――アークエンジェル
朝。深夜の待機シフトを終えたキラが自室に戻り、重い足取りでベッドに腰を下ろした直後だった。
扉のチャイムが鳴った。
「……こんな朝に、誰だろう」
キラが訝しみながらロックを解除して扉を開けると、そこにはフレイが立っていた。
「どうしたの、こんな朝から……」
キラが尋ねるよりも早く、フレイは距離を詰め、すがるような瞳でキラを見つめた。
「この間は……先に、勢いで関係を持っちゃったけど。
でもね……私、本当にキラのことが好きなの」
唐突な告白に、キラは息を呑んでたじろぐ。
後ずさったキラは押し切れずにベッドへと座り込み、その上にフレイが覆いかぶさるようにして体重をかけてきた。
「わっ……フレイ……っ」
「私が、キラを幸せにするから……。
キラは、今だって本当は戦いたくないのに戦っているんでしょ?」
フレイの言葉は甘く、切実だった。
特異な身体を持ちながら望まぬ戦いを強いられているキラの痛みを、まるで自分のものであるかのように憂う声音。
フレイの細い腕が、キラの首元に回される。
「エニスさんと……そういう関係になったのも」
「……ッ!」
口に出されたその名前に、キラの肩が大きく跳ねた。
「あのラクスって人だってそう……。
キラが優しいからって、みんなキラに負担をかけてる。でも、私は違うわ」
フレイの瞳には、エニルやラクスに対する明確な対抗心と、強い嫉妬の色が滲んでいた。
「わたしはキラが好き。……キラのためなら、なんでもできる。だから、私のそばにいて」
すべてを受け入れるという重い愛情の言葉と共に、フレイはキラの胸に顔を埋め、ぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「フレイ……」
自分のために泣いてくれる彼女の温もりと、その一途な想いに、キラは胸を締め付けられる。
エニルへの想いや、彼女の大人な余裕とは違う。
フレイは今、ただ純粋にキラを求め、その全身で感情をぶつけてきていた。
「……ねぇ、キラ」
涙に濡れた顔を上げ、フレイが懇願するように甘く囁く。
「一緒に寝ましょ……? アレはしなくてもいい……でも、一緒に居たいの」
「…………うん」
もう、突き放すことなどできなかった。
そう言われたキラは完全に押し切られ、ベッドに身体を預ける。
フレイは嬉しそうに微笑むと、キラの身体にしがみつくようにしてシーツに潜り込み、その温もりを独占するように目を閉じた。
* * *
夕方。アークエンジェルがアフリカの砂漠地帯を航行する中、エニルは昼間の待機シフトを終え、パイロット控え室にある女性用ロッカールームでパイロットスーツを脱いでいた。
夕方からの待機はムウとキラに引き継がれるため、ようやく一息つける時間だ。
そこへ、ひどく疲れた様子のミリアリアが声をかけてきた。
「エニスさん、お疲れ様です……」
「お疲れ様、ミリアリア。どうしたの、そんな浮かない顔をして」
エニルが尋ねると、ミリアリアは大きなため息をつきながら愚痴をこぼし始めた。
「トールが……また色んな女の子にちょっかい出してるんです。
フラガ大尉と一緒になって、もう手当たり次第というか……。
あのあと気になってメイリンに手伝ってもらって様子を探ったら、ジェシカやミーシャだけじゃなくて、他にも声かけてるみたいで……」
呆れと悲しさが入り混じった顔で肩を落とすミリアリア。
エニルは苦笑しつつ、ミリアリアを慰めるようにシャワーへと誘った。
「……男ってやつはどうしようもないわね。
ねえ、これからシャワーに行くけど、ミリアリアも一緒に入る?」
「あ……はい。一緒に行きたいです」
ミリアリアは少しだけ弾んだ声で頷いた。
女性用の共同シャワールーム。ブースに二人で入り、温かい湯を浴びる。
「ほら、背中流してあげるわ」
「ふふ、ありがとうございます。エニスさんの手、気持ちいい……」
エニルがスポンジにたっぷりと泡を立て、ミリアリアの華奢な背中や肩を優しく洗ってやると、ミリアリアはくすぐったそうに、けれど嬉しそうに目を細めた。
<丁度いい大きさの乳房に、お尻の形もいい。この弾力がたまらないわね>
エニルはミリアリアに気が疲れないように、その手で肢体を堪能していた。
それはエニルの男根にも血管が浮き出て、ミリアリアにも熱い棒を押し当ててしまうほどだったが、ミリアリアは時折触れるとどこかうれしそうにしていた。
「わたしにそんなに……反応しちゃいますか?」
「ええ、もちろん。あなたはかわいいもの」
ミリアリアの消えるような問いかけに、エニルはミリアリアの体を軽く抱きしめながら肯定した。
温かい湯とエニルの丁寧な手つきに心がほぐれたのか、ミリアリアはふと、思い出したように口を開いた。
「そういえば……最近、フレイが全然部屋に帰ってこないんです」
「へぇ……そう」
「どこに泊まってるんだか……。私、避けられてるのかな」
<おそらくキラの部屋に入り浸っているんでしょうね。
まあ、おかしな関係にならず発散するだけなら問題ないわよ、若いんだし>
ミリアリアの言葉に、エニルは内心で思い当たる原因について考える。
だが、わざわざそれをミリアリアに告げて波風を立てる必要もない。
エニルは適当に聞き流しながら、濡れたミリアリアの耳元へ顔を寄せ、甘く囁いた。
「それじゃあ……フレイもいないことだし、これから私と遊んでみる?」
「えっ……?」
ミリアリアは弾かれたように振り返り、ほんのりと頬を赤く染めて嬉しそうに微笑んだ。
「はいっ……エニスさん、私の部屋に来てください」
* * *
シャワーを終え、各自着替えた後。エニルは自室に寄って荷物を持つと、ミリアリアの待つ部屋へと向かった。
そこはヘリオポリス出身の女性志願兵たち――ミリアリア、フレイ、ジェシカ、ミーシャの四人に割り当てられた四人部屋だ。
だが、部屋に入るとミリアリアの言う通り、室内には彼女しかいなかった。
「お邪魔するわね。……ジェシカとミーシャもいないの?」
「エニスさん、待ってました。二人はさっき食堂に行くって出ていきました。
フレイは……相変わらずですけど、あの二人とは話したくないし」
呆れたように肩をすくめるミリアリアに、エニルは苦笑しながら持参したごく普通の乳液(ボディローション)のボトルを取り出した。
「そう。じゃあ、ちょうどいいわね。ベッドにうつ伏せになって。マッサージしてあげるから」
「は、はい……」
言われるがままに素っ裸になったミリアリアが、シーツに身を横たえる。
エニルは手に乳液をたっぷりと取り、ミリアリアの滑らかな肌へと滑らせた。
「んっ……あぁ、すごくいい匂い……」
「肩の力、抜いてね」
エニルの手は滑らかで、確かな技術を持っていた。
肩から背中、そして腰へと、溜まった疲労と強張りをゆっくりと解きほぐしていく。
<可愛いわね。肌もつやつやで、乳液を塗ると映えるわ>
エニルは、ミリアリアに乳液を塗りながら年頃の女の子が濡れ光る姿に悦んでいた。
「……トールったら、本当にバカなんだから……私という彼女がいながら……ジェシカたちにもちょっかい出して……んんっ……」
「そうね。あなたを放っておくなんて、見る目がないわ」
ミリアリアのトールに対する愚痴を「うん、うん」と優しく相槌を打ちながら聞いてやる。
肉体的な心地よさと、愚痴を聞いてもらえる精神的な安心感。
エニルの巧みなマッサージと甘い香りに包まれ、ミリアリアの口数は次第に減っていった。
「エニスさん……なんだか、眠く、なって……」
「いいわよ。そのまま寝ちゃいなさい」
とろんとした瞳で呟くミリアリアの髪を優しく撫でてやると、彼女はほどなくしてスースーと規則正しい寝息を立て始めた。
ミリアリアをうつ伏せから仰向けにすると、残っている乳液を満遍なくミリアリアにぬり、その輝きを高めさせる。
<ふふっ、本当に綺麗よ。ミリアリア>
じっくりと乳房やクリトリス、膣口の位置を確認するようにその手は滑っていく。
完全に眠りに落ちたことを確認したエニルは、名残惜しそうにミリアリアの裸体にそっと毛布を掛けてやる。
「……おやすみ、ミリアリア」
静かに微笑むと、エニルは足音を忍ばせて部屋を後にした。