回す。全身でスルトの悦びを共有する。

 骨という骨を通じて連鎖反応に溺れる軋みがドクターにも伝わる。

 そこにもっと爆薬を投じるように腰を突き上げる。

 腕はしっかりと背中を抱いて。

 

「あ゛ぅ゛ん゛♡♡♡」

「このまま、射精だす、射精だすぞっ……!」

「や゛め゛、や゛ぁ゛ぁ゛あ゛♡♡♡」

 

 スルトに拒否権はなかった。体を押し倒した時点で両足を揃えてピンと指先を伸びきらせたままアクメを繰り返していたせいで、自重を完全にドクターに預けてしまっていた。

 

 ぎしりぎしりとバウンドを繰り返す視界の中、できることはベッドのどのへんなのかもわからぬシーツをしっかり握りしめることくらい。

 

 腸の中に不愉快な満足感を抱いたまま。

 腹の中を威圧的な満腹感に包まれながら。

 何度目かの熱い愛情を注ぎこまれて、身も心もどろどろに溶かされていく。

 

「ア゛ーーーッッッ♡♡♡ あ゛ぁ゛、う゛ゥ゛~~~ッッッ……♡♡♡」

 

 愛らしいとも呼べるその甘い声が、ドクターの誕生日を延長させていく。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

「スルトー、アイス食べる?」

 

 体の上に覆い被さっていたスルトをゆっくりと剥がし、ドクターは冷蔵庫を開けて束の間の休息を取った。

 長い夜を過ごす時はこうしてアイス休憩を挟む。

 ちなみにスルトの冷蔵庫を勝手に開けて許されるのはドクターのみ。

 

「……こっち……きて……」

 

 そしてスルトがベッドの上から立ち上がることもない。

 

「ストロベリーとチョコならどっちがいい?」

「……チョコ……」

「はい」

「……もっと、近くにきて」

「?」

 

 スルトの口にアイスを差し向けながらドクターはさらに近寄る。

 スルトが首を伸ばさなくても、口を開ければアイスを咥えさせてあげられるほどに近づくと、スルトはなぜか四つん這いになってチョコアイスを素通りして――

 

「えっ、あ、スルト――」   ぢゅぶっ♡♡♡

 

    ぐぶッ ぷッッッ♡♡♡    じゅ♡  じゅるぅぅぅ♡♡♡

 

      ぐぼぉ♡♡♡  ぐッぽ♡♡♡   ぢゅうぅぅぅぅ♡♡♡

 

 スルトは、「チョコアイス」を咥えていた。

 どろどろのホワイトソースのかかった。

 

「…………」

 

 ドクターは両手にアイスを持ちながら、アイスを無視したスルトを見下ろしている。

 四つん這いになりながらのノーハンドフェラ。

 その様は、獣。

 理性を、本能が超えた。

 

「んぷっ……そっちは、ヤりながらでも、食べられるだろ……♡」

「……アイス、食べようか」

 

 アイスが一本増えていた。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「おいっ……♡ 食べづらいだろ……ぁッ♡♡♡」

「あんな挑発しておいてそれはないだろ?」

 

 アイス休憩は続いている。

 金具の軋み。しっとりと甲高い嘆き。肌の衝突。噴水。

 湿度を高める要素が一切なければ、二人にとっては「休憩」だった。

 

 例え、粘膜越しに繋がっていても。

 

 

 

「ん゛ん゛ぅ゛……♡」

 

 ドクターとスルトはベッドの端に腰かけて二人仲良くアイスを食べている。

 正確には、スルトはドクターの膝の上に座っている。まるでドクターを椅子とみなしたかのように。

 

 邪魔だったため疑似尻尾は抜き取った。その作業においても盛大にイキ恥をかいたスルトだが、やっと取り戻したいつもの感覚が心地よいのだろう。

 

 しかし苦しそうに顔を歪めるのは相変わらずだった。

 

 スルトの椅子という役割は役得でしかない。

 体の前面すべてからスルトの肌の柔らかさが伝わる。うなじを眺めながら食べるアイスは格別だし、なんなら空いている手でどこを触っても許される。なにより挑発されて回復した溶けないアイスを味わってもらえる。

 

 鉄の輪を垂らす尖がったコーンの一つを突きながら、ドクターはアイスを食べ終えた。

 

 残った棒をゴミ箱に投げ入れるや、両手で柔乳を揉みしだく。溶けたアイスクリームをたっぷり詰め込んだように重い膨らみは、夜毎、ドクターを必ず興奮させる。

 

「もうちょっと、弱く、ひろっ……♡」

「じゃあ、こっち」

 

 そう言ってコーンを掴み続けるクリップの先に垂れる輪を弾いて揺らせば、「ん゛ぁ゛あ゛……♡」少々強すぎたらしく、抗議するようにドクターの太腿を叩いた。

 

「ふむ……じゃあこっち」

「……そっちはなおさら、ダメだ……」

「大丈夫。待ってるから」

 

 すりすり。すりすり――

 ドクターの両手が平たんな腹部の上を回る。あえて下腹部を避けるように、おへその上で半円状に泳ぐ、泳ぐ。

 

 スルトは急かされることをよしとしない。アイスを食べるのであればなおさらだ。

 そしてドクターにとっては、この待つ時間は長ければ長いほどに都合がいい。

 

「じろじろ見るな、バカ」

「スルトの顔はいつ見ても綺麗だなと思って」

 

 アイスを咥えている仕草を見る度に、フェラチオを思い返すからだとは言わなかった。まして、つい先ほどのアレを。甘味よりも青臭さを優先したのはあの時が初めてだった。

 

 ぬめりと汚れた汚物に食いつく姿を見下ろすショット。

 カメラが記録した世界ではどのように映っているのか。

 ドクターは既に録画を見直すのが楽しみでしょうがなかった。

 

 

 

「……食べ終わっちゃっただろ」

「美味しかった?」

「あんたの視線のせいでよくわからなかった」

「口の中見せて」

「はぁ……? ……ふぇんはい」

 

 ドクターはストロベリーを。

 スルトはチョコレートを。

 スルトの口の中にはまだ茶色の甘さが残っており。

 ドクターはそれを奪い取らんと舌先を突っ込んだ。

 

「あっ……ぉい……♡♡♡」

 

 チョコレートの甘さの中に、わずかな臭みを覚えつつも「ん゛ん゛ぅ゛♡♡♡」さっき食べたストロベリーを共有するように、長く舐る。

 

 腹の上を泳いでいた指先は、泳ぐことをやめていた。

 代わりに真下の塩梅を確かめるようにぐりぐりとほじくり返している。

 

「やめっ、やめ゛ッ♡♡♡ ぁ゛♡♡♡ て゛る゛ッて゛る゛ッ♡♡♡」

 

 唇から逃れるように俯いたスルトが肩をわななかせながら震える。踏ん張って腹から声を吐き出すように唇を突き出したまま、ぶるりとビクついて、二人の足は濡れていった。

 

「は゛~~~♡♡♡ あ゛、は゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……♡♡♡」

 

 そのしどけない横顔を眺めながら、ドクターは。

 両腕でしっかりとスルトを抱きしめる。腹部を圧するように。

 

「このまま、いいか?」

「……好きに、しろ♡」蕩けた蝋燭のような瞳だけが向けられる。「どうせ……だめって言っても、やるだろ……あんたは♡♡♡」

「正解」

「はッ。……あっ、ぅ……♡ はぁん゛、あ゛ん゛♡♡♡ あ゛♡ あ゛♡ あ゛ぁ゛ッ♡♡♡」

 

 休憩が終わる。

  ベッドの軋みが再開した。

   よがり声が天井を濡らし、壁を濡らし、鼓膜を濡らす。

    首元のベルは開いた口を閉じることはない。

     ぶら下がる鉄の輪ははしゃぐことをやめられない。

      軋む、軋む、軋む。喘ぐ、喘ぐ、喘ぐ。

       スルトを突き上げる地響きは止まらない。

 

溜め込んだマグマを今にも解き放たんとしている。

 

  真っ赤な長髪が振り撒かれ。

 

部屋の中で雨が降る。

 

  射でる     精でる

        汚でる    満でる

 

                        快でる

 

 

 

 

 

 チョコレートにホワイトソースが塗られていく。

 

 

 

「は゛ーッ……♡♡♡ は゛ぁ゛ー♡♡♡ ……ほんと、出しすぎ♡♡♡ ばか……♡♡♡」

「……ふぅー……スルトがえろくてな」

「いつもそれだな……。もう少し……マシな、言い訳、ないのか」

「理由なんてそれだけでいいんじゃないか? ……ほら」

 

 なにかを見せつけるような声は下を向いていた。

 腹の中でなにか変化が起きているのにスルトも気づいたのだろう。

 呆れながら嗤い。

 

「……ほんと、ばか♡♡♡」

 

 ニヤつく顔へ唇をぶつけた。

 

 

 

 窓の向こうは仄かに明るい。

 カメラが切り取る小さな世界では、まだ夜が続いていった。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「あー……たぶんしばらく射精でない……」

「それ、何日か前にも聞いたぞ」

「いや、今回は本当に……やっぱりコスプレは最高だな。我を忘れるって、こういうことか」

 

もう一回メイド服に着替えて延長戦をしよう、などと息巻いていたのが嘘のようにドクターは干からびていた。

 

スルトがすすんでフェラチオをしかけたあの瞬間が調子を狂わせたのだろう。

獣のように腰を振って掘削作業を続けた代償は睡眠不足と節々の痛み。

 

「片付けは手伝ってもらうからな」

「それはもちろん。この……水浸しのマットレスとか、特にな」

「言うな、バカ」

 

 今日は晴天の予報だ。しかし一番下にまでぐっしょりと染み込んだ怠惰な夜の匂いはそう簡単には消えないだろう。酒を大量に零した、という言い訳が通じるかも怪しい。

 

「あーでもほんと、ちょっとだけ寝かせてくれないか。起きたら掃除するから」

「はぁ? あんた、仕事は?」

「いや、今日は休み――」

 

 その時、デバイスが鳴った。ドクターの。

 

「誰だ?」ややおぼつかない手つきで名前も確認せず、呑気な声で電話に出る。

 

 かけてきたのがアーミヤであると知る。

 今日朝一番で会議が始まることを驚しる。

 参加するスタッフが突発的なトラブルに巻き込まれたと危しる。

 そのため会議が二十分ほど遅れると安しる。

 

 今日が休みでないことを泣しる。

 

 電話を切ったドクターは、おそるおそるスルトをみやった。

 

「……あの、スルト」

「会議室を全部燃やせ、なんて言うなよ」

「部屋の掃除――」

「それとも録画データを燃やしてやろうか?」

「十分で掃除を終わらせるから! 頼む、手伝ってくれ!」

「……最初からそれくらいやる気を出せばいいんだ、まったく」

 

 体の節々が訴える痛みに耐えながら掃除を敢行し、夜の残り香をすべて抹消し、寝不足に耐えながら仕事という仕事に取り掛かるドクターの不幸を嘲笑いながらスルトは二度寝を決めた。

 

 ドクターが自分の立場を今日ほど呪った日はなかっただろう。

 

 

 

 しかし――録画データを無事保存できたことは不幸中の幸いであったのだった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。