※この作品はR-18です。

ガンダムSEED Return:A   作:触手スライム

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70話

 C.E. 71年 2月25日。

 前夜の接敵後、一時的に進路を大きく迂回させていたアークエンジェルは、日中を通じて慎重な警戒を続けながら、再び紅海へと抜ける本来の進路上へと復帰していた。

 ――だが、バルトフェルドの仕掛けた包囲網の網目は、すでに彼らの退路を完全に塞ぐべく収束しつつあった。

 

 夜のとばりが再び砂漠を包み込んだ頃、暗視モニターの不気味な緑色の光が照らすCIC(戦闘指揮所)に、再び警報音が鳴り響いた。

「本艦前方より接近多数! ザフトの陸戦型モビルスーツ、ジンオーカー六、および上空に戦闘ヘリの反応です!」

 索敵担当のトノムラの報告と同時に、闇夜の空へ鮮烈な赤い光弾が撃ち上げられた。

 アークエンジェルの位置を捉えた捜索部隊の合図により、前方の砂丘の陰から、さらなる影がその姿を現す。

 

「来たわね……! 総員、第一戦闘配置!」

 メインブリッジの艦長席からマリューが鋭く命じ、副長のナタルも直ちに各員へ指示を飛ばす。

「モビルスーツ隊、直ちに発進! 迎撃開始!」

 ナタルの指示がとび、ミリアリアがパイロットと格納庫にそれを伝える。

 アークエンジェルのカタパルトから夜の砂漠へ飛び出したのは、エールストライカーを装着したキラのストライク、続いてアグネスとルナマリアが駆る二機のジン、そして紫色に塗装されたエニル専用のザウート改、さらに上空から援護するムウのスカイグラスパーだった。

 

 だが、今回の敵はジンオーカーとヘリだけではなかった。

 

 アークエンジェルの艦橋では悲鳴のような報告が上がる。

「艦長! 前方より高速接近する振動波形を確認!

 中型陸上戦艦ピートリー級二。急速に接近中!」

 トノムラの叫びとほぼ同時、アークエンジェルの艦橋からも見えるように二隻のピートリー級が姿を現し、容赦ない艦砲射撃の雨を浴びせてきた。

 さらに、その護衛に守られるようにして、砂漠戦の悪夢である四足歩行モビルスーツバクゥ六機が地響きを上げて突撃してくる。

 

 ピートリー級は、船体喫水線下が砂中に没する半没式船体構造を持ち、底部全面に配されたウロコ状の推進装置「スケイルモーター」で砂を振動・液状化させて移動する。

 レセップス級に比べれば小型だが約200mの艦には、単装砲や対空砲、ミサイル発射管が多数配置されていた。

 

「ゴットフリート! バリアント! スレッジハマー装填!

 右敵艦に対し集中砲火を」

「了解しました。

 右敵艦に集中砲火、対空戦闘用意!

 戦闘ヘリと敵ミサイルには、イーゲルシュテルン、コリントス、ヘルダートで対応。

 敵艦への射線をとる、艦首十五度下げ、ゴットフリート、バリアント照準!

 てーっ!」

 マリューの指示をナタルが引き受け、アークエンジェルは砲撃戦を開始する。

 ただ、アークエンジェルが浮いているのに対して、地上を這うように進む敵艦との高低差ができてしまい、ゴットフリートで狙いづらくなってしまう。

「敵艦との位置悪く、ゴットフリート狙えません」

 サイがそんな報告をする。

「艦姿勢、留意して。それからバリアントで対応して」

 マリューはそんな指示を直ぐに返す。

 アークエンジェルからの砲撃は効いているようだが相手も戦艦だ。

 そう簡単には落ちない。

 

 ピートリー級から打ち出されるミサイルを、アークエンジェルは迎撃しながら、射線を確保しようと動き、二隻に挟まれる形で砲撃戦が続く。

 

 艦橋でそんなやり取りをしている中でスカイグラスパーが果敢な攻撃を繰り返していた。

『ちっ、次から次へとよく湧いて出るぜ!』

 上空から急降下したムウのスカイグラスパーが機首の機関砲を撃ち鳴らし、ピートリー級の2連装対空砲を牽制する。

 

『キラ、そっちのバクゥ三機を引き受けて! アグネスとルナマリアはジンオーカーを! あたしが支援する』

『了解!』

 キラのエールストライクが華麗な動きでバクゥの群れへと飛び込み、ビームサーベルで一機の脚部を両断して沈める。

 そのキラに向かい攻撃しようとするバクゥに、エニルからの砲撃が襲い掛かる。

 

 その隣では、アグネスとルナマリアのジン二機が、数に勝るジンオーカー六機を相手に激しい銃撃戦を展開していた。

『アグネス、右から回り込むわよ!』

『任せて、ルナマリア!』

 エニルからの砲撃でひるんだ相手に、アグネスが重斬刀で切りかかる。

 アグネスに攻撃しようとするジンオーカーにルナマリアが重突撃機銃で攻撃し、エニルからの砲撃が他のジンオーカーの動きを封じる。

 二人の息の合った連携により、次々とジンオーカーが戦闘不能に陥っていく。

 

 そして戦場の中心では、エニルのザウート改がその重装甲と高い火力を存分に発揮していた。

「バクゥなんて足止めないとあたらないわよ! キラ、そっちの背中はもらったわ!」

 エニルは両肩の2連キャノン砲でバクゥの一機を爆散させると、キラやアグネス、ルナマリアの周囲に張り付く敵を的確な砲撃で次々と排除し、戦場全体を縦横無尽に駆け抜けて支援の弾幕を張った。

 

「よし……! あの艦(ふね)の武装を潰すとしますかね!」

 戦況が徐々にアークエンジェル側に傾き始めたその時、ムウのスカイグラスパーが身を翻し、最も近くにいたピートリー級の一隻へ肉薄した。

 ムウは主翼の対艦ミサイルと機首の機関砲を集中させ、その艦首側の単装砲や連装対空砲塔を完膚なきまでに破壊してみせた。

 

『よし、一隻沈黙させた! そのままもう一隻も叩くぞ!』

 ムウの果敢な攻撃により、アークエンジェルとの砲撃戦でもダメージを負っていたピートリー級の一隻は完全に戦闘不能へと追い込まれ、戦闘はアークエンジェル側の優勢へと確実に向かっているかに見えた。

 

 ――だが、甘い見通しはザフト側の新手の増援によって打ち砕かれる。

「艦長! 北東および南東の砂塵の彼方から、さらなる振動波形を確認!

 新たなピートリー級と、多数のモビルスーツ部隊が急速接近中です!」

 トノムラの緊迫した声がブリッジに響き渡った。

「なんですって……!? このタイミングで増援が……!」

 マリューが息を呑む。

 中破したピートリー級を仕留めきる前に、背後から敵の増援が挟撃の陣形を敷いて押し寄せてくれば、いくらモビルスーツ隊が健闘していても、アークエンジェル本体が集中砲火を浴びて致命傷を負うのは確実だった。

 

「艦長、これ以上の交戦は危険です!

 敵の増援が完全に展開し切る前に、転進すべきです!」

 副長のナタルが鋭く意見を伝えてくる。

「……ええ、分かっているわ!

 これ以上は無理ね。下手をすればレセップスまで出てくる可能性もあるもの」

 マリューは苦渋の決断を下し、指示を飛ばす。

「全機へ! これ以上居座れば敵の挟撃を受けるわ!

 攻撃を打ち切り、ただちに本艦へ帰投!」

 その命令を受けてミリアリアはパイロットに情報を伝える。

 

 マリューの撤退命令を受け、ムウ、エニルたちは悔しげに表情を歪めつつも、次々と反転してアークエンジェルへと急ぎ戻っていくのだった。

 

 

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