◇
日本の上空、3万フィート。所属不明の輸送機が航行していた。しかしその航空機には警告の無線も無く、防衛の戦闘機も接近していない。存在しないはずの存在。それがこの機であった。
『そろそろ当機は降下予定ポイントに到着する。事前情報の通り防衛用戦闘機のスクランブル発進の様子も無ければ警告も何も無し。……驚いたな。本当に俺達をいない存在として認めてくれてるってことか。おたくらの上司、一体どんなコネを持ってるんだ?』
話しかけられた相手は、情報を映し出す頭部を覆うバイザーへと忙しく目を動かしながらも、インカムから聞こえてくる声に耳を傾けている。この輸送機を操縦するパイロットの今の声に対して、話を聞いていた美女は口の端を緩めた。
『知らなくてもいいことはあるだろう? 私達とそちら側と。そういう話だ』
『ごもっとも。だが興味は涌くってもんじゃないか? それにこちらの輸送品が……美女1人と美少女1人と来たら、そりゃあお近づきになりたいとも思うしな』
『やめた方がいいと思うぞ。……私は手癖が悪い。全身を3枚に下ろされても、文句は言わせないからな』
インカム越しに口笛と笑い声が聞こえてくる。だが次に聞こえてきたのはどこか苛立ったような女性の声だった。
『先輩、軽口叩いてる暇があったら計器チェックやら何やら……』
『やっているよ。異常は無い。……何をそんなカリカリしているんだ? 普段と違う装備を強要されたり、コードネームを使え、なんて言われていることが不満か?』
『そんなんじゃ……。いえ、それはそれで不満ではありますけど。なんでこっちは協力を受けた側なのに、私達が試作品のデータ収集手伝いみたいな真似をさせられるんですか?』
『それはもう説明しましたよ、マドモアゼル。試作品とはいえ、それは強襲向きの装備です。今回の作戦にはもってこいでしょう。それにあなた方は稀有な存在だ。だから技術革新のために、この輸送機を飛ばすのと引き換えの条件としてデータ収集の協力をDSOに提示し、受諾された。加えてここで取れた実戦データはそちらにフィードバックもする。ウィンウィンじゃないですか。何より、郷に入っては郷に従えです。こちらの流儀でやってもらおう、ということですよ』
副パイロットであろうか、先ほどよりも若い男の声の答えだった。だがそれにも相棒が納得していない空気を感じ取り、「先輩」は笑いつつその不快感の理由を察していた。
『なるほど。『美少女』とか『マドモアゼル』という言われ方が気に障ったか?』
図星、とばかりに答えに窮する雰囲気が感じ取れる。
『……先輩はいいですよね。大人の女性に見られて、美女だなんだって言われて。私なんてすぐ子供扱いされたり、気にしてる胸のこと言われたりするし』
『お前だって褒められていたぞ』
『なんだか馬鹿にされてるように感じるんですよ。……それに先輩みたいなうまい切り返しも出来ないです』
『そういう初心な感じの反応が好きな人もいますよ。あと僕は『ビューティ』より『キュート』の方が好きです』
ヒュウ、と冷やかすような口笛がまた聞こえてきた。
『ば、馬鹿言ってないでちゃんと操縦しなさいよ!』
『違うな。私のような切り返しをしたいなら、この場合はこう返すんだ。……生憎ですが『キュート』が好きな先客がいますんで、とな』
『ええー!? マジですか!? まあそれだけかわいいなら彼氏ぐらいいると思ってたとはいえ、はっきり言われるとショックだわ……』
青年の露骨に落ち込む声が耳に入る。
『残念だろうが本当だ。相手は私の弟だからな。姉である私も把握しているし間違いない。もっとも、どうも2人とも互いに歩み寄れずにいるらしい。もしかしたら、付け込める隙はあるかもな』
『先輩! いい加減にしてくれないといくら先輩でも……』
『おっと、お喋りはそこまでだ。降下ポイント間近、貨物室の気圧を抜くぞ。酸素マスク、計器類、異常があったら速やかに報告してくれ』
言われている傍から空気が抜けていく音が外部の集音用マイク越しに聞こえてきた。バイザーに外部の気圧と温度が低下という情報が表示される。しかし2人に影響はさほど無い。今2人がいるのは米連の技術が使用された気密性の高い降下ポッドの中だ。2人乗りでバイクにまたがるようにシートに座り、バイザーの情報へと目を移している。内部は温度も気圧も外部よりは保たれている。快適とは言えないまでも、外の環境よりは遥かにマシだろう。
『異常なし。いつでも大丈夫だ』
『了解した。……では作戦開始だ。当機は降下ポイントに到着した。快適な空の旅を、お嬢さん方!』
こんなやり取りが「こちらの流儀」かと、「美少女」と言われた女性はため息をこぼした。だがこの協力無くしては作戦は成功しない。こうなったら最後までそのノリに付き合ってやろうと口を開いた。
『了解! ゆきか……じゃなかった、こちらライトニング。これより任務開始します!』
『こちらスカイエッジ。これより任務を開始する』
2人が共にコードネームを述べた直後、貨物室の扉が開き、降下ポッドが勢いよく射出された。
風を切って自然落下するポッドの中で、2人はバイザーを通して映し出される外の状況、および高度や降下位置をチェックしていく。
『順調ですね。先輩の術の有効範囲である1000メートル地点に達したら、私の命は先輩に預けます』
『ああ。必ずやり遂げてみせるさ。お前だけでなく……お前とよく似た顔のあいつのためにも』
『はい。そして……あいつが何者なのか、洗いざらい聞き出してやりましょう!』
バイザーに表示される高度が3000フィート、すなわち約1000メートルに近づく。そのタイミングを待っていたかのように「ライトニング」がコンソールを操作。バイザーごとポッドの上半分が開放された。
身体が空に晒された美女達の茶と青の髪がなびく。しかしポッドには減速装置は無く、2人ともパラシュートも背負っていない。未だに自由落下は続き、どんどんと地表が迫ってくる。だが問題は無い。ここからが「スカイエッジ」の真骨頂。彼女は遥か下、地表へと視線を向けている。そして頷くと、2人は互いの腕をつかみ合ったままその身を宙へと投げ出した。
宙に身体が舞う状態で、印が結ばれる。それをきっかけに2人の姿は空中から消え――。
◇
「対魔忍、参上!」
次の瞬間、「ライトニング」と「スカイエッジ」――露出の少ない黒い米連製ボディスーツ姿のゆきかぜと、対照的に
「馬鹿な!? この周囲は数キロに渡って警戒網を敷いている! いくら空遁の術といえどその網を完全に抜けてここまで跳躍し続けるなど……」
叫び終わらないうちに、朧はハッとした。そして天井を見上げる。
「……空か!」
警戒エリアに対魔忍が侵入することでそちらに注意を向けるよう陽動し、その隙に補足すら不可能な高度3万フィートからの減速することの無い急降下。そして凜子の空遁の術による物理法則を無視した跳躍による着地。これが対魔忍と米連の同盟で成し得た共同作戦の正体だった。
フワリ、と米連製のスーツに身を包んだゆきかぜの身体が舞う。その両手には普段のフリントロック式の拳銃であるライトニングシューターではなく、スーツ同様の米連製の拳銃――試作型プラズマガンブレードが握られていた。
「飛べよ雷撃!」
雷鳴を思わせる轟音と共に、ゆきかぜの両手に握られた拳銃から雷弾が放たれる。本来のライトニングシューターより威力では劣るものの、代わりにゆきかぜへの負担を減らして従来以上の連射を可能とし、さらに近接戦にも対応可能とした米連製の強襲用武器。まずは陽炎とアスカの背後に立っていた亜人や獣人の首から上をとばし、キシリアと朧目掛けて放って怯ませた後、片っ端から周囲を取り囲む連中目掛けて乱れ撃ち、銃撃を事前に防いでいる。
「アスカ! 陽炎!」
その隙に凜子から愛用のナックルブレードを受け取った仮面の対魔忍はアスカの元へと駆け寄り、彼女を抱き上げた。それから陽炎の拘束を解く。
「催眠刻印は使われていないわ! 凜子!」
「了解した! 陽炎、使え!」
アスカを救出して遮蔽物の陰に隠れようとしながら仮面の対魔忍は叫ぶ。その声を受け、自由の身となった陽炎へ凜子は何かを放り投げた。二尺四寸五分の大業物、秋山家に代々伝わる名刀・石切兼光。
「特別だ、貸してやる! ちゃんと返せよ!」
「……感謝するわ!」
名刀を受け取り、陽炎の瞳に闘志が宿る。まだ身体は薬の影響下にあるせいで筋力は低下し、術も使えない。それでも名刀と磨き抜かれた剣の技術だけがあれば、有象無象を斬り捨てるには十分すぎた。
「俺に犯されて腰振ってた淫乱が! 刀を持ったからって……」
陽炎に迫るオークが斧を振り上げる。だがその斧を振り下ろそうとした瞬間。オークの両腕、肘から先が斬り飛んだ。
「あ、ギャアアア!? お、俺の腕が……!」
「悪いわね」
次に振るわれた一太刀で、今度は首が飛ぶ。自分をいいようにしてくれた相手をあっさりと切り伏せても、感慨も何も無い様子で陽炎は呟いた。
「その醜い顔の区別なんてつかないから、いつ私の相手をしてくれた誰だかわからないのよ」
さらに襲い掛かってくる亜人達と対する。だが全く怯むことなく、陽炎は石切兼光を振るい、相手をを次々に切り捨てていった。
◇
一方、愛刀を手渡した凜子は両手に米連製の特殊な二振りの日本刀――空装武神を握り締めていた。そしてゆきかぜの一撃で怯んだ朧を睨みつけ、気合と共に右の刀を振るう。
「朧、覚悟ッ!」
刀の間合いからはほど遠い。しかし今の凜子にそんなことは関係ない。それこそが強襲用として米連から提供された空装武神の真の力。空遁の術を攻撃力に変換させ、空間を凝縮した強力無比な斬撃を繰り出せる。さらにそれを飛ばすことも出来るために、今の彼女は間合いという概念を無視することすら可能なのだ。
「くうっ……!」
だが相手はあの朧だ。振るわれた刃を直感的に危険と判断し、鉤爪を交差させてそれを防ぎ切った。しかし防御が崩れてよろめいた隙を凜子は見逃さない。
「取ったッ!」
凜子は勝利を確信して左手の刃を振り抜いた。が、直後――。
「はああああッ!」
「何ッ!?」
気合一閃。割って入った侍風の魔族がそれを打ち払っていた。
「助かったよ、キシリア。やっぱりあんたを雇っておいて正解だったね」
「まだ前金しかもらっていないからな。雇い主に先に死なれては困る。……あの女剣士を抑える」
「頼むよ」
短い会話を交わし、キシリアは地を蹴った。その速度に間合い無視の斬撃は間に合わないと判断。凜子は迫り来る魔族の刃を受け止める選択を取る。
「邪魔をするな!」
「悪いな、雇い主を殺されては用心棒の名が廃る」
右の刀でキシリアの攻撃を受け止めつつ、凜子は左の刀を振るう。だが相手はそれを瞬時に見切り、間合いを空けて回避。それから即座に踏み込み、先ほど見せた凜子の攻撃の特性を防ごうとしていた。
(こいつ、只者ではない……!)
敵ながらに見事な腕前。同時に卓越した剣の技術。まずい、と彼女は内心で歯噛みする。
今の凜子の装備はあくまで強襲用を想定してのものだ。確かに空装武神は強力だが、二組一対で運用するために逸刀流が使えないという欠点も存在する。それは実力者との一対一では不利に働いてしまう。つまり――。
「なるほど、本来の戦い方は二刀流ではない、というわけか。不慣れに見える」
「……見事な観察眼だな。確かにこれは本来の装備ではなく、強襲用に特化した特殊な物だ。しかし……負けん!」
白の米連スーツに身を包んだ美女によって振るわれる空装武神。それを防ぐキシリアの黒刀。美女剣士2人の一騎打ちは一層熱を帯び始めた。
◇
しかしゆきかぜはそんな2人の戦いを苦い思いで視界の中に入れていた。
任務はあくまで陽炎とアスカの救出、及び朧の抹殺。だが奇襲での暗殺に失敗した以上、朧を討ち取るのはかなり困難となった。加えて、凜子は腕の立ちそうな魔族との戦いに突入し、手が離せそうにない。
アスカを抱えた仮面の対魔忍は腕の中の愛娘代わりの少女が第一と物陰へと身を潜めていて戦うことが出来ない。陽炎は凜子から受け取った石切兼光を手に亜人や獣人を相手にしているのが見える。
そしてゆきかぜは上からの銃撃を防ぐため、ひたすら雷弾を乱射。どうにかほぼ鎮圧することに成功していた。
(とはいえ、最初の奇襲で朧を討ち損ねた時点でこっちは不利……。陽炎とアスカは一応救出できたわけだし、これ以上の長居は……)
ゆきかぜがそんなことを考えていた、その時。
「所長!」
聞こえてきたアスカの声に視線を移し、ゆきかぜは目を見開いた。先ほど凜子が討ち損ね、用心棒をその凜子にけしかけた後で退いたと思っていた朧が仮面の対魔忍に襲い掛かろうとしていたのだ。
「仮面! 下がって!」
どうにかナックルブレード1本で応戦していた仮面の対魔忍へゆきかぜが叫ぶ。指示通りゆきかぜの方へと仮面の対魔忍が後退。そこで見えた相手に銃口を向けて雷弾を連射する。
「はん! なんだい、こんなもん!」
何事もないように朧はそれを打ち払い、なおも肉薄。怯む様子はない。
「だったら!」
ゆきかぜは雷遁の術を発動し、身につけている装置へとそれを流す。そのまま朧目掛けて飛び込んだ。
「特殊雷装の力、見せてやるわ!」
米連特製の装置がゆきかぜのピーキーすぎる雷遁の術を制御し、彼女の身体能力を上昇させる。さらに試作型プラズマガンブレードの名の通り、銃口から雷のブレードを展開した。
「はあああーっ!」
「しゃあああっ!」
ゆきかぜのブレードと朧の鉤爪が交錯し、離れる。そこへ強化された身体を駆使してゆきかぜの上段への回し蹴り。朧が引いた隙を見て左手のガンブレードが雷弾を吐き出す。それでも何事もないかのようにやはり朧は弾いていた。
「なるほど、あんたの力を制御して近接戦も可能にする装備か。だけど……『以前』の方がやりにくかったわね」
「ハァ!? 寝ぼけてんの!? 私とあんたが戦うのは今日が始めてよ!」
「ああ、そうだった。でも庇いながら戦ってちゃ、あんたに勝ち目はないよ! それはこの私が誰よりもよく知っているからね!」
「何わけわかんないことを!」
朧との会話を噛み合わないと思いつつ、ゆきかぜの頭はそのことに疑問を抱いている余裕などなかった。まずはゆきかぜから片付けようと、朧の鉤爪が空を裂く。
手強い。仮面の対魔忍と2人掛かり、いや、そこにベストのアスカも含めた3人で挑めば仕留め切れる自信はある。だがこの現状、1対1では厳しい。
加えて、凜子同様強襲用装備が裏目に出ている。確かに近接戦まで含めた対多数を想定し、汎用性を高められたこの装備は実によく活躍し、見事大量の雑魚連中を蹴散らした。しかし個のポテンシャルに秀でる朧が相手となると得意の距離での雷弾は威力不足、かといってクロスレンジでの格闘戦は得意とは言い難く、相手に分がある。
「凜子先輩! 陽炎!」
となれば、ゆきかぜが取るべき選択はひとつだった。逃げの一手を打つ。幸い最優先目的である陽炎とアスカの奪還には成功し、催眠刻印も無いという話だ。なら、あとは凜子の空遁の術で離脱すればいい。
ゆきかぜに名を叫ばれ、その2人は何を求められているのかを瞬時に判断した。雑魚を斬り捨てていた陽炎は早々に相手にするのをやめ、ゆきかぜの方へと駆け寄ってくる。
が、肝心要の凜子が相手に背を向けることが出来ない。二刀を懸命に振るうも顔に焦りすら浮かぶ様子から、対する魔族がかなりの手練れと容易にわかる。援護のために銃口をキシリアに向けようとするゆきかぜだが。
「よそ見してる余裕があるのかい?」
そこを狙ったかのように朧が仕掛けてくる。咄嗟にブレードを再展開して防御。しかし分は悪い。それに相手はゆきかぜよりも、その背後にいる仮面の対魔忍を狙いたいという気配を醸し出している。集中を切ることもできない。どうするかと悩める彼女に苦い表情が浮かんだ、その時。
「朧ォ!」
横から聞こえてきた声に、目の前の相手はそっちに気を取られた。石切兼光を振りかざし、陽炎が襲い掛かる。
「へえ、もう迷わないってかい!?」
「黙れ!」
渾身の力を込めてた陽炎の大上段からの一撃は、いとも簡単に止められた。未だ薬の影響が残り、両肩の傷も癒えてないのだ、無理はない。そんな相手を見下したかのように、朧は挑発を続ける。
「あの時もこうしてりゃわからなかっただろうにね! 母親を見殺しにして、今度はそうさせまいと学習したらしいじゃないか!」
「貴様ああァ!」
怒りに身を任せる陽炎は、以前凜子が言ったように実に危うくゆきかぜの目に映る。しかし折角生まれたこの好機、逃すわけにはいかない。
ゆきかぜは凜子と剣を交える魔族へと銃口を向け、迷うことなく引き金を引いた。凜子だけに集中していたキシリアは反応が一瞬遅れ、かろうじて回避するものの姿勢を崩してしまっている。
「無粋な! 1対1の決闘に水を差すか!」
「すまないな、こちらも任務というものがある。また会ったときに決着はとっておいてくれ」
既に凜子は間合いから遠ざかっていた。キシリアがベストの体勢でない以上、ここで空装武神を振るって間合い無視の一撃を繰り出せば、もしかしたら仕留められたかもしれない。
しかし凜子はそれをやろうとせず、さらに以降の射撃も無いようにゆきかぜの射線を意図的に塞いでいた。心躍るほどの力量と見事な剣の腕前。そして何より自分に似ているであろう気質。朧に雇われてはいるものの、いかにも武人という印象の相手をここで不意打ちという形で終わりにしたくは無い。可能なら、石切兼光を手にしている最高の状態で戦いたい。そんな思いが凜子の中に生まれていた。
「私の名はキシリアだ! キシリア・オズワルド! 今度は邪魔なく死合おう!」
「秋山凜子だ。キシリア、その名、覚えておこう。……陽炎!」
撤退を促す有無を言わせぬ声に陽炎が退く。させまいとする朧にゆきかぜが雷弾で弾幕を張って足を止め、その間に凜子は印を結ぶと空遁の術で一気にその場を離脱した。
「随分と暴れてくれて、果たして逃げられるかしらね……。外の連中に連絡! いきなり包囲網を破るのは無理なはずよ、見つけ次第私に連絡よこすように。多分陽動で兵力を引きつけた逆方向に逃げると思うわ。それからアスカと陽炎以外は殺しても構わない。私もすぐに追う。行くわよキシリア」
「了解した。だがその前に……すまなかった。あの女……秋山凜子を仕留め切れなかった」
「まだ終わってないわよ。この先の林にはあなたが通ってきたルート以外に監視と簡易攻撃用に米連製の多数のドローンと、それから戦闘員として強化外骨格を含む大量の傭兵を配置している。そう簡単には抜けられない」
得意げに微笑を浮かべる朧。と、そこに部下からの報告が入ってくる。
「朧様! 対魔忍と思われる敵ですが……」
「ほら来た。どこまで跳躍した?」
「いえ、そちらではなく……最初の陽動と思われた……」
「ああ、いいわよそんなの。空から来る本命を勘付かせないのと、事前に兵力をそっちに割くための陽動でしょ?」
「それが……」
なおも報告しようとするその様子を朧が訝しむ。だが次に受けた報告に、彼女の顔が露骨に変わった。
「陽動と思われた部隊に、井河アサギらしき姿を確認したという報告がありました!」
前作の凜子メインの話を書いたときも凜子対キシリアの組み合わせだったんですが、2人ともおそらく似た気質で気が合いそうだろうということと、用心棒という設定が便利なことに加えて個人的に好きなキャラということで今回も剣を合わせてもらいました。
「斬鬼」の凜子と鬼族であるラークシャシャっていうのも考えたんですが、ブラックを付け狙っているという設定があるため朧に雇われることは難しいかなと。その辺りは多少捏造しても良かったんですが、早い話がキシリアの方が好きなんで採用ということになりました。ラークシャシャも結構好きなキャラではあるんですけどね。
……と思ったらソシャゲの次のイベントでまたラークシャシャ登場というね。惜しいことしたかもしれない、と少し思っていたりいなかったり。
しかしラークシャシャ復活はいいんだが、メイン報酬さくらってこれまた大荒れじゃないですかね……。