学校が休みの週末。帰宅部以外すら三年生は部活引退済み。宿題などやっている暇があるなら受験勉強。だがそもそも外出する習慣はほとんど無い。つまり引き籠もりになるのは自明の理。
だからこそ、三軒隣り合った幼馴染達が真ん中の家、美香の家に集まるのが定番であった。
急激に気温が上昇し始めた初夏。
三人とも受験勉強が本格化してきて、なおかつそろそろ進路を定めなければならない頃合。
……なのだが、詠子と美香はひたすら冷ややかな視線を椎奈に向けていた。
詠子。
暖かくなってきた影響か思う存分に肌を出せると最近喜んでおり、オフショルTシャツにデニムミニと、なんとまぁ小麦色が眩しい。
この間、椎奈を犯した。無論、美香には秘密にしてある。
美香。
暖かいというか暑い一歩手前、エアコンをつけるには微妙な気温。それ故に少しでも涼しくなろうと、タンクトップにハーフパンツといった部屋着まる出しの格好。
この間、椎奈から犯された。無論、詠子には秘密にしてある。
椎奈。
ノースリーブワンピース。
この間、犯されたり犯したりホクホクである。
「ふんす」
そんな視線を一身に受け、椎奈はドヤ顔をかましていた。
「バカじゃねーの?」
「剥がせバカ」
なので詠子と美香はついにツッコミをいれた。
というか今までずっとツッコみたくてうずうずしていた。
……なにせ椎奈、美香の部屋に入ってくるなりウッキウキで入口に、
『セックスしないと出られない部屋』
と書かれた張り紙を、バーン!と貼り付けたのである。
「セックスしよ」
そしてコレである。二人のツッコミを物ともしていない。
「ここはこれからそういう部屋」
そして背後をビシッと指差す椎奈。
つまりそれは、生きて帰さないという意思表示に他ならない。
「勝手に人んちをいかがわしい部屋にするんじゃない」
が、部屋主が至極真っ当なツッコミをいれた。そりゃそうである。
そもそも椎奈をねじ伏せれば自由に出入り出来る。ちなみに椎奈はへなちょこである。
「オナニー談義とか毎日いかがわしいことしてるのに?」
「うっさいなー」
が、なんとも痛いところを突かれた。
そう。この部屋は座談会のメイン会場であり、美香の自室であるが故のオナニー会場である。
よって、いかがわしい爆心地であるのは否めなかった。
「しかもこの間セッ」
「しいいいいいなああああああああ? ちょおおっと黙ろっかあああああ?」
しかも無動作で爆弾が落とされた。
「え、なに」
無論、美香の急激な反応に詠子はキョトンとする。
「なんでもない」
「いやなんでもなくないだろ……」
「なんでもないったら」
「えぇぇ……?」
無論、美香は頑なに何も無かったと主張する。
「いやだって……どう考えたってセックスって言いかけ……」
そして無論、
「……え、この間セックスしたの?」
正答に辿り着いた。頭が良いのも考え物である。
「……え、しかもその反応、もしかして、美香がシたんじゃなくて、サれたの?」
そして、超正答を導き出した。頭が良いのも超考え物である。
「…………」
「……マジ?」
無論、美香は無言。
今日は天気が良いなーとか考えている。
「サれたっておま……あたしでさえなんでもない」
「あたしでさえって何⁉︎」
「ナンデモナイ」
そして詠子は墓穴を掘った。
「詠子あんたまさか……ヤった⁉︎」
なので、当然の如く追求された。
「う、うん」
「マジか」
ので、隠しても仕方ないと判断した詠子は素直に頷いた。
「詠子からセックスしてもらったし、美香とセックスした」
「言いやがったし」
「言いおったこの女」
そして全てを元凶がぶち壊した。隠すという概念が無いらしい。
「だから今度は3Pしたい」
「欲の塊か……?」
「とどまる事を知って?」
あまりのマイペース度合いに詠子と美香は震え上がる。
故に、椎奈は構わず続ける。
「……だって、結局返事もらってない」
「む」
「う」
だがその続けられた言葉は思いのほか強烈だった。
そう。椎奈は例の告白の時と、セックスの時、二度にわたりそれぞれに告白している。
しかし二人はそれに対しなぁなぁでやり過ごし、セックスするだけして何も返していない。
そしてこの反応。
二人は忘れていたわけではないのである。
単にその現実から、椎奈の告白から逃げていただけなのである。
「だからせめて3Pして」
「……ぅ」
「ぁー……」
故に、そう迫られると非常に弱い。
いつもの何を考えているのか分からない感情に乏しい表情が、心なしか寂しげな表情に見えてきてしまう。
椎奈の背後にある、セックスしないと出られない部屋、という文字がやたら気になってくる。
だからせめて、という言葉が非常に切なく聞こえてしまう。
目配せし合う詠子と美香。
一瞬の内に圧縮言語が飛び交う。
視線が相手と椎奈の間を往復する。
だから、溜息を吐いたのは同時だった。