C.E. 71年 2月10日。
――アークエンジェルの女性用ロッカールーム。
周辺海域の哨戒任務から帰還したエニルは、共に機体を降りたアグネス・ギーベンラートとパイロットスーツを脱いでいた。
エニルの視線は、それとなくアグネスに向いていた。
パイロットスーツを脱ぎ、蒸れた身体をタオルで拭う彼女を見ながら言った。
「お疲れ様。それにしても、アグネスの操縦は本当に見事ね」
「ふふっ、当然です。これくらい普通ですよ」
アグネスは誇らしげに胸を張る。
「シミュレーターで対戦した時も思ったけど、とても素人とは思えない動きだったわ。今日の哨戒でも大助かりよ」
エニルが素直に絶賛すると、アグネスはさらに満足そうに口角を上げた。
<当然よ。私ほどの腕なら、こんな旧式の機体なんて手足みたいなものなんだから>
以前の記憶で数々の機体を乗りこなしてきたアグネスにとって、それは事実だった。
だが、それを知らないエニルからの称賛は、彼女の承認欲求を心地よく満たしていた。
そこへ、次の待機シフトに入っていたルナマリア・ホークがロッカールームに入ってきた。
彼女が近づくと、ふわりと甘い花の香りが漂う。
「ルナマリア、その匂い……」
アグネスが鼻を近づけると、ルナマリアは嬉しそうに微笑んだ。
「あ、これ? 前にエニスさんからもらったの! どうです?」
言うなり、ルナマリアは下着姿のままエニルに張り付くように密着してきた。
<あらあら、アレ使ったってことは一人でしてたのね。
これから待機なのに、まったく>
暇だったからだと思うが、あの小道具も貸してあるのでハマっていないかを呆れながらもエニルは心配した。
「とても気に入ってくれて嬉しいけど、早く着替えなさいな」
エニルは苦笑しながら、ルナマリアの肩を軽く叩いて引き剥がす。
ルナマリアは「はーい」と名残惜しそうに離れ、着替えを再開した。
そのやり取りを見ていたアグネスの瞳の奥で、微かに嫉妬の火が燻る。
「あたしはシャワーを浴びてくるけど、アグネスはどうする?」
「……私も行きます」
* * *
女性用共同シャワールーム。
温水に打たれながら、アグネスは隣のブースにいるエニルへ幾度となく視線を送っていた。
ルナマリアほど露骨にではないが、その視線は明らかにエニルの身体に向けられている。
そして、探るような目でエニルの反応を伺っていた。
<ルナマリアに香水を渡したってことは……そういうことよね?>
直接「ルナマリアを抱いたんですか?」とは聞かない。
だが、あの日のルナマリアの様子と部屋に残っていた残り香で、女の勘が何かがあったことを告げていた。
「エニスさん。……私のほうが、ずっと綺麗ですよね?」
シャワーのブースからでたアグネスは、身体をバスタオルで拭うでもなく、同じようにブースから出てきたエニルに、シャワーの湯を弾く自身の滑らかな肌を見せつけるように、挑発的なポーズをとって問いかけた。
アグネスの視線は、エニルの下半身がどう反応するかをじっと観察している。
「そうね。アグネスは本当に綺麗な身体をしてるわ」
<本当に綺麗よね。乳輪もピンク、ムダ毛もなく、割れ目も綺麗。
でも、もっと若々しくてもいいと思うけど。
……仕草が夜のお店で働く女性みたいよ>
エニルは大人の余裕で微笑み返し、若く瑞々しい肢体を素直に褒めた。
脱衣所に戻り、身体を拭いて下着を身につけるアグネス。
「黒にピンクの縁取り……大人びていて、アグネスの雰囲気にぴったりね」
「ふふっ、ありがとうございます」
エニルに下着のセンスまで褒められ、アグネスの自尊心は満たされていた。
* * *
四人部屋に戻ると、先ほどまでルナマリアがいたせいか、彼女の香水の甘い匂いが微かに残っていた。
エニルは左側の下段にある自分のベッドに腰掛けると、手元のポーチから避妊薬の入った樹脂製のボトルを取り出し、見慣れた錠剤を一つ飲料パックの水で飲み下した。
「あ、そういえばこれ、ありがとうございます」
上段のベッドから顔を覗かせたアグネスも、自室のロッカーから取り出した錠剤を慣れた手つきで飲み込んだ。先日、エニルがルナマリアに託し、彼女経由で渡されていたものだ。
ピルを飲み終えたアグネスは、上段のフレームを軽く蹴ってふわりと宙を舞うと、そのまま下段のエニルのベッドへと滑り込むようにすり寄った。
「ねえ、エニスさん。私も香水が欲しいな」
「ルナマリアの匂いが気に入ったの?」
「ううん。ルナマリアと同じことをしてほしいの。今日、私がんばったご褒美にくれませんか?」
エニルの太ももに顎を乗せ、上目遣いでねだるアグネスに、エニルは小さく息を吐いた。
<あれやってほしいの?
この子は悩んでいないし、気乗りしないんだよね。
……でも、チャンスだし、いっか>
エニルは心の中で葛藤したが、最後には欲望に負けた。
「……仕方ないわね」
エニルは自前のポーチを開け、落ち着いた香りのする小さなボトルと、マッサージローションの大ボトルを取り出した。
<これも揮発性が高いし香りは落ち着くけど、効果中は感度がすごくあがるんだから>
「最初はあたしがやってあげる。だから、下着になってちょうだい」
「はいっ」
アグネスは嫌がる素振りを見せず、衣服を脱ぎ捨ててエニルのベッドにうつ伏せになった。
二段ベッドの下段という限られたスペースでは、否が応でも互いの身体の距離が近くなる。
エニルはシーツを汚さないようタオルを敷き詰めると、手のひらにローションを取り、オイルを数滴垂らした。
狭く薄暗い空間に、ふわりと心を落ち着かせる香りが充満する。
エニルの滑らかな指先が、アグネスの背中や肩を丁寧にマッサージしていく。
「んっ……あぁ、気持ちいい……」
「力を抜いて。今日もよくがんばったわね」
「……もっと、褒めてください」
「ええ、アグネスは特別よ。誰よりも上手だったわ」
自分だけを承認し、特別扱いして甘やかしてくれるエニルの手技。
狭いベッドでの密着した体温と心地よさに身を委ねるうち、アグネスの中で危ない関係への憧れと、優越感がとろりと混ざり合っていく。
気分が乗ってきたエニルは、マッサージの手を腰から下へと滑らせ、わざと際どい場所を撫で上げた。
「ひゃあっ! ……エニス、さんっ」
振り返ったアグネスの顔を引き寄せ、エニルはそっと唇を重ねた。
アグネスは抵抗するどころか、狭いベッドの上でエニルの首に腕を回し、その熱い口付けを自ら迎え入れた。
「ん、んちゅ、あはぁ、んちゅ」
艶めかしい音が響く。
エニルはカーテンを閉じると、アグネスの下着を脱がせにかかる。
膨らみかけの胸は硬くなり、頂きにはこれでもかと硬くなった乳首が主張する。
そこに残ったローションを塗りたくると、何度も摘まみあげる。
「ああっ、いやぁ」
アグネスは両手で枕を掴むと、顔をさらに上気させ、喘ぎ声とともに甘い息を吐く。
ショーツをエニルが脱がすがすでに蜜でぐっしょりと濡れており、よく見れば敷いたタオルも水を含んでいた。
「ふふっ、潮かな?」
アグネスの耳元でエニルが囁く。
割れ目をこじ開けるように手を指し込むと、案の定そこは水浸し状態で、指で責める度に水音が狭い空間を満たし、アグネスの愛液の匂いで満たされていくようだった。
「これ使おうか」
そう言って、パッケージから出したばかりの人差し指くらい棒を見せると、スイッチを目の前で入れる。
カーテンでしきられローションに混ぜたオイルから揮発した薬効と、肌に触れたことで発情しきったアグネスは、陶然とみているだけだった。
小さく振動する吸引機能付きバイブを、クリトリスに押し当てる。
「ひぃぃぃぃ、いやぁぁぁ」
アグネスはのけぞるようにして痙攣を繰り返し、愛液がびしゃと飛び出る。
「もっとしてあげるから、わたしもお願いね」
エニルがそう言うと、態勢を入れ替えてエニルの頭がアグネスの股に来るように動いた。
<ルナマリアと同じことしたいんだもんね♪>
エニルは下着をずらして、肉槍をさらけ出す。
スカートを持ち上げるそれをアグネスの唇に持っていくと、アグネスはそれを咥えた。
「んふふ。知ってるんだ。おませさんね」
わずかな驚きと共に、エニルはそう言うとアグネスのクリトリスを責め始める。
そして、エニルはアグネスが知っているならと、ルナマリアの時は我慢していた腰の動きをゆっくりと始めた。
「んぶっ、ん、んぼ、んんん」
アグネスは小さな口一杯に肉棒を突きこまれて、涙を流しながらも反射的に舌と手を使っていた。
それを受けてエニルの責めが激しくなり、バイブを使って膣口を責めながら、クリトリスが剥かれて舐め吸われる。
「んんっ!んんんん!」
目を見開いて声をあげるが、アグネスの声は肉棒で塞がれておりくぐもった声がでるだけだった。
何度もいかされ、アグネスの身体が赤く染まり、愛液の池ができるとエニルはニヤリとした。
「アグネス、いくわよ」
そう言うと、喉奥まで突かれて雄汁が放たれる。
「ぶぶっ、んおっ、ごひゅ、ごふお、ごきゅ」
アグネスは暴れまわるが、エニルは許さず雄汁を嚥下しきるまでエニルは離れなかった。
「最初からここまでできるなんてね。
アグネスが一番よ」
エニルがベッドから降りて、視線を向けるアグネスにそう言った。
* * *
「さて、片付けないとね」
一通りの行為を終え、エニルはベッドのシーツやタオル、汚れ物をまとめた。
「あたし、洗濯室に出してくるから。アグネスは少し休んでいなさい」
「……はい。ありがとうございます、エニスさん」
下段のベッドの奥でシーツに包まりながら、まだ陶酔しているアグネスはとろけたような笑顔で頷いた。
自分を特別扱いしてくれるこの大人に、アグネスは確かな好意と執着を抱き始めていた。