制服資産の減価償却録 〜終わらない絶望のタイムライン〜 作:naomasa
あの最悪の招待状を開いてから、正確に48時間が経過していた。
窓一つない地下の密室には、時間の概念すら存在しない。水野菜々美に与えられたのは、睡眠でも休息でもなく、ただ不特定多数の男たちの排泄処理を機械的に受け続けるという、果てのない実務の連続だった。
部屋の中に立ち込める空気は、すでに現役の警察組織が持つ清潔な平熱感を完全に失っていた。コンクリートの四壁に閉じ込められた狭い空間には、幾度も繰り返された菜々美の顔と口内へ精液の授与、そして膣内の凌辱によって撒き散らされた白濁の、ツンと鼻を突く濃厚なアンモニア臭と生臭い臭気が、逃げ場もなく淀んで充満している。
「はぁ……っ、あ、う……」
高反発マットの上に力なく転がされた菜々美の喉から、浅く、熱を帯びた吐息が漏れる。激しい連続蹂躙、しかも長時間の行為によって、ストイックに結ばれていた黒髪は完全に解かれ、汗と体液で顔面に張り付いている。
衣服資産としての価値をすり潰された制服の汚損は、あまりにも凄惨だった。特に口腔と顔面で執拗に掛けられた大量の精液は、顎を伝って純白のカッターシャツ の襟元や胸元へ直接浸透し、時間の経過とともに硬化して不快な斑点を作っている。
さらに、マットの周囲のコンクリート床には、菜々美自身が受け止めきれず、飛び散った他者の残渣が白く濁った水溜まりとなって斑に広がっていた。カツ、カツ、と冷徹なヒールの音を響かせて藤田美沙が菜々美の目の前に歩み寄った、まさにその瞬間だった。
「――っ、あ」
菜々美の細い身体が、わずかにビクンと強張る。同時に、切り裂かれたタイトスカートの隙間、破られたストッキングの繊維を伝って、どろりと熱い白濁の塊が、目に見える形でコンクリートの床へと音もなく垂れ落ちた。長時間に及ぶ執拗なピストン運動によって中の粘膜は過剰に牽引され、括約筋は物理的に弛緩しきっている。内側に注ぎ込まれた夥しい量の液体を自らの力で留めることすらできず、重力に従って無様に体外へと漏出。菜々美の身体に対して行われた行為の凄惨さを物語っているようだった。
「実務の第一段階はこれで終了よ、水野巡査長。お疲れ様。随分と、吸い込みの良い優秀な容器だったわね」
藤田の無機質な声とともに、男の手によって、菜々美の後ろ手でガチガチに固定されていた手錠が一度外された。血流が戻る僅かな感覚。しかし、逃走や拒絶を試みる筋力など、菜々美の肉体には一ミリも残されていない。
直後、男は菜々美の両手首を再び背中の後ろでタイトに合わせ、今までとは別の手錠を押し当てた。ジャラ、と冷酷な金属音が響き、カチ、カチ、とシリアルナンバー入りの歯車が肉を噛む。
「……あ、あ……」
「その手錠の感触、分かるかしら?」
耳元で、藤田が楽しげに、けれど官僚的な平熱感を崩さない口調で囁いた。
「これ、大沢巡査長が地上で携帯していた、あの子の実物の官給品よ。あの子の代わりに、あなたがこれで永久に縛られなさい」
「美波の……? うそ……あ、ああ……っ」
その言葉が、菜々美の脳内で最悪の心理的呪縛として発火した。
後ろ手の冷たい鉄の感触。それが、いまだ行方の分からない親友の存在を感じられる唯一の「錨」となってしまう。皮肉にも、美波への悲痛な想いという美徳が、彼女の知性を完全に崩壊させることを踏みとどまらせた。
(美波……私は、あなたの代わりに、これで……。これは同僚を売り渡し、あなたを救えなかった愚かな私への、当然の罰……)
藤田の狙いはまさにそこにあった。菜々美の思考を完全に放棄させるのではない。自らの優秀な頭脳で「自分が受けている汚辱の原因」を鮮明に自覚させ、終わらない生き地獄をリアルタイムで続けるための、残虐な檻である。自発的な絶頂の波とともに絶望の涙を流しながら、菜々美は後ろ手手錠を受領した。その後、菜々美の視界は藤田の手によって厚手の目隠しで完全に剥奪され、言葉を組み立てる口内には、口枷が強引に嵌められた。
「う、うう……っ」
声にならない嗚咽を漏らす菜々美の、ドロドロに汚損された衣服の上から、事務的に大きなガウンが羽織らせられる。男たちの手によって家畜のように抱え上げられ、深夜の警察署の死角、搬入口に待機していたワゴン車へと、菜々美の肉体は静かに運び込まれていった。
ガタゴトと、車体が不気味な拍動を立てて走り出す。
表の社会から、警察籍から合法的に抹殺された菜々美は、今まさに組織が抱える地下下層の拠点へと連行されていた。
車内の重苦しい、不規則な振動に縦に揺られるたび、菜々美の膣の奥から、ドロリと、熱を帯びた粘着質な残渣が、せり出すようにして内腿へと溢れ出てくる。それは、目隠しをされ四肢の自由を奪われた暗闇の中で、菜々美の生体神経だけが鮮明に感知できる、圧倒的な汚染の感覚だった。
(あ……、また、中の精液が…垂れてくる……っ。拭いたいのに、手が、後ろで繋がれていて、届かない……っ)
ガウンの内側で、自身の愛液と男たちが吐き出した精液が混ざり合い、ストッキングをじっとりと濡らしていく不可逆な現実。その流動感を味わうたびに、彼女の優秀な頭脳は、この先の未来に対する底なしの恐怖を回顧せざるを得なかった。
(私は、どこか遠い他所へ連れていかれる……。そこは、どこなんだろう……。もう二度と、あのパソコンの前に戻ることも、凛とした制服で地上を歩くこともできない……。ただの肉の器として、すり潰されるだけの場所……。でも……美波も、そこにいるの……? もしそこに美波がいるなら、私は……)
混濁していく意識の中で、いまだ親友の面影を探し求めようとする、悲痛な虚勢。しかし、その歪んだ希望の濁流の中で、菜々美の優秀な頭脳からは、完全に「ある事実」が消落していた。
彼女は完全に忘れていた。自分がこの地獄へ這い入る前、サーバーの底に仕込んだあの時限プログラムのことを。本人が48時間アクセス不能になったことで、今まさに駆動条件をクリアしたデジタルな触手が、サイバー犯罪対策課の同僚・長谷川千尋のローカル端末へと、不審なログの断片を「SOS」として自動送信し始めたという事実を。
(美波……どこ……)
肉塊となった菜々美の脳内からは、もはや、その撒き餌の先に吊るされた、愛おしい後輩の名前すら完全に忘却し尽くされていた。
暗転していくタイムラインの底で、次なる獲物の誘導ルート完璧に確立された。