ふたなりヒロインズの『肉便姫』エミリア 作:Guiltylowe
ロズワール邸での生活が始まって三日目。俺はようやく理解した。豪邸ってのは住んでるだけで勝手に生活が回る。飯は出る。部屋は掃除される。服まで洗われる。素晴らしい。最高だ。問題があるとすれば――その全自動豪邸システムを担当している双子のメイドが、ここ数日ずっとエミリアたんを狙っていることくらいだった。
「エミリア様、お召し物をお持ちしました」
「ありがとう、レム」
「バルス、出ていきなさい」
「俺まだ何もしてないよね!?」
「これからエミリア様がお着替えになるのよ。まさか居座るつもり?」
「出てくよ! そこは俺だって弁えてるよ!」
朝。エミリアの寝室。湯浴みを終えたばかりのエミリアは、大きな布を身体へ巻いただけの姿で鏡台の前に座っていた。濡れた銀髪をレムが丁寧に拭き、ラムは今日着る服を寝台へ並べている。ここまでは普通だ。完璧に仕事のできるメイドたちの日常風景である。ここまでは。
「エミリア様。少し失礼いたします」
「うん」
レムが銀髪を拭き終わると、そのままエミリアの肩へ手を置いた。指先が布の縁を整え、妙に丁寧な手つきで胸元へ沿っていく。
「……レム?」
「はい」
「さっきから同じところ三回くらい整えてない?」
「念入りにしております」
「何を!?」
思わず口を挟むと、レムがこちらを見る。その顔はいつもの穏やかな笑顔だ。なのに目だけが俺へ「黙っていてください」と訴えている。
「エミリア様のお身体を預かる以上、万全を期すのはメイドとして当然です」
「その言い方だと健康診断なんだよ!」
「レム。バルスの言うことなど気にしなくていいわ」
「姉様」
「エミリア様のお身体が素晴らしいのは事実だもの」
「ラムまで!?」
さらっと参戦した。ラムは並べていた服から顔を上げ、エミリアを上から下まで一瞥する。顔。胸。腰。布越しにもわかる豊かな尻。そこで一度目を細め、また顔へ戻った。
「エミリア様」
「なあに?」
「少し太りました?」
「えっ!?」
「嘘よ」
「もう、ラムっ!」
エミリアが頬を膨らませる。ラムは平然としていたが、その口元はわずかに上がっていた。
「でも、以前より艶はよくなったわね」
「そうかな?」
「はい。レムもそう思います」
「よかった。最近よく運動してるからかしら」
「その運動の内訳を俺は知ってるぞ!!」
「朝からうるさいわね、バルス」
「こっちは毎回事後だけ見せられてんだよ!」
ラムは鼻で笑い、レムは少し頬を染めた。おい待て。そこで照れる要素あったか?
「エミリア様」
「うん?」
「差し支えなければ……レムにも、その運動のお手伝いをさせていただけませんか?」
「お手伝い!?」
「まあ」
エミリアが目を丸くした。レムは両手を胸の前で重ね、どこまでも真面目な顔をしている。料理でも洗濯でも申し出るような態度だ。
「レム、してみたいの?」
「はい」
「即答!!」
「エミリア様のお役に立てるのであれば、レムは嬉しいです。それに――」
そこでレムが少しだけ視線を逸らした。青い髪の隙間から覗く耳が赤い。
「……エミリア様は、とてもお綺麗ですから」
「レム……」
「なんか空気だけ純愛なんだよなぁ!!」
エミリアは嬉しそうに笑い、レムの手を取った。
「ありがとう。私もレムのこと、すごーく可愛いと思ってたの」
「――っ」
レムが固まった。
効果は抜群だった。
「エミリア様……もう一度お願いしてもよろしいでしょうか」
「可愛い?」
「はい」
「レムはすごーく可愛いわ」
「……姉様。レムは今日、このお屋敷に仕えることができて本当によかったと思います」
「重いわね、レム」
「可愛いって言われただけで人生総括すんな!!」
そこへラムが歩いてきた。浮かれている妹の額を指先で軽く弾き、呆れたようにため息をつく。
「まったく。レムはエミリア様に甘すぎるわ」
「姉様は違うのですか?」
「当然でしょう」
「そうなの?」
エミリアがラムを見上げた。
「ラムは私としたくない?」
「ど直球ぅ!!」
ラムの眉がわずかに動いた。
「……エミリア様」
「うん」
「そういうことを平然と聞くのは、少し慎んだ方がいいと思うわ」
「ごめんなさい」
「したくないとは言っていないわ」
「結局すんのかよ!!」
ラムはエミリアの頬へ手を添えた。レムのような遠慮がない。柔らかな頬を親指で撫で、そのまま少し顔を上向かせる。
「こんな顔で頼まれて断るほど、ラムは意地悪ではないわ」
「姉様……!」
「ただし」
ラムの視線がレムへ向く。
「レム一人に任せるのは不安ね」
「なぜですか、姉様」
「貴女、絶対にエミリア様を甘やかすでしょう」
「当然です」
「断言するな!!」
「だからラムも一緒に行くわ」
「監督者が参加者になるのおかしくない!?」
ラムは俺など存在しないかのように、エミリアへ視線を戻した。
「エミリア様は?」
「私は二人と一緒なら嬉しいよ」
「では決まりね」
「決まるの速ぇ!!」
レムがぱっと表情を明るくする。そのままエミリアの濡れた銀髪をもう一度整え、今度は嬉々として寝台の方へ視線を向けた。
「エミリア様。お身体が冷えてはいけませんので、まず暖かくいたしましょう」
「うん」
「レム、その言い方だけ聞くと完璧なメイドなのが腹立つ!!」
「バルス」
「なんだよ」
「退出」
「はい!!」
ラムが扉を指差す。俺は素直に従った。というか従う以外の選択肢がない。廊下へ押し出される寸前、エミリアが俺へ手を振った。
「スバル、朝ごはん先に食べてていいよ」
「朝飯前に済ませる用事じゃねぇだろ!!」
「少々お時間をいただくかもしれません」
「レムが業務連絡みたいに言うのやめて!?」
「レム」
「はい、姉様」
「扉を閉めなさい」
「かしこまりました」
「連携が完璧!!」
扉が閉まった。
俺は一人、廊下へ残された。
「……これ絶対、着替えより時間かかるだろ」
◆◇◆
扉が閉まると、レムはさっきまでと同じようにエミリアの肩へ手を置いた。湯上がりの白い肌にはまだ薄く水気が残り、銀髪の先から落ちた雫が鎖骨を伝って胸元へ消えていく。普段なら迷いなく世話を続ける手が、今だけはそこで止まった。触れていいと言われているのに、柔らかな肩も、布一枚に包まれた豊かな身体も、意識した途端に別物へ見えてしまったらしい。
「エミリア様……本当にしてもよろしいのでしょうか。先ほどは勢いでお願いしてしまいましたけれど、こうして二人きり……いえ、姉様もおりますが、改めて見ると、その……エミリア様があまりにもお綺麗で……レムの方が緊張してしまいます♥︎」
「いいのよ。レムがしてみたいって言ってくれたの、私も嬉しかったもの。だからそんなに固くならなくて大丈夫。ほら、もっと近くに来て?」
差し出された腕へ引かれるまま、レムがそっと身体を寄せる。胸と胸が触れ、柔らかな膨らみ同士が押し合った瞬間、青い髪の下で耳まで赤く染まった。エミリアはそんな反応を急かさず、首へ腕を回して自分から唇を重ねる。
ちゅっ、と軽く触れて離れる。それだけでレムの肩がびくりと跳ねた。もう一度。今度は少し長く。ちゅ、むちゅ、と唇を重ね、離れかけたところをエミリアが追う。レムはどう返せばいいのかわからないまま、見よう見まねで唇を押し返し、頬へ手を添え、やがて腰まで抱き込んだ。触れ方は拙い。それでもエミリアが小さく息を漏らすたび嬉しそうに力が入り、その反応を確かめたくて、また口づける。
「んぅ……♥︎ ちゅっ……むちゅ……♥︎ レム、そんなに遠慮しなくてもいいのよ……♥︎ ちゃんと気持ちいいから……もっとぎゅってして、好きなようにしてみて……♥︎」
「はい……♥︎ では、もう少しだけ……いえ、もう少しでは足りないかもしれません……♥︎ エミリア様がそんなお声を出してくださるなら、レムは、もっと聞きたくなってしまいます……♥︎」
一度遠慮がほどければそこからは早かった。レムはエミリアの背へ腕を回し、豊かな身体同士を隙間なく密着させる。ちゅっ、ちゅぱ、むちゅ、と口づけを重ねるたび、胸元が潰れ、腹と腹が擦れ、太腿まで触れ合った。湯上がりの熱へレムの体温が重なり、どちらの汗かわからない湿り気が肌へ滲んでいく。
その様子を横から眺めていたラムが、小さく息を吐いた。
「レム。随分楽しそうね。エミリア様をお世話するのではなかったの?」
「姉様もなさいますか?」
「見ているだけでは退屈だもの」
そう言って、ラムは迷いなくエミリアの顎へ指を添えた。レムとは違って躊躇する様子もなく、そのまま唇を奪う。けれど最初の一度だけ、触れた瞬間に呼吸が止まった。ほんの僅かな硬直。それをエミリアに見抜かれるより先に、ラムは自分から深く重ね直した。
むちゅ、と濡れた音が響く。右からレム、左からラム。片方と唇を重ねれば、もう片方が頬や首筋へ触れ、離れればすぐ次の口づけが待っている。エミリアは二人の背へ腕を回し、交互に引き寄せながら、どちらの熱も同じように受け止めた。
「んっ……♥︎ んぅ……ちゅっ……♥︎ はぁ、はぁ……♥ ふたりとも……そんな交代で来られたら、息する暇なくなっちゃうよ……ん♥︎ でも……もっとしてほしい……♥︎」
「エミリア様が望んでいるのだから、レム。遠慮する必要はないわ」
「姉様こそ、さきほどから離れる気がないではありませんか」
「当然でしょう。始めたことを中途半端にする趣味はないもの」
涼しい顔で言い切るラムの胸元も、呼吸に合わせて大きく上下していた。レムはもう隠す気もない。頬を赤くし、息を弾ませ、エミリアの柔らかな身体へ何度も頬を寄せている。
そんなふたりが左右から密着し続ければ、腰元の変化もすぐに隠せなくなった。メイド服越しでもはっきりわかるほど、双子のふたなりのそれは熱を持ち、硬く存在感を増している。どちらも華奢な身体には似合わない規格で、押し当たるたびエミリアの下腹へ重い熱が伝わった。身体だけを見れば十分すぎるほど立派なのに、扱う本人たちは揃って初心だ。レムは触れるたび肩を震わせ、ラムでさえ唇を結んで息を整えようとしている。
「……二人とも、すごーく大きいわ……♥︎ こんなに熱くなってるのに、まだ我慢してたの?」
「レムは……エミリア様に無理をさせたくありませんでしたから。でも、もう……抑えられる自信がありません……♥︎」
「レムは考えすぎなのよ。エミリア様は平気だと言っているでしょう」
「ラムも我慢しなくていいのよ?」
「……エミリア様は本当に余計なところまで見ているわね」
そう言いながら、ラムはエミリアを寝台へ押し倒した。銀髪が枕へ広がり、その両脇へ青と桃色の髪が重なる。エミリアが太腿を寄せ、二人を迎え入れるように股を開けば、それまで残っていた遠慮は完全に消えた。
レムは最後までエミリアの表情を気にしていた。少し声が大きくなれば頬を覗き込み、苦しくないか確かめ、それでも「もっと♥」と言われるたび嬉しそうに応える。対するラムは、平静を装ったまま反応だけを細かく見て、エミリアが弱く息を呑んだ瞬間を逃さず同じところを繰り返す。初心なのは同じでも、性格はそのまま出た。レムは尽くすほど夢中になり、ラムは観察するほど熱を増す。そしてエミリアは、その両方を嬉しそうに受け止めた。
「はぁっ……♥︎ んぅ……レムぅ……ラムぅ……♥︎ 二人とも、すごーく一生懸命……♥︎ 大丈夫だから、もっと……好きにして……?♥︎」
その一言が最後だった。
レムの理性が先に切れた。エミリアへ縋るように抱きつき、何度も口づけを重ねながら、身体を大きく震わせる。ひとたび昂れば、ふたなりの身体が抱えていた量は初心さとは釣り合わない。最初の一度だけでも規格外、それが途切れず何度も続き、熱い子種を吐き出すたびレムの声が甘く崩れていく。
ラムも長くは保たなかった。妹をからかう余裕を残していたはずなのに、エミリアから唇を重ねられ、腰を引き寄せられれば、息が乱れ、肩が震え、やがて同じように何度も大きな熱を放った。
それだけの量を二人分、何度受け止めても、エミリアの身体は重くならない。寝具を汚すほど外へ残ることもなく、すべてが底のない身体へ吸い込まれるように消えていく。頬は赤い。呼吸も荒い。銀髪も汗で肌へ張りついている。それなのに疲労だけはなく、むしろ注がれるたび肌の艶が増し、白い身体が瑞々しく輝いていった。
「はっ……はぁっ……♥︎ エミリア様ぁ……♥︎ レムはもう、こんなに余裕がないのに……どうしてエミリア様はまだそんなにお元気なのですか……♥︎ レムがお世話するつもりでしたのに、これではレムの方がいっぱい可愛がっていただいているみたいです……♥︎」
「んぅ……♥︎ いいのよ……♥︎ レム、頑張ってくれてるもの……すごーく可愛い……♥︎ ラムも、まだ平気な顔しようとしてるけど……本当はもう余裕ないでしょう……?♥︎」
「……余計なお世話よ、エミリア様」
そう返したラムの声は、もう普段ほど冷静ではなかった。エミリアが笑いながら手を伸ばすと、ラムはその指を掴み、今度こそ言葉を封じるように唇を重ねる。レムも反対側から抱きつき、三人の身体がもう一度ぴたりと重なった。
ちゅっ、むちゅ、ちゅぱ、と濡れた音が途切れず続く。最後にはレムは完全にエミリアへ甘える側になり、ラムもそれを笑えないほど呼吸を乱していた。そんな双子を左右から抱いたまま、エミリアだけがまだ楽しそうに、何度でも口づけを返していた。
◆◇◆
結論から言えば、朝食は昼食になりかけた。
「長ぇよ!!」
ようやく開いた扉へ叫ぶ。最初に姿を現したエミリアは、きちんと今日の服へ着替えていた。銀髪も綺麗に梳かされ、服の皺ひとつない。さすがメイド二人がかり。仕事は完璧である。ただし頬は赤く、首筋には薄く汗が残り、肌は朝より明らかにつやつやしていた。どういう美容法だ。
「お待たせ、スバル」
「待ったわ! あとまた肌艶よくなってんじゃねぇか!」
「レムとラムがすごーく丁寧にしてくれたの」
「その感想だけ聞いたら着替えの話にしか聞こえねぇのが罠なんだよ!!」
「エミリア様、お水をどうぞ」
「ありがとう、レム」
すぐ後ろから出てきたレムが、すでに水差しとグラスを用意していた。青い髪は少し乱れ、普段より頬が赤い。それなのに本人は満面の笑みだ。むしろいつも以上にメイド力が上がっている。
「レム、お前元気だな」
「はい。レムは今、とても幸せです」
「聞いてねぇよそこまで!!」
「エミリア様、次はもっと上手にお世話いたしますね」
「うん。またお願いね」
「はい!」
「予約取るな予約!!」
そして最後にラムが出てきた。
こちらは一見いつも通り。背筋も伸びているし、表情も涼しい。だが桃色の髪はいつもより少しだけ崩れ、メイド服の襟元を直す指が妙にゆっくりだった。
「ラム」
「何よ、バルス」
「お前も楽しかった?」
「愚問ね」
「否定しないんだ!?」
「エミリア様のお世話をしただけよ」
「三時間近く!?」
「丁寧な仕事には時間がかかるもの」
「プロ意識で全部押し通す気だこいつ!!」
ラムは澄ました顔のままエミリアへ近づき、少し乱れていた銀髪を指先で直した。その仕草だけは、妙に優しい。
「エミリア様」
「なあに、ラム?」
「次からは、もう少し早い時間になさい」
「どうして?」
「朝食が遅れるでしょう」
「そこ!?」
「それと」
ラムが一拍置く。
「今度はレムにばかり構わないこと」
「姉様!?」
「お前も甘やかされたい側だったのかよ!!」
ラムの頬がほんのわずかに赤くなる。
「黙りなさい、バルス」
「はい!!」
エミリアが楽しそうに笑い、左右から双子の腕を取った。
「じゃあ次は、ちゃんと二人とも同じくらいね」
「エミリア様……!」
「……仕方のない方ね」
「もう次回開催が確定してる!!」
三人はそのまま食堂へ歩き始めた。レムはエミリアの右側にぴったり付き、ラムは左側。さっきまで主人と使用人だったはずなのに、距離感だけ見れば妙に仲のいい三人組である。
「エミリア様、朝食はレムが取り分けますね」
「ではラムは飲み物を用意するわ」
「ありがとう、二人とも」
「事後にメイド性能上がってんじゃねぇか!!」
誰も俺へ反応しなかった。
その日から。
エミリアの朝の身支度は、なぜかレムとラムの二人が同時に担当するようになった。
「人員配置の理由が不純すぎるだろ!!」
――こうしてロズワール邸では、朝の身支度は三人体制が恒例になった。