四葉真夜の息子ドブカス概念 作:ペニスリン
2092年8月 沖縄
真昼と深夜、穂波のスキンシップは散歩に行っていた深雪と達也が帰ってくるのを真昼が"六眼"で察知する事で終わりを迎えた。
慌てて服を着直して取り繕う二人を目に真昼は悠々とパンツとズボンを履き直した。
深雪に同行していた達也からの報告で国防軍兵士との軽い、いざこざの顛末を聞いた真昼は面白そうに国防軍に抗議の電話を嬉々としてかけた。
もちろん、四葉家として。四葉家は一族の成立初期から秘密主義を貫いてきたが真昼が生まれて真夜が当主になって暫く、大きな方針転換がなされた。
━━2090年 四葉邸宅
自身の執務室で四葉当主の仕事をしていた真夜は扉が開く音でパソコンのモニターから視線を上げた。
ノックも許しも無く真夜の執務室に入れるのはこの世でただ一人、溺愛している愛息子だけだ。
「あら、真昼どうしたの?溜まっちゃった?」
「違うよママ、ちょっとコレからの四葉に事で話があるんだ」
そう言って応接用のソファーに座った真昼は書生服の上着の内側から紙の束を取り出して、応接卓に放り投げた。
真昼の対面に座った真夜はその紙を手に取り無言で読み始める。
「四葉家五ヶ年計画? 四葉家の一部機密情報の公開に改造魔法師計画……特殊部隊の設立……これを行えと言うの?」
「そうそう」
怪訝な顔で計画書を読んだ真夜に気楽な返事を返す真昼。
一度、計画書を卓に置いた真夜は困った顔で真昼と向き合う。
今までも散々、真昼の我儘は聞いてきたが今回の物はレベルが違う。
運転できもしない高級車やバイクを強請るのとはかかる費用も桁違いだ。
何より四葉家全体を巻き込む事になる秘密主義の方針転換に他ならない。
「できるよね?てかやってよ」
「……またどうして急にこんな事を?」
「ムカつくからかな」
「何に?」
「他の十師族。特に七草」
「はぁ……」
真昼の言葉を聞いて思わず溜息を吐いてしまった真夜。
それはある意味で真昼の気持ちが理解できてしまったからだ。
四葉家と七草家は同じ十師族ではあるが両家の仲は嫌悪だ。
主に真夜と七草家当主の確執が原因ではあるが、七草から四葉へのちょっかいは両家の当主が代替わりした頃から始まった。
特に真夜に子供が出来た時からはより一層酷くなっている。
真夜は慣れたもので基本無視して実害のあるものだけ排除してきたが真昼にはそれが消極的な物に見えて苛立ちを募らせていた。
七草が調子に乗っている。真昼にはそう思えてならない。そしてその原因は十師族内で四葉と並び主導的立場を争っていると周りも七草自身も勘違いしているからだと真昼は思っている。
力にも色々とあるが主に暴力の方の力を尊ぶ真昼にとって魔法力ではなく政治力で四葉に並びたっている七草を心底見下している。そしてその見下している七草は頻繁に四葉にちょっかいをかけてくる。
いい加減、嫌気のさしてきた真昼が二度と七草からふざけた真似を受けないように考えたのが四葉五ヶ年計画だ。
内容自体は多岐に渡るが目的自体は四葉家の更なる勢力増強の一点のみ。
「……まずFLTのオーナーである事を公表。これに何の意味があるの?」
「表側での四葉の影響力を上げるためだよ。四葉はあれもこれも秘匿しすぎだよ、公表する事で力を発揮する事もある。深夜ママの持ち株分以外も四葉で買い占めて株式は非公開にする」
「上場を辞めるのね」
「そう。四葉家がオーナーって公表して上場しよう物なら面倒くさい連中に株を買われるかも知れないし」
「後は、改造魔法師計画と特殊部隊の創設だけど……」
「その二つもFLTの件と連動してるよ。まず改造魔法師計画は名前の通り僕の固有精神干渉系魔法"マインドセット"で強化した、魔法演算領域を構築した改造魔法師の製造とその者達で構成した特殊諜報工作部隊の設立」
「改造魔法師は元々四葉の計画にあったけれど、それも貴方が成人してからと思っていたのよ……」
真昼の固有魔法である精神干渉系魔法のマインドセットは対象の精神に干渉し主に魔法演算領域に強く作用する。
その効果は魔法演算領域の単純な強化、弱化に留まらず、魔法演算領域に高負荷をかけて焼き切り二度と魔法が使えないようにする事もできる。
その逆に魔法演算領域を持たない非魔法師の精神を改造し魔法演算領域を付け加える事も出来る。
魔法師を非魔法師へ、非魔法師を魔法師へ、四葉は第四研以来の研究テーマである精神干渉系魔法による魔法演算領域の強化を達成していた。
当初の目標以上の成果で。これには第四研以前からのオーナーであり現在は四葉家のスポンサーである東堂青波も両手を上げて喜び、幼かった頃の真昼を抱き上げに頻繁に四葉家に訪れていた程だ。
真昼のマインドセットは四葉家と東堂にとって福音であった。
真夜を誘拐した大漢への復讐を成し遂げ、大漢崩壊を引き起こした四葉だが四葉自身も無傷では済まず、当時の四葉家当主であり真昼の祖父にあたる四葉元造と四葉の主力を担う魔法師が30名以上亡くなっている。
依然として強力な一族と謳われる四葉もその実、弱体化していた。
特に魔法師の数に関しては明確に七草や他家に劣っている。
その数の力を取り戻すのがマインドセットによる非魔法師の魔法師化であった。
「特殊部隊の必要性は?」
「裏で自由に動かせる使い捨てじゃない魔法戦力が欲しいんだよ、表向きはFLTの警備部門を新設するフォアリーブスセキュリティー、FLSを。それを隠れ蓑に裏で自由に動かせる部隊を作る」
「なぜ?今でも使い捨ての魔法師は充分確保しているわ。使い捨てじゃない魔法戦力の必要性は認めるけど、今直ぐ必要なもの?」
「四葉家に必要かって言われたら今直ぐには必要じゃないけど、僕には必要かな」
「どうして?」
「いい加減に面倒臭いんだよね……今でも七草は四葉にちょっかいかけてくるし、僕にも挨拶がしたいだの、歳の近い娘がいるから交流させたいだのと本心じゃなくて下心が透けてみえてムカつくんだよね」
「それはそうだけど、でも断っているじゃない」
「そうだけど、放置してたらもっと図に乗るよ?僕には夢があるんだよ、今のままなら将来絶対に邪魔してくる。七草だけならまだいいけど九島も絶対に七草に歩調を合わせるよ。だから今のうちから準備する僕が魔法科高校に進学する前に他の十師族が連携して圧力をかけてきても跳ね返せる力を」
真昼のいつに無く真剣な様子に真夜はこれが唯の我儘では無いと理解する。FLTの事や一部の機密の公表、特殊部隊の設立もやろうと思えばやれる。
必要性に関しては四葉に必要かと言われれば微妙だが、四葉に損害がある訳でもない。
真昼の夢、真夜は昔一度教えてもらった事があるがその時はただの夢物語だと思った。子供にありがちな空想だと、だが真昼はずっと実現の為の計画を練っていたようだ。
主に当主の弘一の私情で四葉にちょっかいをかけてくる七草と十師族の均衡を保つために四葉を抑えようとする九島、この両家や他の家からの圧力を跳ね返せるならば四葉にも理はあるが……結局は息子からのお願いを断れない。
「……わかったわ。進めましょう」
「ありがと。分家の連中と東堂のおっちゃんの説得はよろしくね〜」
それだけ言うとさっさと部屋を出て行った真昼。閉められた扉を見つめながら真夜は思わぬ大仕事に頭を痛める。
「……分家の人達はともかく東堂閣下にあのお方達の説得は骨が折れそうね。まぁ東堂閣下も真昼の計画と言えば邪険にはされないでしょう」
真昼が夢を教えてくれた日の事はよく覚えている。まだ幼かった真昼が口にした言葉も
『四葉に非ずんば魔法師に非ず 魔法師に非ずんば人に非ず』
「魔法師だけの国……ね」
2092年8月 沖縄
真昼が国防軍へのクレームに飽きて、別荘のリビングに行くとフォーマルな服装に身を包んだ深雪と達也が出かける所だった。
「深雪も達也も、もう行くんだ」
「はい、真昼さんは本当に来ないのですか?」
「パーティーとか嫌いなんだよね」
「そうですか……では、行って参ります、お母様」
「ええ、いってらっしゃい。貢さんによろしくね」
深夜と穂波に送り出されて深雪と達也がまた出かける。
今夜は四葉家の分家の一つ黒羽家のパーティーがあり真昼、深雪にパーティーの招待状が出ていたが真昼はいつものように辞退、深雪は昼の散歩で達也に対して思う所があって乗り気では無かったが穂波に説得されてパーティーに出る事に。
招待されていない達也は深雪のガーディアンとして必然的にしパーティーに行く事に。
深雪と達也を見送ると真昼は一人寝室に戻る。服と下着を脱ぎ全裸になると白いシーツが布かれたベッドの上に寝転がった。
20分程してノックも無しに部屋の扉が開かれて、深夜と穂波が入ってきた。
二人は裸で身体からは湯気が立ち上っている。
「シャワー浴びてきたんだ?」
「お昼にそのままだったでしょう」
「気にしなくていいのに、深雪達が帰ってくるまで2時間くらいかな?僕達も楽しもう」
深夜と穂波がベッドに上がる。別荘に残った三人もパーティーを楽しむのだった。
翌日、司波家と真昼は小型のクルーザーで沖縄の海を遊覧していた。
深雪と穂波が並んで写真を撮っている。
穂波に勧められて達也も深雪と共にぎこちなくも写真を撮る。
「真昼さんはお写真を撮らなくていいのですか?」
「ん?僕はいいよ写真ならいっぱい撮ったから」
深雪に返答した真昼の言葉を聞いて深夜と穂波がビクっと反応したが深雪は気付いていない。
暫く遊覧を楽しむがクルーザーが急に回頭して速力を上げて遊覧していた海域を離れていく。乗っていた5人は突然の事に体勢を崩してしまう。
「突然何ですか⁈」
「レーダーに国籍不明の潜水艦の船影を確認しました!この海域を離脱します!」
「え⁈潜水艦⁈」
穂波が深夜を支えながら大声で船員に確認すると、予想外の言葉が返ってくる。
「潜水艦……何処の所属だ」
達也は深雪の肩を抱き抱えながら冷静に状況の把握に余念がない。
「この辺にくる外国の潜水艦なんて大亜連合くらいだろ。大穴でUSNAかな」
「USNAはないだろうな。となれば大亜連合か」
「達也、目で見えるでしょ?どんな感じ」
「⁈魚雷を撃ってきた!」
「魚雷⁈私達は民間人なのに」
目を見開いた達也の言葉に穂波と深雪が驚く。
「おいおい、民間船に魚雷とか人の心とか無いんか。達也、頼むね」
「ああ……」
魚雷の航跡がこちらに向かうなか達也はまっすぐと魚雷を睨みつけ片手を前に出す、その様子を見て深夜も真昼も、もう終わったとクルーザーの椅子に深く座った。
穂波に支えられた深雪だけが達也の後ろ姿をただただ見つめている。
「お兄さま……」
エロシーンだけを書けばいいのか、それ以外のストーリーもちゃんと書けばいいのかわからない……