空が薄明るくなって来た頃、俺は目を覚ました。
マギーは俺を抱きしめたまま岩肌に横になり眠っていた。
俺が乳の上で寝返りをうっていた為か胸に巻かれていた布がせり上がり、黒い胸と乳首が露出している。
いくらグラマラス美女でも元が筋肉ハゲだと思うとなんかイヤ。
もっともつるぺた好きの俺にはストライクどころか外角高めにワイルドピッチだが。
俺は起き上がり、マギーから飛び降りた。
朝の空気がキモチイイ。昨日の焚き火はすでに消えていた。
ちょっとその辺を歩いてみよう。
俺は岩場を離れ荒地を歩いた。
遠くの方を眺めると小さく城壁が見える。
高い壁に囲まれたサマは古代中国や欧州のようだ。
さて戻るか。朝の涼しい内に少しでも進んだ方がいいしな。
あの昼間の暑さは耐え切れねぇ。
とっととマギーを起こして出発するか。
あれ? 誰かいる……。
野盗か? 数人の男がマギーを取り囲んでいた。
マギーはそれに気付かず胸を露出させたまま寝息を立てている。
俺は咄嗟に岩陰へ隠れた。
なんだありゃ。やべぇやべぇ。
大体こんな所で乳出して寝てたら目をつけられるよ。
ったく。どうすっかな。街も見えて来たしひとりでも行けそうだな。
「じゃ、そういうことで」
俺はマギーを見捨てることにした。
まぁ、こんなガキの体じゃ助けられるわけがないしな。
助ける気も無いけど。
「あばよ。マギー。色々助かったぜ」
そう言ってその場を立ち去ろうとした俺は突然宙に浮かんだ。
「ガキだ。東洋人か? この辺じゃめずらしいな」
頭の上の方で野太い声がする。
俺は汚いナリをした男に持ち上げられていた。
臭い息を吐きながら俺を見ている。
「オイ、どうした?」
マギーを囲んでいた男のひとりがこちらに声をかけた。
「東洋人のガキを見つけた。もしかしたら日本人かもしれねぇ」
声がでけぇよ。クソが。頭に響く耳障りな雑音だな。
「どうせチャイニーズだろ。日本人がこんな所にいるわけがねぇ。それよりこっち来いよ。すげぇぞ。この女」男が手招きをする。
マギーは胸を露出させたまま、両手を後ろに縛られていた。
腰に巻いた布は剥ぎ取られ濃い目の陰毛が見えていた。
日本人だからどうしたって? とにかく離してくれよ。
こんなガキに用なんかねぇだろうが。
マギーは犯されていた。
四つん這いにされて男が腰を振っている。
「て、テツオ……」
マギーは助けを求めるような目を俺に向けた。
あー、ムリムリ。五歳児に何を期待しているんだ。お前は。
まぁ、女扱いされて良かったじゃねぇか。
前の世界じゃ相手してくれる男なんていなかっただろ?
「その子から手を離して。その子に何かしたら許さないよ」
犯されながらマギーは必死に叫ぶ。
「黙ってしゃぶってろ」
その口を別の男のモノが塞ぐ。
じゅぽじゅぽとした音がここまで聞こえてきた。
オイオイ、マギー。そんなに俺に惚れていたのか。
キモチワルイ奴だなぁ。
さて、いつまでもこんな所で遊んでいるわけにもいかねぇな。
「おーいマギー、そろそろ行こうぜ。陽が高くなったらまた暑くなっちまう」
男に捕まったまま俺はマギーに叫んだ。
「ひゃかったわよ……」
男のモノを咥えたまま、マギーが返事をした。
そして次の瞬間ブチンっと音がした。
マギーの口に突っ込んでいた男の顔は青ざめ、声にならない声をあげる。
男の股間からシューっと虹のように鮮血が飛び散った。
「こ、このアマ……」
マギーを犯していた男はナイフを振り上げた。
マギーはニヤリと笑う。
そして男のモノを体の中にガッチリと万力のように咥え込んだまま思いっきり腰を捻る。
男は体勢を崩し大きくよろめき、ナイフを手に持ったままマギーの寝ていた岩肌へ頭を強打した。
じゅわっと岩肌に血が広がる。
「もうちょっと楽しもうかと思ったんだけど……」
両手を後ろに縛られたままゆらりとマギーは立ち上がった。
茫然と見ている男がふたりと俺を片手で掴んでいる男がひとり。
全部で三人か。余裕だな。やれ! マギー。
マギーの近くにいたふたりの男のアゴにマギーの蹴りが入る。
一瞬のうちに男たちはその場に崩れ落ちた。
俺を掴んでいる男の額からダラダラと汗が流れる。
男はナイフを取り出し、俺の首筋に突きつけた。
「う、動くな。このガキを殺すぞ」
うーん。この小物感。
やってみろよ。夢なのか死後の世界なのか、これではっきりする。
「う、うわぁぁぁ」
俺と男の頭上に影が舞い降りた。
数メートル先の岩場からまるで豹が獲物を襲うようだった。
そしてマギーの膝蹴りが男の顔面に炸裂した。
俺ごと男は後ろへ吹っ飛んだ。
男がクッションになって俺は無傷だったが。
男は後頭部から血を流して気を失ったようだ。
「すげぇな。マギー」
「ふふん。褐色の黒豹と呼ばれるあたしの敵じゃないわ」
「褐色と黒で色がかぶってるけど大丈夫か?」
「うっさいわねぇ。それよりテツオー。この縄切ってよ」
そう言ってマギーは後ろを向いて縛られた手首を俺の前に出した。
褐色の尻の間から白いものが垂れていた。
マギーは倒れている男たちを尻目に奴らの荷物を漁っていた。
さっきは気付かなかったが、岩場の裏に馬車のようなものがあった。
ずんぐりとした馬が二頭。馬車の中にはぎっしりと荷物が積まれていた。
「なんだ。こいつら野盗かと思ったけどただの行商人だわ」
「行商人? なんかいいもんあったか?」
「うーんと、毛皮とか毛布とか……」
「ろくなもんがねぇな」
「あ、女物の服がある」
「丁度よかったじゃねぇかよ。裸で街に行かなくて済んだな」
「きゃぁ。可愛いっ。ほらぁ」
マギーはフリフリのレースの付いたワンピース? みたいなものを取り出し俺に見せた。
まさか、それ着る気? 似合うとでも思っているのか?
裸でいた方が数倍マシだぜ?
そして俺とマギーは街を目指す。
とりあえず馬車を手に入れたので移動は楽だ。
フリフリのレースの付いた似合わないドレスを着てマギーは上機嫌だ。
鼻歌を歌うマギーに若干の殺意が湧く。
馬車はあっという間に街に着いた。
高い壁が俺たちの前に現れる。
街の入口の前には衛兵のような奴が五人くらい。
マギーは何やら衛兵に話している。
「よしテツオ、これでようやく街に入れるわ」
俺とマギーは衛兵の脇を通り抜け街に入った。
目の前に大通り。広い道があった。
道の両脇には色々な店が立ち並ぶ。
街を囲む高い壁以外は十八世紀の欧州のような町並みだった。
「ところでマギー。お前まだ俺のこと売っぱらうつもりなのかよ」
俺はゆっくりと馬車を走らせるマギーに尋ねた。
「ふふっ。そんな事するわけないでしょ。あ、テツオあのお店で何か食べない?」
レンガ作りの店をマギーは指差した。
確かに腹減ったな。
馬車を駐車場? みたいな場所につなぎ、俺とマギーは店に入った。
十畳ほどの店内に他の客はいないようだった。
奥で新聞を呼んでいる男は店の店主かな。
しかしこの店は客に“いらっしゃいませ”も言わないのかよ。
んー。そんなもんなのかな。
マギーは慣れた感じで男に何か話していた。
俺は窓際の席に座り、埃だらけのテーブルにふうぅっと息を吹きかけた。
窓から差し込んだ光が舞った埃に反射してキラキラと光っていた。
「……で、また肉かよっ」
俺はテーブルの上に並べられた分厚いステーキにうんざりしながら言った。
「あら、テツオはお肉嫌い?」
「嫌いじゃねえけど、日本人としてはそのアレだ、米の飯と味噌汁が食いたいんだよ」
「この街にはお米とか無いわねぇ」
「んじゃ、どこにあるんだよ?」
「ずっと東の方の国に行くとあると思うけど」
「どのくらい東に行くんだ?」
「馬車で一年以上はかかるかな」
「オイ……」
俺とマギーは肉にかぶりつく。
「街を見た感じではそこそこ発展しているような気がするんだが。多分二百年くらい前の欧州くらいかな」
「ん?」
「なのに、この街を外側から見るとあの高い壁はまるで二千年前のような印象を受ける」
「あはは、街の外は無法地帯だしねぇ」
いや、俺が不思議に思ったのは……。
「これだけ街が発展しているのになんで移動手段が馬車だけなんだ?」
「んー?」
「汽車とかがあっても良さそうなもんじゃねぇか? 物資の搬入に馬車だけなんて非効率なやり方でこんな街並みが作れるわけがねぇだろ?」
「言われて見ればそうかもねぇ。生きるのに夢中で気付かなかったわ」
「いや、気付けよ……」
ふわぁぁあ。でもなんか街に着いたらほっとしたな。眠くなってきた。
何だろう。それにしても猛烈な眠気が……。
俺は木の長椅子に気を失うようにもたれかかり眠ってしまっていた。