※この作品はR-18です。

ゴミのダンジョンマスター   作:上り坂は下り坂

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第二章開始だー! のんびり成長していこう!



第二章 ヒト≠ゴミ
1話 成長と進化と密かな侵攻


 

 ロスの街との共生を始めてから二年の月日が経った。

 

 シゲン、マテリア、ユニの三人は見目に変化はない。皆、進化という形で能力は変われど、成長というものはしないからだ。

 対してウィーク、ピーク、ルルの三人は大きく変化した。

 

 ウィークはシゲン感覚でぱっと見で青年くらいに見える。

 身長は百六十センチを超え、筋肉質な身体となって肩幅も随分と広くなっている。生活環境の改善と、摂取するものの栄養価の高さ、後ポーションを浴びた作物が悪さをしたに違いない。

 頭の中は劇的な変化はない。しかし冷静さを身に付け始めている。

 マテリアの畑の収穫物を摘んで煽る癖は治らないようだったが。

 それでも垢抜け始めてイケメンさが出てきた。燻んだ色味の金髪と筋肉質な見た目……最近シゲンはウィークの将来を心配するようになっていた。

 

 ピークはお姉さん感が出てきた。女性になる少し前といった具合だろうか。

 身長は百五十センチくらい。華奢な見た目だが、鍛錬に次ぐ鍛錬で力は人一倍。こちらも環境や食べ物の変化によってかぐんぐんと成長した。

 胸は既にDカップ。ブラは支給させてもらった。将来はきっとグラビアアイドルも斯くやなスタイルになる事だろう。モテること間違いなしだ。いや、今でも十分モテるだろうが、ウィークとシゲン以外の男が居ないのでモテようが無かった。

 淡い赤色の髪を肩の下あたりまで伸ばし、気まぐれにシゲンがあげたシュシュでポニーテールに纏めるのがお気に入りの髪型。

 グミの実を摘み続けた事は関係無いのだが、火魔法の伸びと魔力量の伸びがすごい。本人はグミの実ととある白い飲み物を信仰し始めている。

 

 ルルはまだまだ小さいが、その分変化も大きい。まあ最大の変化は中身のマセガキ具合なのだが。

 身長は百二十に届くかどうか。穏やかでおっとり、薄い黄色のふわふわとした髪も相まって無害そうに見えるが、シゲンに対してのアクションが異常に多い。

 接近戦は苦手なルルだが、弓矢や魔法を用いた戦いはかなり巧妙だ。

 頭もキレて、勉学も理解と吸収が早い。

 一番伸びが良いのが魔法。水と光に適性を持つが練習量は光が多いためか、伸び幅が凄まじく、よくシゲンに魔法を見せては褒めてもらっている。

 グミの実に特別な効果が無い事を知っているが、白い液体についてはピークに同意を示している。

 

 

 人間達の成長は早いものだと温かな目で見守ってきたシゲン達だったが、ダンジョン側にも変化はあった。

 

 まず、第六進化体を狩るようになって獲得魔力が跳ね上がっている。

 ゴミ穴の数を十六個から四つに減らしたものの、一ヶ月に四十万以上の魔力を安定して獲得しているのだ。保有魔力は膨大だ。

 

 

 その魔力でユニとシゲンの進化も行っている。

 上下関係を気にしないシゲンの提案により、身体性能と魔力容量にそれぞれ二十五万魔力を二人に使用し進化。

 加えて、シゲンは液体操作能力にプラス五十万。ユニは戦闘能力に五十万。

 二人は百万ずつの魔力を消費して破茶滅茶な進化を遂げていた。

 

 

 それでもまだまだ余る魔力はダンジョンの異空間拡張に当てられた。

 七十八万平方メートルしか無かった空間は、百万近い魔力を注ぎ込む事で大体二五平方キロメートルにまで拡がっている。縦横の長さはおよそ五キロ。

 今回はさらに上に空間を広げた。現在の高さは十メートル。天井を高くするのに追加で百万の消費だ。

 多分まともなダンジョン設計をするのなら、洞窟型とか、迷路型とか、そういうのが効率的なのだと思うが、シゲンとマテリアは自然な空間を好んだ。

 

 

 さて、これだけ大改造を施しても保有魔力はいまだ六百万を超える。

 だがこれはこれから使う予定のあるものだ。勿論非常時や理由があればその都度使うが、基本的には置いておきたい魔力量。

 

「マスターマスター! そろそろ計画通りに動き出しますか? それとも腰を据えてダンジョンらしいダンジョンを作っちゃいますか? マテリアとマスターの愛の巣を作るのも藪坂ではありません! イチャラブデート待った無しです!」

 

 マテリアは出会った当初とは見違える程の変化を遂げている。

 ストレートに向けてくる好意。溌剌とした言動。畑に掛ける愛情。ウィークに作物を摘み食いされた時の苛立ち。ルルがシゲンの膝に乗った際の嫉妬。自分以外とのシゲンの性行為への怒り。

 およそダンジョンコアらしく無い感情と情緒の発露がこれから先、どんな結果を及ぼすのか。

 

 しかしシゲンはそんなマテリアを愛らしいと思う。ウィーク達と触れ合い、ユニと関わり、沢山の楽しいと辛いと嬉しいと悲しいを知っていってほしい。

 

 ダンジョンは人では無い。魔物とも少し違う。生きる為に他者を食らう必要の無い生物。人類を減らす事を目的とした、星の免疫。永き時を生きることの出来る存在。

 

 シゲンは今のマテリアと一緒なら、そんな日々も楽しめると思うのだ。

 それはそれとしてイチャラブデートはいつかまた。

 

「愛の巣はまた今度ですか。仕方ありませんね」

 

 本気で残念そうにしてくれる彼女の頭をひと撫で。本命の用件を告げる。

 

「うぇへへ……! ええ、はい。承知しました。……では、当ダンジョンはこれより、次なる街を目指して現実空間の支配領域を拡張し続けます。進路は、ロスの街を有する領地をさらに有する、レイレクス帝国が帝都マクシム方面!」

 

 ダンジョンが地下百メートルで蠢動を開始する。西へ向けて支配領域を伸ばし始める。

 五千の魔力を消費して五百メートル進むごとに、十の魔力を消費して半径五百メートル範囲を調査可能な探査を使用する。

 

 ………………。

 

 それらを繰り返すこと、四十回。消費魔力は二十万。距離にしておよそ二十キロ先。小さな宿場町らしきものを捕らえた。

 

「マスター……燃費悪いです。悲しいです。魔力が勿体無いです。やっぱり現実の侵攻はダンジョン向きじゃ無いんです」

 

 だからこそ他者の意表をつけるのだとシゲンは笑う。目尻に光る小さな涙は、異空間拡張なら一千キロは道が伸びたと言う事を考えてしまったせいだろうか。

 ともあれ、新たな標的を見つけたダンジョンは、宿場町に根を張って行くのだった。

 

 

 

 ダンジョンが動き出した頃、ユニはウィーク達を連れて訓練用に作られた土剥き出しの部屋へと向かっていた。

 向かっている場所は、異空間の外にある現実空間。だがダンジョンの支配領域下にあるため、壁などは強固なものとなっている。剥き出しの土の壁だが、生半可な攻撃では破壊すら出来ず、崩れもしない。ダンジョンによる支配は強固なのだ。

 

「ピーク、今日は魔法無しで武器だけで戦おうぜ」

「良いけど……加減してよ? シゲン兄のポーションがあるからって無駄遣いするもんじゃないんだからね!」

「わかってる! わかってるからぁ!」

 

 慣れた様子で踏み固められた道を歩く二人。

 突然世界が拡がった時は何事かと思ったが、五キロの道も慣れてしまえば丁度良い運動。

 魔力を循環させて身体強化を行えば、途端に大した距離では無くなってしまう。

 

「ユニ姉、ルルはなにする?」

「そうですね。ルルは私と体術を練習しましょう」

「えー……弓じゃだめ?」

「敵に接近された時にどうするのですか?」

「ぶー。わかったぁ」

 

 騒がしい二人の後ろをユニとルルが手を繋いで歩く。

 すっかり姉と慕われるようになったユニは、跳ね上がった力を御し、途端に扱える様になった様々な技を子ども達に教え込んでいた。

 

「ユニ姉さん! そう言えばマテリアは? あいつまたサボりか?」

「ウィーク? マテリア“様”です。あの方はこのダンジョンを維持するコアなのですよ? それとマテリア様は現在シゲン様とお話し中です」

「ふーん。ちぇっ。つまんねーの」

「なに〜ウィーク? ユニ姉の次はマテリアちゃん?」

「はぁっ? ちげーし。マテリア居たら普通に楽しいだろ。そう言うピークはシゲン兄の事狙ってんだろー! 丸わかりだからな?」

「ひゃっ!? しょ、しょんなわけ無いし!! ダンジョンマスターと人間なんだよ!? 寿命だって違うし……子ども出来るか分かんないし……」

「ルルはおにーちゃん好き〜」

 

 柏手一つ。騒がしい三人を黙らせたユニは、軽く威圧して空気を変える。

 

「はい、そこまで。今日も本気で訓練いたしましょう。いつか貴方達が一人でも生きて行ける様に。このダンジョンが無くなっても生き続ける為に」

「「……はい!」」

「はぁ〜い」

 

 三人はユニに教えを乞い、指導を受ける。

 無駄の無い動きを見て学び、いっそ美しさすら感じる武器術を叩き込まれ、魔法の扱いや応用法を吸収していく。

 百万の魔力で超強化されたホムンクルスに戦いを教わる人間の行く末は如何に。

 

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