※この作品はR-18です。

制服資産の減価償却録 〜終わらない絶望のタイムライン〜   作:naomasa

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第1章・第1話:凄惨なる身代わりと、悲痛な虚勢

 

事象の起点となったのは、刑事課強行犯係主任・山本舞が犯した、戦術上の致命的な過失である。

 

広域指定反社会勢力の重要拠点を巡る内偵捜査において、舞は自らの経験への過信と功焦りから、単独行動をした上での強硬突入を敢行。

 

だが、その独断行動は即座に敵側の電子的・物理的迎撃に遭い、舞の行動は無力化されてしまう。

 

さらに単独行動の舞の後を追ってきた、後輩の大沢美波ともども、退路を完全に断たれ、逆包囲される結果を招いた。

 

 

 

その空間に漂っていたのは、猟奇的な狂気ではなく、捕獲した二人の現役女性警察官という検体を冷徹に査定する、犯人側の即物的な値探みの視線であった。

 

現場の男たちは、身動きの取れない二人の前に立ち、事務的にその肢体と佇まいを見比べた。男の一人が、逆包囲と言う状況にもかかわらず、一歩も引かずに鋭い眼光を放ち続ける美波に目が留まった。

そして、仲間に小声で、

 

「……よし、コイツだ。こっちの方(美波)が骨がありそうで壊し甲斐がある」

 

その品定めに対して、男たちの間に下卑た笑いは起きない。

 

ただ、効率の良い処理対象を選別したという冷淡な合意だけがあった。

 

男は美波の気高い瞳を覗き込みながら、淡々と一つの条件を提示した。

 

 

そして美波に対して、

 

「おい、お前が身代わりになるって言うなら、こっちの女(舞)は無傷で解放してやる。どうする?」

 

その瞬間、大沢美波(26歳 / 本部刑事課強行犯係・巡査長)の優秀な脳髄は、自身への破滅の数式を冷徹に受け止めた。

 

彼女にとって、山本舞は単なる上司ではなく、エリート刑事としての規律と技術を叩き込んでくれた、最も尊敬する指導官であった。

 

 

常人であれば恐怖に足がすくみ、熟考するであろう絶望的な二択であったが、美波にとって『師弟の絆』という絶対の美徳は、彼女の優秀な脳髄に一切の迷いを与えなかった。

美波は溢れそうになる恐怖をストイックに抑え込み、犯人側を真っ直ぐに見据えて言い放った。

 

 

「……分かった。その言葉、絶対に忘れるな」

 

「先輩に触れたら、私がただでは置かない…」

 

 

 

犯人側のリーダーは、

 

「話が早くて助かるな」

 

そう返し、舞を指して

 

「連れて行け」

 

と命令する。

 

 

 

男の合図とともに、山本舞の身体は倉庫の外へと連れ出され、安全圏へと排除された。

 

だが舞にはその後、犯人側によって強力な麻酔薬が投与される。

 

この後、美波に対する4時間に及ぶ絶対的な汚辱も、昏睡状態の為に、その目で見る事は無かった。

 

舞は性的汚辱を一切受けず、無傷で生還するという先輩の安全を目視で確認した瞬間、美波は自ら全ての退路を断ち、男たちの要求へと無条件で従っていった。

 

 

 

倉庫に独り残された大沢美波に対して、にじり寄る犯人達。

 

まずは美波から手錠を取り上げ、それを用いて美波を後ろ手に拘束する。

 

気丈にも独りでそれに耐えようとしている美波。

 

しかし美波自身も想像もつかない結果となった。

 

美波の顔面、および口内への「徹底的汚辱」という、覆しようのない事態へと進んでいく。

 

 

 

‥…

 

 

 

4時間の空白が経過した深夜、薄暗い倉庫裏の集積所の片隅。

 

 

薬物の効果が切れ、激しい頭痛とともに覚醒した舞は、自身の身体に外傷も性的被害の痕跡もないことを確認した直後、美波と別れたあの倉庫に入る。

 

そして倉庫内の中央の床に転がされている美波の姿を捉える。

 

だが駆け寄った舞は、自身の過失が招いた凄まじい惨状に直面し、息を呑んだ。

 

「美波……? 嘘でしょう…美波……っ!」

 

舞は悲鳴のような声を上げ、ボロボロに汚損された美波の身体を抱き起こした。

 

すがりついた舞の指先には、拭われることなくこびりついた生々しい白濁のぬめりが絡みつく。

 

そう…これは男の放った精液だ。

 

 

自分を救うために後輩が身代わりになったという絶対的な原罪(罪悪感)に、舞はその場に崩れ落ち、激しく動揺した。

 

美波は、ガタガタと拒絶の痙攣を繰り返す全身の骨格と筋肉を、ストイックに鍛え上げられた腹筋の力、そして僅かに残る精神力で抑えていた。

 

臨戦態勢のエリート刑事であった頃の強靭な肉体の残滓だけを支えに、動揺激しく涙を流す先輩を見つめ、無理に引きつった笑顔を作って、掠れた声を絞り出した。

 

「……大丈夫、です……舞先輩……」

 

「先輩が、無事で……本当によかった……」

 

 

それは、壊れかけた精神が精一杯に維持した、あまりにも悲痛な虚勢であった。

 

舞は美波の後ろ手に拘束されていた手錠を外し、改めて美波の様子を伺う。

 

だが美波は直後に、張り詰めていた自律神経のパニックスイッチが臨界点を突破。

 

過呼吸の果てに美波の瞳から急速に焦点が失われ、その身体は糸が切れたように舞の腕の中へと崩れ落ち、深い失神へと沈んでいった。

 

 

 

舞は、美波のぐったりとした肉体を、自身の胸で受け止めると、ベチャリとした粘着質の音に気が付く。

 

無傷の舞の制服に、美波の制服からドロドロの白濁液が移ったのだ。

 

そして今度は舞の視界に、網膜を灼くような「汚染の状況」が飛び込んできた。

 

気を失った美波の顔面には、数時間にわたり容赦なく浴びたと思われる精液。

 

堆積した複数名分の大量の白濁が、ドロドロとした重厚な層を成してべっとりと張り付いている。

 

後ろ手に拘束されたままで、拭う猶予を与えられないままに、汚辱を受けたのだろう。

 

意識を失った美波の顔の筋肉が弛緩するたびに、皮膚の表面をコーティングした不浄な液体の塊が顎のラインを物質的に伝っていった。

 

 

 

そして、国家権力の象徴である警察官の制服、官給品冬用カッターシャツの襟元へとポタポタと滴り落ち、その鮮やかな青い繊維はアンモニア臭を放つ体液をぐずぐずと内側まで吸い込んでいく。

ずっしりと重くなった制服の不快な重量感、繊維の奥まで深く浸透した濃密な汚液の量。

 

舞は美波の身体を胸で抱きながらも、優秀な刑事としてのプロファイリング能力は、その圧倒的な衣服の汚染度から、美波の受けた凌辱劇を察することが出来た。

 

自身が昏睡していたこの数時間の空白の間に、部下がどれほど執拗に、かつ徹底的に男達の「射精の的」として使い潰され、汚辱を受け続けたかという地獄の全容を、正確に理解してしまった。

自分の犯した「単独突入」という過失の代償として、身代わりとなった後輩の誇りが、制服ごと物理的・化学的に変質させられていく様を、見せつけられているのだ。

 

 

 

美波が受けた凌辱の跡を示すその無残な姿を前に、舞の精神の防壁には決定的な亀裂が刻まれた。

 

美波を救うためのこの美しい大義名分は、山本舞を後にさらなる底なしの罠へと引きずり落とすための、最も強固な首輪(人質)へと完全に反転していくのである…。

 

 

 

 

この事件の直後、舞が応援を呼ぶよりも前に、救急車と共に応援部隊が駆けつける。

 

だが事態を重く見た警察首脳は、この件を内々に処理しようとする。

 

美波にとっても舞にとっても、その方が良いが、それがこの事件の幕開けの一つの要素でもあった。

 

 

 

美波の着用していた制服一式と手錠は、上層部の手によって「重要な証拠品」として手際よく回収され、空気を通さない証拠保全用パウチへと厳密に密閉・廃棄登録される。

 

表の社会に対しては、同じく上層部の手によって「捜査中の重度トラウマ(PTSD)に伴う3ヶ月の長期病気休職」の発表があり、美波の社会的生存は静かに維持された。

 

だが、暗転していく視界の向こうで、終わらない絶望のタイムラインが、無機質にその刻みを早めていた。

 

 

 

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