※この作品はR-18です。

楽しい楽しい旅をしたい   作:真鉢

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旅の始まりは退屈でも楽しい

拝啓 家族へ

 

まず初めに 何も言わず皆さんの元を去ってしまってすみません。

何か問題を起こした訳ではありません。

この頃の家族皆での生活に不満があった訳でもありません。

ただ、生きている実感が持てないのです。

何事に対しても何処か他人事の様に感じるんです。

すみません旅に出ます、探さないでください

 

by シャビーレ・アヴィより

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 外装を黒で包んだ小さな車が荒道を走り揺れる、木々の隙間を通り揺れる、とある瞬間から揺れが小さくなる。それから数分後、揺れが止まる。

 

「お客様、到着いたしました」

 

 運転席に座る執事服で身を包んだ案内人の男が、後部座席で横になり眠っていた私に声をかける。

 名をディーノと言うらしい。

 

「ん、んぁー、・・・・・つきました!」

 

 到着した事を知り、長時間の移動時間から解放された私は、気分が高揚し、勢いよく起き上がる。

 

「んな」

 

 勢い余って車の天井に頭をぶつける。痛い。ぶつけた頭をさすりながら喉が渇いていることに気づく。痛い、尻のあたりに置いて有ったはずのミネラルォータを取り出し飲もうとする、も中身が空っぽだった。

 

「えぇ」

 

「お客様、こちらのものをどうぞ」

 

 どうしようかと考えているとディーノから、円形で表面が波打つ奇妙な物体が渡される。まさか、と思いながら恐る恐る手にお椀を作り受け取る。

 

「口に入れて、錠剤を飲む様に一気に飲み込んでいただけると幸いです」

 

 ディーノからの説明通り一気に飲み込む、瞬間さっききまで有った頭の痛みと喉の渇きが徐々に緩和されていく。

 

「あぁーありがとうございます!、・・・・・・・・・・あの〜、これってまさか“アーティファクト”ですか!」

 

 目を輝かせ運転席へ身を乗り出し興味津々に聞く。

 ”アーティファクト”それは約6年前人類が新生界を理解するため奔走していたところに突如発生したマナ飽和超過領域、通称バーディにて生成される、原理不明の特殊な効能を発揮しながらも人が利用可能な夢の物体の事である。効能は多岐にわたり、大小いろいろなものが発見されているらしい。

通常、入手難易度は高く非常に高価で取引されるらしい。

 

「左様でございます、ちなみに名前などはご存知でしょうか」

 

 ディーノが正解である事を肯定した後、ドアを開け下車しながら軽い質問を投げかる。

 

「あ、あ、いや、その、ごめんなさい、あまりそういうのには触れちゃダメって言われててうまく調べてなくて、あ、いや、でも、新生界に入って自力で知るのもいいかなって思ってて」

 

 自分の知識の浅さを曝け出してしまい恥ずかしくて顔を俯け尻込みしながら回答する。少しの時間気まずい雰囲気が流れる。

 

「・・・・・左様でございましたか、不躾な質問申し訳ござ」「全然そんなことないんです!、こ、こちらこそ申し訳ございません」

 

 ディーノが眉尻を下げ申し訳なさそうな顔で窓越しに謝罪していたところを私が食い気味に遮り謝る。・・・・・ミスった。耳が熱くなり、顔を塞ぎたくなる。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

気まずい。

 

「お客様、こちらからどうぞ」

 

 どうしようかと考えていると平然とした顔でディーノが私の席のドアを開け下車する様に促す。先ほどまでのことはなかった事にする様だ。

 

「ありがとうございます」

 

 私もそれに便乗する。

 車を降りた私はディーノに連れられ車のトランクに向かう。

 

「お待たせいたしました、こちら荷物でございます、何か不備がございましたら今お申し付けください」

 

 ディーノがトランクを開け中に仕舞っていた新生界で旅する用のキャリーケースを私に手渡す。中身を地面に並べ確認する、40本入りマッチ1箱、新生界の地図1枚、方位磁針1個、乾電池が入った懐中電灯1本、サバイバルナイフ1本、硬水のミネラルォーター2本、サバ缶6缶、弾の入った散弾銃一丁、18.5mmスラッグ弾50発、ボディーアーマー1着、全てある。地面からアタッシュケースの中に戻すが懐中電灯だけはズボンのポケットに押し込み、私はディーノに顔を向ける。

 

「全部ありました」

 

「安心いたしました、それではこちらへ」

 

 ディーノが廃トンネルの方を向き歩き始める。私はキャリーケースを引き摺りって後ろについていく。

 廃トンネル前に着く、鉄板で隙間無く塞がれ入れそうにない。何かするのだろうかと思っているとディーノが懐から黒く四角いものを取り出し鉄板に押し付ける、数秒そのままにした後、ゆっくりとそれを引くと鉄板が引っ付いてきて取り外ずされる。磁石かな、鉄板の奥を見るとそこには鉄網とそれが破れた穴そして先の見えない暗闇が広がっていた。

 

「どうぞ、お入りください」

 

 ディーノが鉄板を地面に横たえた後、穴に手を向け入る様に促す、ここから先はそう易々と後戻りはできない不安はあるが進む、キャリーケースを投げ入れた後、足を上げ頭を下げ鉄網に触れない様慎重に通り抜ける。

 廃トンネルの中は暗く寒く酸素が薄かった。

 

「・・・・・それでは新生界入り口へのご案内はこれにて終了になります、何かご質問はありますか」

 

「あっあの、今さっき使ったアーティファクトの料金とかはどうなるんでしょうか」

 

 ディーノの方を向き今まで言うタイミングをつかめなかった質問を投げかける。

 

「それに関しては気にしないでいただいて結構です、新生界へと向かうお客様絵のサービスとなっていますので」

 

サービスでアーティファクトとは良いのだろうか。

 

「・・・・・そぉ、なんですか」

 

あまり納得できないながらも一様納得した。

 

「質問は以上でしょうか」

 

「あっはい、以上です」

 

「それではお客様の新生界でのご活躍、我が社一同心から応援しております、またのご利用お待ちしております」

 

 ディーノが深くお辞儀をしながら、別れの挨拶を告げる。寂しい思いが湧く。

 

「ディーノさん、ありがとうございました」

 

地面に置いた鉄板を元に戻す途中、これまでの感謝と別れの思いを込めながらをディーノに別れの言葉を伝える。

 

「はい、どういたしまして」

 

 微笑みながら答える。

 ディーノが穴を埋め見えなくなる。辺りから光が消え暗闇に包まれる、ポケットから懐中電灯を取り出し明かりを灯す、暗が晴れ進むべき方向が分かる。ここから先は長丁場になる、覚悟しながら歩き出す、特に何事も無く進む、ネズミ一匹いない、静かだ、静か過ぎる、どこか不安になる、早く歩く、普通に歩く、遅く歩く、ひとまずの目的地、境界線が見えるまで歩き続ける。

 途中、明かりのつけっぱなしで熱くなった懐中電灯の電源を切り暗闇の中立ち尽くし孤独感に苛まれることや喉の渇きで数少ない大事なミネラルォーターを飲みそうになることが何度もあったがそれらをなんとか耐えながら歩き続け、そろそろ限界を迎えそうな頃、ひとまずの目的地である境界線が遠くに見えた。

 見た目は淡く青く光りどことなく神聖な雰囲気を醸し出す壁、知識で知っていた旧生界と新生界を隔てる目視可能な差異。綺麗だ。一瞬、足の震えや喉の渇きを忘れるほど見惚れた。がすぐに腕時計を見て時間を確認する、7時55分、廃トンネルに入ってから4時間は過ぎたらしい。想定よりかなり遅い、残る力を全て込め境界線前まで歩く。

 数分後、境界線の目の前に到着する、もう限界だキャリーケースを支えにしながらゆっくり座り込む。その拍子に懐中電灯を手から落としてしまう、あぁああぁ、取りに行こうとするも身体全体が痛く取りにいけない。ひとまず懐中電灯を取るのを諦めキャリーケースを開け中身を雑に漁り出す。・・・・・あった、ミネラルォーター、すぐさまキャップを開け浴びるように飲む。うまい、我慢した甲斐があった?、体の隅々に行き渡る。わぁ〜

 

 少しの間水分の余韻に浸った後、ここに来る前から決めていた境界線を過ぎる前の下準備をしようとキャリーケースに手を伸ばそうとするがうまく手が上がらない。どうやら完全に限界が来たらしい少し休む事にする体から力を抜き仰向けに倒れ眠る。

 

「ん」

 

 何時間か経った後、欠伸をしながら目を覚ます。よく寝た、体の隅々は痛いままだが、がんばれそうな気がする。周囲を確認する。淡く光る境界線に自前のキャリーケース、少し離れた場所につけっぱなしの懐中電灯、ミスった、懐中電灯を回収する。熱い懐中電灯の電源を一旦切る、廃トンネルに入る前から使っていた乾電池なので少し不安になる。どうせなら新品にしとけばよかった。後悔の気持ちが少し湧くが境界線の光を頼りに下準備を始める。まずはキャリーケースから必要なものを漁り出す。ボディーアーマー1着、散弾銃、サバイバルナイフ、方位磁針、新生界の地図、全て出し終えた後にサバ缶を一つだし、サバイバルナイフで開け食べる。うまい。お腹が少し満たされる。気力を少し上げキャリーケースから出したものを装備し出す。立ち上がり、ボディーアーマーを纏いスラッグ弾を10発収納し、散弾銃を負い革で肩に下げ、サバイバルナイフを腰に仕込み、新生界の地図を右ズボンポケットにしまい、方位磁針を左ズボンポケットに突っ込み下準備を終える。動いて見ると結構重い。腕時計を見る、9時21分。

 装備は予定通り、体調と時間はあまり良くなく予定通りではないけれど気分がいいのでまあいい。キャリーケースの中に飲みかけのミネラルォーターをしまい閉め立ち上がる。境界線を通り抜けるとどんな感じなのか気になりながら歩き出し越える、吸い付かない水を通ったような感覚だった。一瞬で越えた境界線の先では、心なしか少し酸素が濃くなった気がする。何度か境界線を行ったり来たりする、楽しい。

 一通り気が済むまで往復した後、熱の冷めた懐中電灯の明かりをつけ出口の方を向き歩き出す。時間に余裕が無いので早歩きで進む。

 何十分かたった後、遠くに小さな光が見える。懐中電灯の明かりを消し遠くの小さな明かりだけを頼りに進む、歩く、光が大きなる、早く歩く、暗闇を光が侵食する、走る、青緑の植物が見える、止まる、周りは暗闇ではなく青みがかった光に覆われ、蔦や雑草が茂り、辺りから異様な生物の鳴き声が聞こえる。廃トンネル外だ。私はなんだかやっと人生のスタートラインに立てた気がした

 

目的地、新生界到着

 

 

 

 

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