元凶
正月休み、外は豪雪、宿題なんて特にやる気が起きない、かと言って外で遊ぶような気力なんて小学生時代に卒業した。
そんな中、三軒隣り合った幼馴染達が真ん中の家、美香の家に集まってぐだぐだしようとなったのは特段不思議でもない。
炬燵の設置された和室。美香の性格からして散らかしているわけもなく、見かけ上は綺麗にまとまった部屋である。
であるのだが今日に限って、いや今日に限った訳ではないのかもしれないが、とにかく今日に限ってやらかしたのである。
「さーむさむさむさむっ!」
「んなアホな格好してるからでしょ」
「着込んでも寒いものは寒い……」
詠子。
派手な少女である。
カーディガンとマフラーは着ているものの、豊かなものを持っている訳でもないのに胸元を大きく開け、ミニスカートと靴下の間からは十代特有の眩さを保ったむっちりとした太ももが覗いている。
露出が多いその肌は冬だというのに褐色に染まっているが、それは焼いた訳ではなく遠い祖先に海外の血が混ざっているためである。
なおその一方で茶色の頭髪は地毛ではなく染めている。校則違反なほどに明るい頭髪ではあるのだが本人曰く、
「これがあたしの一番似合うファッションなの」
とのこと。
なお、そのファッションのせいで極限まで体を冷やしているアホである。
美香。
エアコンヒーターをガンガンに効かせた室内にいるためか、ドルフィンパンツを始めとしたゆったりした部屋着を着ている少女。
中肉中背、足の太さは中くらい、胸の大きさも中くらい、髪の毛も肩にかかるくらいの中くらいの量、成績も中くらい、なんでもかんでも中くらいだがお尻が大きめなのを気にしている何処にでもいる少女である。
詠子と比べれば地味にも程があると評判であるのだが本人曰く、
「平均的JKとは私の事で、は、はぁ⁉ ケツデカじゃねーし!」
とのこと。
なお、一番平均的でない事をやらかした張本人である。
椎奈。
無表情、口数が少ない、読書好き、腰元まで届くほどの黒髪ロングと、図書館にでもいれば深窓の令嬢と間違えられてもおかしくない美少女。
制服の上からでも分かるその豊満な胸部と相まって、同級生の男共からお近付きになりたい女子ナンバーワンにランクインしているのだが、その実は喋る事が面倒なだけのナマケモノであるし、彼女が日頃読んでいるのはただのBL小説であるのだが本人曰く、
「…………BLも、良いよ」
とのこと。
全校生徒の中でも際立つほどの美少女であるがとんだ残念キャラである。
生まれた頃から一緒で、部活動も特にやっていないため登下校も大概一緒。
そんな三人が休みの日に集まったところで何をやる訳でもない。暇だったから、特にやる事もないから、とりあえず真ん中の美香の家に集まった。ただそれだけだった。
いつも通りに実の無い話で盛り上がったり、いつも通りに適当なゲームでもしたり、渋々宿題を一緒にしたり、そういう事をする筈だった。
だったのだ。
美香が後片付けを怠ったり、詠子が余計なモノを見つけたり、椎奈が変な事を言わなければ、平和な今日が過ごせていた筈なのだ。
「あれ、炬燵の中になんかあ、った……おぉぅ」
元凶は詠子である。ここで見つけなければ事件は起こらなかった。
炬燵に入れた足先に何かが触れ、取り出してしまった。
ソレは、おそらくシリコン製であろう球状のものが連なっており、持ち手である根本に向かうにつれて大きさが増していき、柄の部分は円形になっており指等を引っ掛けやすい形をしている。情報社会の躍進により、未成年の彼女でもそれが何に使われているのか、何を目的として作られたモノなのかは一目で分かってしまった。
菊門を掘削する事により性的快感を得る事に特化した玩具である。
つまり、所謂アナルビーズである。
「あー? ……あ゛」
元凶は美香である。そもそも使ったモノをちゃんと片付けておけば事件は起こらなかった。
ここで笑い飛ばしていれば恥ずかしいものを見られはしたものの、冗談で済ませられる筈だった。もしくは問答無用で取り返し、無かった事にも出来たかもしれない。
しかし、ヤバいものを見られた、自分のモノです、はい私が使ってました。という、たった一文字に込められた思いは残りの二人にしかと伝わってしまった。
「…………へぇ」
元凶は椎奈である。ここで興味を持たなければ事件は起こらなかった。
美香はこんなものを使って一人で致しているのか。明確な意図をもったその声は残りの二人にも伝播してしまった。
この時点で既に三人それぞれがコレの用途を理解しているのは明白であり、それぞれがそれなりに自慰経験がある事はなんとなく察せられた。そもそも高校生にもなってそういった経験が無いなど言わせない。
その上で、興味を抱いてしまった。コレをどう使うのか、そもそも皆はどうやって致しているのか。
だからだろう。
「その、どう、やってるの?」
後に引けない事態になってしまったのだ。
「見なかった事にしてってのは、ナシ?」
それでも美香は抗おうとするが、ここに居るのは気心の知れた三人。
「やーインパクト強すぎて無理っつーか?」
「興味深い」
多数決により無駄な抵抗と一蹴される。自分の部屋であるから逃げ道も無く、この空気が逃げる事を許さなかった。
「よーし今日の議題はオナニーだ」
そうして、無慈悲な、頭の悪い決定が下された。
「えぇぇ……いや、いやいやいやいやいや」
「あたしも普段どうやってるか言うからさー。ほら、椎奈も珍しく乗り気だし」
「……他人のやり方には、元々少し興味があったから、歓迎」
「うぐ、そりゃ私も興味あるけど……」
尚も乗り気ではない様子を見せる美香であったが、そこは年頃の少女。性的なものに興味深々なお年頃である。言葉とは裏腹に少しずつ暴露大会に気持ちが傾き始める。
そう、
「うー……ま、まぁ詠子から話すなら良いよ」
「何であたしからなの⁉」
「……言い出しっぺの法則」
世界で定まっている法則である。そこに反論は許されない。
「それにほら、いつものABCの順番的に」
「うーわ出た出た、あたしがいつも得しないやつー」
詠子の言う通り、貧乏くじを引かされる事は確かに多かったが、お菓子を選ぶ際の優先権等で得をする事は案外ある。
が、今回は紛れもなく貧乏くじである。
「……大丈夫、皆やってることなんだから。今ここで全て詳らかにしてしまおう」
「こんな時ばっか饒舌になんなや椎奈さんや」
既に諦めている詠子であるが、無表情でとんでもない事を言い出した椎奈に思うところはある様子。
「まぁ? 大トリの椎奈さんには期待するとして?」
「任せて」
「マジかよ」
「うっそでしょ」
皮肉さえ通じないどころか期待しろとばかりに切り返す椎奈。アブノーマルを自覚する美香ですら驚愕の声を挙げる。
「……さ、詠子。始めて?」
こうして、オナニー談義が始まった。