※この作品はR-18です。

ガンダムSEED Return:A   作:触手スライム

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10話

 C.E. 71年 1月25日 午後6時00分。

 エニルとキラは、アークエンジェル内のパイロット控え室にある女性用ロッカールームにいた。

 作業がひと段落ついた際に、休憩を兼ねてキラにパイロットスーツの着方を教えてやってほしいと、エニルがマードック曹長から頼まれていたのだ。

 

「あの、でも、ボクは戦いになんか!」

「そうなんだけど、着方を覚えておいて損は無いから」

 エニルが手伝おうと近づくと、キラは怯えたように後ろに下がった。

 

「あのっ、ボクは本当に……っ」

 キラは胸元を両手で固く押さえ、まるで自分の存在そのものを否定されるかのように強く恐れている様子だった。

 その反応を見て、エニルは合点がいった。

 

「ああ、ひょっとして……フタナリなの?」

 エニルが静かにそう言うと、キラはびくりと肩を跳ねさせ、顔から血の気を引かせた。

 誰にも知られたくなかった最大の秘密を見透かされ、キラの紫色の瞳に絶望と恐怖が浮かぶ。

 

「それなら……」

 エニルはゆっくりと歩み寄ると、自身が着ている紫色のパイロットスーツのファスナーを、躊躇いなく股下まで引き下げた。

 あらわになったのは、女性らしいなだらかな胸のふくらみと、その下にある男性の象徴。

 

「……あ」

「どう? あたしは、あなたと同じなのよ」

 キラが目を見開いてエニルの身体を凝視する。

 自分だけだと思っていた。化け物のような身体を持っているのは、自分だけだと。

 しかし目の前にいる美しく頼もしい女性が、自分と全く同じ特異な身体を持っているという事実に、キラの強張っていた身体から徐々に力が抜けていく。

 

「安心した? 大丈夫、あたしはあなたを絶対に悪く言わないから」

 そう言ってエニルはキラを優しく抱きしめ、震える背中をゆっくりとさする。

 同じ境遇を持つ大人からの無条件の肯定。その温もりに包まれ、キラの瞳から安堵の涙がポロポロとこぼれ落ちた。

 キラが完全に落ち着いたのを見計らい、エニルは女性用のパイロットスーツを彼女に手渡す。

 

「このサイズなら入るだろうから、着てみましょうか」

 そう言って、エニルはキラの服を脱がせると、下着姿になった彼女に丁寧にパイロットスーツを着せていった。

 

「ああ、そうだ。

 この船に乗っている間、あたしはエニス・エルって名乗っているから、よろしくね」

「え、あ、はい。

 ……でもどうしてですか?」

 エニルの言葉にキラは頷きながら理由を尋ねた。

 

「傭兵なんてやるときには、名前を変えるものなのよ」

 エニルはさも当然という様にそう言った。

 

 ロッカールームを出て控室に戻ると、それを見計らっていたかのように、マリューとムウが入ってくる。

 

「よかった、あなたに話があったの」

 そう言って、マリューは一直線にキラの前に進み出る。

 その様子に、エニルは強い違和感を覚えた。

 

<連合の士官が、民間人にこんな気安く話しかけるの?>

 エニルの視線はキラとマリューを行き来した。

 そこでマリューが口にしたのは、キラにとって到底受け入れ難いものだった。

 最初にお互いの自己紹介をするまでは良かった。

 だが、志願兵としてモビルスーツパイロットになってほしいと告げられ、キラは張り詰めていた感情を弾けさせる。

 

「――なぜボクがあれに乗って戦わなきゃいけないんです!

 あなたが言っていることは正しいかもしれない、でもボクらは戦いが嫌で中立のヘリオポリスを選んだんだ!」

 キラの悲痛な叫びに、マリューは何かを耐えるような、ひどく辛そうな顔で黙り込んだ。その脇からムウが口を挟む。

 

「だが、アレに乗れるのはきみしかいないんだ。しょうがないだろ?」

「しょうがないって! エニスさんもいるじゃないですか!?

 ボクは軍人でもなんでもないんですよ!?」

 ムウの言葉にキラがエニルを見ながらそう言い返す。

「いずれ戦闘が始まったとき、今度は乗らずにそう言って死んでくか?」

 ムウが現実を突きつけるようにあっさりと言い放ち、キラは言葉を失った。

 

「今この艦を守れるのは、俺とおまえ、エニスだけなんだぜ」

 ムウの言葉に、キラが震えながら俯く。

 

「言い方ってものがあるでしょう、大尉。彼女はまだ子供よ。

 ……大丈夫、いざとなればあたしが盾になる。あなたを一人で死なせたりはしないわ」

 エニルがキラの肩に手を乗せて優しく声をかけると、キラはその手に自分の手を重ねた。

 

* * *

 

 ヘリオポリスの宙域。

 ザフトの【ヴェサリウス】と【ガモフ】から、次々とモビルスーツが出撃していた。

 

 ミゲルのジンは【M69バルルス改 特火重粒子砲(重粒子砲)】で武装し、二機のジンには、拠点攻撃用の【M66キャニス 短距離誘導弾発射筒(大型ミサイル)】二連装を両腕に、【M68パルデュス 三連装短距離誘導弾発射筒(脚部三連ミサイル)】が両足についていた。

 それに追従するのは、イザークの【デュエル】、アスランの【イージス】、そしてレコアの【ジン】だ。

 デュエル、イージスは鹵獲したビームライフルなどを装備し、レコアのジンは【MMI-M8A3 76mm重突撃機銃(マシンガン)】と【MA-M3 重斬刀】で武装していた。

 

『アスラン! 妹の為とはいえ、無理についてきたんだ、その分働いてもらうぞ』

 ミゲルがアスランに向かって通信機越しに発破をかける。

「わかっている。だが、俺は……」

 イージスのコクピットでアスランの言葉の前半は勢いよく聞こえていたが、後半が相手に聞こえることは無かった。

 

<ふん! どうせキラ・ヤマトのことで一杯なのだろう。

 仕方ない、キラ・ヤマトのことはアスランと妹にだけやらせて、俺はコロニーへの攻撃を防ぐか>

 休息の間にレコアの存在を認識していたイザークは、レコアに疑いの目を向けながらアスランの様子を観察し、そう結論づけた。

 イザークはアスランとレコアにだけ通信回線を開く。

「アスラン! おまえとレコアは奪いそこねたモビルスーツの相手だけしていろ!!

 腑抜けたおまえにはそれがお似合いだ!

 敵艦は俺とミゲルがやる!」

『イザーク!?』

 アスランの動揺する声と同時に、レコアは目を見開いていた。

 

<まさか! イザークも俺と同じなのか!?>

 レコア(アスラン)はデュエルに接触し、直接回線を開く。

 

「イザーク。……シホ・ハーネンフースとの関係はどこまで進んだの?」

 外部に聞かれても問題の無い話題をレコア(アスラン)はイザークに投げかける。

 告げられた言葉に、怒りが沸き上がるがイザークは気が付いた。

 

「お前! まさか!?」

「……アレックス・ディノ」

 イザークの驚愕に対して、レコアはさらに言葉を送る。

「帰ったら話がある。まったくお前はいつもいつも……面倒な奴だ」

 そういうと回線が切れる。

 

 そして、ザフトのモビルスーツ隊はコロニー内に侵入した。

 

* * *

 

 アークエンジェルでは警報が鳴り響いていた。

 艦橋では次々と報告があがり始める。

 

「港よりジン三機侵入。……その後方よりジン一機とGAT-X102 デュエル、GAT-X303 イージスです!」

 索敵を行っていたダリダ・ローラハ・チャンドラII世から悲鳴のような報告があがる。

 

「なんですって! もう奪取したモビルスーツを投入するの!?」

 それを受けたマリューは、想定にないデュエルの登場に驚く。

 アークエンジェルが離昇していくなかマリューの命令が矢継ぎ早にでる。

 

「モビルスーツ、出撃急げ。

 【コリントス】発射準備! レーザー誘導、厳に!

 フェイズシフトに実体弾は効かないわ。モビルスーツ隊にも伝えて。

 主砲レーダー照準、焦点拡散!

 戦闘ではコロニーを傷つけないよう、留意せよ。

 本艦は、ヘリオポリスからの脱出を最優先とする!」

 

 マリューの指示が終わると、アークエンジェルは港へと移動を開始した。

 

 

 

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