※この作品はR-18です。

陽炎の揺らめき   作:天木武

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罠 その3

◆

 

 

『弱い弱い、弱すぎー! ねえねえねえ、今の対魔忍ってこんな腑抜けしか残ってないわけ? ちょーっと私がその気になるだけで、腕が飛んで足が飛んで首が飛んで! 一瞬で血の海の出来上がりーって! アハハ!』

『あなたが強すぎるのよ。さすがは私の右腕ね。素晴らしい活躍ぶりだわ。……でも喜ぶのは早いわよ。まだ1匹、活きがいいのが残ってるじゃない』

『ああ……。近頃台頭してきたと噂のエースさんか。確かにこんな雑魚共よりは、少しは骨があるかもね。……いいわ、来なよ。私の風の刃で、あんたもすぐにズタズタに斬り裂いてやるからさあ!』

 

 

 

◇

 

 

 空遁の術によって廃工場から脱出した陽炎は、アスカを抱えたままメインの道路を避け、廃工場の周囲を囲む林の中を進んでいた。だがその息が荒い。救出のために侵入する前から空遁の術を何度か使用した上に、さらに離脱のために既に3度連続で使っている。身体に相当の負担がかかっていることは容易に想像できた。

 

「ちょっと、説明してよ! なんであんたが私を助けるわけ!? そもそもあの朧は!? あいつは私が確かに殺したはずなのに!」

「黙って。私達を探し回ってる連中に勘付かれる」

「それもよ! 状況が全然わかんない。あいつが緊急停止コードを知ってるのもわかんないし……もうなんなのよ!」

 

 アスカが喚いた直後、「いたぞ!」という男の声が聞こえてきた。舌打ちをこぼし、遠くを見つめた後、陽炎は印を結ぶ。

 次の瞬間には、同じ林の中でありつつも景色は変わっていた。が、走り出そうとした陽炎の膝が折れる。肩を激しく上下させ、唯一覗く目は苦痛に歪められていた。

 

「あんた、もうこれ以上……」

 

 話そうとしたアスカの口元に掌が被さる。

 

「ハァ……ハァ……。声の……ボリュームを落として……。わかった……。そこまで言うなら……息が整うまで答えられる範囲で答えてあげるから」

 

 切れ切れの言葉を紡いでから木の陰に座り込み、陽炎はアスカの口を塞いでいた手をどかした。それから覆面を脱いで鼻と口を露出させ、荒々しい呼吸を少しでも整えようとする。ゆきかぜによく似たその顔の全貌が露わとなり、アスカは目を見開いた。

 

「その顔……! いえ、それよりもまずはこの状況よ。何がどうなってるの?」

「朧は……あなたを捕らえるために罠を張ったのよ……。ここにおびき出し……イングリッドと戦わせてそちらに気を取られているうちに逃げられないように包囲した……」

「じゃあメールの差出人はやっぱり朧……。あんたじゃないのね?」

 

 すぐに答えは無かった。しばらくぜえぜえと肩を震わせてから、ようやく返ってくる。

 

「私はそんなことはしてない……。私がここに来たのは……身を隠していた街にいた情報屋が……あなたと朧がここに来るかもしれないという情報を……持ってきたからよ……。それもわざわざ……私を探し出して……」

「ハァ!? なんでそれであんたが出張ってくるのよ!? しかもその言い方……おびき出されるのがわかってて来た、といわんばかりの口調じゃないの!?」

「あなたが朧の手に落ちるのは阻止しなくちゃならなかった。結果、それが朧によっておびき出される罠だったとしてもね。……朧と、その右腕である『風神魔将』の性質(たち)の悪さは……よくわかっているから」

「その『風神魔将』っての……」

 

 アスカがそう言いかけたとき、再び口を手で塞がれた。耳を澄ませば、2人を捜す者達の声が近づいてきている。歪められたままの目で先を見つめ、忙しく動かされる様子に、アスカは次に陽炎が何をしようとしているのかを察し、小声で、だがはっきりと告げた。

 

「もう無理だって! これ以上術を使ったら、あんたの身体が……!」

「どうなってもいい……。あなたをあの朧に渡すわけにはいかない」

「なんで私をそこまで庇うのよ……! 私を朧に渡したくないとか言うなら……あの時に助けずに殺せばよかったじゃないの!」

 

 ここまで感情を表に出そうとしてこなかった陽炎が、目に見えて動揺した。そうわかりつつも、アスカはさらに畳み掛ける。

 

「あんたと私なんて係わり合いも何も無いじゃないの! なのに罠とわかっていながらここに来て、急に助けて、足手まといでしかない私を連れて逃げようとして……。それであんたまで捕まるかもしれないのよ? 私を置いて行って朧に捕らえられるのが嫌なら、いっそ殺せばいいじゃないのよ!」

「あなたは……あなたは自分の命を粗末に扱いたいの!?」

「そんなわけないでしょ! でも手足が動かない今の私はどうすることも出来ない……。それで私のせいであんたまで捕まったなんてなったら、私だって責任ってものぐらいは感じるわよ。なら、あんただけでも逃げれば……」

 

 アスカはその先を続けられなかった。陽炎は微笑んでいた。初めて会ったときは無感情を貫き、さっきからこれまでも感情を常に押し殺そうとしてきた様子の陽炎からは想像出来ないその表情に、完全に虚を突かれたのだ。

 

「……やっぱり、本来の甲河アスカの本質には優しさがあったのね」

「な、何よそれ!」

「でもその案は却下するわ。あなたが責任を感じるのと同様、私だって今のあなたを殺したら責任と、何より後悔を覚える。あなたは死なせないし、あの朧の手にも渡さない。……必ず、一緒に逃げ切ってみせる。そしてDSOであなたの手足を復活させて、一緒にあいつを叩き斬る」

「陽炎……」

 

 まともに言葉を交わせてもいない。相手が何者で、何がしたいのかもわからない。ただ、朧に憎しみを抱いているということだけはわかったし、そこは自分とも同じだとアスカは思った。

 同時に、まっすぐな目だとも感じていた。そして、それこそがこれまでの懸命に自分の正体と心を隠そうとしていたのとは違う、嘘偽りのない本当の陽炎なのだとわかった。なら、あとは彼女を信じるしかない。

 

 陽炎の息が整ってきたようだとアスカは気づいた。休んだおかげで回復したのだろう。また空遁で飛ぶと予想できる。こうなったら自分の命運を彼女に託そう。そんな風にアスカが考えた、その時。

 

「あらあら、まだこんなところにいたの? もっと早く逃げないとダメじゃないの」

 

 僅かに育ませた2人の友情を嘲笑う声が聞こえてきた。いや、事実、その女は嘲笑を浮かべていた。

 

「おぼ……あがぁっ!」

 

 そう陽炎が名前を呼ぶより早く。いつの間にか間合いに入り込んでいた朧は、鉤爪を陽炎の右肩に突き立てていた。血飛沫が飛び散り陽炎の右腕が力なく垂れ下がる。アスカを抱えきれなくなると同時、2人とも地面へと倒れこんだ。

 

「くっ……。陽炎!」

 

 受身も取れずに地面に投げ出されるも、アスカは今まで自分を抱えて逃げてくれた対魔忍の名を呼んでいた。

 

「あ……アスカ……逃げ……」

 

 流血する右肩を抑えつつそう声をかける陽炎。だが非情なサディストは、たった今傷つけたその右肩を体重をかけて踏みつけていた。

 

「う、ぐああああぁっ!」

「逃げられるわけ無いでしょ? まさに文字通り、手も足も出ないんだからさあ!」

 

 さらにかかとで肩を踏みにじる。激痛に耐えかね、陽炎が悲鳴をあげた。

 

「あぐっ……! うあああああっ!」

「これは手間を取らせてくれたお礼よ、陽炎ちゃん。……ああ、ついでに左肩も同じようにしてあげようかしら? それともアスカみたいに手足を切り取ってあげる?」

 

 朧は苦悶の表情を浮かべる陽炎を楽しそうに見下ろしていた。その様子にアスカからサッと血の気が引いた。この女はそれを躊躇なく、楽しんでやるだろう。助けてくれた相手が嬲られるのを見ていることしか出来ないとわかりつつも、叫ばずにはいられなかった。

 

「やめて……やめてよ! あんた、私が目的なんでしょ!? その子にひどいことしないで!」

「なあに、情が移るようになったの? 『鋼鉄の死神』ともあろう者が」

 

 ドクン、とアスカの心臓が跳ねた。そこでようやく廃工場で朧に声をかけられた時に感じてしまった安堵感の理由を察した。

 声だ。似(・)た(・)声(・)で以前にも同じような内容のことを言われている。そのことが一層、母親代わりの親しいあ(・)の(・)人(・)が話しかけてきているような錯覚に陥らせる。

 

「や……やめて……」

「何を怖れてるの、アスカ。心配しないでいいわよ。命は奪わない。だって私はあなたが欲しいんですもの。だから、何も心配はいらないのよ」

「やめて! それ以上あの人の声で私に話しかけないで!」

 

 手が動いたなら、耳を押さえたかった。憎むべき敵の声を聞いて、しかし心は安らごうとしている。心地よさを覚えようとしている。そんな自分が、そして今なお敬愛する人物を汚し続ける目の前の女が許せなかった。

 

「お……ぼろぉ……!」

 

 その隙に陽炎は左手で拳銃を抜いていた。雷遁の術を乗せた弾丸の射撃を受ければ、いかに朧とて無事ではいられない。発砲音が鳴り響き――。

 

「うああぁぁぁぁっ!」

 

 しかし次に聞こえたのは陽炎の悲鳴だった。先ほどの宣言どおり、朧は陽炎の左肩を鉤爪で貫いていた。セミオートマチックの拳銃が左手からこぼれ、地面の上へと落ちる。

 

「やめてええええええ!」

 

 鉤爪を引き抜いてなおも腕を振りかざす朧に向かって、アスカは半狂乱では叫んでいた。「鋼鉄の死神」からはほど遠い懇願の声だった。

 

「そこまでお願いされちゃ仕方ないわね。まあ元々殺すつもりは無かったけど。アスカも陽炎も、両方とも生きたまま捕らえるつもりでいたわけだし」

 

 これ以上無いほどに表情を歪ませ、朧は笑みを浮かべていた。

 そこへ、朧が雇ったであろう連中が集まってきた。銃声を聞きつけたのだろう。

 

「遅いよ、あんたら。こんな女2人まともに捕まえられないのかい?」

「す、すみません、マダム……」

「まあいいさ。これから移送する。ちゃんと拘束しときな。ああ、そっちの義肢の方は手足が動かせないから、適当でいいよ。もっとも、こっちもこの傷じゃ両腕ともまともに動かせないだろうけどさ」

 

 男達が2人に群がる。両肩を抉られ、空遁の連続で体力も低下している陽炎はもうまともに抵抗できなかった。装備を外され、痛む腕を無視して自由を制限される。

 

「あら、いい刀ね。頑張ってる美琴にでもプレゼントしてあげようかしら」

 

 外された装備品を物色していた朧が、陽炎が石切兼光と自称する刀を手にしてそう呟いた。それを見た陽炎は顔色を変えて朧に叫ぶ。

 

「離せ! 汚い手でその刀に触るな!」

「うるせえんだよ!」

 

 だがその態度が気に障ったのか、獣人の容赦ない拳が陽炎の腹部に打ち込まれた。

 

「がはっ……!」

 

 ボディーブローをまともに受け、悶絶の声と共にその場に崩れ落ちる。そんなことなどお構い無しに無理矢理立たされ、陽炎は連行され始めた。

 一連の様子を見終えてから、朧は妖艶で、同時に見るものを凍りつかせるような笑みを浮かべていた。

 

「さてと。まずは第一段階完了。……さあ、これからが楽しい楽しい調教の時間よ。陽炎にアスカ……。ウフフ……」

 

 

 

◇

 

 

 朧に捕らわれた陽炎とアスカは、目隠しをされて口枷を嵌められた状態で、どこかへと連行されていた。おそらくはノマドの秘密施設か何かだろう。負傷した陽炎の両肩は一応の応急処置がされてはいるものの、まだ血が滲んでいる。加えて、何かを注射され、身体が熱を帯びて疼き始めていた。そ(・)う(・)い(・)う(・)薬であろうことは、朧の性格からいえば考えずともわかることだった。

 

 移送を終えてしばらくしてから、2人の目隠しと口枷が外された。薄暗いとはいえずっと暗闇の状態から突然光が目に入ったことで2人は目を細める。

 

「はぁい、ご機嫌いかが?」

「朧……」

 

 疲労の濃い声色で憎き敵の名を呟いたのは陽炎だった。だが朧は軽く笑って先を続ける。

 

「あら、思ったより元気そうじゃない。ま、悪いけど休む暇も無しにこれから2人にはスペシャル調教コースを味わってもらうことになるんだけどね」

「スペシャル調教コース……ですって……?」

「そうよ。まずは移動中にあんた達に打ち込んだ薬。わかってると思うけど強力な媚薬よ。もう身体が疼いてきてるでしょ? 勿論効果はそれだけじゃない。筋力の低下に加えて、術を使えないようにする効果もあるの。だから陽炎ちゃん、もう暴れることも空遁の術で逃げることもできないから観念しなさい」

 

 悔しそうに陽炎は唇を噛み締めるだけだった。愉快そうに見つめ、朧はさらに説明を継続する。

 

「次に、あれを見て頂戴」

 

 数歩横に移動し、背後に隠していたものを披露するかのように朧がそれを見せる。その気味の悪さに生理的嫌悪感を覚え、2人は露骨に顔をしかめた。

 用意されていたのは今や朧の部下となった美琴が開発した、魔界生物を用いた性拷問装置だった。作り手である美琴も朧によってその効果を身をもって味わった、悪辣なものである。

 

「天才魔科医の桐生美琴が作り上げた調教用の器具よ。体液が強力な媚薬である魔界生物に全身を包まれて発情し切ったところで、触手をぶち込まれて何度もアクメさせてもらえるという素晴らしいものなの。こいつに数時間ほどかわいがってもらう予定よ。でも生憎これは1つしかないのよ。それで2人のうちどちらかがこれを使うことになるんだけど……どっちがいいかしら?」

 

 2人とも息を呑んだ。説明だけでも怖れが沸いてくる。それも数時間、ともなれば壊れてしまう可能性さえ出てくる。

 

「くっ……! わ……私が……」

「ざんねーん、時間切れよ、陽炎ちゃん。これはアスカに体験してもらうわ。何をされても感じる淫乱ビッチになるようにしてあげる」

 

 躊躇いながらもアスカを庇おうとした陽炎だったが、朧は無慈悲にそれを却下した。

 

「ま、待て! お前はアスカを自分の側に引きこみたいんじゃないのか!? なのに……」

「ええ。確かに私はアスカを片腕としたい。……まああんたももう片腕にしたいんだけどね、陽炎」

「私も……ですって……?」

 

 そうよ、と肯定しつつ笑顔で朧は答える。

 

「でもそのためには、一度心を折って屈服させる必要がある。……それにあんた達を虐めた方が私も楽しめるからねえ」

「……最低の女ね。反吐が出る」

 

 憎々しげに呟くアスカを一瞥。機嫌を損ねた様子もなく先を続ける。

 

「そういうわけだから、せいぜい気持ちよくしてもらいなさい。私に心からの忠誠を誓う気になったら、いつでも言って頂戴。……まあ、しばらくは泣こうが喚こうがかわいがってあげるけどさ! アハハッ!」

「……そんな面倒なことをしなくても、お得意の催眠刻印(さいみんこくいん)でも使えば済む話でしょう? それで人を思い通りに操れるんでしょうから。なのに使わずにわざわざ私達を苦しめて喜ぶとは、本当に変態のサディストね」

 

 陽炎がそう挑発した瞬間、朧の表情が固まった。予想外の反応。先ほどは侮蔑の言葉を投げかけられて気に留めるどころかそれさえ愉快に思っていた様子だったのにと、陽炎は理解が出来ないでいた。

 

「……催眠刻印なんて上辺だけさ。あんた達はそんな上っ面だけじゃない、真の意味で私の両腕となってもらいたいと考えてるんだよ」

 

 違和感。一瞬、陽炎の心をそんな感覚がよぎった。しかしすぐに戻された不気味な笑顔に前に、考えすぎかもしれないと改める。

 

「そういうあんたも、余裕ぶっこいてる暇はないよ、陽炎。あんたには今回雇った溜まってる連中の相手を片っ端からしてもらうから」

「なんですって……!?」

「あんたはアスカみたいな前準備は必要ないでしょ? もう十分すぎるくらいに淫らな身体になっちまって、さっきの薬だけで身体は出来上がってるんだろうからね……。なんてったって、母親にその身体を開発されてたわけだから。ウフフ……」

「くっ……!」

「陽炎……」

 

 嘘だろう、という意味をこめてアスカは彼女の名を呼んだ。だが陽炎は悔しそうに視線を落すだけ。暗に肯定しているとしか考えられない態度だった。

 

「そういうわけだから、せいぜい楽しんで頂戴。……ああ、その前にアスカ、あんたのその邪魔な手足をもいであげるわ」

「え……?」

「だって動かないなら、そんな屑鉄の塊がついてたって意味ないでしょ。なら軽くしてあげる。ついでにその手足から何か技術やら情報やらを得られれば、有意義に使えるかもしれないからね」

 

 アンドロイド・アーム&レッグはDSOの最先端技術と情報が詰まったものだ。それ以上に、アスカにとって共にずっと戦ってくれた相棒であり、小谷を初めとするDSO皆との絆であるようにも思っていた。それを奪われるということは、再び両手足を失う以上の苦痛とも言える。本能的な恐怖に、アスカの顔が青ざめた。

 

「や……やめて……。それは……それだけはいや……!」

「なあに、『皆との思い出が詰まってるの』とか言いたいの? 本当に丸くなったのね、『鋼鉄の死神』さん?」

「……ッ!」

 

 またしても敬愛する人を思い出させるような声色で囁かれ、アスカは動揺した。不気味で甘く迫り来るように、心に忍び寄ってくる声。そんな感覚を振り払おうと、頭を大きく振る。

 

「まあいいわ。どうせあんたは抵抗も何も出来ないんだし。……そういうわけでこの機械の手足を取り外して頂戴。強制停止で痛覚まで遮断されてるから、多少乱暴でもいいわよ」

 

 朧の命令に従い、技術者らしい男達がアスカを抱え上げ、手術台のようなベッドの上へと乗せる。

 

「朧! 私はどうなってもいい! だからアスカの……ぐうッ……!」

 

 懸命に訴えようとする陽炎だったが、傷つけられた肩を朧に蹴られて口を閉じざるを得なくなった。

 

「黙ってな。あんたにはあんたでやることがあるってさっき言ったろ。……ほらあんたら、さっさと済ませちゃって」

「やめてぇッ! お願い……お願いだからやめてよ! いやっ、いやあああああぁッ!」

 

 室内にアスカの絶叫が木霊する。しかしそれは非情な響きとなって消え、助ける者は誰も現れない。

 懇願し、泣き叫ぶ美少女を見つめ、生粋のサディストは愉悦の笑みを浮かべていた。

 

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