C.E. 71年 2月6日
――アークエンジェル(女性用シャワー室)
最初こそ、明らかにコーディネイターだと思われるラクス・クラインがアークエンジェルに訪れることに、誰もが警戒していたが三日経った今は、誰かが迎えに行かなければ、キラにひっついてそのまま眠ろうとまでする彼女を、誰も気にしなくなっていた。
そんな彼女は、今日もアークエンジェルに来て、待機明けのキラと一緒にシャワーを浴びていた。
そして、ラクスに対抗心を抱くフレイ・アルスターもまた、キラの世話をするとシャワーを一緒に浴びていた。
「まあまあ、キラはお肌が綺麗ですのね」
「ねぇ恥ずかしいってば、自分で洗えるよ」
「ちょっと! キラの右半分は私でしょ!?」
複数あるシャワーブースのなか、一つに三人が入り密着する中で、ラクスとフレイはキラを泡だらけにしていた。
互いの身体を押し付け合いながら、胸を堪能するように這っていたその手が、意図的にキラの男性部分に触れ、誘惑する。
ラクスとフレイが身体を押し付けるようにしながら、繰り返すとやがてキラは射精する。
しばらくして、シャワールームではキラが服を着せられていた。
「ちょっと、大丈夫だから……」
「あらあら、キラはもう元気なんですのね」
「もう、わたしが後でしてあげるからね」
キラは顔を赤くしながら、好意を寄せてくるラクスとフレイに挟まれて世話をされていた。
――アークエンジェル(艦橋)
一方、その頃、アークエンジェルの艦橋では。
「艦長。タキリの長距離通信施設で連合の暗号通信を拾いました。
暗号は解除済みです」
「ああ、メイリン。また、タキリの設備を使っていたのね。
……とりあえず、聞かせて頂戴」
アークエンジェルの通信機では拾えない通信をタキリの設備では拾っていた。
それを艦橋に詰めていたメイリンが暗号解除し、マリューに報告した。
『――ちら……第八艦隊先遣……【モントゴメリ】。【アー…………ェル】、応答……』
艦橋内にどよめきが走る。
「ハルバートン貴下の艦隊ね」
「位置を確認しろ」
マリューの言葉にナタルが続けて指示を出す。
「アークエンジェルの探索範囲外です。まだ距離があるものと」
レーダーを監視していたパルがそう答える。
「だが、合流できれば!」
トノムラとノイマンがぱしっと手を打ち合わせる。
「やった、これで助かる」
サイとカズイが安堵の息を吐く。
<迂闊だった、ラクス様の件があったのだから確かに先遣隊との事も考えて置くべきだった。
戦えるの? 仮に先遣隊を救えたとして……>
マリューはそこまで考えてナタルを見る。
「今後のことを決める前に、フラガ大尉、エニス、カガリ・ユラを呼び出すべきです。
……あとフレイ・アルスターも」
ナタルは一瞬顔をしかめるとそう言ってマリューに進言する。
しばらくして、艦長室に人が集められた。
そこにはカガリの護衛としてキサカがいた。
「早速だけど、第八艦隊先遣隊としてモントゴメリ率いる艦隊がこちらに向かっていると思われます。
ですが、まだ距離があるため正確な位置がわからないこと、暗号通信とはいえ広域に通信を送っているのでザフト軍に見つかる可能性が高いの。
私達は補給も休息も十分に受け、このまま月まで行くこともできます。
それで、第八艦隊先遣隊と合流するかを決めたい」
マリューは、前回と同じであればザフト艦、クルーゼ隊に見つかりラクスを人質にしなければ沈められていた事を胸にしまいつつ、現状を説明する。
「んー、でもよ。単独でこのまま進むのもどうよ?
先遣隊と合流できれば、人員不足も解消できるだろうし」
ムウが唸りながらマリューに向けて言った。
「しかし、先遣隊が敵部隊を引きつけ、結果的に我々が窮地に陥ることも考えなければ」
ナタルは単独での行動を勧めるような進言を行う。
「連合のことなのであれば、あまり口をだせないが、索敵範囲まで接近して状況をみてから決めたらどうだ?」
カガリは難しい顔をしながらそんなことを言った。
「戦力といっても、余りあてにしないでよね。
もしヘリオポリスの連中だったら、そもそも実弾が効かないんじゃ、守るのだって手一杯なんだから」
エニルはそう言って、戦闘を避ける方向に誘導しようとする。
<先遣隊と合流すれば、アルスター外務次官がいる可能性があるんだぞ。
ブルーコスモスだとされている彼が来たら、キラやエニルがどうなるか……。
仮にまた戦闘になって、救えなかったらフレイの目の前でまた父親が死ぬのだ、避けなければ>
ナタルは厳しい表情で内心を隠す。
「こちらからタキリの長距離通信機で、生存の報告をできませんか?
すくなくとも、暗号通信を飛ばしてこれ以上ザフトに発見される可能性は減らせます」
「そうね、それはやってもいいかもね。
……こちらも色々事情を抱えているから、戦闘も避けたい。
タキリにいつまでもいられないのだし、出航準備に入りましょう」
ナタルの発言を受けてマリューが話を進める。
<面倒事が待っているのはわかっている。それでも助けられる命は助けたい>
「これよりアークエンジェルは先遣隊のいると思われる場所まで前進します。
艦載機とレーダー等による探索範囲を広げて、合流を目指します」
マリューは内心で葛藤を抱えながら、前進することを決めた。
「フラガ大尉は搬入状況の確認を、エニス達のモビルスーツも動員して早急に準備を終わらせて」
「了解」
マリューの言葉を受けて、フラガが返すと、エニルと共に艦長室を出ていく。
「私は艦橋で指揮をとります。ナタルは、カガリさんとタキリ艦長に挨拶をお願い。
ああ、ラクスさんのこともあったわね。フレイさんだけ残って頂戴」
マリューの指示を受け、ナタルがカガリとキサカを伴って退室していく。
そして、最後までずっと耐えるようにしていたフレイにマリューが向き直る。
「あなたにとって、とても辛いかもしれない。
仮に、ここで私達が道を避けても、先遣隊の危険性は変わりません。
なので、可能な限り救えるように努力はします。
それでも力及ばないかもしれないけど」
「いえ、艦長。
いろいろ考えて下さってありがとうございます。
私も仕方がないと考えてもいますから」
マリューの言葉に、フレイは耐えるように震えながら言葉を口にする。
「そう、無理はしないでね」
マリューは目に涙を浮かべたフレイを抱きしめた。
<お父様のことは大事よ。
でも、もうキラをあんな目に遭わせたくない。
だからキラには伝えないようにしないと、……もし何かあってもキラの心は私が守るもの。
だから大丈夫……>
フレイは一滴の涙を流しながら、決意を固めていた。