制服資産の減価償却録 〜終わらない絶望のタイムライン〜 作:naomasa
監察特務査問室の空気は、大沢美波が引き起こした凄絶な自発的絶頂の余韻によって、重く湿っていた。
パイプ椅子の座面の上で、限界まで引き締められた美波の腹筋は、今しがた迎えた絶頂の物理的な衝撃によって痙攣を止めず、腰の帯革がその情けない震えを虚しく締め付けている。
美波の中枢神経を襲った強烈な負荷。
それからかろうじて意識を覚醒させた身体は、嫌悪を置き去りにして開発された肉体が未だ熱を帯びていた。
脳逝きによって溢れ出た分泌液は、床に滴り落ちるほどではないものの、下着をじっとりと濡らし、処理しきれずに溢れた液が美波の引き締まった太ももを冷たく伝っている。
その不快なぬめりが、彼女に自らの無様な敗北を皮膚感覚で自覚させていた。
藤田美沙は、手元の調書台帳にペンを走らせる事務的な手を止めることなく、平熱の視線を美波へと戻す。
その目には、国家の記号たる制服を濡らしたエース刑事の姿に対する同情も、あるいは嗜虐的な悦楽すらも浮かんでいない。
ただ、美波を徹底的に摩耗させるプロセスを淡々と観察する、冷酷な管理者の色だけがあった。
「本日最初の供述としては、ひとまずの事実関係が確定したわね」
「――ですが大沢巡査長、私の職務は不祥事の『全容解明』なのよ」
藤田はペンを置くと、スチール製の机に両肘を突き、指先を組んだ。
その動作ひとつが、美波にとっては逃げ場を阻む物理的な障壁のように感じられた。
「映像データを精査した結果、私にはどうしても解せない過失が一点存在するのよ」
「……あなたは違法のアジトに突入し、犯人グループに囲まれた初期段階において、まだ両腕を緊縛されていなかったわね?」
不意を突く冷徹な問いが、美波の頭脳を射抜いた。
「それは……っ」
「なぜ、抵抗しなかったの?」
藤田の声が、査問室の壁に反響して美波の耳腔を圧迫する。
美波の脳裏に、あの日の光景が鮮明に蘇った。
自身が身代わりとなって反社の密室に残り、強制的に退避させた先輩――山本舞主任の失策。
もしここで「先輩を救うために自ら残った」と事実を口にすれば、組織内の良心である舞の警察官生命は完全に絶たれる。
「同僚を巻き込みたくない」という強固な責任感と美徳が、美波の唇を物質的にロックした。
彼女はただ、唇を血が出るほど噛み締め、震える声で必死の虚勢を組み立てるしかなかった。
「……あの状況では、多勢に無勢でした」
「私は……警察官として、適切な機転を利かせるために、一時的に……静観を選んだに過ぎません」
「なるほど…静観、ね」
藤田は美波の言葉を鼻で笑い、冷酷にその言い訳を叩き潰した。
「言葉に詰まるということは、こういう客観的解釈が成り立つわね」
そう前置きをして、
「――大沢巡査長。あなたは警察官としての職務を放棄し、自発的にその無法地帯へ留まった」
「つまり、男たちに囲まれて顔面や口腔内に汚物を浴びせられる『強姦ごっこ』、あるいは『ぶっかけプレイ』に、合意のうえで興じていたのではないですか?」
藤田の問いは、美波にとっては余りにも暴論だった。
即座に反論して、
「違いますっ……! 私は、公務の遂行中に……っ!」
美波はパイプ椅子のパイプを強く掴み、身を乗り出すようにして激しく拒絶した。
「そんな屈辱的な事実はありません! 私は犯罪者を現行犯逮捕するために突入し、汚辱を好んで受け入れるような真似は、断じて……っ!」
「まぁ……いいわ……」
藤田は、美波の悲痛な弁明などこれ以上聞く価値もないとばかりに、冷たく視線を流した。
美波の「ごっこ」や「プレイ」への反論など、事務手続きの上ではどうでもいいと言わんばかりの平熱な空気が、室内の温度を一段と引き下げた。
「そんな事よりも、重大な事があるの……」
藤田は十分な間を開けて、美波へ向かって問いかけた。
「あなた……まさかとは思うけど、制服を汚されたりはしていませんよね?」
「えっ……」
想定していなかった角度からの本質的な追及に、美波は意表を突かれて完全に身体を固まらせた。
藤田の無機質な役人言葉が、美波の耳元で冷徹に因果を紡いでいく。
「その制服は、国民の血税によって購入された大切な制服です」
「……階級章も同じよ。国家としての重要な資産であり、そして国家の尊厳そのものなの」
「もう一度聞きます、大沢巡査長。あなた……その制服や階級章を、汚されたりはしていませんよね?」
「あ……ああ……っ」
美波の喉から、声にならない割り切れない音が漏れた。返す言葉がなかった。
藤田は冷酷な視線を崩さず、淡々と続けた。
「だから、あなたが現地で本当に襲われようが、あるいは個人の歪んだ趣味で快楽におぼれようが、そんなことはどうでもいいのよ」
「ただ一点。その制服……汚されていたのか、汚されていないのか…」
「そ、それは……っ」
美波はなおも言い返そうとしたが、言葉が形を成さない。
藤田は続ける。
「24回の汚辱のうち、8回が口で、14回が顔で……とあなたは先ほど供述したわね?」
藤田は顔を伸ばして、美波との顔の距離を詰め、その美しい顔面を覗き込むようにして問い詰めた。
「8回……、あの精液を全て飲み干しましたか? むせたり、零したりしていませんか?」
「そ……その事……は……」
「14回は顔でしたね…? ならば14回すべて、顔だけで受け止めましたか? 14回分の…精液を……。そう…あの汚い精液を一切零さず、全て顔だけで受け止めたのね?」
「う……ううっ……」
美波は、突きつけられた肉体的・物理的な現実の前に、完全に沈黙した。
口で受けた8回の射精、顔で受けた14回の射精。
一滴も零していない……なんてことが、あの凄惨な無法地帯の状況であり得るはずがない。
それは美波自身が一番よく分かっていた。
特に、顔面へ浴びせられた14回の凄惨な射精。その大部分は、皮膚や頬をドロドロと伝って流れ落ち、襟元の階級章、そして制服の上着どころか、青い官給品カッターシャツの胸元を著しく汚染していった。
その化学的・物質的な衣服の汚損記憶、そしてあの一連の出来事が、再び頭脳の奥底で爆発的にフラッシュバックする。
「答えなさい、大沢巡査長」
藤田の事務的な催促が、美波の 理性をさらにすり潰す。
「あ……あああ……」
藤田の追及に何も返せない、抵抗できない状態の美波。
今、美波を覗き込むように見ている藤田は、何もかもお見通しのような目つきだ。
「そして……24回の射精のうちの、その他の2回」
藤田の声のトーンが、極限まで鋭利に尖った。
「これ、まさか……制服に向けられたものでは無いでしょうね?」
藤田の言葉は、完全なる図星だった。
あの、顔でも口でもない「その他2回」の射精。そ
れは、防衛の腕を奪われ、後ろ手に縛られて転がされていた美波に対し、犯人たちが面白半分で、国家の規律を嘲笑うために「制服そのもの」へ向けて直接放たれたモノだった。
その事実を、美波の優秀な頭脳は完璧に理解し、記憶の檻に閉じ込めていたのだ。
今、この暗い査問室の密室で、美波の脳内環境はあの出来事を鮮明に再現していた。触れられてもいないのに、彼女の中枢神経は、再び24回の汚辱に塗れようと暴走を始めていた。
(な、何か……何か言わなくては…屈するわけには……っ)
美波は僅かに残った精神力の全てをかき集め、震える唇を開いて最後の抵抗を試みようとした。
「わ……私はっ……!」
「制服を出汁に使わないで頂戴」
藤田の冷徹な一言が、美波の必死の虚勢を、跡形もなく叩き潰した。
「精液塗れにされたいのなら、あなただけが汚されなさい」
藤田の言葉は、見事なまでに決定的なトドメとなった。
すでに精神の限界点を迎えつつあった美波にとって、「精液塗れ」というあまりにも卑俗で、かつ自身が受けた屈辱を正確に射抜いたワードは、中枢神経の核心へと深く突き刺さった。
「あ……あああ……っ!」
ついに美波の脳下垂体が、過剰なストレス負荷により、再び完全なオーバーヒートを起こした。
理性の防壁は木っ端微塵に圧殺され、脳が焼けるように痺れる感覚を味わい、そして肉体が理性を置き去りにして暴走を始める。
「だ、ダメぇ……っ!!!」
手錠すらされていない両腕が、誰に命じられたわけでもなく、自らの皮膚に刻まれた調教の記憶だけで 自発的に背後へと回され、パイプ椅子の背もたれの後ろで硬直した。
本日2回目、通算3回目となる壮絶な【脳内自発絶頂(脳逝き)】が、美波を襲った。
「んんーーっ! ぁ、あ、う、あぁぁぁーーっ!!」
背筋がパイプ椅子の背もたれを破壊せんばかりに激しく反り返り、引き締まった下腹部が、自動服従の激しい痙攣を伴って幾度も跳ね上がる。
カッターシャツの襟元が、皮膚から噴き出した冷や汗と、口腔から溢れ出た唾液によって内側から変色していく。
それと同時に、タイトスカートの内側では、パンストのクロッチを完全に突破した大量の自動服従分泌液が一斉に漏出し、先ほどとは比較にならない質量となって太ももから膝へと溢れ出た。
青い繊維がその熱を吸い込み、重く変質していく冷徹な現実を刻みながら、美波の制服は汚れていった。
脳の中枢神経系が完全にシャットダウンして失神する美波。
パイプ椅子から崩れ落ちそうになるその無残な肉体を、藤田美沙はただ事務的な視線で見つめ、手元の調書に刻むのだった。