◇
アスカが陽炎の元を定期的に訪れ、「説得」を始めるようになってから数日が経過していた。未だに陽炎の心は屈服してはいない。だがアスカと肌を重ねるたびに抵抗の意識は薄れ始め、気を抜けば呆気なく陥落してしまうということは、彼女自身自覚せずにはいられなかった。
その説得に加え、この数日間、1度たりとも対魔忍襲撃の噂を耳にしていないことも彼女の心にダメージを与えていた。すぐにでもゆきかぜと凜子救出のための対魔忍が派遣されるだろうという思惑は外れ、以前アスカが言った通り「勝手な動きは出来ない」状況なのだろうと考えざるを得ない。捕らわれる時間が延びれば延びるほど、2人も、そして自分も堕ちてしまうリスクは高まる。不安と焦燥が、彼女の心の中で入り混じっていた。
(ヨミハラに連れて来られてから……今日で何日目になったの……? アスカが私のところに来たのは4……いえ、確か5回のはず。ペース的に1日に2回のはずだから、当てにならないとはいえ自分の中の時間間隔も合わせて考えれば、おそらく3日程度……。なのに何の行動も起こさないなんて……この世界のアサギさんは何をもたもたしているのよ……)
焦りは次第に苛立ちへと変わる。本来この世界の人間ではない自分などどうなろうが構わない。ゆきかぜと凜子の救出作戦に際して、邪魔と判断されてその場で排除されるのであればそれも已む無し。そこまで考えている陽炎にとって、助けにすら来ないという事態はそれ以前の問題として、堕とされかねない心をささくれ立たせていく。
と、その時部屋の扉が空いた。立っていたのはアスカ。ただ、普段なら明るく声をかけてくる彼女は、今日は珍しく渋い顔をしている。さらにその後ろから、普段は説得を任せきりにしている朧の姿もあった。
「今日は保護者同伴?」
態度が違うのはすぐにわかった。それでも敢えて、陽炎は挑発気味にそう声をかける。
効果は覿面だった。アスカは苛立ちを隠そうともせず舌打ちをこぼし、鋭い視線を陽炎へと投げかけてくる。
「やめなさい、アスカ」
「でも朧さん! 陽炎がもっと素直に私の話を聞いてくれていれば……!」
「それは仕方のないことよ。そして、あなたの責任でもない。陽炎が予想以上に手強かった、それだけの話よ」
2人の間で交わされる会話に、何を言いたいかわからないと眉がひそめられる。
「……何の話?」
「私はあんたと楽しい時間を過ごしたと思ってるし、説得も順調に進んでいたと思っていたつもり。……だけど私じゃ力不足ってことみたい。説得役交代だってさ」
「交代……?」
訝しげに問い返した陽炎へ、朧が意味ありげな笑みを浮かべていた。
「アスカには悪いけど、あんたの説得により適した人材が現れた、ということよ」
「より適したってどういう意味……?」
声色こそ平静を装うとしていたが、陽炎の内心は揺れていた。自分を堕とすために適した人材。朧はかつて陽炎がいた世界の事情を知っている。そんな女が「より適した」と言った以上、嫌な予感を払拭しきれない。
「あんたもなんとなく予想がついてるんでしょ?」
「まさか……!」
その予感は的中だと、すぐに思い知ることとなった。朧の声に促されるように部屋に入ってきたのは、貧乳をこれまで以上に際立たせる小悪魔的な衣装に身を包んだ美少女と、逆に胸の谷間をこれでもかも見せつけるような黒のキャットスーツに豊満な肉体を収めた美女の2人――。
「あ……ああ……!」
陽炎の表情が絶望の色に染まる。その様子を見て、朧に残忍な笑顔が浮かんでいた。
「説明は不要よね? あんたにとって親に当たる、ゆきかぜと凜子よ。あなたより一足先に、説得に成功してね。私の直轄の部下、というわけではないけれど、以後はノマドの一員として行動することを約束してくれたわ。……ああ、あんたの素性についてはもう説明してある。驚いたみたいだったけど、納得はしてくれたわ」
「そんな……そんな……!」
ガタガタと身体を震わせ、それから心を奮い立たせたように陽炎は親に当たる2人を睨みつけた。
「なぜなの!? 母さんに凜子さん……私は前に会ったときに言ったはず……! 対魔忍としての誇りを忘れるな、と……!」
「ええ、そうね」
さも何事もないかのようなゆきかぜの返答。
「でももう私も凜子先輩も対魔忍じゃないのよ。だから『娘』であるあなたも、もう無理をして対魔忍であり続ける必要はない……」
「私のことを何も知らないくせに母親面しないで! そこにいる朧から吹き込まれた話でしか私を知らない、本来私とは交わらないはずの存在なのに!」
「確かにそうかもね。……でも、だったらなぜさっき私を『母さん』って呼んだの? なぜ交わらないはずの存在である私をわざわざ探し出すような真似をしたの?」
思わず陽炎は言葉を詰まらせた。畳み掛けるように堕ちたゆきかぜが続ける。
「私にはわかるわ。それはあなたが『母』という存在を諦め切れなかったから。……ううん、私だけじゃない。あそこで凜子先輩と剣を交えたのは、もう会えないはずの両親とまた会いたかったから。そうでしょう?」
「今のゆきかぜの推論から考えれば、お前の行動にも、あの時感じた違和感も納得がいく。……すまなかったな。あの時、そこまで気づいてやれなかった……」
「2人揃って……! そうやって親みたいにして振舞えば、私が言うことを聞くとでも思ってるの!? 確かに元の世界では水城ゆきかぜと秋山凜子は私にとって親に当たる人物だった……。でもこの世界のあなた達は違う……! 知ったような口を利かないでよ!」
「陽炎。あなたの気持ち、私には少しわかるわ」
ゆきかぜのその言葉に、意図を図りかねて陽炎は口を噤んだ。小さく笑みを、それもどこか影を差した笑みを浮かべてから、彼女はさらに先を続けた。
「会えなかった母親と再会する。その喜びがどれほどのものか、私はわかってるつもりよ」
「何を言って……」
そこまで発言したところで、陽炎はハッとしたように言葉を切った。今の内容から推測すれば、うっすらと見えてくる。なぜゆきかぜがあっさりと堕ちてしまったのか、その理由。
「もしかしたら前の世界から含めても会うのは初めてかもね。……紹介するわ。私がずっと捜し続けていた、お母さんよ」
そのゆきかぜの言葉に促され、1人の女性が部屋へと入ってきた。熟れた色香の漂う肉体を白と黒の密着スーツに包み、口元浮かぶのは母性を感じさせる笑み。
「水城……不知火……」
自分の予想を裏付けるその人物の名を口にして、陽炎は唇を噛み締めた。待ち望んでいた母との再会。たとえそれが堕落した母であろうと、母との再会を心の支えとしていたゆきかぜにとっては待ち望んだものだったのだろう。結果、ゆきかぜまでもその身を魔へと堕とすことになろうとも。
「はじめまして、陽炎ちゃん。詳しい自己紹介は不要みたいね。あなたにとって母の母に当たるらしい水城不知火よ。……驚いたわ。まさかあなたがいた世界では、凜子ちゃんとゆきかぜの子としてあなたが生まれているなんてね」
「私はお母さんを捜すために対魔忍になった。でもその対魔忍としての己を捨てることこそが、お母さんとまた一緒になれる条件だった。だから私はお母さんと一緒になることを選び、対魔忍である自分を捨てた。陽炎、あなたもそうすれば……」
「詭弁ね」
静かに、だがはっきりと陽炎は反論する。
「百歩譲って母さん……いえ、ゆきかぜさんはそうだったとするわ。じゃあ、凜子さんはどう説明するの? ……結局あなた達は快楽に屈し、堕ちた存在なのよ。私がいた世界の、私の母さんと同じ。この世界の2人はきっと大丈夫だと信じていたのに……。失望したわ」
「言いたい放題言ってくれるわね。でも否定する気はないわ。……結局は本能のままに生きるようにしただけの話。快楽も本能よ。それを認めて身をゆだねることで、私は新たな力を手にすることも、さらにはまたお母さんと一緒になることも出来た……」
平行線だ、と陽炎が歯を鳴らす。かつて彼女を捕らえた母と同じ。もはや言葉は届かないのかもしれない。
(じゃあ私は……どうすればいいの……? この世界を私のいた世界のようにはさせない。そう心に誓って孤独な戦いをすると決めたはずなのに……!)
しかし結果はこの様だ。アスカも、ゆきかぜと凜子も陥落した。全てが朧の思うがまま、彼女がかつていた悪夢のような世界へと近づこうとしている。そしてその新たな世界の勝者として朧が君臨しようとしているのだ。
それでも頑なな心を貫こうとする陽炎へ、ゆきかぜが静かに語りかける。
「……面倒な話は省くわ。陽炎、私と……いえ、私達と一緒に来なさい。これは母さんからのお願いよ。私とずっと一緒、とはいかないかもしれない。でも朧様があなたを片腕として考えると言ってくださっている。もう片腕のアスカはあなたにとって友達でしょう? 友達であるアスカ、親である私と凜子先輩。あなたがここにいる理由は、その私達と一緒に過ごすということじゃ、足りないかしら?」
「論外だわ。そこにいる朧は私の『本当の』母さんを殺した。そんな女の片腕になるなんて、真っ平ごめんよ」
「本当の母親? そいつが何をしたというの? あなたを罠に陥れて利用することしか考えなかった。でも私は違う」
母と同じ顔を持つ少女にそう言われ、娘は相手を睨みつけた。
「一緒よ! このまま拒否し続ければ、どうせ身体を嬲り者にするくせに!」
「嬲り者とは違うわね。私がするのは『躾』よ。駄々をこねる我が子を正しく育てるための愛の鞭。それが、私がしようとしていることよ」
「自己を正当化しようとする人間の言いそうなことね……! 私は絶対に屈しない。朧の思い通りの世界になど、させてたまるもんですか……!」
射殺さんばかりの鋭い視線で射抜かれても、ゆきかぜは堪えた様子はなかった。軽く鼻で笑い飛ばし、口を開く。
「聞き分けの悪い子ね。まあいいわ。じっくり説得してあげるだけだから。……じゃあお母さん、お願い」
ゆきかぜの頼みを受け、不知火は娘に小さく笑みを返してから、なにやら液体の入った容器を手に陽炎の下へと近づいてきた。
「……自分の手は直接下さないってわけ?」
「あら、私に相手をしてもらうほうがよかった? でも悪いわね。お母さんが是非、ってね」
陽炎が上目で不知火を見上げる。母性を感じる、だが同時に妖艶でもある笑顔がそこにあった。
「よろしくね、陽炎ちゃん。苦痛を与えて説得するより、快楽を与えての方がいい。そう思ったから私が名乗り出させてもらったの。でもあなたからすればどちらも嫌なことかもね。だから聞くけど、今すぐゆきかぜのお願いを聞いてくれる気にはならない? もしそうなら、手荒な真似は……」
「愚問よ。……始めるならさっさと始めればいいわ。嬲り者にされるのは、慣れているもの」
強がってみせた陽炎だったが、内心には不安が渦巻いていた。既に堕ちてしまった母、その引き金となった母の母に当たる存在の不知火。実際に会ったことはない、かつて勇名を馳せた対魔忍を前に、陽炎は身構える。
と、どこから取り出したのか、ついさっきまで何も無かった空いていたほうの不知火の手に、手品のようにクナイが握られていた。さっきのはブラフで、快楽責めではなく苦痛を与えるつもりかもしれないと陽炎が考えたと同時、身を近づけてきた彼女は戒められていた陽炎の両手の拘束を解いていた。
「……え?」
疑問が脳裏をよぎったのは一瞬。次には自由になったこの機会を逃すまいと、反射的に身体が不知火に飛びかかろうとしたところで――。
「あぐっ!」
逆にその思考を読んでいたとでも言いたげに、胸を足蹴にされ、床へと押し倒されてしまった。
「いい動きね。咄嗟の判断でその行動、なかなか隙が無い。でも……投薬で弱らせられ、術もまともに使えず力も出せないあなたが、私に敵う道理は全く無いとも思うけれどね」
「ぐ、うぅ……」
胸板を踏みつける足をどかそうと両手に力を込めるも、動く気配はまるで無い。これが現在の弱った自分と、かつてアサギに匹敵するとまで言われた対魔忍との決定的な力の差。もう拘束など必要無い。暗にそう言われているようで、情けなさを覚えた彼女が唇を噛み締める。
「そんなに悔しがる顔をしないで。ゆきかぜと一緒で、快楽に染まったほうがきっといい顔になってくれると思うわ」
「勝手なことを! 私は屈したりしない……!」
「そう言いたいのなら、せいぜい抗って頂戴。私の責めに耐え切ることが出来たなら、その言葉に間違いはなかったと認めてあげるわ」
不敵に不知火は微笑む。絶対の自信を秘める、堕落してしまった歴戦の対魔忍の笑み。これからどれほどの苛烈な責めが待っているか。怯えそうになる心を奮い立たせ、陽炎は不知火を睨みつけていた。
しかしその視線を嘲笑うかのように、不知火は手に持つ容器の中身を足元の対魔忍ではなく床へと垂らし、中身を全て溢していた。粘度から察するに中身は媚薬ローションの類のようだが、てっきりそれを伴っての愛撫を想定していた陽炎は意図を図りかねて、眉をひそめる。
「……何がしたいの?」
「今床にこぼした液体が何かわかるかしら? あなたも使われたことがあるでしょうけど、媚薬ローション……それも、媚薬成分を強化した改良型よ」
「だとして、なぜわざわざ捨てたわけ?」
クスッと不知火が笑った。優雅さすら漂わせる、妖艶な微笑だった。
「捨てたわけじゃないわ。使うから準備をしただけよ」
「使う……?」
「私の忍法を知らないみたいね。あまりペラペラと話すのは好きではないけど、教えてあげましょう。得意とする術の名は
そこまで言われて陽炎はハッとした。それから床に零れたローションへと目を移す。
それは纏まっていた。本来なら形を保つ容器等がない以上、いくら粘度が高いとはいえ流動的に形を変えるはずの液体が、綺麗な半球体のように形を保っていた。
「まさか……今さっき垂らした液体を……!」
陽炎がそう口走った次の瞬間。不知火がその場から動くと同時に半球体状の液体は広がり、陽炎を飲み込もうと襲い掛かってきていた。まるで、正解だと言わんばかりに。
「さすがゆきかぜの娘、なかなか鋭いわね……」
「いっ……いやあああああぁっ!」
不知火がかけた賞賛の声も、今の陽炎には届かなかった。ひんやりと冷たく、粘度の高い媚薬ローションがあたかも意思があるかのように蠢き、陽炎の身体を包んで愛撫していく。
「ひううぅっ……! あ、くうぅっ……!」
「媚薬ローションを使って手で愛撫されたことはあっても、こんな風にローション自体に責められるなんて経験は無いでしょう? さあ、存分に味わいなさい。特製の媚薬ローションスライムによる全身愛撫よ」
身体がどんどんとスライムに呑み込まれていく。手足をばたつかせ、引き剥がそうと掴もうとはしてみるものの、粘度が高く、また硬度も自由に変えられるらしいスライムには全く効果は無かった。対処法をまるで見出せないまま、首から下が粘液のコスチュームにどんどんと覆われていく。
「んくうっ……! これ……冷たくて……ぬるぬるして……!」
「気持ちいいでしょう?」
覗きこむように不知火は顔を近づけ、そう陽炎に問いかけていた。困惑の表情を引き締めなおし、相手を睨みつけての返答を返す。
「ふざけ……ふぅっ……ないで……! 気持ちいいわけ……ない……!」
「あら、そう。ローションの量が足りなかったかしらね」
不知火は用意された器具類の中にあった液体の入った容器を手に取り、またもそれを床へと撒き散らす。が、床に着くより早くにそれらは動き出し、既にスライムスーツに包まれた陽炎へとさらに纏わりつき、スライムのベッドを形成していく。いつしか手の周囲のスライムが硬質化し始めて勝手に動かされ、頭の上で両手を一纏めに固定されてしまった。
「こっ……こんな……! あ、ああっ……足まで……!」
腕に続き足も開かれ、M字開脚を強いられる。粘液に包まれながらも、透明であるために秘所は丸見えの状態であり、陽炎の羞恥心を煽っていく。
「フフッ。向こうの世界ではゆきかぜにかわいがってもらっていた、って聞いたけど……。全然使い込まれていない綺麗なピンク色ね」
「くうっ……! そんなにじろじろ見るなっ……!」
「見えてしまうんだから、仕方ないでしょう? ……それじゃあそのかわいらしいあそこ、媚薬スライムでたっぷり犯してあげるわね」
不知火が指を鳴らすと、膣内へとローションが侵攻を始めた。普段ペニスに貫かれる時とは違う、柔らかくてひんやりとした感覚が下腹部へと広がっていく。
「あっ……んっ……ああぁっ……! くっ、ううっ……」
胎内を犯され、顔をしかめて喘ぎをこぼしつつ、陽炎は普段ほどの苦痛を感じないことに多少安堵していた。今膣内を満たしているのは太く逞しい肉の槍ではない、多少硬化しているとはいえ流動的な液体。それ故、苦しいほどの圧迫感はない。これなら、暴虐的で拷問にも似た強姦や輪姦の類より、遥かにマシだろう。
「勘違い、しているみたいね」
不意に、妖艶な笑みと共に不知火はそう呟いた。
「元が液体だから、犯されてもそれほど辛くない。これなら耐えられる。……そんなことを思っているんじゃないかしら? それは大きな間違いよ」
「何……? どういう……。あっ、ひぃあああああぁっ!? こっ、これっ……! あっ、あああああああぁっ!」
一瞬前の余裕が消し飛び、陽炎は声を裏返らせて叫んでいた。女穴内を突き進むスライムが止まらない。普段ならペニスによって犯される最奥である子宮口で止まらず、液体であるが故か、さらにその奥まで。
「あっ……くぁああああぁっ、ああああああっ! こっ、これっ……! まさか……!」
「そう、今あなたの子宮もこのスライムで満たしてあげてるの。普通では感じることの出来ない、子宮を犯される感覚……存分に味わいなさい」
「いっ……いやっ……いやああああああああぁっ!」
半狂乱で陽炎は叫んでいた。いつも見せている無感情な表情はどこへやら。その顔を保てないほどに、女性の聖域を蹂躙されるという行為は恐怖だった。望まぬ射精を受けて胎内を満たされたことはある。しかしそんな一過性のものとは異なる、他の性感帯と同様に行われる凌辱。不知火の術を受けたローションが子宮の壁を舐めるように這いずり回り、未知の快感を与えてくる。これまで体験したことの無い暴虐に陽炎は抵抗して暴れようとし、しかし固定された四肢は動かすことが出来ず、ただただ泣き喚くことしか出来なかった。
「やめてやめてやめてえええええぇっ! お願いだからもうこれ以上私の子宮を犯さないで! 壊れる……私壊れちゃううううぅっ!」
「じゃあ……さっきのゆきかぜのお願い、聞いてくれるかしら?」
必死の懇願に返ってきたのは、無慈悲な問いかけだった。そんなものに首を縦に振れるはずがない。選択出来ない陽炎が唇を噛み締めたとわかっても、不知火は笑みを見せるだけだった。――妖艶で、同時に残酷でもある笑みを。
「嫌なら仕方ないわ。そのままイキ狂いなさい。おそらく今まで体験したことがないであろう子宮アクメ。快楽があまりに強すぎて、本当に頭が狂って壊れてしまうかもしれないわね」
「あ゛、あ゛あ゛ああああああああぁッ!」
不知火の言葉も聞こえぬほどに、陽炎は絶叫していた。子宮内のスライムが動きを増し、より一層の激悦を身体に与えてくる。指一本動かせないまでにガチガチに固められた全身を強張らせ、身をよじることすら叶わない。蜘蛛の巣に捕らわれた蝶の如く、いや、それ以上無惨に、粘液に包み込まれた少女はもがくことも不可能であった。
「我慢、なんて出来るわけないわね、その様子じゃ。……これが最後よ。ゆきかぜのお願い、聞いてはくれない?」
「あ゛……がああぁっ……! いっ……やだぁ……! 私は……屈しは……いぎいいいいぃっ!」
「そう。それじゃあイキなさい」
冷たく不知火が言い放つと同時。拘束された少女の華奢な身体がビクビクと大きく跳ね、敗北の悲鳴が口から迸った。
「だっ……ダメ……ダメええええッ! くる……キちゃう……凄いのくるううううぅっ! あぐっ、あっ、ああっ、ひぃああああああああぁっ!」
粘獄の中で陽炎は果て、壮絶な絶頂を迎えていた。女性にとって生命の営みの根源でもある子宮から訪れる未曾有のオーガズム。その波はしばらく引かず、膣内は液体であるスライムを締め付けようとし、弛緩しきった尿道からは無様に失禁までしてしまう有様だった。
「あっ……あ……あぁ……」
「あらあら。お漏らしまでしちゃって。ゆきかぜの娘なのに、だらしない」
嘲りの言葉に憤ることすら出来ない。身体が壊れ、頭が狂ってしまうのではないかという快楽の波をどうにかやり過ごすことに、今の陽炎は必死だった。恥を忍び、ようやく少し落ち着いてきたと思った、その時。
「……え?」
ズクン、とつい今しがた激悦に晒された子宮が脈打つ。小さな疼きは心臓の鼓動に合わせて次第に、だが確実に広がり、子宮を経て全身へ。
「な……何……これ……っ!? あっ、ああああぁっ!?」
カッと熱を帯び、耐え難い官能の渦が巻き起こる。激しい絶頂を終えたばかりにも関わらず強制的な発情状態、それもかつてないほどの疼きに襲われ、困惑の嬌声が口から零れた。
「どっ……どうして……!? イッた……ばかりなのに……! ひぃあぁ……あっ、ああああああっ!」
「ねえ、陽炎ちゃん。私がスライムにしたこの液体、元はなんだか忘れてない?」
思考がまとまらない頭が、言われてからようやくその意味を理解した。不知火がさっき床に垂らしたのはローションだと言っていた。それも、媚薬成分を強化した改良型の特製ローション――。
「じゃ、じゃあ……私の身体……!」
「肌から浸透するだけでも相当でしょうに、身体中を包み込まれて、子宮まで一杯にされて。……その効果は私が口にせずとも、今あなたが感じている通りよ」
「そん……な……! あぐっ……! ひっ……いやあぁっ……! 身体……熱い……熱いぃ……! あっ、あくうっ……ひぃあうううぅっ!」
話している間にも媚薬の効果は強まり、スライムに捕らわれた少女の身体を蝕んでいく。しかしそんな憐れな相手を目にしても堕ちた対魔忍の責めの手が緩むことはない。
「1人で楽しそうにしているところ悪いけれど、まだまだ終わりじゃないのよ。……さあ、『躾』を続けましょうか」
「ま……待って……! 今こんな状態で続けられたら……私狂っちゃう……今度こそおかしくなっちゃう……! だから、お願い……」
「でもゆきかぜの話を聞く気はないでしょう?」
返答は無い。その無言を答えと取った不知火は、無慈悲に指を鳴らした。しばらく動きがおとなしかったスライムが再び行動を活発化させる。
「あっ、あんっ! いやっ……いやああああぁっ!」
「今度はお尻も責めてあげる。きっと開発済みでしょうから」
排泄のための不浄の穴にスライムが滑り込む。反射的に肛門に力を入れて侵入を阻止しようとするも、相手は液体ということで全く効果は無かった。直腸内に冷たい液体に流れ込んで腸壁を舐められ、スライムスーツに包まれて身動きの取れない腰がギクギクと軋む。
「んぎいいいぃっ……! お尻……冷たくて……! ひぃぐうううううぅっ! 嫌だ……もうこんなの嫌あああぁッ! やめて……お願いだからやめてえええええぇっ!」
「いいわ、実にいい声。……ねえ、陽炎ちゃん。アナルを犯されてよがっているみたいだけど、あなたがこれから味わう快楽はまだまだこんなものじゃないの」
「な……何言って……。どういう意味……っ!? ひっ!? こっ、これっ……! さっきのあそこの感覚と同じ……お尻も……お尻も熱くなって……! あっ、あああああああぁっ!」
「粘膜は媚薬の吸収が早いらしいわよ。特に腸粘膜は、なおさらだそうね。これであなたのお尻はあっという間に感度抜群のケツマンコに早変わりというわけ。……それじゃ始めるわよ、媚薬ローションスライム二穴責めによる強制連続絶頂。ギブアップしたいときはいつでも言って。堕ちることと引き換えにやめてあげるから」
前後の秘穴を満たす液体が暴れ、震え、胎内を舐め回し始めた。既に媚薬効果が色濃く出ている身体にとっては甘美、という感覚を通り越して苦痛にさえ感じられるほどの刺激が与えられ、陽炎は悶え苦しむ。
「ひぎゃあああああああああああああぁっ! あ゛っ、あ゛っ、あああああああーっ! これダメぇ……! ダメダメダメダメええええええええぇッ!」
最初の絶頂は呆気ないほど簡単だった。不知火が本気の責めを始めてから数秒と経たずに絶頂を極めさせられる。しかしスライムの動きは止まらない。
「いやああああああああああああッ! イッてる……今イッてるからああああああぁっ! やめて……止めてええええぇっ! あううぅっ、ひぐうううううううぅっ!」
絶頂直後の敏感な粘膜を容赦なく抉っていくローションスライム。そして絶頂から降りてこられないままに迎える、2度目の連続絶頂。
「あっ、あぁあああああああああぁっ!」
さらに叫んでいる間にも絶頂。完全に制御不能となり、絶え間ないアクメの連鎖から抜け出すことが出来ない。降りて来られないエクスタシーの中で、陽炎は悲鳴のような嬌声を上げ続ける。
「いやっ、いやああああああああああぁっ! あんっ、あああああんっ、んぎいいぃっ……んおおおおおおおおおぉっ!」
「フフッ……いい声、そしていい表情……。本当にゆきかぜそっくり。そうやって乱れ狂う顔もかわいいわよ、陽炎ちゃん……」
近づいた不知火は優しく娘そっくりの少女の頬を撫でる。その間も陽炎を襲う終わりなきオーガズム。前後不覚に陥り、今自分が何をされているのか、どんな姿勢なのかすらわからなくなってくる。
「あっ、あっ、あああああっ! も……もう……許し……許してぇっ……! ひっ、ひいあああああああああぁっ!」
とうとう懇願が意固地に反抗し続けていた少女の口から零れた。焦点の定まらない瞳が動かされ、部屋の中でずっと様子を眺め続ける女性を見据える。
「あひいいぃっ! あっ、あっあっあああああっ! あ、あぁ……。たす……助けて……母……さん……」
異世界の「娘」に助けを求められても、「母」の顔に浮かんだものは冷たい笑みだった。
「助けてあげてもいいわよ、陽炎。……でもずっと言い続けていることが条件ね。私のお願いを聞いてくれれば、すぐにでもやめてあげるわ」
「あ……あぁ……! ああああああぁっ!」
願いは聞き届けてもらえない。もう何度目かわからない絶頂に陽炎の身体が震える。
「なかなか頑張るわね。じゃあ中だけじゃなく、外からも責めましょうか」
しかし不知火は冷酷だった。これでも堕ちないとわかるとさらに苛烈な責めを加える。陽炎の身体を包み込み、さらに固定して横たわらせているローションスライムのベッドまで動き出し、全身を愛撫し始めたのだ。
「あっ、あああああんっ! あうっ、あっ、ああああっ! ひぃあああああああぁっ!」
なだらかな膨らみの胸、頭の上で両腕が固定されているために露わとなっている腋の下、さらには太股や二の腕に、手や足の指の間まで。スライムによる文字通りの全身愛撫に、体力を大幅に失っているはずの陽炎の声のトーンが増して裏返り、なおも増した快楽で乱れ狂う。
「あきゃああああああああああぁっ! らめ……らめええええっ! おかひく……おかひくなるうううううっ! 身体中ぬるぬるで……なにされれるか……もうわかんらいよおおおおおおおぉっ!」
呂律まで麻痺し、心の奥底に隠していた年相応の弱さが現れ始めていた。瞳からは涙が溢れ、「母」へと必死になって訴えかける。
「母さん……たすけれ……たすけれよお……! もうわらひ……ひんりゃうぅ……!」
「なら、母さんのお願い、聞いてくれる?」
だがその問いに、やはり陽炎は受け入れる返答を返さない。
「それは……それらけはらめなのぉ……! わらひは……わらひはぁ……!」
「聞き分けの悪い子ね。……お母さん、強烈なのを一発お願い」
「ええ、わかったわ。……陽炎ちゃん、とどめ、いくわよ。あくまで抗おうというのなら、気をしっかり持ってね。でないと……狂って壊れちゃうから」
肛虐を続けていたスライムが蠢く。犯し続けていた直腸からさらに奥へと逆流して結腸へ。
「な……にこれぇ……! お尻……お腹……おか……しぃ……!」
違和感。快楽を与え続けていたこれまでの動きとは別物だった。内部から全身を冷やされ、それが徐々に昇ってくるような感覚。
「あっ、あがぁっ……! んぐっ……うぅっ……」
体内を弄られるような感覚と同時に吐き気も覚えたところで、陽炎はようやく自分の身体に起こった異変に気づいていた。ただ身体の内側を犯されているだけではない。今の吐き気、まるで次第に冷たい感覚が上へと昇ってきているような――。
「ま……さか……! うぐぅっ……!」
「気づいたみたいね」
不知火の笑みが、今の予想が間違い無いということを裏付けていた。
「わらひの中……スライムが逆流しれぇ……! そんらっ……! これっ……いっ、いやぁ……いやあああああっ!」
絶望の叫びだけがむなしく響く。身動きを完全に封じられ、いや仮に動いたとして、身体の中のこととなってはどうすることも出来ない。身体の内側を犯され、媚薬効果によって性感帯に変えられていく感覚、それ以上に迫りくる耐え難い嘔吐感に抵抗しようと、陽炎は歯を食いしばってガタガタと身体を震わせていた。
「ウフフ……。苦しそうだけど、それだけじゃ酷よね。快楽で少しでも苦痛を和らげてあげる……」
「う、あああぁっ! ま、まら……あそころ……身体中が……! あっ……くうっ……! あっ、あんっ……あくぅあああああーっ!」
今度口から出た声には明らかに官能の色が混じっていた。動きを止めていた粘液のベッドとスーツが全身を愛撫し始め、膣と肛門、さらに子宮内のスライムもモゾモゾと動き出す。快楽と苦痛が入り混じり、今何に対して耐えているのかもわからなくなっていく。流されるままに拘束された身体をくねらせようとし、それも叶わずにただただひたすらに苦悶し、喘ぎ続けていた。
「さあ、そろそろフィニッシュかしら。強力すぎる媚薬漬けにされて身体の内も外もスライムに犯されて……無様なアクメを見せて頂戴」
身体に襲い掛かる快感が一気に増した。粘液に包まれていない顔の額に球のような汗が浮かび、全身の痙攣が止まらない。断続的に小さな絶頂には晒されている。が、それを超える大きな絶頂の波が、陽炎に忍び寄りつつあった。
(イ……ク……っ! このままじゃ……またすごいのがキちゃう……! で、でも……スライムが……どんどん昇ってきて……!)
同時にお尻の穴から逆流してきたスライムがついに終着点へと辿り着く。すなわち本来食物が消化され、排出される工程と逆の手順を踏んで口へ――。
「あんっ、あんっ、あああああんっ! イ……クうっ……まらイッひゃうううっ……! もうイキらく……ないろにぃ……! ら……らめ……もう許ひて……! イク、イクッイクイクイクイクぅっ……! いや、いやぁ、いやらあああああああぁッ!」
ガチガチに固められた身体を激しく震わせ、陽炎は深く、望まない絶頂を迎えた。同時に――。
「おっ……ぶぉっ……!? お、おおッ……ごっ……ぼおおォッ!」
陽炎の口から媚薬ローションのスライムが嘔吐される。肛門から全身を遡り、体内を媚薬で蝕んで吐き出された異物。それを胃液と共に吐き出して白目をむきながら、それでも体内器官までも媚毒に汚されたことで確かに身体は絶頂してしまっていた。
(死……ぬ……。私……こんなのを続けられたら……死ん……じゃう……。なのに……身体は気持ちよくなって……もう……もう……)
スライムのベッドに抱かれて全身を包み込まれたまま、ヒューヒューとか細く陽炎は呼吸をしていた。身体を動かすだけの体力も、何かを言い返すだけの気力も失われてしまった。脱力しきってガクリと項垂れている。
その様子を確認し、不知火は指を鳴らした。それまで液体でありながら硬度を自由に調節し、形状を保っていたスライムが突如として崩壊して霧散していく。
「もう拘束も必要ないでしょう。力も出せないでしょうから」
クスッと笑って不知火はゆきかぜの方へと視線を移す。完全な隙。そうわかっていても、今の陽炎には飛びかかることは出来なかった。
「ゆきかぜ、後は任せるわ」
「ありがとう、お母さん。……アスカ、手伝って」
「はぁ? 私じゃ力不足ってことで説得役を落とされたんですけど」
「いつまで拗ねてるのよ。まだ口には出してないだろうけど、あの子はあんたが好きなのよ。頑固だから、言わないだけであってね」
「何でそんなことがわかるのよ?」
アスカの問いに、ゆきかぜに小悪魔的な笑みが浮かんだ。堕落したことを明らかにする、不気味に惹かれる笑み――。
「だって私は、あの子の母だから。私そっくりの娘の考えることなんて、全部お見通しよ」
ため息と共にアスカが立ち上がった。先を歩くゆきかぜと共に、床に身体を横たわらせて痙攣する陽炎へと近づく。
「陽炎、少しは素直になった?」
覗きこまれたゆきかぜに対し、陽炎は視線だけを動かす。だが身体を動かすことはなく、その口からも何も発せられない。
「ちょっときつかったかな、完全に伸びちゃってるか。ねえアスカ、キスでもしてあげて。きつけ薬の代わりになるでしょうし」
「何よ、そのために私呼んだの? ……まあ大歓迎だけどさ」
強引に顔を引き起こし、アスカが唇を重ねる。普段なら抵抗され、場合によっては噛まれたこともあったが、今回そんなそぶりは全くなかった。それどころか陽炎の口内をアスカの舌が這い回るだけで陽炎は身体を小さく震わせ、股間から新たな蜜が垂れてくるほどである。
「さすがお母さん。媚薬ローションのスライムは効果抜群ね。身体の中まで犯されたのが相当効いたみたい。アスカにキスされるだけでイッてるものね」
そういうわけかと理解したアスカは笑みを浮かべ、なおも激しく舌を絡ませる。唾液の交わる音と主に陽炎の身体は震え、ヒクヒクと淫裂が動いていた。
「さて、アスカとのキスに呆けてるところ悪いけど、あなたを説得しなくちゃいけないの。だから聞いて、陽炎」
両膝を付き、同じ目線にしてからゆきかぜは慈愛の表情と共にそう切り出した。
「抵抗なんて、するだけ辛くて無駄なことってわかったでしょ? どうせなら、今アスカにしてもらってるみたいに気持ちいい方がいいに決まっている……。だから、私のお願いを聞いて頂戴」
「い……や……」
弱々しいながらも変わらない否定。苛立ったアスカが頬を一瞬引きつらせるが、ゆきかぜは落ち着くように目で促してからその顔を覗き込んだ。
「ねえ、陽炎。何があなたをそこまで突き動かすの? 目的は何?」
「私は……朧を……討つ……」
「どうして?」
「母さんの……仇……」
フフッとゆきかぜが小さく笑った。
「あなたの母さんは、今ここにいるわ」
「違……う……。あなたは……母さんじゃ……」
「何が違うの? 同じ顔、同じ声……。そしてより強くあなたを思う心。確かに自分のお腹を痛めたわけじゃない。だから母親の代わりにしかならないかもしれない。……でもそれでもいい。無駄に抗うあなたを、孤独から救うことができるのなら」
ゆきかぜの手が、彼女と同じ色の陽炎の髪を優しく撫で上げた。
「……もういいの。独りでそんな辛い思いをすることなんてないの。あなたには、私も凜子先輩も、それにアスカもいるし、必要ともしている。異世界から来たからこの世界に居場所が無い、なんてことはない。……いいえ、前の世界でも苦しみ続けたあなただからこそ、この世界で報われる権利があると私は思うの。たとえ偽りでも、失ってしまった母さんと一緒になれる資格がある。……だから私はあなたの母さんになるわ。ねえ、陽炎。母さん、って呼んで」
「あ……あぁ……」
陽炎の瞳に涙が浮かぶ。いけない、そう頭のどこかでわかっていても、溢れる涙は止められなかった。元の世界で味わった絶望、異世界にとばされて感じ続けた孤独、そして捕らわれての拷問による苦悶と、変わっていく世界に対して何もできないという己の無力。既に弱りきっていた心に、ゆきかぜの言葉は甘く、同時に背徳的に響いてきた。
この世界が変わってしまったところで、それでもいいのかもしれない。少なくとも今目の前には母と呼んでいい人間がいる。捜し求めて手が届かず、永遠に会うことすら叶わなかったはずの女性がいる。いや、母だけではない。もう片親である凜子、自分を友人以上の存在として認めてくれているアスカ……。
果たして元の世界でこれほど愛を注いでもらったことがあっただろうか。大切な人達に囲まれていただろうか。仲間と思っていた対魔忍の連中も、結局は自分を利用することしか考えず、どこかで羨まれ続けた。それが元の世界での自分の置かれた立場だったのではないだろうか。
「陽炎、私が生んだわけでなくても、私にとってあなたは大切な娘……。話を聞いて、そう思えるようになったわ。だから、自分をそんなに粗末に扱わないで。あなたがいなくなったら私は悲しいし、きっとここにいる人達も皆そう。……自分の気持ちに正直になりなさい。元の世界で叶わなかった夢……母さんである私と一緒にいる。それを、この世界で叶えたいとは思わない?」
「あぁ……あぁ……!」
プツン、と自分の中で何かが切れたのを陽炎は感じていた。今まで何を意固地になっていたのだろうか。無理をしようとしていたのだろうか。
「そう……か……。もう……いいんだ……」
「そう。もういいのよ」
解放された心の喜びで、瞳から大粒の涙がこぼれる。そんな娘を、母は優しく抱きしめていた。
「母……さん……」
「なあに、陽炎?」
「母さん……」
呼ぶたびに安らぎが満ちていく。そうだ。この時をずっと求めていて、もう叶うことは無いと諦めていた。しかし今それが叶ったではないか。
これでいいんだ。その思いが、まだ疑問を呈そうとする心を溶かしていく。ここで母達と共に生きる。世界がどうなろうともう関係ない。瞳が濁った陽炎は、それが何もおかしいとは思わなくなっていった。
「さて、感動の母との再会も終わったところで、ちょっといいかしら」
と、それまで様子を窺っていた朧が近づきつつ口を開いた。
「一応、あなたと母の再会の場をプロデュースしたのはこの私ってことになるわけよ。……まあ、前の世界でその母を殺した私のどの口が言うんだって話かもしれないけど。だけどね、言い訳染みてるけどあの時は仕方なかったの。あの世界のゆきかぜと私は別の勢力同士。決して望んでのものでは……」
「もう……いいです……。過去のことは……」
会話を遮られてのその言葉に、朧は面食らった様子で数度瞬く。
「あなたの片腕となれば、母さんともアスカとも一緒にいられる……。だったら、もうあなたを恨む心は……ありません」
「あはっ……陽炎……!」
「そう。アスカも喜んでるみたいだし、だったら私も文句は無いわ」
妖艶な笑みが朧に浮かぶ。その彼女の眼前で、娘代わりの少女は今しがた堕ちた少女へと口付けを交わしていた。
「あらあら、お盛んね。でもいいわ、止めるなんて野暮な真似はしない。ずっと待ち望んでいたんでしょうから、好きなだけ快楽を貪りなさい。ウフフ……」
それから朧は不知火へと視線を移した。かつて対魔忍であった女同士の視線が交錯し、互いに微笑を溢す。
「あんたには感謝しないといけないね、不知火。あんたのおかげでゆきかぜが堕ち、凜子も堕ちて、最後は陽炎も堕ちた。ありがたく思ってるよ」
「いえ。矢崎様も私の娘を抱けて満足していたようですし、礼には及びません。……ただ、あくまで私は矢崎様の奴隷娼婦です。ですから……」
「わかってるよ。あの方も弟のリーアルも、私に賛同してくれてる。それに重要なスポンサーでもある。こちらとしてもいい関係を続けたいと思ってるし、私の両腕はアスカと陽炎だ。だからあんたは今までの通りでいい。それにゆきかぜと凜子は戦力が必要なときは呼ぶかもしれないけど基本的にはリーアルに返すつもりでいる。それでいいかい?」
「ご聡明な判断、感謝しますわ」
顎を軽く引いて頭を下げる不知火。それを見て、朧は苦笑を浮かべていた。
「……まったく、昔を思い出すね。あんたも私も対魔忍だった。それが時を経て、こうなるとはね」
「本当ね。でもこれこそが正しい姿だった。そうわかるわ。娘も、さらにその娘も私と一緒になることができた。その機会を作ってくれたあなたにも、感謝してるわ」
かつてを思い出すように、不知火は砕けた口調で話していた。だが朧にそれを咎める様子は無い。むしろどこか懐古を喜ぶような気配さえ滲ませていた。
「さて、ゆきかぜ。説得ご苦労様だったね。母親ともっと過ごしたいかもしれないけど……。凜子と、それからそこでイチャつき続けてる2人と一緒にやってもらいたいことがある」
「わかってます。確かにもう少しお母さんと一緒にいたい気持ちが無いわけじゃないですが、私ももう母親ですから。しっかりしないと」
「いいねえ。母は強し、かしらね」
不気味に笑ってから、今度はまだ絡み続ける陽炎とアスカに目を移した。
「……まあ夢中そうだし、後でいいか。アスカもずっとこの時を待っていただろうし。満足いくまで、楽しむといいわ」
キスに没頭し、それだけで達してしまっている陽炎を見つめつつ、朧は満足そうに肩を震わせた。
「そのお楽しみが終わったら……いよいよあんた達にも動いてもらうよ。私の望む世界への第一歩……。まったく楽しみでしょうがないね」
朧の視線の先、彼女の両腕となった少女達はまだまぐわい続ける。異世界の堕ちた対魔忍の少女は、アスカに唇を塞がれて舌を絡ませ合い、これからの未来を予期したかのように身体を震わせていた。
凜子の堕ち衣装はイメージ+個人的好みで。対魔忍スーツも似たようなものかしれないですが、キャットスーツ好きなのでその辺りを想像してます。が、漠然としか出来ない貧相なイメージ力……。
これでバッドルート終わりそうなところですが、もうちょっと続きます。本編じゃおそらく出来ないから、こっちで原作主要キャラのシーンを描きたいと思っているので。