カガリとの騒がしくも甘いシャワータイムを終え、食堂で遅めの食事を済ませたエニルのことだった。
自室へ戻ろうと薄暗い通路を歩いていた彼女の背中に、硬い声がかけられた。
「……エニス。少し、時間はいいか?」
振り返ると、そこには思い詰めたような表情を浮かべたナタル・バジルールが立っていた。
案内されたのはナタルの私室だった。
無駄なものが一切ない殺風景な部屋のデスクには、先日エニルが大人のストレス解消用として渡した酒の小瓶と、グラスが二つ置かれていた。
「珍しいわね。あなたが私を自室に誘うなんて」
エニルが小さく笑いながら、促されるままベッドに腰を下ろす。
ナタルは無言でグラスに酒を注ぎ、エニルに差し出すと、自らも口に含んだ。
元々アルコールに不慣れなのだろう。すぐに白い頬がほんのりと朱に染まる。
ナタルは帽子と上着を脱ぐとエニルの隣に腰を落とす。
「……第八艦隊の先遣隊の件だ。私は、合流すべきではないと進言した。
分艦隊は助けられない、本艦の安全を第一に考えるべきだと」
グラスを見つめたまま、ナタルがぽつりとこぼす。エニルは黙って相槌を打った。
「今の艦長は……以前よりもずっと頼りになるし、私の意見にも耳を傾けてくれる。
だが、どうしても根本的な意見が違ってしまうのだ」
かつての記憶と現在の出来事を照らし合わせているナタルの葛藤を、それを知らないエニルは【生真面目な副長の愚痴】として静かに受け止めていた。
ふらりと、酒の回ったナタルの身体が傾き、エニルの肩にこつんと寄りかかる。
「いい雰囲気じゃない。どうしたの?」
エニルが大人の余裕を含んだ笑みを浮かべて顔を近づけると、ナタルは突然、エニルの肩を強く押し込んだ。
不意を突かれたエニルは、そのまま背後のベッドへと押し倒された。
ナタルが馬乗りになり、軍服越しに彼女の体温と重みがのしかかってくる。
「お前は……私のことを、背負う気はあるのか?」
ナタルの声は微かに震えていた。
「私のような、愛想のない堅物の女でも……その身体は反応するのか……?」
「……ナタル?」
いつも軍規の塊のように振る舞う彼女の、あまりにも脆く切実な瞳に、エニルは真顔になった。
「聞きたい」
ナタルはエニルの胸ぐらをきつく握りしめた。
「このまま進めば、自分が死ぬかもしれないと考えた時……そこから逃げるのは、間違いか?」
その問いに込められた恐怖をエニルは知る由もない。
だが、目の前の女が本気で死の恐怖に怯え、すがりつこうとしていることだけは確かに伝わった。
「そんなわけないでしょう」
エニルは静かに、だがはっきりと答えた。
「信念があって進む人もいるけど、逃げるのは間違いじゃないわよ」
その言葉を聞いた瞬間、ナタルの瞳からふっと涙がこぼれ落ちた。
彼女は両手でエニルの顔を挟み込み、逃げられないように真正面からその目を見据えた。
「なら……私を、報酬にしてやる」
涙声のまま、ナタルは絞り出すように告げた。
「他の女と関係を続けてもいい。だから……私を助けてはくれないか」
自らの肉体すら交渉のテーブルに乗せ、なりふり構わず生き延びようとする不器用な女の覚悟。
エニルはしばらくナタルの瞳をじっと見つめ返し、やがて冷静な声で問うた。
「……方策はあるの?」
「難しい。今すぐアークエンジェルを降りることはできない。
だが、第八艦隊合流後、オーブ国籍のだれかとの婚姻や亡命という形なら受け入れられる可能性がある」
ナタルは息を呑み、さらにとんでもない計画を口にした。
「そしてもう一つ。私を狙う元凶の一つ……月基地プトレマイオスにある連合の新造艦【ドミニオン】を強奪し、逃げるという手段だ」
<連合の最新鋭艦を強奪? 大きく出たわね>
エニルは内心で驚きつつも、頼ってきたナタルの頭を撫でるように優しく微笑んだ。
「第八艦隊に合流した時、軍があなたをどこかへ連れて行こうとするなら、あたしをダシにすればいいわ。【傭兵と深い関係になったから離れられない】ってね」
「エニル……」
「それ以降の強奪計画については、状況次第よ。あたしはカガリの護衛を辞める気はないから」
無責任に全てを背負うとは言わず、確実な防波堤になることだけを約束するエニルの誠実さに、ナタルは安堵の息を漏らした。
「ああ……それで十分だ」
ナタルはエニルの頬を両手で固定したまま、顔を寄せてその唇を塞いだ。
不慣れなキスだった。だが、彼女は嫌がるどころか自ら唇を開き、エニルの舌を迎え入れて不器用に絡ませてくる。
「私は……面倒な女だぞ」
唇を離し、潤んだ瞳で囁くナタルに、エニルは妖艶な笑みを返して彼女の背中に腕を回した。
「ナタル、服を脱ぎましょうか皺になるわ」
ナタルの耳元でエニルがそう言うと、ナタルが頷いた。
目の前で、ナタルが普段纏っている布を脱いでいく。
エニルの前でストッキング、そして下着とただ脱いでいるだけなのに、煽情的に感じられた。
「おまえもだろう……脱がせてほしいのか?」
前半は普通だったが、後半は捕食者のように目を輝かせながらの言葉だった。
「ん、んっ、ちゅ、あむ、むちゅ」
どちらからともなく、ナタルとエニルはキスをすると、すぐに舌を絡ませ熱情がこもったものに変わる。
エニルはナタルの頭を撫でた後、首筋から胸へを手を移動させる。
ナタルの肢体は部屋の明かりに照らされて、赤く染まっていった。
そして再びナタルがエニルの上に覆いかぶさった。
「やられているばかりではな」
そういったナタルはエニルの胸を揉み始めると、片手を起立する肉槍へと向かわせる。
少しためらった後、硬く血管を浮き上がらせた肉槍の下にある女の穴を撫でる。
「なるほど、こうなっているのか……」
「そんなに気になっていたの?」
ナタルの素直な言葉に、エニルが呆れ交じりで答えた。
「んんっ、これからだ」
ナタルはそういうとエニルの乳首を嘗め始め、不慣れながらに片手で肉槍を上下にしごき始める。
「まったく、それなら」
エニルは、ナタルの股に手を入れるとクリトリスと膣口を同時に責め始めた。
空いた手は、ナタルの背中を撫でる。
ナタルの股から水音が止まらなくなると、ナタルは顔をあげる。
「おい、もういいだろ」
そういうとエニルの胸にナタルは顔を埋める。その耳は真っ赤に染まっている。
「わたしが上だ」
そう言ってきかないナタルが、エニルの上になると肉槍をつかみ、女の秘孔にそれをあてがう。
「引き返せないぞ」
「いいよ、これで契約だ」
エニルの言葉に、ナタルは腰を落とすと僅かな抵抗と共に最奥まで貫かれた。
「くっ……」
「大丈夫か?」
エニルの言葉に、ナタルは頷いて答える。
しばらくそのままの状況が続くと、ナタルの身体が動き始めた。
「んっ、ああっ、ん」
ナタルは不自然ながらも腰を上下にさせる。
「かわいい頑固者ね、そんなところもかわいいわよ」
エニルがその言葉をナタルの耳元で言うと、ナタルから聞こえる水音が増える。
ナタルの身体を愛撫する手を止めず、目の前で震えている乳房を責める。
痛みが消えたのが、勢いがついてきた所で、手お伸ばしてクリトリスを捏ねくり倒した。
「ああっ! それ、まって!」
ナタルにとっては急所だったそれを繰り返し責めると、ナタルの動きが緩慢になる。
それでもエニルの肉槍を強い締め付けと、極上の柔らかさを味わい、限界が近くまで来ていた。
「ナタル」
エニルがそう言ってナタルを自分に向かせると、激しいキスをする。
そしてナタルの腰を持ち、エニルも激しく腰を動かす。
「んー、むぁ。あっああああ。もう、来ちゃう。何か来ちゃう」
ナタルは半狂乱になり、エニルとキスしながら言葉を漏らす。
「あー、ナタル、わたしもイクわ!」
エニルはそういうと、ナタルを抱きしめ、舌を無理やり絡め、酸欠になるくらい吸い上げた。
エニルの肉棒は最奥で雄汁を解き放つ。
ぶりゅるるるるる、びゅる、ぶゅりゅりゅ。
そんな擬音と共に、子宮口に大量にぶちまけられた雄汁は、膣口まであふれ出ていた。
「……エニル、その、男とするとこうなるのか?」
ナタルはまだ繋がった状態で、自分の中身から塗り替えられた感覚と、手で触りあふれ出てきている、エニルの子種のすさまじさを感じていた。
「人それぞれね。ナタルがかわいいから、こんなになったのだし」
「そ、そうか」
エニルが言うと、ナタルは恥ずかしそうにナタルの胸に顔を埋めた。
「私はずっとお嬢様学校、女子学校だったんだが、士官学校でも余り変わらずでな、男の免疫もなかったから、その、助かった」
「それはどうも、わたしもそんなナタルだから、処女貰えてうれしいわ」
それからの時間は、ナタルが抱え込んでいた重圧と恐怖を溶かしていくような、静かで熱い交わりだった。
エニルのもたらす快楽に赤く染まっていく。
エニルの肉棒を受け入れたナタルは、軍人としての仮面を完全に外し、ただ一人の弱い女として嬌声を上げ、エニルに強くすがりつき続けた。
* * *
行為の後、二人は揃ってシャワールームの温水を浴びていた。
汗と涙、そして死への恐怖という憑き物がすっかり落ちたのか。
エニルの隣で濡れた髪をかき上げるナタルの横顔には、これまでの張り詰めた空気が嘘のような、ごく自然で穏やかな笑みが浮かんでいた。