ふたなりヒロインズの『肉便姫』エミリア 作:Guiltylowe
ロズワール邸には、何度扉を開けても辿り着けない部屋がある。屋敷中の扉を好き勝手に渡り歩き、開けた先を自分の部屋へ繋げる陰魔法――扉渡り。その向こうにあるのが禁書庫であり、そこに住んでいるのが、成人した姿を持つ人工精霊ベアトリスだ。そして今日、俺は朝から十七枚目の扉を開けて、ようやくその禁書庫を引き当てた。
「見つけたぁ!!」
「うるさいのよ」
扉の向こうには、壁一面を埋め尽くす本棚と、その中央で分厚い本を読む縦ロールの少女――もとい、この世界では立派な成人女性であるベアトリスがいた。見た目こそ小柄だが、その態度だけなら屋敷の誰よりでかい。
「朝っぱらから何枚扉外させりゃ気が済むんだよ!」
「勝手にベティーを探し回ったお前が悪いかしら」
「エミリアたんが話したいって言うから連れてきたんだよ!」
「エミリア?」
そこで初めて、ベアトリスが本から顔を上げた。俺の後ろからひょこっと顔を出したエミリアを見る。
「おはよう、ベアトリス」
「……何の用かしら」
「会いに来たの」
「帰るのよ」
「早ぇ!!」
即答だった。
「まだ何も話してないよ?」
「話すことなんてないかしら」
「でも私、ベアトリスと仲良くなりたいの」
「ベティーは別になりたくないのよ」
「そうなの?」
「そうかしら」
突っぱねる。徹底して突っぱねる。なのに扉は閉めない。それどころか、エミリアが一歩中へ入っても追い出さない。その時点で俺にはなんとなくわかった。
「ベアトリス、お前エミリアたんのこと嫌いじゃねぇだろ」
「黙るのよ」
「図星じゃん」
「今すぐ廊下に放り出してやってもいいかしら」
「俺だけ!?」
ベアトリスの視線が俺からエミリアへ戻る。エミリアは楽しそうに笑いながら禁書庫を見回していた。
「すごいのね。こんなにたくさん本がある」
「触るんじゃないのよ」
「わかったわ」
「勝手に読むのもダメかしら」
「うん」
「棚の順番も変えるんじゃないのよ」
「わかった」
「……」
「……」
「素直すぎて調子狂ってんじゃん」
「お前は本当に黙るのよ!」
エミリアがくすくす笑う。ベアトリスは不機嫌そうに頬を膨らませ、それから本へ目を戻した。――戻したはずなのだが、数秒もしないうちにまたエミリアを見る。
「……お前、最近よく双子のメイドと一緒にいるかしら」
「うん」
ベアトリスは俺を無視して、本を閉じた。ぱたん、と乾いた音が禁書庫へ響く。
「随分楽しそうなのよ」
「楽しいわよ」
「そうかしら」
「ベアトリスも一緒にする?」
「何を!?」
俺が叫ぶ。
ベアトリスは叫ばなかった。
「……随分と節操がないのよ」
「嫌だった?」
「嫌とは言ってないかしら」
「ベアトリスもそのパターンかぁ!!」
ベアトリスが椅子から降りる。エミリアの前まで歩いてくると、腕を組んで見上げた。いかにも不満そうだ。
「ベティーは、あの双子なんかとは違うのよ」
「うん」
「一緒にされるのは心外かしら。だから」
一度、言葉が止まる。ベアトリスの視線が少しだけ逸れた。
「ベティーを選ぶなら、ちゃんとベティーを選ぶのよ」
エミリアが瞬きをした。
「どういうこと?」
「わからないのかしら?」
「うん」
「こいつ真正面から聞くから逃げ道ねぇぞ、ベアトリス」
「お前は黙っているのよ!」
顔が赤い。
完全に照れている。
それでもベアトリスは逃げなかった。小さく息を吐いてから、エミリアの手を取る。
「ここはベティーの禁書庫なのよ。ベティーが選んだ相手しか入れないかしら」
「私、入っていいの?」
「もう入っているかしら」
「そっか」
「だから笑うんじゃないのよ」
「だって嬉しいんだもの」
「……本当に調子の狂う女かしら」
文句を言いながら、その手は離さない。むしろエミリアの指へ自分の指を絡める。
「ねえ、ベアトリス」
「何かしら」
「私のこと、好き?」
「嫌いではないのよ」
「好き?」
「しつこいかしら」
「好き?」
「……」
「逃がさねぇなエミリアたん!!」
ベアトリスがとうとう顔を背けた。
「……少しくらいなら、気にかけてやってもいいのよ」
「ほんと?」
「少しだけかしら」
「やった」
エミリアが嬉しそうに両手でベアトリスの手を包む。その瞬間、ベアトリスの肩がわずかに跳ねた。
「じゃあ私も、ベアトリスのこともっと知りたいな」
「……」
「いっぱいお話しして、一緒に本を読んで、それから――」
エミリアが少し身を屈め、ベアトリスへ顔を寄せる。
「もっと仲良くなりたい」
「距離が近いのよ」
「嫌?」
「嫌ならとっくに飛ばしているかしら」
「確かに!!」
ベアトリスなら俺だったら三秒で吹き飛ばしている。なのにエミリアには何もしない。それどころか、顔を寄せられても一歩も引かなかった。
「エミリア」
「なあに?」
「一つ、条件があるのよ」
「なに?」
「他の連中と同じ扱いは嫌かしら」
「同じにはしないわ」
「……本当かしら」
「だってベアトリスはベアトリスでしょう?」
その言葉に、ベアトリスが黙った。
さっきまでの強気な顔が、ほんの一瞬だけ崩れる。
「フェルトとも、エルザとも、レムともラムとも違うよ。だからベアトリスとは、ベアトリスとしかできない仲良しになりたい」
「エミリアたん、そういう無自覚クリティカルやめたげて! ベアトリス今めちゃくちゃ刺さってるから!」
「うるさいのよ!!」
今度こそ俺が吹き飛ばされた。
「ぐおっ!」
禁書庫の外へ転がり出る。慌てて身体を起こすと、まだ扉は開いていた。
「俺だけ退場させるの早くない!?」
「お前は邪魔かしら」
「認めやがった!!」
ベアトリスは俺を睨んでから、再びエミリアを見る。
「エミリア」
「うん」
「ベティーと契約する気はあるかしら」
「契約?」
「そうなのよ。ベティーが選んで、お前もベティーを選ぶ。それなら、他の連中とは違うでしょう」
「うん。すごーく特別」
「……そうかしら」
口元が緩んだ。
ほんの少しだけ。
「じゃあ契約する」
「軽っ!? 精霊契約ってもっとこう人生を左右する重大イベントじゃないの!?」
「ベティーは軽く言ってないのよ」
「エミリアたんが軽いの!」
「だってベアトリスが私を選んでくれるんでしょう?」
エミリアは当然みたいに言った。
「だったら、私も選びたい」
「……」
ベアトリスはしばらく何も言わなかった。それからエミリアの手を自分の胸元へ引き寄せる。
「後悔しても知らないかしら」
「しないわ」
「ベティーは面倒なのよ」
「知ってる」
「我儘も言うかしら」
「いいよ」
「独占だってするのよ」
「うん」
「……少しくらいは、ベティーだけを見ろって言うかもしれないかしら」
「その時はいっぱい見るね」
「何だこのプロポーズ!!」
ベアトリスの顔が真っ赤になった。
「扉を閉めるのよ」
「俺が!?」
「早くするかしら」
「はいはい! 契約の邪魔しませんよ!」
「それと」
「ん?」
「しばらく開けるんじゃないのよ」
俺の手が止まった。
「……どのくらい?」
「ベティーがいいと言うまでかしら」
「契約にそんな時間かかる!?」
「スバル」
エミリアまで笑顔で俺を見る。
「閉めて?」
「はい!!」
扉を閉める寸前、俺は見た。
エミリアがベアトリスを抱き寄せる。
ベアトリスは一瞬だけ驚いた顔をして、それからエミリアの服を掴み、自分から身体を寄せ返した。
「……ちゃんとベティーを選ぶのよ」
「うん。今日はベアトリスだけ」
「――それならいいかしら」
俺は静かに扉を閉めた。
「……契約って、そういう契約だったっけ?」
◆◇◆
扉が閉まると、禁書庫は急に静かになった。ついさっきまでスバルの声が響いていたせいで、余計に二人きりになったことが際立つ。エミリアに抱き寄せられたままのベアトリスは、しばらくその胸元へ額を寄せていたが、やがて服を掴んでいた指へ少しだけ力を込めた。
「……さっき言ったこと、忘れるんじゃないのよ。今日はベティーだけを見るかしら。盗人でも、殺し屋でも、あの双子でもなくて……ベティーを選んだんだから、途中で他の誰かのことなんて考えるのは許さないのよ」
「うん。今日はベアトリスだけ。ちゃんとずっと見てるよ」
それだけで、頬を赤くしていたベアトリスの表情がほんの少し緩んだ。満足したらしい。それでも素直に喜ぶ代わりに小さく鼻を鳴らし、今度は自分からエミリアの腰へ腕を回す。
「当然かしら。契約というのは、それくらい重いものなのよ」
「じゃあ、キスも契約に入ってる?」
「……そんなもの、契約に入ってるわけないかしら」
「しないの?」
「しないとは言ってないのよ」
言い切ってから、ベアトリスはエミリアの頬へ手を添えた。迷いのない手つきだった。少なくとも、唇が触れる直前までは。ちゅ、と柔らかく重なった瞬間、その肩がぴたりと固まる。触れたまま動かない。
エミリアが目を開けると、至近距離でベアトリスの睫毛が震えていた。
「……ベアトリス?」
「喋るんじゃないのよ。知識くらいベティーにもあるかしら。口づけ程度、禁書庫の本にいくらでも――んぅっ……♥︎」
最後まで言わせず、今度はエミリアから唇を重ねた。ちゅっ、と一度。離れかけたところをもう一度追い、むちゅ、と少し長く吸い付く。豊富な知識とは裏腹に、ベアトリスの身体は正直だった。二度目にはもう呼吸が揺れ、三度目にはエミリアの背中を掴み、四度目には自分から顔を寄せている。唇の重ね方も、息を継ぐ間もまだ不器用で、知っていることを一つずつ身体で確かめているようだった。
「んぅ……♥︎ ちゅ……むちゅっ……♥︎ ふふ、ベアトリス、知ってるのに慣れてないのね……♥︎」
「う、うるさいかしら……っ♥︎ 知識と実践が別物なのは当然なのよ。だから……その、勝手に離れるんじゃないかしら。まだベティーが確かめ終わってないのよ……♥︎」
そう言ってまた唇を求めてくる。
今度は長かった。ちゅっ、ちゅぱ、むちゅ、と濡れた音を重ねながら、ベアトリスはエミリアの首へ腕を絡ませる。小柄な身体を隙間なく押しつければ、豊かな胸元へ頬が触れ、柔らかな腹と細い腰までぴたりと重なる。エミリアもその背中を抱き返し、縦ロールを崩さないよう最初は優しく撫でていたが、何度も口づけを求められるうちに指が髪の奥まで入り込んだ。
ベアトリスは負けじと深く求める。けれど経験の差までは知識で埋まらない。自分から仕掛けたはずなのに、息を乱し、頬を赤くし、いつしかエミリアへ縋るように身体を寄せていた。
「はぁっ……んぅ……♥︎ なんでお前はまだそんなに平気そうなのよ……♥︎ ベティーがしているのに、ベティーの方ばかりおかしくなるのは理屈に合わないかしら……♥︎」
「私も平気なわけじゃないのよ……♥︎ ほら、こんなにどきどきしてるもの。でも、ベアトリスが一生懸命なの、すごーく可愛いから……もっとしてほしいな……♥︎」
「……可愛いで誤魔化すんじゃないのよ♥︎」
文句を言う声に力はなかった。むしろ褒められたことが嬉しかったのか、抱き締める腕が一段強くなる。そうして全身を重ね続ければ、もう一つの変化も隠しようがなかった。人工精霊であるベアトリスの腰元では、ふたなりのそれがすっかり硬さをもっていた。小柄で端正な身体との落差が大きい、明らかに持て余すほど立派な性器だった。
衣服越しにエミリアへ触れた瞬間、ベアトリスの身体がびくっと跳ねる。
今まで以上に顔が赤くなった。
「……見るんじゃないかしら」
「でも、ベアトリスのよ?」
「だから恥ずかしいのよ……っ♥︎ こんなの、本には大きさの個人差があるとしか書いてなかったかしら。ベティーだって、自分がこんなに……その……なるなんて、知らなかったのよ……♥︎」
「私は好きよ。ベアトリスらしくて」
「どこがベティーらしいのよ……♥︎」
言い返しながらも、もう腰は引かなかった。むしろエミリアの言葉を信じるように、ゆっくりと身体を寄せてくる。エミリアはそんな初心さごと包み込むように腕を回し、白い身体を預けた。
「大丈夫。ベアトリスだから、ちゃんと全部受け止めたいの。契約したでしょう?」
「……そうなのよ。なら、お前も覚悟するかしら。ベティーは契約に関してだけは絶対に譲らないのよ。ベティーがお前を選んだんだから……お前も今は、ベティーだけを見ているのよ♥︎」
「うん。今はベアトリスしか見てないよ♥︎」
その一言で、最後に残っていた遠慮が消えた。
ベアトリスはエミリアを抱き寄せ、そのまま寝台代わりの長椅子へ身体を重ねる。銀髪が背へ広がり、その上へ金色の縦ロールが零れた。唇は一度も長く離れない。ちゅっ、むちゅ、ちゅぱ、と息を交換するように口づけながら、触れるところすべてを確かめるように抱き締める。
最初こそ本で得た知識を思い出そうとしていたベアトリスも、すぐにそんな余裕をなくした。エミリアが身体を震わせれば嬉しくなり、甘い声を漏らせばもっと聞きたくなり、抱き締め返されれば自分まで熱くなる。理論も手順も吹き飛び、最後にはただ夢中で求めていた。
「んっ……♥︎ ベアトリスぅ……すごい……♥︎ はぁっ……もっと、ぎゅってして……♥︎ キスもやめないで……っ♥︎」
「言われなくても離さないかしら……っ♥︎ んぅ……むちゅっ……♥︎ お前はベティーの契約者なんだから……今日は最後まで、ベティーに付き合うのよ……♥︎」
やがてベアトリスの身体が大きく震えた。
一度きりでは終わらない。人工精霊であろうと、この世界でふたなりの身体を持つ以上、その規格外の熱は例外ではなかった。むしろ四百年の間溜め込んでいたものを一気に解放するように、最初から尋常ではない量を吐き出し、それでも身体は簡単には鎮まらない。二度、三度と熱が高まるたび、ベアトリスの余裕は消えていった。
知識ならあった。どうなるかも知っていた。けれど、自分の身体がこれほど強く震え、息も声も制御できなくなることまでは、本には書いていなかった。
それだけの量を何度受け止めても、エミリアは苦しそうにしない。身体も重くならず、寝具へ溢れるほど外へ残ることもない。すべてが底のない内側へ消えていき、むしろ白い肌は熱を吸収するほど艶を増していく。
「はぁっ……はぁっ……♥︎ お、おかしいのよ……♥︎ これだけベティーがしてるのに、どうしてお前の方が元気になっていくのかしら……♥︎ ベティーはもう、頭までふわふわして……なのに、お前はまだそんな顔で……♥︎」
「んぅ……♥︎ だって気持ちいいんだもの……♥︎ それに、ベアトリスがいっぱいくれるから、なんだかどんどん元気になるの……♥︎」
「……本当に、とんでもない契約者を選んだかしら♥︎」
そう言いながらも、その声はどこか嬉しそうだった。最後にはベアトリスも長椅子から起き上がり、大きな椅子へ身体を預けた。フェルトのように立てないほどではない。それでも頬は真っ赤で、縦ロールは少し崩れ、息も完全には整っていない。
エミリアが隣へ腰を下ろすと、ベアトリスは何も言わず、その手を取った。
指と指を絡め、きゅっと握る。
「……しばらく、このままでいるのよ。契約したばかりなんだから、すぐ離れるなんて許さないかしら」
「うん。私もまだ離れたくない」
「なら、それでいいのよ」
ベアトリスはそう言って、最後までエミリアの手を離さなかった。
◆◇◆
それからしばらくして、俺は廊下の壁にもたれて欠伸をしていた。
「長ぇ」
待てど暮らせど開かない。試しに別の扉を開けてみても、当然禁書庫には繋がらない。
「完全に締め出されてんじゃねぇか俺」
さらに時間が経ち、何気なく近くの扉へ手をかけた瞬間――今度は向こう側から勝手に開いた。
「うおっ!?」
禁書庫だった。
そして最初に出てきたエミリアを見て、俺は納得した。
「あ、終わったんだ」
「うん」
銀髪はかなり乱れ、頬は火照り、額には薄く汗が滲んでいる。服も一応整ってはいるが、どう見てもさっきまで本を読んでいた人間の仕上がりではない。それでもエミリアは幸せそうに微笑んでいた。
「また肌艶上がってんなぁ……」
「ベアトリス、すごかったよ」
「何がとは絶対聞かねぇからな!!」
「ベティーを妙な評価の仕方するんじゃないのよ!」
その声に禁書庫の中を見る。
ベアトリスは大きな椅子へ座っていた。
いつもの縦ロールは少し崩れ、頬はまだ赤い。服を整えた形跡もある。それでもフェルトのように腰砕けでもなければ、レムのように浮かれてもいない。
ただ。
「……なんでエミリアたんの手握ったままなの?」
「契約者なんだから当然かしら」
「契約した途端に距離ゼロ!!」
「何か文句があるのかしら?」
「ないけど! お前さっきまで『帰るのよ』って言ってたじゃん!」
「あれはさっきの話かしら」
「切り替えが早ぇ!!」
エミリアがくすくす笑いながら、繋いだ手を軽く揺らす。
「ベアトリス」
「何かしら」
「また禁書庫に来てもいい?」
「……契約者にいちいち許可を取らせるほど、ベティーは狭量じゃないのよ」
「毎日でも?」
「好きにするかしら」
「一緒に寝てもいいの?」
「――っ」
ベアトリスの顔が一気に赤くなった。
「そ、それとこれとは話が別なのよ!」
「嫌?」
「嫌とは言ってないかしら!」
「はい出ましたぁ!! 本日二回目の『嫌とは言ってない』!!」
「お前は黙るのよ!!」
「ぐえっ!」
また陰魔法で額を弾かれた。
エミリアは笑っている。
ベアトリスは真っ赤な顔でそっぽを向いている。
ただし、手だけは絶対に離さない。
「ねえ、ベアトリス」
「何かしら」
「契約してくれてありがとう」
「……ベティーが選んだんだから、当然なのよ」
「うん。私も選んだよ」
「……」
ベアトリスはしばらく黙り、それからエミリアの腕へ少しだけ身体を寄せた。
「なら、ちゃんと最後まで責任を取るかしら」
「もちろん」
「責任って言葉の意味が急に重くなった!!」
こうして。
エミリアは禁書庫の司書まで攻略した。
しかも今回は、身体だけではない。
精霊契約まで付いてきた。
「一人落とすたびに戦力増えてんの、王選攻略として合理的すぎるだろ!!」
「落とすって言うんじゃないのよ」
「じゃあなんて言えばいいんだよ!」
ベアトリスはエミリアの腕へ抱きつきながら、ふん、と鼻を鳴らした。
「ベティーが選んだだけかしら」
こうしてエミリアは、禁書庫の扉だけでなく、その主の心まであっさり開いてしまった。