C.E. 71年 2月27日。
――アフリカ北砂漠・アークエンジェル
アークエンジェルが移動を再開した昼下がり、艦の格納庫はいつにも増して騒然としていた。
「お願いします、ラミアス艦長! どうしても僕をパイロットにしてください!」
「……はぁ。分かったわ、そこまで言うなら」
整備中のストライクの傍らで、マリュー・ラミアスは頭を抱えながらついに折れた。
何度却下しても「戦わせてくれ」と食い下がるトール・ケーニヒの強情さに、人員不足という現実も手伝って、ついに特例としての搭乗を認めてしまったのだ。
「シミュレーターでの適性確認は十分なんだろ? なら、俺の僚機として飛べるかの確認をする。マードック、スカイグラスパー2号機を出してくれ」
ムウ・ラ・フラガが軽い調子で整備班に指示を飛ばし、トールを伴って早々に実機へと向かおうとする。
その光景を、格納庫の隅からカガリ・ユラ・アスハが羨ましそうにじっと見つめていた。戦闘機なら自分だって操縦できるのに、という思いが顔に書いてある。
だが、カガリが「わたしも」と言い出そうと一歩前に出た瞬間――護衛のエニルが、無言のまま恐ろしいほどの鋭い眼光で睨みつけた。
「ひっ……!」
蛇に睨まれた蛙のように硬直したカガリは、エニルが「変な気を起こすな」と無言の圧をかけていることを察し、そそくさと踵を返して備え付けのシミュレーター室へと逃げ込んでいった。
「……たく、少し目を離すとすぐアレなんだから」
やれやれとエニルが肩をすくめている間に、ムウとトールの乗った二機のスカイグラスパーは、あっという間にカタパルトから砂漠の空へと発艦してしまった。
その一連の光景を、エニルの後ろから冷ややかな目で見送っていた少女たちがいた。アグネス・ギーベンラートとルナマリア・ホークである。
「信じられない。昨日の今日で、よくもまああんなにへらへらと……」
「本当よね。ミリィにあんなことしておいて、自分はフラガ少佐と一緒にパイロット気取りなんだから。あれはないわー」
昨夜、ミリアリアから事情を聞いていた二人は、自分たちと同世代の少女を裏切ったトールとムウに対して、軽蔑を隠そうともしなかった。
そこへ、CICでの当直を終えたミリアリア・ハウが格納庫へとやってきた。
彼女はきょろきょろと周囲を見回し、目当ての機体と人物がいないことに気づいて足を止める。彼女はまだ、トールとちゃんと別れ話すらできていなかった。
「……もう、出ちゃったのね」
寂しげに呟いたミリアリアは、格納庫の片隅にエニルたちの姿を見つけると、小走りで駆け寄ってきた。
「エニスさん、ルナマリア、アグネス……」
「ミリィ……」
ルナマリアが気遣うように声をかけると、ミリアリアは無理に作ったような痛々しい笑顔を浮かべた。
そして、ごく自然な動作でエニルの腕にすがりつき、顔を擦り寄せるようにして抱きついた。
「えへへ……エニスさん、少しだけこうしててもいい?」
「……ええ。別に構わないわよ」
これまでのミリアリアなら人前でこんな風に甘えることはなかったが、今の彼女はエニルという大人の女性の温もりにすがりつくことで、必死に心のバランスを保っているようだった。
エニルは何も言わず、すがりついてくるミリアリアの頭を優しく撫でてやる。
ミリアリアの表情には、どこか泣き出すのをじっと耐えているような痛ましさがあった。
ルナマリアとアグネスがミリアリアの背中を囲むようにして気遣う中、エニルは格納庫の天井――空を飛んでいるであろう二機の戦闘機に向けて、誰にも聞こえないほどの小声で呆れたように毒づいた。
「……女の尻を追いかけるために、戦闘機に乗るんじゃないわよ。
おかげでこっちは、夜の臨戦待機時間が長くなっちゃったじゃないの」
昼間の哨戒をムウが二人掛かりで出張る代償として、自分やキラの夜間待機シフトの負担が増えたことへの、エニルなりのささやかな愚痴だった。
* * *
夜になり、移動を続けるアークエンジェルの居住区画の一部でささやかな引っ越しが行われていた。
ミリアリア・ハウとフレイ・アルスターの二人が、これまでジェシカたちと同室だった四人部屋から、キラ・ヤマトの私室のすぐ隣にある二人部屋へと荷物を移していたのである。
「エニスさん、わざわざ艦長たちに掛け合ってくれて、本当にありがとうございました」
荷解きを終えたミリアリアが、手伝いに来ていたエニルに深々と頭を下げた。
「気にしなくていいわ。あんな環境に、あなたたちをそのまま置いておくわけにはいかないもの」
昨夜のトールとムウの一件を知るエニルが、艦長のマリューと副長のナタルに「彼女たちの精神衛生上、あの四人部屋は問題がある」と強く進言し、急遽部屋割りの変更が認められたのだ。
「ええ、本当に助かったわ。それに……キラの部屋のすぐ隣だなんて!」
フレイが弾んだ声で言いながら、嬉しそうに壁の向こうへ視線を向ける。
かつての死の記憶を持つ彼女にとって、キラとの距離を縮める絶好の機会が転がり込んできたのだ。
その声には、隠しきれない浮き立った感情が滲み出ていた。
「……あの、エニスさん。少しだけ、いいですか?」
ミリアリアが、フレイの歓喜の声に被せるようにして、エニルの袖をそっと引いた。
そのただならぬ雰囲気を察したのか、フレイは「わたし、ちょっとキラの様子を見てくるわ!」と空気を読んで部屋を飛び出していった。
静かになった二人部屋で、ミリアリアはうつむいたまま、ぽつりと呟いた。
「……トールとは、別れました」
「そう……」
「テスト飛行から彼が帰投したあとに、ちゃんと二人で話をして、別れを告げました。もう、以前みたいには戻れないって」
無理に作ったような平坦な声だった。だが、固く握りしめられた両手は微かに震えている。
ミリアリアは弾かれたように顔を上げ、すがるような、ひどく切羽詰まった瞳でエニルを見つめた。
「ねえ、エニスさん……。遊びでもいい。
今だけは、わたしを甘えさせてくれませんか……?」
それは、傷ついた心を埋めるための、あまりにも危うく自暴自棄な懇願だった。
エニルは小さく息を吐いた。
目の前で限界を迎え、ボロボロになって助けを求めている少女を突き放す理由など、彼女にはない。
「……ええ。あたしでよければ、いくらでも甘えさせてあげるわ」
エニルは優しく微笑むと、ミリアリアの震える身体をそっと抱きしめた。
「エニス、さん……っ」
温かい腕の中に包まれ、ミリアリアの目から堪えきれなくなった涙がこぼれ落ちる。
エニルはその涙を拭うように、彼女の唇に優しく、深いキスを落とした。
ベッドに押し倒されたミリアリアの衣服が、エニルの手によって滑らかに剥ぎ取られていく。
やがて露わになったエニルの身体のそそり立った肉槍を見て、ミリアリアは目を丸くしたが、拒絶することはなかった。
むしろ、その熱にすがりつくように手を伸ばす。
「熱くなってる」
熱い吐息と共に言葉が漏れ出る。
「ミリアリアも熱くなろうね」
そう言いながら、エニルはミリアリアの胸に顔を埋める。
舌先で乳輪をなぞり、乳首をもてあそぶ。
「うんぅ」
くすぐったいとばかりに、ミリアリアが身をよじる。
それでもミリアリアの手はエニルの肉槍を放そうとせず、僅かに上下させる。
エニルの手が、ミリアリアの太ももに添えられ秘裂へと進む。
何か言いたそうなミリアリアの口をエニルがふさぐ。
「んちゅ、んんっ、あっ」
舌を絡ませる音にまぎれるように、エニルの指先が秘裂をこじ開け、指で膣口を探る。
室内に、別の音が響く。秘裂から漏れ出た愛液が、エニルの指に絡まリ淫靡な音色を奏でたのだ。
「いや、恥ずかしい」
ミリアリアが、顔を赤らめながらエニルの視線を避けるように顔を手で隠す。
「可愛いわよ、もっとかわいいところを見せてね」
エニルは愛液の絡まった指先でミリアリアのクリトリスを按摩する。
同時に硬くなり始めた胸にもキスの雨を振らせた後、乳輪ごと乳首を吸い上げる。
「んんっ、ああ」
ミリアリアはたまらないと言わんばかりに身体をくねらせる。
とめどなく滴らせる愛液を絡ませ、エニルが手全体を使ってクリトリスから膣口までを強く愛撫する。
「んぃ、ひぃ、ああん、ああああん」
ミリアリアは、身体を痙攣させ嬌声が漏れ出る。
「え、エニスさん。……これ」
身体を紅潮させながらミリアリアは、涎がしたたり手をどろどろにしているエニルの肉棒をさする。
「入れてほしいの?」
「うん、でもその前に」
エニルの問いかけに、ミリアリアが頷いて答えながら身体を起こし、エニルの肉棒を口に入れる。
「んっ、ちゅ、あっむ、ちゅ、ちゅ」
ミリアリアは一度奥まで肉棒をくわえ込むと、涎まみれの肉槍を抜き出し、愛おしそうに血管に沿いながら舌を這わせ、鬼頭にキスをする。
そして、ミリアリアはエニルに何かを求めるよう視線をむけてくる。
「……力、抜いて。優しくするから」
「ぁ……んっ……」
エニルの女性としての柔らかな肌と、肉棒の熱い猛りが、ミリアリアの膣口から入り、最奥までを犯す。
それは同時にミリアリアの心を甘く満たしていく。
「いぃ、いいぃ、エニスさん。あたしぃ」
「可愛いわよ、ミリィ」
繰り返される優しい律動に合わせ、ミリアリアの口から甘い嬌声と切ない吐息が漏れ続けた。
裏切られた悲しみも、明日への恐怖も、今はただエニルが与えてくれる深い快楽の中へと溶けていく。
<……フラガ少佐には、後でたっぷり慰謝料を請求させてもらうわよ>
熱に浮かされるミリアリアの汗ばんだ背中を撫でながら、エニルは誰にも聞こえない声で内心毒づき、さらに深く彼女を抱きしめた。
「ああぁん、ダメ、きちゃう」
「ミリィ、いくわよ」
エニルが最奥に突き上げると、ミリアリアの足が腰に巻付き、逃がさないとばかりに腕がエニルをとらえる。
その勢いで、エニルはミリアリアにキスをしながら、舌を絡ませ互いの絶頂の声を殺す。
長い射精の間、エニルは口でもお互いの体液を交換していた。
「ミリィ、もういいんじゃない?」
やがて射精が終わるとエニルがそう言った。
ミリアリアは恍惚としながらも余韻を味わい、その脚はエニルを放そうとしなかった。
「いまさらなんですけど、わたし初めてじゃなくて」
ミリアリアが恥ずかしそうに突然そう言い始めた。
「まあ、彼氏もいたんだし。気にしないわよ」
エニルはなんでも無いことだと、返事を返すがミリアリアはエニルの首筋に顔を埋めてしまう。
「そうじゃなくて、すごくよかったから、できれば」
「ああ、まだしたいの?」
ミリアリアは行為の継続を望んでいた。
エニルの問いかけにミリアリアは頷くとともに、自ら腰を動かすことで答える。
「ふふっ、かわいいわね。じゃあ今夜はとことんやるわよ」
エニルはそういうと、ミリアリアの唇を奪う。
そして直ぐに喘ぎ声が部屋に響くことになった。