※この作品はR-18です。

ガンダムSEED Return:A   作:触手スライム

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12話

 

「まったく、なんてこと……」

 エニルはヘリオポリスのコロニーがバラバラに四散するなか、ストライクに乗ったキラを見失わないようにしていたが、向かってくる残骸を避けるうちにはぐれてしまっていた。

 

「アークエンジェル、応答して! キラ、生きているなら返事をしなさい!」

 周囲に浮かぶ浮遊物の影響か、通信機からはノイズと反響が返ってくる。

 エニルの乗るジンが周囲に注意しながら漂っていると、機体のレーダーに大きな反応が出る。

 

『こちらアークエンジェル。

 エニス・エル、聞こえているか? 応答せよ!』

「こちらエニス・エル、聞こえている。

 キラ――ストライクを見失ったのだけど位置はとらえている?

 確認できていないなら周辺を探索したいのだけど」

 やがて聞こえてきたのは、アークエンジェルから呼びかけるナタルの声だった。

 エニルが応答すると、安堵のため息が聞こえてくる。

 

『ストライクの現在位置は不明だ。今も呼び掛けているが、可能なら周辺探索を頼む』

 

* * *

 

『X105ストライク、応答せよ――』

 通信機は同じ呼びかけを続けている。

 コクピットの中にいるキラのせわしない呼吸音が、パイロットスーツのヘルメット内に反響している。

 

「ヘリオポリスが……」

 キラは【ヘリオポリス】の崩壊を目の当たりにし、深くショックを受けていた。

 ついさっきまで踏みしめていた大地が四散し、宇宙空間には無数の瓦礫や金属片が漂っている。

 それらに混じって、見覚えのある看板や建物の一部が目の前を無情に横切っていく。

 

「……どうして」

 自失状態だったキラの機体が、唐突に揺さぶられた。

 ストライクを見つけた紫色のジン――エニル機が、ストライクの肩にそっと手を置いていたのだ。

 

『X105ストライク! 聞こえているか? 応答せよ!』

『キラ、大丈夫!? モビルスーツの外観に問題は無いようだけど、返事しなさい!』

 二重で聞こえてくる通信機ごしの声には、強い焦りが混じっていた。

 

 揺さぶられたショックで、キラは自失から覚めた。

 聞こえてきたのは、マリューとエニルの声だった。

 

「あ、はい。こちら……キラです」

 キラは通信機のスイッチを入れ、震える声で答えた。

 

『無事なのね?』

「はい」

『こちらの位置はわかる? 帰投できるかしら』

「はい……。エニスさんもいるので大丈夫だと思います」

 自分を導くように寄り添う紫色のジンを見て、キラは少しだけ口元を引き締め、レバーを握りなおした。

 

『なんにせよ、無事でよかった。あたしが先導するから、キラはついてきてね』

 エニルはそう言うと、ジンを僅かにストライクから離し、アークエンジェルの方角へと誘導し始める。

 

 そのとき、キラのコックピットに電子音が響いた。

「――救難信号……?」

 信号の方向へメインカメラを向けると、モニターに映っていたのは、ランプを点滅させている円筒形の細長い漂流物だった。

 

「エニスさん、あれ……救難信号が」

 キラはストライクの腕を動かし、漂流物を指し示す。

 

『あー、これはマズいわね。

 アークエンジェルにはあたしが伝えるから、キラは回収してもらえる?』

 漂流していたのは、救難ボートだった。

 本来なら退避先へと自動で向かうはずのそれは、推進器が故障したのか、無防備に宇宙を漂っていた。

 

 アークエンジェルの艦橋では、行方がわからなくなっていたストライクを発見した矢先、回収が必要な救難ボートを見つけたという連絡を受けていた。

 

「救難ボートの回収、許可します」

「……わかりました。映像の確保を含め、格納庫に受け入れを用意させます」

 エニルからの報告を受けたナタルの後ろから、マリューが即座に許可を出す。

 僅かにため息を吐いたナタルは、各部署に指示を伝える。

 

「周辺警戒を厳に! まだザフト艦はこの宙域に存在している!」

 マリューが鋭く指示を飛ばす。

 

「ストライク、帰投します。

 エニス機は、救難ボート収容後に帰投するとのことです」

「今モビルスーツの襲撃を受けるときついものね。警戒してくれて助かるわ」

 ナタルの報告に、マリューはぼそりと呟いた。

 

* * *

 

 ストライクが格納庫に入ると、エアロックの巨大な扉が閉じる。

 

 モビルスーツ用のメンテナンスベッドが奥に据え付けられ、横には被弾したモビルアーマー【メビウス・ゼロ】が収容されていた。

 ストライクのハッチが開き、キラが顔を出す。

 

「いやぁ、まいったなぁ。……坊主じゃなくて嬢ちゃんなのかぁ」

 整備士のマードックが、頭を掻きながらため息交じりにそう言った。

 首にタオルを巻き、ぼさぼさ頭に無精髭の、お世辞にもさわやかとは言えない風貌の男だ。

 

「キラ! 無事か!?」

「大丈夫、キラ!」

「キラっ! 怪我してない!?」

 コクピットから降り立ったキラに、カガリ、ミリアリア、そしてフレイがすがりつくように抱きつく。サイやトールもその後ろから駆け寄ってきていた。

 

 誰よりも強くキラの腕を掴んだフレイの瞳には、かつての我儘な少女のものではない、狂おしいほどの安堵と重い決意の影が宿っていた。

 

 救難ボートから出てきたヘリオポリスの避難民たちの姿を見ると、カガリはそれをじっと見つめ、やり場のない怒りに拳を握りしめた。

 

 一方、艦橋。

「ザフト艦の動き、掴めるか?」

 マリューの問いかけに、レーダーパネルを見るパル伍長の答えは冴えなかった。

 

「無理です。ヘリオポリスの残骸の中には未だ熱を持つ物も多く、これではレーダーも熱探知も……」

「むこうも同じだと思うがね」

 ムウが、気休めの言葉を言った。

 

「いま攻撃を受けたら、こちらに勝ち目はありません。

 ですから、航路を偽装したうえで、オーブの無人補給基地に向かいます」

「オーブの? それは本当にあるのか?」

 マリューの言葉に、ムウが艦橋にいる全員の代弁をするように尋ねた。

 

「ナタル、補給基地のデータを出して」

 マリューの言葉を受けて、ナタルがコンソールを操作する。

 航路図上に三カ所のマークが浮かび上がり、施設内容が表示された。

 

「こいつは驚いた。

 ……そういやオーブの施設で建造されたわけだし、そういうこともあるのか」

「我々が月に行くにしても、アルテミス要塞に行くとしても、航路を読まれる可能性があります。

 しかし、ここなら相手には盲点になります」

 ムウの言葉に続いて、マリューが図上の一点を指す。

 そこは、デブリ帯にあるユニウスセブン近郊の宙域だった。

 

「確かに相手の裏はかけそうだな」

「自分もこの補給施設で補給を受け、月本部と連絡をはかるのが現在もっとも現実的な策かと思います」

 ムウに続いて、ナタルも同意の言葉を口にする。

 

「では、当面の目的地をオーブの補給基地とします」

 それを受けて、アークエンジェルの艦橋がにわかに慌しくなる。

 

「デコイ用意! 欺瞞のためシャトルを射出する。

 同時に航路変更のためメインエンジン噴射を行う。

 のちは慣性航行に移行。第二戦闘配備! 艦の制御は最小時間内にとどめよ!」

 

 マリューが指示を出す。囮(デコイ)を撃ちだし、月へ向かうという偽の情報で敵の注意を引きつける。

 さらに、ザフトへの情報工作(コロニー破壊の糾弾)を仕込んだ二艇の無人シャトルも、デブリに紛れて密かに射出された。

 あとはデブリ帯の近くまで移動すれば、身を隠しながら補給施設へと向かうことができる。

 

「サイレントランニング……あとは運だな」

 ムウがつぶやくと、クルーたちは緊張した面持ちになる。

「――デコイ発射! シャトル射出! メインエンジン噴射! 艦、デブリベルトへの進路に航路修正!」

 

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