「エロマンガ先生」和泉紗霧の感覚過敏に関する生体解剖学的較正録 〜ノイズ遮断プロトコルと共振的安定相への到達〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
唇と吐息を重ね合わせた「粘膜同調」を終えても、一度引き上げられた紗霧の全身の熱と感度は、容易には冷めてくれなかった。
だが、ここで二人の間の空気に大きな変化が生じる。
これまで彼女の変調を冷静に見守り、体温や部屋の環境を調節していた俺——和泉正宗に対し、感覚が極限まで研ぎ澄まされた和泉紗霧が、自らの心を安定させるための「たった一つの居場所」として、俺の身体を強く求め始めたのだ。
「……正宗、兄さん……」
紗霧の声のトーンが変わっていた。甘く、湿り気を帯びた熱い吐息が、俺の首筋に微小な液滴となってかかっていく。
血の繋がらない妹としてこの家にやってきてからの歳月。二人で数々の試練を乗り越え、恋人として結ばれた今になっても、彼女の胸の奥には引きこもり時代の孤独や不安の影が残っているのかもしれない。だからこそ彼女は、俺という存在を誰よりも強く全身で確かめようとしていた。
紗霧は華奢な両腕を俺の首元へと回し、自らの小柄な身体を引き寄せることで、密着する力を主導的に強めてきた。
「紗霧……? 待て、お前がそんなに強く抱きついてきたら——」
「ダメ……。兄さんが静かすぎるから……わたしの身体が、兄さんの音を探して……勝手に熱くなってくるの……」
紗霧の細い指先が、俺の首筋から胸元へと滑り落ちる。彼女の体熱を帯びた指先が服越しに圧力を加えるたび、俺の胸の奥にも激しい鼓動が伝わっていく。
攻守の逆転。これまで過敏さに耐えて俺に身を委ねていた紗霧が、いまや俺の体温と鼓動を直接確かめるように、自ら俺にしがみついていた。
あの日、開かずの扉越しに「エロマンガ先生」として絵を描き続けてくれた彼女。そして「一緒に最高の一冊を作る」というあの約束。俺たちが重ねてきた過去の全てが、この強い抱擁の中に溶け込んでいく。
「……兄さんの胸の音……速くなってる。わたしと同じに……しようとしてくれてる……?」
「くっ……お前が急に強く抱きついてくるからだ。鼓動が移っちまってる」
「だったら……もっと近づけて……。お口も……首も……兄さんの全部で、わたしを包んで……っ」
紗霧は華奢な身体を俺の上へと滑らせ、自らの唇を俺の鎖骨や首筋へと不器用になぞり寄せてきた。
彼女の温かな呼気と、しっとりと熱を帯びた唇が俺の肌へと押し当てられる。俺が先ほど行った優しい吻を、今度は紗霧がなぞり返すかのように、俺の体温と鼓動を自らの唇で直接確かめにくる。
「ひぁ……っ、兄さんのにおい……肌の熱さ……全部、わたしの中に流れてくる……っ」
「紗霧、だめだ……そのままでは……っ」
「兄さんの熱さが……足りないの……っ。兄さんの手も……口も……もっと強く、わたしに押しあてて……っ!」
紗霧のしなやかな身体が、愛おしい強がりとともに俺に固く密着する。彼女の体内で生成された熱エネルギーは、逃げ場を失って下腹部へと急速に集まっていった。
隙間を自ら埋め、完璧に重なり合おうとする二人の体。
俺は自らの冷静な思考が、彼女の情熱的な密着と熱量によって急速に狂わされていくのを自覚した。彼女の身体は、俺という存在を完全に受け入れるため、もはや一方的に保護されるだけの妹ではなく、お互いを深く求め合う一人の女性としての愛を全力で要求していた。
「……もう戻れないな。……いや、お前が俺を引き込んだんだ、紗霧」
俺は覚悟を決めると、首元に抱きついていた紗霧の細い身体をしっかりと腕の中で抱き返し、彼女の潤んだ瞳を正面から見つめ返した。
紗霧の瞳は大きく見開かれ、真っ直ぐに俺の瞳だけを捉えている。熱い呼気が絶え間なく二人の顔の間のわずかな空間を埋めていた。
「もう……待てないよ、兄さん……。わたしの身体……兄さんの形で、全部埋めて……っ」
「あぁ……お前の準備は完璧だ。……これより、最後までお前を抱きしめる」
二人の間で蓄積された熱量は限界を突破していた。部屋の中から一切の隙間が消え去り、極限の密着と本気のアプローチへのカウントダウンが、静かに刻まれていくのだった。
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