※この作品はR-18です。

ゴミのダンジョンマスター   作:上り坂は下り坂

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9話 ヒトの可能性

 

 液体操作によって生成可能な液体を一気に増やしたシゲンは、マテリアに言われた事を試す事にした。

 

 水魔法で生み出した水を液体操作で操り、大量の魔力を込める。数値にしておよそ一万。

 それだけ込めて変質させられたのは、一リットルのみ。

 変質させた液体の名は、最上のポーションと呼ばれるアルカナム。

 透明な液体の中に、キラキラと輝く粒子が舞っている不思議なポーションだ。

 

 ベテランの稼げる冒険者にもなると、このアルカナムをお守り代わりに一本持つらしいのだが、傷や体力の回復効率はエクストラポーションと変わらないらしい。

 ならばどうしてアルカナムはエクストラよりも一桁値段が高いのかと言うと、神秘の力が宿っているからなのだとか。その神秘が何かは秘匿されているのか、あまりこれと言った成果が無いのかは知らないが、未知のまま。

 

 それでもシゲンは折角だからとアルカナムを作っては果樹達にスプリンクラーのようにしてかけて回った。

 

 それから一時間後。

 ピークが大騒ぎして彼女お気に入りのグミの実を持ってきて見せてきた。

 

「シゲンにぃ! 見て見て! グミがね、キラキラしてるの! なんでかな! 凄いよね!? 全部……って言うか他の果物とかも全部キラキラでね!?」

 

 と言った大興奮具合。

 大分大きくなったが中身はまだまだ子どもらしいピークを抱え上げて果樹の方へと向かうと、ピークが言った通りに木の実や果物はキラキラと輝いていた。

 

 シゲンは好物の桃を一つもぎると、躊躇無く皮ごとシャクリと齧り付く。

 

「シゲンにぃ、大丈夫? キラキラしてるけど、悪い事起きてない? しんどかったら私に言ってね?」

 

 心配してくれるピークには悪いが、シゲンは感動していた。

 桃がめっちゃうめぇ、と。

 そして魔力がバカみたいに回復する! と。

 

 これまでのポーション漬け果物が百や二百の魔力を回復させていたのだとするなら、アルカナムを吸収した果物は一個につき五千近く魔力を回復させてくれたのだ。アルカナム自体に魔力回復効果は無いはずなのだが……果物に宿る事で食物の魔力変換効率も上昇させているのだろうか。

 ピークの持っていたグミの実も毒味させてもらうと、こちらも美味。回復した魔力は五百ほど。

 

 実のサイズによって多少の変動はあるようだが、魔力の回復を促す究極の果物が完成してしまった。

 

 

 シゲンはピークと協力してアルカナムフルーツを多くもぎると、腕一杯に抱えて二つの家の間に作られた広場へと戻る。

 外で揃って昼食を摂る時に使う宴会用のテーブルの上にゴロゴロと果物を転がし、このスペシャルフルーツを皆と分け合った。

 

 人間達は一口齧ると幸福感に酔いしれるようにじっくりと味わって食べ始め、活力が満ち、訓練で減った魔力が回復していく事を感じているようだった。

 

「おにーちゃん! これすごいねぇ!」

 

 ルルがいの一番にシゲンに報告すると、それを皮切りに皆が感想を話し始めた。

 

「この実があれば魔法の訓練し放題だぜ!」

「確かに……デメリットとか無いのかしら。どんなものでも食べ過ぎればお腹は壊すだろうし、一日一個くらいにした方が良いかもね?」

「ニルナルさんだって食べたいんじゃねーのぉ?」

「ウィーク君、君ねぇ。果物ひと齧りで相当回復するんだから、一個も食べれば何度練習出来ると思ってるの?」

「ちぇ〜。へーい」

「ウィーク、我慢できて偉いねぇ」

「ルルに褒められると悲しくなってくらぁ……」

 

 ニルナルの言う事は最もだ。ウィークの気持ちは分かるが、仮にも薬。中毒や耐性が付いた場合にどうなるか分からない。

 シゲンはニルナルに感謝の言葉を耳打ちした。

 

「ひぁぁっ……はい、シゲン様にそう言っていただけて、光栄、ですっ」

 

 耳を赤くして照れ笑いする美人なエルフに顔を綻ばせたシゲンは他の者の様子にも目を向ける。

 

「オルエラ、カルメ、見て! 訓練で出来た打ち身とか擦り傷が無くなった! ですよ!」

「……とにかくうみゃい」

「元気もりもりめりめり。強くなった気がするんじゃぁ〜」

 

 犬娘達がきゃんきゃんと騒いでおり、その奥では母娘が果物を分け合って食べさせ合うと言う微笑ましい光景が生まれていた。

 

 ダンジョン勢にも食べて欲しいと思い、シゲンはグミの実を三つ手に取る。

 

「あっ! ……あ、いや……ごめんなさい、シゲンにぃ。何でもないの……あはは」

 

 シゲンはグミの実とピークを見比べ、彼女の口にあーんをする。

 

「……あ、あーん……もきゅもきゅ……おいひぃれふ。……ちょっと恥ずかしいよぅ」

 

 赤くなったピークの頭を撫でるシゲンの手付きは彼女専用の撫で撫で。

 ピークは髪を撫でるような優しい手付きでぽふっと叩かれるのが好きだ。そしてその後に頬に手を持って行き、優しく顔も撫でられるのも好きだ。

 居ない親の温もりを無意識に求めているのかもしれない。

 

「んぅ……ずるいんだからぁ」

 

 そっと手が離れて名残惜しそうにするピークだったが、シゲンの後ろで凄まじいプレッシャーを滲ませる二人のホムンクルスを見て大人しく引っ込んだ。

 

 シゲンは桃を切り分けると、まずマテリアにあーんをして食べさせる。

 

「ん〜〜! うままぁ!」

 

 どうやらマテリアは美味しいと言う事以外に感じるものは無いようだ。

 次はユニ。彼女の口元に桃を一切れ差し出すと、耳に髪をかけながら小さな口で齧り取る。

 

「んっ! ……なんと言う。美味しいと言う言葉では足りませんね」

 

 ホムンクルスのユニには魔力が回復する感覚は無いようなので、おそらく魔力生成能力の瞬間的活性化でも起きているのかもしれないと考察しつつ、残りの桃もあーんで食べさせる。

 

 モノにはあーんをしてやる意味が無くなったが、シゲンにはあーんをして欲しそうに見えたのでしてあげた。

 

「あーん、でふわ。……んん〜。ユニ先輩の感想に納得と共感の嵐ですわね。激しく同意致しますわ。……けれど一言付け加えさせて頂きましょう。シゲン様、おかわりくださいまし」

「なっ!? ……モノ、貴方」

「ふふん。あーーん。んっふふふ〜。おいひーでふわー!」

 

 胸にぶら下げた巨峰を揺らして笑うモノ。葡萄は植えていないのだが。

 ユニの額に浮かぶ青筋が少し心配なシゲンだった。

 

 暫くフルーツパーティが開かれた後、シゲンは果物を食べながらアルカナムを作り、ダンジョン内を練り歩きながらアルカナムスプリンクラーを放つ。

 すると、ダンジョン中がキラキラと輝くようになった。

 

 

 それから三日後。

 アルカナムエキスが切れたのかダンジョンが元に戻ったのでアルカナムスプリンクラーを追加して回っていると、訓練部屋から人間達が揃って戻ってきた所に遭遇した。

 

「あ、シゲン兄! 聞いてくれよー! なんかすんげえ調子良いって言うか、出来なかった事がすんげえ出来るようになってるって言うかでさあ! 今日の訓練めっちゃたのしかった!」

 

 そりゃ良かったじゃんとシゲンがうんうんと相槌を打ち、汗まみれのウィークの頭をぐりぐりと撫でる。

 

「うっへへ! 汗で汚ねえからちゃんと手ぇ洗えよにーちゃん!」

 

 水魔法でしっかり手を洗ったシゲンは、一番言語化能力の高そうなニルナルを見つめた。

 彼女は少し考え込んで言葉を纏めると簡潔に話し出した。

 

「言ってしまえば、昨日までの限界を超えていたと思います。……本来は毎日継続する事で意味を為す訓練ですが、ここ数日はその効率が凄まじく良くなっていると言うか……。成長速度が跳ね上がっているように感じました」

「それ分かる! ですよ! 身体が思うように動いてくれるの! ざますの!」

「……ざっつらいと。かも」

「ぐんぐんのびのびです。雑魚脱却も夢じゃない!」

 

 犬娘達も同様に変化を感じているようだ。

 ピークもルルも、母娘達でさえ同じく。

 

 一先ず人間達には風呂か水浴びを済ませるように言って別れ、訓練部屋に残っているらしいユニとモノへと会いにいくシゲン。

 

「私達はこれと言った変化はございませんでした」

「ホムンクルスには効果が無いか、魔物には効果が無いのか、或いはダンジョンに関する者には効果が無いのか……アルカナムは未知ですわね」

 

 悪影響は無いかを問うと、二人ともそこは問題ないと言う。

 

 二人にも風呂に入って疲れや凝りを解すように言い、シゲンは玉座の間へと戻った。

 そして聞いた話をマテリアと共有する。

 

「恐らく、成長可能な生物の潜在能力を引き出すのかもしれません。我々ダンジョンに属する者は、任意で進化が可能な代わりに成長と言うものをしません。要は、出来ることしか出来ないのです。限界の突破だとか、これまで出来なかった事が出来るようにはなりません。仮に出来るようになった事がある場合、それは成長では無く使えていない力であったと言うだけ。なので、アルカナムは純粋な生物に作用するのかも、です」

 

 シゲンはマテリアの考察を聞いて、検証項目を一つ増やす。

 

「分かっています。ゴミ穴にも一度撒いてみましょう。もしかすると、さらに魔力回収効率が上がるかもしれませんね」

 

 検証はすぐに行われた。

 気配を殺したシゲンが第六進化体を処理したばかりのゴミ穴に三日に一度アルカナムを撒くことで、キラキラゴミ穴を維持すること一ヶ月。

 無事溜め込み続けた魔力溜まりとゴミによって第六進化体が生まれたのだが、まさかの一箇所に二体同時出現。

 

 スタンピードセンチピードが二体現れ、その巨体に合わない狭い縄張りを築いていた。

 一体は全てを溶かし切って総獲得魔力を確認すると、生まれたばかりにも関わらず四十万を超えた。

 もう一体は下半身を溶かし切って殺し、今回は初めて素材を持ち帰る事にした。

 

 クソデカムカデの大顎、巨大で鋭い無数の脚、堅牢で頑丈な背甲殻。

 これらを使って、人間達に合う装備を作ってみようと言う試みだ。

 お陰で二体目の総獲得魔力は二十万と少しくらいになってしまったが、このくらいなら安いもの。

 

 シゲンは帰る前に、素材を熱湯で煮沸し、内部の要らない肉をゴミ穴にも撒き捨てる。ある程度の殺菌を終えたらゴミ穴を出て、道中で自分含め消臭剤を振り撒きながら玉座の間へと戻ったのだった。

 





多分桃は地上に持ち出すと仙桃とか言われると思う。
市場価値は王侯貴族が言い値で払うと思うので計測不能。
魔力の回復は一気にドパって感じじゃ無くて、胃の中で桃を吸収するたびにじわじわ回復。
ちなみにマスターの消化能力はすごく強い。ドパって感じ。
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