先に謝っておきます。ごめんなさい。
ん~……暑い。あれ? なんか頭の下がごりごりと硬い。
ん? あ、そうか。
昨日セルマちゃんの家から帰って来てあたしすぐ寝ちゃったんだ。
ありゃ、昨日の服着たまんまだ。
わっ……パパの顔の超どアップ。うわぁ、お酒くさーい。
このごりごりするのは……パパの腕だ。
少し明るくなってきたな。えっと今何時だろう。目覚まし時計はと……。
無いや。そっか……荷物は今日届くんだった。
んーんと。あたしは寝転がったまま軽く伸びをしてパパと反対の方を向く。
あ、パパったら腕時計したまま寝てる。んと、まだ四時半じゃん。
なんか目が覚めちゃったな。
やだっ、あたしの腕にたたみの跡がぁ。
大体なんで布団持ってきてないのよぅ。
ほんっとパパってこういうの気にしないんだから。
あたしはパパの腕に乗せた自分の頭をごろんと転がしてカーテンも何も無い窓を見た。
夏の空はうっすらと明るくなっている。鳥の鳴き声がした。
もう起きちゃおう。
あたしはパパを起こさないようにそっとパパの腕から自分の頭を持ち上げた。
なんか体が汗でベトベトだ。
あたしはTシャツの首のところをぱたぱたさせながら、パパと寝ていた二階の畳の部屋を出て階段を下りた。
そういえば家の中をちゃんと見てなかったな。
キョロキョロと一階を探索。
家の外見はかなり古いけど、家の中はリフォームされてて結構キレイ。
ふむふむここがトイレか。トイレのドアを開ける。
おおぅっ。これは……憧れの洋式トイレ!ま、まぶしい……。
マジすか。ついにあたしも貴族の仲間入りっすか。さ、さっそく……。
ドアを閉めてと。ぱんつを脱いでと……。
うわぁ、汗でびっしょり。おもらししたみたい。やだなぁ。
……よし座るよ。よいしょっと。
ひゃっ。便座カバーというものがないのか、この家には。
買い物リストに入れておこう。
………………………………………ふぅ。
はっ……。まさか……紙が無いとか言わないよね。
恐る恐るあたしはペーパーホルダーを見る。
…………あった。一時はどうなることかと……。
ちなみにあたしは後ろから拭きます。
カラカラカラ……。んん……と。
うーん。汗びっちょりで気持ち悪いなぁ。
トイレを出ると隣がすぐに脱衣所だ。
あたしはぱんつを膝までおろしたまま、ちょこちょことひよこのように歩いた。
だって汗びっちょりぱんつを履きたくなかったんだもん。
脱衣所には大きな鏡とシャンプードレッサーがあった。
うわっ。パパやるぅ。
シャンドレは嬉しすぎる。あたしは鏡に映った自分を眺めた。
ポニーテールにしていた髪はほどけてぐちゃぐちゃ。
うーん。寝起きの顔もひどい。
えいっと。あたしは膝にひっかけていたぱんつを脱ぐ。
汗まみれのTシャツもスカートもソックスも。お子様ブラジャーも。
あたしは鏡に映った自分の胸を見た。
ブラジャーの跡が付いている。
両脇からきゅっと内側に手で押してみる。
なんかまたおっきくなったみたい。
ほら、こうすればちょっとだけ谷間が出来るし。
大体こんな子供用のブラなんかじゃ収まらないのよぅ。
もうちょっとこう、大人の? っていうか、もっと可愛いやつが欲しいの!
つーっとあたしの頬に汗が流れる。暑い。
とりあえず水でもいいからお風呂に……。
しゃ、シャワーがある……。そしてまさかの……。お湯が出るよ!
人間の文明はここまで来たよ!
すごいよパパ。大好き!
でもシャンプーとか石鹸とか何もないんだね。
ふふふっ。こんなこともあろうかと!
「ちゃらららっちゃちゃー。お泊りセットぉ~」
小四女子たる者これだけは肌身離さず持ってなくっちゃネ。
常識よ。エチケットよ。世界の摂理よ。
シャンプーとトリートメント。ボディ&フェイスソープ。
化粧水とフェイスクリーム。
これらが一回分ずつ小包装されている。
ぜんぶ雑誌の付録だけど。
タオルもお泊りセットの中に入っているし……。
全ては揃った。あとは……。
シャワーを浴びるだけだ!
あたしはお風呂場に突撃する。
少しぬるめにお湯を出す。
調整がちょっと難しい。
最初水が出てきて急に熱湯が出てきた時はあせった。
ふぅ。お風呂場に湯気が立ち昇る。
寝汗でベトベトの体にシャワーのお湯が気持ちいい。
しゃがんで髪を洗う。ポニテをほどくとあたしの髪は結構長い。
背中の上の方くらいまである。ちょっと洗うの大変。
ぐわしぐわし洗って優しく洗い流す。
それからトリートメントを髪になじませタオルで巻く。ふふふん。
これをしないとボサボサになっちゃうからね!
そして手でボディソープを泡立てる。
乙女の肌に垢すりなんて持ってのほかよ!
基本は手洗い。
なんかの雑誌に書いてあった。
たっぷりと手で泡立てたら首から胸へ。
少しだけ大きくなった胸がぷるんっと揺れた。
そして細い腕を洗った後、おへその下の方へ手を伸ばす。
「ちょびっと産毛が生えてる……」
ちょっと前まで無かったのにな。
これってみんな生えるもんなのかな。
もしかしてパパみたいにもじゃもじゃになっちゃうのかな……。やだな。
ママのは……。覚えてないや。一緒にお風呂に入った記憶もないよ。
あたしはおしりをお風呂場の床に付けた。
そして足を開いて産毛の下へ指を滑らせる。ココもちゃんと洗わないと……。
「あんっ」
なんでだろう。ココを触ると体がぴくんってなる。
それからあたしはオシッコが出てくるところとおしりの間をそっとさすった。
「あふっ」
なんかすごくイケナイことしているような気分になってきた。
あたしの指にヌルッとした感触が伝わってきた。
少しだけ中指を産毛の下の小さなふくらみの間に沈めてみた。
「指……入っちゃうかな……」
でも怖くて無理だなぁ。
あ……。ちょっぴり入っちゃった……。
ちゅぽちゅぽと小刻みに中指のさきっぽを動かしてみた。
「くはっ……あっあっ……あぁぁっ」
なんか変な気持ち…………。なんだろうコレ。
ザーっとシャワーの音が響いていた。
あたしはおしりを床につけたままステンレスのバスタブに寄りかかっている。
「え、えぐっ、えぐっ」
あたしは顔を手で覆い泣いていた。
あたしっておかしいよ。きっとこんなことするのあたしだけなんだ。
でもやめられないの。どうしたらいいの? あたし変になっちゃったんだ。
誰にも相談できないよこんなこと。パパにだって絶対言えない……。
「えっと着替えあったかな」
お風呂場から出たあたしはお泊りセットの中から着替えを取り出した。
お子様ブラにお子様ぱんつ。
うすいピンクのTシャツとジーンズのミニスカート。
ドライヤーがないので髪は濡れたまんまだ。
「ちょっと朝の散歩にでも行こうかな」
急にあたしは外に出たくなった。
家にこもってたら変なことばっかり考えちゃうもんね。
あたしはそっと家を出た。
外はすっかり明るくなっていた。太陽の光がまぶしい。
あれ? てくてく歩いているあの金色の後姿は……。
「セルマちゃーん」
あたしはセルマちゃんに手を振って声をかけた。
セルマちゃんはあたしに振り向く。
金色の長い髪に麦藁帽子。水色のパーカーに紺色の短パン。
白い短めの靴下に青いスポーツシューズ。
ほんっとこいつはかわいいなぁ。
大きな青い瞳に吸い込まれそうだ。ちょっとドキドキする。
「こんなに朝早く一人でどこに行くの?」
あたしは不思議に思って聞いてみた。
「…………ラジオ体操」
ぼそっとセルマちゃんが言った。
セルマちゃんの首にハガキくらいの大きさのカードがヒモでぶらさがっていた。
「これなぁに?」
「あと一週間続けると皆勤賞なの……」
セルマちゃんが無表情のままあたしにそのカードを見せた。
八割くらいハンコで埋まっている。すごいよセルマちゃん。
「んじゃ、あたしも今日から一緒にいってもいい?」
「う、うんっ」
セルマちゃんは嬉しそうに少しだけ笑って頷いた。
あたしたちは二人で朝の道を歩いた。
初めて見せたセルマちゃんの穢れの無い笑顔は朝日に輝いてすごくまぶしかった。
それはあたしの心に深く突き刺さった。