けっばーか。死ね。くそ店長が……
「すごく言いづらいんだけどさ、今週いっぱいでウチの店やめてほしいんだよね。
不景気だから若い子はいくらでも入って来るしさ。ウチは二十歳までの若い子が接客するキャバクラってのがウリの店だし。何だったらいいところ紹介しようか。まぁ可愛い顔はしてるんだし、本番アリのデリヘルでもやったら結構客が付くと思うよ」だと?
そりゃわたしはもうすぐ三十二よ。だからって言い方ってもんがあんだろうがよ。
分かってるよ。わたしだっていつまでもこんなことしてらんないくらい。
でもさ、しょうがねぇだろ。
高校生の頃に誰の子かわかんねぇようなガキ作って中退したような女にさ、こんな田舎で何の仕事があるってんだよ。
ふざけんじゃねぇってんだ。
寒いと思ったら雪が降ってきた。
わたしはひらひらした接客用の衣装に高そうなコートを羽織って夜のアーケード街ふらふらと歩いている。午前二時。
人通りはまばらだ。まぁ地方都市の繁華街なんてこんなもんだ。
アーケードの道の中央に設置されているベンチに腰を下ろし煙草に火をつける。
酔った体に缶コーヒーを流し込み、冷たい手に息を吹きかける。
そしてわたしはパサパサになった金色の長い髪を無造作にかきあげた。
二十七年前 春
ふぅっと私はため息をつく。今日何度目だろうか。
結婚して十年近く経つ。主人は二十代で会社を興して以来、毎日忙しそうにしている。
家にはほとんど帰ってこない。
最近主人は仕事で欧州を飛び回ることが多くなった。
今も欧州のどこだかの国へ行っている。
会社は順調らしく、おかげで私はそこそこ大きな家に住みお金の心配をしたことは一度もなかった。
私は毎日家にいた。
前はよく友人と旅行に行ったりしていたものだが、近頃は家に篭ることが多くなった。
友人たちが子育てや仕事で忙しいという事もあるが、一番大きな理由は一人息子にあった。
私の隣ですやすやと眠る五歳になる息子の顔をちらりと見て、私はまた大きくため息をついた。
ギョロリとした目は左右に大きく離れ、鼻は無く穴が二つ開いているだけ。
口はひん曲がり常によだれを垂れ流している。
ぼこぼことした頭にはまばらに毛が生えている。
そして蛇の鱗のような痘痕が顔一面を覆っていた。
全身にもそれはあり、触るとざらざらと手にいやな感触を与える。
手足は醜く折れ曲がり歩くことも這うことも出来なかった。
この子を殺して自分も死のうと考えたこともある。
生まれたばかりのこの子を見たとき私は半狂乱になって泣き喚いていた。
この子を殺してくれと。
でも不思議なもので、数日経つと私はこの子に愛情を覚えるようになった。
これが母性というものだろうか。
初めての私の子供。不幸な運命を背負って生まれてきた子供。
母親の私が見捨ててしまったら、この子はもう生きてはいけない。
ピンポーン
インターフォンが鳴った。私はインターフォンの受話器をとる。
「はい、どちら様でしょうか」
「ただいま。今帰ったよ」
優しい主人の声がした。三ヶ月ぶりだろうか。
私は立ち上がり急いで玄関まで走った。
「お帰りなさい」
久しぶりに見た主人の笑顔は優しかった。
思えば学生時代この笑顔に惹かれたんだった。スポーツマンで顔も良くて優しくて。
好きにならない方がどうかしている。
主人がプロポーズしてくれた時、私は天にも昇る気持ちだった。
今でもその気持ちは変わらない。
「あら? その子……」
私は主人に手を繋がれて下を向いている女の子に目をやった。
綺麗な金色の髪と透き通るような青い瞳。真っ白な肌。五歳くらいだろうか。
その子はうつむいている。わずかに見えた表情は暗かった。
「誤解しないでくれよ。この子は欧州で知り合った友人の子で……」
主人が慌てたように話す。
「ここで話すのもなんだから、お部屋に行きましょう」
私は複雑な気持ちで主人と外国人の子供を応接間へ通した。
リビングにいる醜い息子とこの美しい子供を会わせたくなかったのだ。
主人は一通り話を終えるとまた会社に出かけていった。この子を置いて。
この女の子の名前は「セルマ」。北欧の友人の子供らしい。
まぁ、主人がどこかで作ってきた子供ではないことは見ればわかる。
日本人の要素がひとつもこの子にはないのだから。
主人の話ではその友人夫婦が事故で死んでしまって、残されたこの子に身寄りが無く、一番仲の良かった主人が引き取った。ということだった。
北欧にだって子供を育てる施設くらいあるだろうに。なんで主人が引き取らなくてはならないのだろう。
なんでわざわざ日本に連れてこなくてはならないのだろう。
なんで私にこの子を押し付けるのだろう。
まったくあの家にいると息が詰まる。大体俺は結婚なんてしたくなかった。
家事をすることしか能のない従順な女と気味の悪い化け物。
あれが息子?俺の息子だって?
冗談じゃない。なんでこんなことになっちまったのかなぁ。
学生時代、俺はモテた。サークルに顔出せばいつも女が群がってきたよ。
周りの友人達は俺のことを羨ましがってた。
いつも選り取りだね、ヤリ放題だねってさ。お前らバカか?
俺は女なんかに興味はないんだよ。別に同性愛者って訳でもないが。
毎日のように女どもは俺を誘った。そんなに俺とヤリたいのかよ。
俺はいつも断った。
いつしか俺には堅物のあだ名が付き、誘ってくる女もいなくなった。一人を除いて。
そいつはしつこかった。
俺も根負けして二人で飲みに行くことになった。そいつの顔だけは良かったからな。
そいつは嬉しそうに子犬みたいに俺の後を付いて来た。
正直言って鬱陶しかった。その後どれくらい飲んだのかわからない。
俺はホテルのベッドに裸で横たわっていた。下半身がもぞもぞする。
「何やってんだ。お前?」
俺は薄目を開けて小刻みに上下する女の頭を見た。
女は俺の顔を上目遣いで見て、恥ずかしそうに俺のモノを口から離した。
「だってテツオはいつも冷たいんだもん。こうでもしないとあなたは振り向いてくれないじゃない」
何言ってんだ? こいつ。要するにヤリたいだけなんだろ。お前は。
いくら女に興味が無いと言っても擦られたり咥えられたりしたら俺だって立つ。
俺は起き上がりそいつを押し倒した。何だよその顔。そんなに嬉しかったのか?
そいつはびっしょりと濡れていた。
指を二本突っ込んでやるとぬるっと簡単にそいつの中に入っていく。
「い、痛いよ。乱暴にしないで……」と哀願する。
「お前が誘ったんだろ。もっと脚を開けよ」
俺はそいつの内腿を思いっきり開きゆっくりと沈み込ませた。
「あうんっ」そいつはバカみたいな喘ぎ声を出した。
そういやゴム付けてなかったな。仕方ない外に出すか。
しばらく前後運動をした後イキそうになった俺はモノをそいつから抜こうとした。
そいつはぎゅっと俺を抱きしめる。
「おい、放せよ。中で出しちまうぞ」
「今日は大丈夫な日だから……」
「あ、そう」
俺はそいつの中にぶちまけてやった。
なぁにが、大丈夫なもんかよ。結局そいつは妊娠した。
でかい会社に内定をもらってた俺は問題を起こしたくは無かった。
仕方なく俺はそいつと結婚した。
まぁ、オナホール付きの召使いを雇ったとでも思えばいいか。