「う……ぐ………」
な、何だ? 俺は一体何をしている? ここはどこだ?
だらだらと全身から汗が噴き出している。
まるでサウナの中にでもいるようだ。
喉がカラカラに乾いて貼り付いてしまいそうだ。
とてつもなく暑い。そして暗い。
目を開けても何も見えない。そしてこの臭い……。
クソだ。動物がクソまみれになった時の臭いだ。
部屋中に充満するこの臭い。ぐっ……。耐えらんねぇ……。
一体どこからこの臭いは……。
ケツの辺りがにちゃにちゃとしてキモチワルイ。
蝿のようなものが数匹俺の周りを飛び交っている。
俺か? 俺が漏らしてるのか?
周りから幾つものうめき声が聞こえてきた。
苦しそうな……。悲しそうな。
たぶん散々叫んだんだろうな。ガラガラに擦れた声だった。
どうやら俺みたいな奴が他にもいるらしい。
漏らしてるのは俺だけじゃないようだ。
俺はケツを木のような物の上に載せ、立てた膝を両腕で抱えるような格好をしている。せざるを得ない。
手を伸ばそうとすると固い金属のような棒に当たる為だ。
下を向いた頭を上げることも出来ない。
さっき不意に頭を上げたらのっぺりとした天井に後頭部を激しく打ち付けた。
膝を抱えて下を向いたまま俺は考える。
「俺に何が起こっている?」
会社からの帰り道。そうだ、俺は車を走らせていたはずだ。
助手席にはケーキとぬいぐるみ。
ぬいぐるみは枕くらいの大きさで黄色い。
真っ黒なつぶらな瞳とぶ厚い唇がキュートなひよこだ。
セルマが喜ぶかと思って俺は……。
いや、別にご機嫌をとろうとしていた訳ではないぜ。
これからあいつを開発していくんだ。
嫌われたままじゃ悲しい……いや悲しくなんかないぜ。
そ、そう、ちょっと俺になつかせて調教しやすくする為だ。
あいつを俺の玩具にする為だ。
……で、対向車の光が眩しいと思った。
……そんで……俺はここにいる……と。
うーん。もしかすると俺って事故って気を失っているとか。
これは夢? それにしてはやけにリアルな……。
クソの臭い付きの夢なんてお断りだぜ。
例えばテレビを点けっぱなしで寝てるとその内容が夢に出て来たりするよな。
寝てる俺の隣で料理を作ってたりすると飯を食う夢だったり。
つまり俺は……。クソをしながら寝ていると……。サウナの中で……。
……どういう状況だよ。
肥溜めにでも落ちてるとかな。
いやさすがにいくら田舎の町だって今時そんなもんねえよ。
あ~あ……。
どうでもいいけど早く夢から覚めねぇかな。
この臭い、もう耐えられねえよ。
がっ……。ま、眩しい……。
ギィっと音がした。錆びた鉄が擦れる音だ。
音の辺りから強烈な光が差し込んできた。
目を閉じてもその光は暗闇に慣れた俺の目を打ちのめす。
「いつ来てもここは酷い臭いだな。なんとかならないものかね? マギー」
誰か入ってきた。眩しい場所から光と共に新鮮な空気が入ってくる。
ほんの少し臭いが和らいだような気がした。 ……少しな。
「理由はこの前言ったはずよ。だから外で待ってろって言ったのに」
女の声。ハスキーで荒々しい声だ。
どっちかって言うと俺はロリーな声の方が好きなんだがな。
それがこう色々とエロいことをされて可愛く泣くサマなんかを見ると俺は……。
いや、俺の好みなどこの際どうでもいい。
「やっぱり直接選びたいじゃないか」
「ふぅん……。そんじゃさっさと好きなの選びなさいよ」
ようやく光に目が慣れてきた。
俺は頭をぶつけないように少しだけ顔を上げて上目遣いで声のする方を見た。
“お前は妊婦かよっ”って言いたくなる程腹のでた男。
安っぽい手品師のような格好。黒っぽいモーニングみたいなものを着て、シルクハットを被り、手にはステッキ? 仮装大会でもあんのか?
その男は鼻をつまみながら他の檻の中を覗き込んでいた。
「なんかこいつら、イキが悪くないか?」ちょっと不満そうに男は言った。
女の方は……。あれ? どこに行った? 確かに声が聞こえたが。
ガチャリと音がした。俺を抑えつけていた固い扉が開く。
次の瞬間俺は空中に浮いていた。
両方の脇腹に大きくて固い手の感触があった。
「この子が一番元気そうだけど、どう?」
え? 俺……。持ち上げられている?
俺は目を細めながら持ち上げている奴の顔を見ようと上を向く。
ずっと抑え付けられていた首がゴキっと鳴った。かなり痛い。
俺の脇を支えている手は固かったけど、俺の背中に当たるこれはこの女の腹?
うん。これも固いな。何か六つに割れている感触がある。
上を向いた俺の目に見えたものはふたつの大きなカタマリ。
それがゆっさゆっさと揺れていた。
「ふむ。可愛い顔をしているな……。気も強そうだ。気に入ったよ。そいつをもらおう」
ニヤニヤしながら仮装男が俺の顔を覗き込んだ。
「じゃぁ、キレイに洗ってアンタの屋敷に届けるわ。楽しみに待ってて」
「ああ。頼むよ」
そう言って腹の出た仮装男は外に出て行った。
「毎度ありっ」
俺の頭の上で嬉しそうな女の声がした。
さて、しばし茫然としてしまった。
貧乳好きのロリコンとしてはでかい乳など少しも興味が湧かないが。
だが俺としても巨乳の全てを否定しようとしている訳ではない。
世の中には巨乳好きは一定数存在するのだ。
まぁ奴らの気持ちもわからなくはない。
巨乳の楽しみ方ってやつもあるだろう。
モノを挟んだり、顔を埋めたり……。
カオリの乳も結構でかいからな。ひと通り試してはみたよ。
だが人の性癖とはどうしようもないものだ。
ん? 違う……。問題は乳の好みではなくて今のこの状況だ。
俺を抱えたまま乳のでかい筋肉質の女は臭い部屋の外へ出た。
部屋の外は外だった。
「え……。ジャングル?」
遠くからは野鳥の声。鬱蒼とした森の中。
ポイっとその女は俺を投げた。
空が回る。
ぽちゃっと音がした瞬間、俺は水の中にいた。
川? 濁った水の中で俺は手足をバタつかせる。
「さってと、キレイにしてやるからなぁ」
女は片手で俺を川の中から抱き上げた。
そしてゴワゴワしたスポンジのような物で俺をゴシゴシと洗う。
ばしゃっと水をかけられ、俺は犬のように首を振った。
新手のソープランドか? にしてはちと荒い……。
ちっとも気持ちよくなんかない。
「こんなもんかな。おっ結構イケメンじゃないの。可愛いわよ」
しゃがんで俺の体を布で拭きながら女は言った。
この時俺は初めてこの女を見た。
真っ黒で固そうな長い髪と褐色の肌。少し厚めの唇。
胸に薄茶色の布を巻いている。腰も同様だ。
六つに割れた腹。縦長のへそには丸いピアスが見えた。
そして……。異様にでかい。乳のことじゃないぜ。
いや、乳もでかいんだが。
異様なのは俺は立ち上がっているのに、この女はしゃがんでいるってことだ。
それなのに目線が一緒なのはどういうことだ?
女に体を拭かれながら俺は自分の腕をマジマジと見る。
生っちろくて細い腕。自分の胸を触るとあばらが浮いてガリガリだ。
いやそんなことよりもショックだったのは俺のモノが細くてちっちゃくて皮が被っていたという事だ。
オイ……。この夢はいつ醒めるんだよ。
子供になっちまってるじゃないか。
女は鼻歌を歌いながらご機嫌で俺に服を着せていた。
「よし、完成っと」
女が手を叩く。
俺のボサボサだった髪は後ろに輪ゴムでキレイに纏められていた。
その後俺は貧相な手作り感満載のログハウスに連れてこられた。
木製のごつごつとしたテーブルの上には何かの怪しい肉を焼いた物があった。
「食いな。そいつを食ったら出発するわよ」
そう言って女はニヤッと笑った。