※この作品はR-18です。

ガンダムSEED Return:A   作:触手スライム

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36話

 アークエンジェルは、先遣艦隊に砲撃をしているザフト艦に猛攻をかけていた。

 

 前方に見える艦はザフトのモビルスーツフリゲート、ローラシア級だった。

 この艦は、モビルスーツの運用を目的としたフリゲートで、艦型規模は地球軍側のドレイク級とネルソン級の中間に位置し、開戦当初からザフト艦の主力として運用されている。

 船体規模に対して重武装となっており、汎用性を重視した設計である。

 主砲が並列配置であるため、片舷集中運用は不可能。

 故に突撃戦や正対戦に限定され、反航戦や交差戦での使用は難しい。

 

 そんなローラシア級はクルーゼ隊に所属するガモフで、速度を上げて突進してくるアークエンジェルに対応するため、艦を変針し正面から迎え撃つ体制をとっていた。

 艦艇にあるまじき近距離戦闘が始まった。

 

「撃ち方、始めーっ!」

 マリューのどこか慣れたような、大西洋連邦では聞かない号令が放たれる。

 その号令と共に、ゴッドフリート、ヴァリアントが砲撃を開始する。

 対艦ミサイル【スレッジハマー】がガモフに向かって多数放たれる。

 

「メイリン、敵艦に電子戦を! 動きを封じて!」

「了解しました!」

 レーザー回線が通じる目視距離に入ったことで、マリューはメイリンに命じた。

 

「敵艦にこのままの速度で突撃します。

 バレルロール準備。目隠しにスレッジハマーを多数撃ちこんで。

 直上でバリアントの砲撃を敵艦の機関部に撃ちこみます」

「ああ、バレルロールですか……了解しました」

 マリューの言葉に、ナタルは何かを思い出したように詳細な指示を出し始める。

 

「敵艦から熱源!」

「【コリントス】てーっ! イーゲルシュテルン対空防御!

 【スレッジハマー】装填! ノイマン曹長、このまま敵艦の前まで進み、直前でバレルロールさせろ。目隠しはこちらでやる」

「はぁっ!? 本艦をですか!?」

 宇宙空間とはいえ、巨大な戦艦で行うには常軌を逸した機動指示にノイマンは思わず素っ頓狂な声を上げる。

 だが、すぐに口元を獰猛に引き締め、操舵桿を力強く握り直した。

「……了解! 舌を噛まないよう気をつけてくださいよ!」

 パルからの報告を受け、ナタルが指示を出していく。

 その裏で、メイリンは「はやく、はやく」と呟きながら凄まじい速度でコンソールを叩き、ガモフのシステムへと侵入していた。

 

 アークエンジェルは、ガモフに突っ込んでいく。

 メイリンの放った電子攻撃によって操艦システムに異常を来したのか、ガモフは回避行動をとることもできず、わずかな抵抗として当たらない砲撃と対空砲火のみを動かしていた。

 そこへアークエンジェルから放たれた対艦ミサイルが、ガモフの正面から襲い掛かる。

 対空砲火で対艦ミサイルが迎撃されるが、それを抜けた一部のミサイルがガモフに命中して船体は激しく揺さぶられ、飛び散るミサイルの破片が目隠しの役割を果たす。

 そして上下が反転したアークエンジェルは、ガモフの直上に出た。

 

「バリアント! てーっ!」

 マリューの号令で放たれた【110cm単装リニアカノン「バリアントMk.8」】がアークエンジェルの両舷から放たれ、ガモフの両舷を的確に貫いた。

 途端、ガモフの機関部が破損し、動きが止まる。

 

「反転! ゴッドフリート、バリアント、スレッジハマーを敵艦に叩きこむ」

 マリューの指示を受けて、アークエンジェルはガモフの背後にまわり、後方からの猛砲火がガモフを襲う。

 ガモフは大破し、何かのガスを噴き出しながらデブリへと衝突していった。

 

 アークエンジェルの艦橋では、厄介なガモフを沈めたことにより、明るい空気が漂い始めていた。

 だがその時、悲鳴のような声があがる。

 

「モントゴメリ轟沈! 脱出艇の反応も、ありません……!」

 パルの絞り出すような報告が、艦橋の空気をすべて凍り付かせた。

 クルーたちの視線が、痛いほどフレイを貫いていた。

 

 フレイは泣くのを我慢しようとしながらも、溢れ出る涙を止められずにいた。

 ただ、悲鳴も何もかもを必死に喉の奥で耐え忍んでいる。

 

「アルスター……下がっていい」

 ナタルは、たまらずフレイに休むように告げた。

 

「大丈夫です。わたしの席は、ここですから。

 キラだって、辛いのに戦っているんです。だから……私が支えるんです」

 フレイは涙を拭い、確かな決意を込めてそう言うと、決して席を立とうとはしなかった。

 

「ナスカ級、ジン三機接近してきます!」

 パルからの報告があがる。

 ナスカ級――クルーゼ隊の旗艦ヴェサリウスはガモフの救援に動いていたが、距離が離れていたために間に合わなかったのだ。

 そのヴェサリウスから、アークエンジェルへの怒涛の攻撃が始まった。

 さらに、先行するジン三機が迫ってきていた。

 

* * *

 

 ヴェサリウスから発進した三機のジンは、対艦用の特火重粒子砲や対艦ミサイルを備えたD装備だった。

 高火力の武装でアークエンジェルへとにじり寄る敵機に対し、母艦の盾として待機していた二機のジンが動く。

 

「ルナマリア! あいつら、アークエンジェルを攻撃する気よ!」

「わかってる! アグネスは前へ、私が支援するわ!」

 アグネスの青いジンがスラスターを吹かして突出し、ルナマリアの赤いジンが後方から重突撃機銃を構える。

 かつての戦場の記憶を持つアグネスの技量は、もはや新兵のそれを遥かに超えていた。

 ルナマリアの正確な牽制射撃がD装備の鈍重な動きを縫うように命中し、敵機の姿勢を崩す。

 そのわずかな隙を突いて、アグネスが肉薄し重斬刀を一閃。

 瞬く間に一機を両断すると、そのままの勢いで流れるように二機目、三機目を無力化していく。

 二人の見事な連携の前に、ジン三機は何もできずに宇宙のデブリと化した。

 

 一方、激戦が続く宙域の先では、モントゴメリが最期に放った轟沈の閃光がキラの視界にも届いていた。

「フレイの……お父さんが……!」

 守りたかった命が失われた光景に、キラは絶望に顔を歪める。

「アークエンジェルに戻らなきゃ……!」

 せめて母艦だけでも守らなければとストライクを反転させるが、その行く手を阻むように二つの影が立ち塞がった。

『キラ、行かせるわけにはいかない!』

『キラ。大人しく投降して』

 アスランのイージスと、レコアのジンハイマニューバだ。

 レコア(アスラン)と、キラをよく知るアスランの巧みな連携がストライクにまとわりつき、キラをその場に縛り付けてしまう。

 

「キラ! くっ、そこをどきなさいよ!」

 キラの危機に気づいたエニスが、救援に向かおうとする。

「よそ見をしている余裕があるのかね!」

 だが、その背後から暗域を滑るようにクルーゼのシグーが強襲した。

 さらに、ヘリオポリスの因縁に燃えるミゲルと、イザークの猛攻が重なる。

「なっ……三人がかりなんて!」

 エース級三機による波状攻撃を前に、エニスは防戦一方に追い込まれ、ついに左腕を盾ごと叩き斬られてしまう。

 機体の限界を超えるためにリミッターを解除して必死に回避行動を取るが、逃げるだけで手一杯であり、すでに機体からは限界を告げる警報という名の悲鳴が鳴り響いていた。

 

『ここは私とミゲルでやる。イザーク、ディアッカたちと合流し、足つきを沈めろ!』

『了解!』

 クルーゼの指示を受け、イザークのデュエルがエニスとの戦闘から離脱し、アークエンジェルを目指して加速する。

 

 アークエンジェルへと迫るデュエル、バスター、ブリッツの三機。

 その脅威的な接近に気づいたアグネスが動いた。

 

<あれはマズいわ、火力の高いバスターと汎用性の高いデュエル、アレに乗っているのは! マズい、押さえないと>

 

「ルナマリアはそのまま直掩を! 私はあいつらの抑えに回るわ!」

 アグネスの青いジンが進み出て、砲撃を放とうとするバスターと、突撃してくるデュエルの射線を強引に塞ぐように立ち回る。

 その時、接触回線を通じてアグネスの声が漏れた。

 その声に気づいたイザークが、信じられないものを見たかのように驚愕の声を上げる。

『その声……お前は、アグネスか!? なぜ貴様がここに! まさか!』

 イザークにとって、この時代、ましてや連合艦の直掩にアグネスがいることなどあり得ない異常事態だった。

 

「事情は総裁に聞いてくれますか!」

 アグネスはコンパスで使われていた【総裁】の名を出し、イザークの思考を揺さぶる。

 思いがけない言葉にイザークが動揺し、デュエルの動きが一瞬、ピタリと止まった。

 

 その時、アークエンジェルの直掩に残ったルナマリアはニコルのブリッツと交戦を開始していた。

 

 

 

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