◇
闇の宮殿の廊下を、アスカが嬉々とした表情で歩く。今、彼女は美琴のラボで残っている右手のアンドロイド・アームの調整を終えたところだった。本来機器メンテナンスは美琴の担当ではなく、今回も彼女は何も関わっていない。だがアスカを引き入れた後、朧がDSOを丸々掌握していた。故に小谷をはじめとする優秀な技術者達は「説得」されて、今はこのヨミハラでノマドのために技術を提供して腕を振るっている。
調整が必要な義肢が1本となったことでアスカ自身への負担も大幅に軽減された。そのために気持ちが軽いというのはある。だがそれ以上に、彼女にとって求めていた存在――陽炎が、敬愛する人のもう片腕となったことが嬉しかったのだった。これでもう怖いものなどない。あとはその敬愛する人の望むままに自分と陽炎という両腕が力を振るい、この世界は変わっていく。
「甲河アスカ」
そんな風に考えつつ足を進めていたところで、不意に声をかけられた。足を止め、彼女は顔を動かす。黒の騎士服に身を包み、どこか不機嫌そうに立っている美女がそこにいた。
「あら、魔界騎士イングリッド様じゃないの。どうかした? 私に何か用?」
「……以前お前と戦った際、私はお前に興味をそそられた。だがその後朧に捕らわれてノマドへと寝返った今のお前は、まるで別人のように思えてな。朧の操り人形にしか見えん」
妖艶ながらも笑みを浮かべていた、上機嫌なアスカの表情が一瞬で引きつった。声のトーンを落として問い返す。
「……何が言いたいのよ?」
「あの時のお前は確かに朧に対して敵意を持っていたはずだ。しかし今はそれが微塵も感じられない。連れてきたDSOの連中のように、頭を中を弄くられでもしたのかと思ってな」
「されてないわ。私が間違っていた。そして朧さんがそのことを教えてくれて気づくことが出来た。ただそれだけよ」
イングリッドの目がますます細められる。その答えが気に食わないとでも言いたいかのように。
「この頃の朧の行動は目に余るものがある。お前の次は対魔忍連中2人、さらにお前と一緒に捕まえた陽炎とかいう小娘も引き込んでいる。確か両腕にする、と言っていたとも覚えているが、よからぬことを考えているのではないかと勘繰らずにはいられなくてな」
「だったら朧さんに直接聞けばいいんじゃないの? ……それとも何、私ならペラペラ話すとでも思った?」
「お前の以前からの変化が気になっていたのは事実だ。お前ほどの、それも以前は朧を敵視していた者が、掌を返したかのようにあの女を妄信している。それがどうにも腑に落ちなかったのだ」
向けられる懐疑の視線を受け、アスカも鋭く己のそれを返した。周囲の空気が一気に張り詰める。
「なんかあんたのその言い方、気に食わないわね。朧さんを目の上のこぶだとでも言いたいの?」
「元々私と朧は噛み合わない者同士だ。過去の確執もある。信じろという方が無理だ。私から言わせてもらえば、あの女はいつ裏切るかわからない。なのにかつて私が認めたお前ほどの使い手が、奴を心酔している。いつか足元をすくわれるのではないかと忠告したかった」
「……随分と勝手な言い分だし、余計なお世話過ぎて腹が立つわ。朧さんのことを悪く言うなら、私が許さない。イングリッド、たとえあんただろうとね」
一層、空気が剣呑さを増した。アスカは隙あらばいつでも斬りかからんとアンドロイド・アームに力を込める。対するイングリッドも組んでいた腕を解き、来るならすぐにでもダークフレイムを召喚して斬り返すと言わんばかりだ。まさに一触即発。
「アスカ、辺りに殺気を撒き散らして何してるの? 義肢の調整は終わったんでしょう?」
と、その時聞こえてきた女の声にアスカが放っていた気配が一気に霧散した。表情を明るく輝かせて、その声の主の元へと駆け寄る。
「朧さん! 聞いてくださいよ! イングリッドの奴が朧さんが信用ならないとか言って。私を懐柔しようとしてくるんですよ」
「あら。それは随分と穏やかじゃないわね、イングリッド?」
「懐柔など考えていない。忠告しただけだ。……お前は信用ならないとな」
当人を前にして再度告げられた言葉。それに再びアスカは敵意を見せていた。一旦穏やかになった辺りの空気が再び張り詰め出す。
「こら、アスカ。そんな血気に逸らないの」
「でも……!」
「やはり気に食わんな。以前の貴様ならこうも言えば突っかかってきただろうに、その余裕は信じられん。そしてますます疑心を深めざるを得ないな」
射抜くような視線を受け、ここまであしらうように対応してきた朧の態度が変わった。
「ふうん。イングリッド、私はあんたと仲直りをして友達になったつもりだったけど、あんたはそうじゃないって言いたいわけだ」
「当然だ。貴様のような女と友人など、あるはずがない。寝言は寝てから言え」
「……ねえ、朧さん。もういいんじゃないですか?」
再び戻った緊張する空気の中で、アスカはそう呟いた。
「もうこの女に利用価値なんてありませんよ。むしろさっさと排除すべきです。殺しちゃいましょうよ」
「私を殺す、か。面白い冗談だな、甲河アスカ」
イングリッドの右手に愛剣であるダークフレイムが召喚された。反射的にアスカも右腕のブレードを展開し、一歩踏み出して朧との間に割って入る。
「待ちなさい、アスカ」
だが朧は血気に逸る彼女を制していた。
「なぜ止めるんですか!?」
「感情だけでどうにかできるほど、イングリッドは甘くは無いわ」
「ほう。まさか貴様がそれほど冷静で、さらには私を褒めるとはな」
「事実だからね。……あんたは厄介な存在だ。だから可能なら事を構えたくない。そういう意味で過去のことを水に流すよう頼んだし友好な関係でいたいと思っていたんだけど……。受け入れてはもらえないみたいだね」
ギラリと朧の目がイングリッドを見据えた。敵対意思は明確。
「最終確認だよ。私が望む友好的な関係に戻りたい、っていうなら、これが最後のチャンスだ」
「くどい。来るなら来い。なんなら2人掛かりでも構わん」
「そうかい。寛大だねえ。じゃあ遠慮なく……」
朧の口が、残忍な笑みを浮かべた。
「
「な……ッ!?」
イングリッドの言葉は、最後まで言い切られることは無かった。何かが弾けたような音が聞こえ、辺りが一瞬だけ照らし出されたように光に包まれる。直後、魔界騎士が右手に握り締めていたはずの愛剣であるダークフレイムが床に落ちて音を立て、それから消滅。続けて彼女の身体が脱力し、膝から崩れ落ちた。
「お見事。稀有な2種類の力が対魔忍の力の根源に触れたことでここまで強化された、というわけね。しかも華麗に使いこなせてみせている。……さすがは私の左腕ね、陽炎」
「ありがとうございます、朧様」
名を呼ばれた少女が、傅くように朧の傍らに突如として現れた。捕らわれ、苛烈な拷問と調教によってとうとう朧の片腕へと堕ちた異世界の少女・水城陽炎。
今の彼女はかつての対魔忍スーツと全く別な衣装に身を包んでいた。
膨らみのなだらかな胸元は中心部分が開いたまま外側から包み込むよう布に覆われ、局部はV字の際どい下着の下に隠されている。その他には羽織りも履きもしない、上半身は肩口はおろか鎖骨まで、下半身にいたっては股関節の際どいラインに加えて臀部まで露わとなる新しいコスチューム。腕には同様の色のロンググローブとその上に腕を防御する手甲。足は膝上までのロングブーツに包まれている。腰のベルトの左側に愛刀をぶら下げ、だがかつて装備していた銃はもう無い。母同様の高出力で雷遁を扱えるようになった彼女にはもう不要の物となっていたからだった。
衣装以外に目立つ変化として、臍の辺りを中心として紫色の幾何学模様が浮かび上がっていた。魔の力――対魔忍の力の根源へと触れたことで、覚醒した代わりに身体に浮き出た痣。アスカ同様のその紋様から、使用する忍法の威力は魔の力を取り込み、手練れの対魔忍でさえ相手にならないほどに強化されていることは察しがつく。
そして彼女にとってトレードマークとなっていたマフラー。ゆきかぜと瓜二つ顔を持ち、同時に別人であることを証明するシンボルでもあったダークレッドのマフラーを今もあえて身につけ、今も鼻と口を隠していた。
落としていた視線を戻し、陽炎はアスカを見る。その目に、どこか得意げな色が浮かんでいるのを見て、やはり彼女がやったに違いないとアスカは再確認していた。
「ああ、そうか。今の、雷遁と空遁の合わせ技、ってこと?」
「まあそんなところ。雷遁の術による高圧電流を空遁の術で飛ばし、対象の気配察知の外から攻撃することで抵抗も反撃も許さずに無力化する。名づけて、忍法・雷遁空遁混合の術、『
「お世辞抜きに賞賛に値するわ。なんといっても、あの魔界騎士を何もさせずに無力化させてしまったのだから。……それに私の要望にこれ以上ないほどのタイミングで合わせてくれた」
朧の言葉に対し、陽炎は頭を下げる。本来ならば母を殺した相手。にも関わらず、もう過去のわだかまりを捨て、新たな母と巡り会った彼女は、今や忠実な朧の左腕として任務を全うしていた。
「勿体無いお言葉です」
「なーによ、陽炎ばっかり朧さんにちやほやされちゃって。嫉妬しちゃうわ」
「妬かないの、アスカ」
口を尖らせる右腕へ、朧は母のように優しく言い咎める。それから足を進め、床に倒れたまま動かないイングリッドへと歩み寄った。
「アスカ、確かにあなたの言ったとおり、イングリッドに利用価値は無いかもしれない。……でも、それは表舞台では、という意味だと思う。舞台の裏側では、ガス抜きとしていくらでも使い道はあるわ」
「ガス抜き……?」
「ああ、そういうわけか。さすが朧さん」
わからない、という様子の陽炎に対し、アスカは無邪気で残忍な笑みを浮かべる。
「朧さんはこいつを見世物にする気なのよ。お高く止まっていた騎士様ですもの、恨みを持っていた連中はこの街に多くいる。そいつらの慰み物にしてやることで、朧さんに友好的な目が向いて、より統率しやすくなる、ってわけよ」
「そういうこと。まあそっち関連は私に任せない。アスカ、陽炎、あなた達には私の両腕として、これからやってもらうことがある。ゆきかぜと凜子にはもう伝えてある、と言えば、何をやるかは想像がつくわよね?」
神妙そうに頷く陽炎の一方で、やはりアスカの顔にあったのは笑みだった。
「勿論ですよ! 最強なんていわれてるあの井河アサギに、ようやくこの手で引導を渡せる、ってことですよね……! ワクワクしてきた……!」
「殺さないでよ。あの女は、私がこの手で淫獄へと堕としてやるんだから」
「大丈夫ですよ、朧様。いざとなったら私がアスカを止めますから」
「ちょっと陽炎! あんた何私の保護者ぶってるのよ!」
自身の両腕のやり取りを目にし、朧は小さく肩を震わせて笑う。
「ま、とにかくよろしく頼むわね。……ああ、美琴が連れて行けってやかましいかったから、ゆきかぜ達と一緒に待機させてある。詳しい話はあの子から聞いて」
「わかりました。では、行って参ります」
アスカに手をかけ、どこか遠くを見通すような目を見せた後で、陽炎はアスカと共にその場から消えた。空間跳躍の法。それも力の強大化によって、従来より正確性が増し、体力の消耗が抑えられるようになっている。
己の最も信頼する腹心2人に任せれば、間違いなくこの計画はうまくいく。その確信と共に朧は屈み、未だ気を失い続けるイングリッドへと囁きかけた。
「さて、かわいそうだけどあんたは一足先に舞台から降りてもらうよ。恨むなら、私と敵対することを選んだ愚かな選択を恨むんだね……」
答えは無い。それでも朧は満足そうな笑みを浮かべたままだった。
◇
「んぅ……。むぐぅっ!?」
意識が覚醒すると同時。身体の自由が全く効かないことにイングリッドは違和感を覚えた。いや、それだけではない。目を開けているはずなのに何も見えず、声を発しようとしてもくぐもった声しか出すことができない。
「あら、お目覚め? おはよう、魔界騎士様」
「おほおっ……むおおっ!? んんっ、んぐおおっ!」
聞こえてきた声の主の名前を呼ぼうとしたイングリッドだったが、それは叶わなかった。代わりに口を強引に開く球体状の器具から涎が零れ落ち、さらに嬌声も漏らしてしまう。左胸を力任せに押し潰されたことで、声にならない声をあげていた。
「まったく、はしたないわね。そんなに涎を垂らして、喘ぎ声まで出しちゃってさあ」
「ん、んぐぅっ……。おほ……おぉ……!」
「もしかして私のことを呼んでる? でも『様』が足りないみたいよ。前の『私』の躾が足りなかったんじゃないのかしら?」
今度は右胸。視界が暗闇に閉ざされているために具体的にどうされているかはわからないが、手で握られるように形を変えられ、中心の乳首を指の間で擦りあげられる感覚を覚えた。
「んぐおおおおぉっ!」
途端に全身に走る電流のような快感。声を我慢できなかったことに、いや、それ以前に僅かこれだけの刺激で身体が色めき立ったことに、イングリッドは動揺を隠せない。
(なん……だ……これは……!? まさか……私が気を失っている間に……以前私に使ったような薬を……?)
かつて朧に捕らわれ、無様に貶められた屈辱の記憶が蘇る。投与された部位を性器以上の強力な性感帯に変えてしまうカスタライザーによって乳首をはじめとした身体中のあらゆる箇所を改造され、その上で強力な媚薬であるオルガライザーを塗りこまれた。何をされても絶頂を覚えるほどの超敏感な身体に仕立て上げられ、馬漢達獣人によって徹底して凌辱された。その後遺症に悩まされつつも、どうにか立ち直ってノマド再興のために動き続けてきたというのに、またあの地獄へと突き落とされてしまうのだろうか。イングリッドの心に不安と恐怖がよぎる。
「ん、ぐうぅ……。ころ……ひぇ……」
「屈辱より死を選ぶ。さすがは誇り高き魔界騎士様ね。でもダメよ。あんたにはまだ役割がある。……こいつらを満足させるって役割がね!」
視界を覆っていた目隠しが取り払われた。突如感じた眩しい光に目を細めつつ、次第に目が慣れてきて、見えた光景に彼女は息を呑んだ。
そこはヨミハラの広場だった。魔界の住人やら亜人やら、様々な者達がひしめき合い、イングリッドへ好奇の視線を投げかけている。
「ほら、挨拶しな。あんたをこれから延々と
「ぷあぁっ……! あ……ああ……」
ボールギャグが外されると同時、イングリッドの口から狼狽した声がこぼれた。身体の異常はもう確認するまでもない。以前同様、気を失っている間に淫らに改造されてしまったとわかる。当然の如く力など入らず、本来の数パーセントの能力も発揮できないであろう。その状態でひたすら犯されるとなったら、一体どうなってしまうのだろうか。
どうにか逃げ出せないかと、彼女は身体を動かそうとし、固定されている器具を確認した。が、両腕は首の脇で枷に嵌められて前屈みのままガッチリと固定され、足も閉じられないように拘束されている。上半身を直角に折り曲げ、無様に尻を突き出す格好を強いられているとわかり、美しい顔が屈辱に染まる。
「あぁ……。イングリッド……様……」
と、そこで聞こえてきた弱々しい女の声に、イングリッドはどうにか動く首を声の方へと向けた。
「なっ……! お、お前達……」
そして再び悲愴に満ちた声を上げる。イングリッドの視線先、そこには彼女同様枷に固定されたイングリッドの親衛隊の面々が捕らわれていたのだ。親衛隊出身で、彼女を献身的に支え続けた女幹部の姿もある。
だがその彼女らの背後。オーク達が滾る股間を露出させ、朧からの指示を今か今かと待ち構えていた。支持があれば即座に犯される。そう推測するのは容易だった。
「朧! 私の部下は関係ない! お前の目的は私だろう!」
「あらあら、仲間思いなのね。……じゃあ何、あいつらが受ける分までの責めも自分が受けるから、見逃して欲しい、ってでも言うの?」
「そ、そうだ……!」
このまま全員が無駄に犯されるぐらいなら、自分が身を挺して部下を守るべきだ。そうイングリッドは考えていた。ノマド再興の際に、彼女らは自分のために懸命に尽くしてくれた。加えて、ここでうまく逃がすことができれば、いずれ自分を救う時が来るかもしれない。
「なるほどね。部下の分まで自分が咎を受けよう、ってわけだ。いい上司に恵まれたじゃないか、お前達」
「イングリッド様……」
「でもね、イングリッド」
感謝の眼差しを向ける親衛隊の思いを打ち砕くように、朧が言葉を挟む。
「ものを頼む時っていうのは頼み方ってのがあるでしょ? それがわかってないんじゃないのかしらあ?」
「う……くっ……! お……朧……様……」
「はいはい。なにかしら?」
愉悦に満ちた笑顔と共に、朧はイングリッドに問いかける。
「部下の分の責め苦まで……私が負います……。ですから……」
「ダメ。ぜーんぜんダメ。ほんとわかってないのね、あんた」
力任せに右の乳首が抓り上げられた。
「ひぎぃっ……! ひっ、ああああああぁっ!」
カスタライザーとオルガライザーでクリトリス並みの性感帯に改造された鋭敏器官への暴力的な刺激。快楽信号が全身を駆け巡り、イングリッドの身体が痙攣した。
「私がお願いの仕方を教えてあげる。私の後に続いて、この場にいる連中皆に聞こえるようにはっきりと言うのよ。いいわね? ……ねえお前達、こいつがここにいる皆にどうしても聞いてもらいたいことがあるらしの。聞いてもらえるかしら?」
エンターテイナーがショーを盛り上げるように。朧はわざとらしく大げさな身振り手振りで、広場に集まった観客達の注意を引きつける。視線が十分に集まったとわかったところで、再びイングリッドに顔を近づけ、小声で話し始めた。
「じゃあいくわよ。……私は、魔界騎士とは名ばかりの淫乱なメス豚です」
「く、うぅっ……! わ……私は……」
「声が小さい」
「ぎっ、ひぃああああああああぁっ!」
今度は逆の左の乳首。再びイングリッドの身体が激しく跳ねた。
「わっ、私はっ……! 魔界騎士とは名ばかりの……い、淫乱な……メス豚ですぅっ!」
「ですから朧様、どうか私のいやらしいメス豚オマンコを、壊れるぐらいに犯してください」
「で、ですから……おっ、朧様……。どうか……」
そこで誇り高き魔界騎士は一瞬口を噤んだ。たとえ部下のためであろうと、自らねだるような言葉を口になどしたくない。それも憎むべきこの女の前となればなおさらであった。
だが迷っている様子を見た朧は、イングリッドの親衛隊の背後に立つ亜人達に目で合図を出していた。一斉に腰を掴み、いつでも挿入できる態勢をとる。
「ま、待て! 待ってくれ!」
「なら早くしな。ちゃんとこの場にいる全員に聞こえるように、はっきり言うんだよ」
「く、ううっ……!」
「い、いけません! イングリッド様!」
その時、捕らわれている部下のうちの1人が声を上げた。幹部となり支え続けた彼女の側近。イングリッドがブラックを心酔するように、彼女もイングリッドを心酔していたことは、本人もわかっていた。
「あなた様は気高き魔界騎士です! 私達はどうなろうと構いません! そんな下賎な女の口車などに乗せられては……」
そこまで言ったところで、だった。背後に立つオークが、剥き出しの尻へと無遠慮に平手を叩きつける。
「ひっ、ぎぃっ……! あっ、がああああああああああぁっ!」
バチーン、という肌を打つ音の後に、獣のような咆哮が響く。その瞬間、イングリッドの顔色が変わった。
「言う! 言うからやめてくれ!」
今の反応は痛みだけによるものではない。明らかに異常な反応だった。そして今の彼女ならそれが何かわかる。カスタライザーとオルガライザーによる身体の改造。その結果、感覚が鋭敏になりすぎ、痛みでさえ快感として捉えてしまうが故の反応。自分同様の投薬がされているのだとしたら、犯されればこのまま全員が共倒れとなってしまう。そのことを悟り、イングリッドは腹を決めた。
「だったら早くしなって言ってんだろ。ほら、言いな」
「く、ううっ……! お、朧様っ! どうか、私のいやらしい……め、メス豚オマンコを! 壊れるぐらいに犯してくださいッ!」
ギャラリーが一気に沸き立った。いつも済ました態度を取り続け、敵対する者は容赦なく斬り捨て、燃やし尽くすあの魔界騎士が、自らの口でオスをねだったのだ。
「聞いただろ? 魔界騎士様は犯して欲しいってさ! さあお前達、気の済むまでこいつを犯してやりな! そして集まってくれた皆はこいつの姿をしっかり目に焼き付けておくんだよ!」
歓喜の声と共に魔界の住人達は捕らわれのイングリッドへと近づく。まず最初に醜いオークが、赤ん坊の腕はあろうかというサイズの逸物をイングリッドへと押し付けてきた。
「お、朧っ! 約束だ! 部下を解放しろ!」
背後のオークにペニスを擦り付けられながらも、部下の身を案じた彼女は懸命に叫ぶ。
「ああ、そうだったね。それじゃあ……」
朧は親衛隊の背後に立つオーク達へと視線を移し――。
「そいつらを犯しな」
無慈悲に、そう言い捨てた。待っていましたとばかりに一斉にケダモノ達が腰を突き入れる。
「ひぃあああああああーっ!」
「あ、があああぁっ……! イングリッド……様ぁ……!」
「いやっ、嫌ああああああぁッ!」
途端に聞こえてきた悲鳴のコーラスを聞いて、朧はケラケラと愉快そうに笑っていた。
「お、朧ォ!」
「アッハッハッハ! あんた、本当に馬鹿だね。私がそんなくだらない約束を守るわけないじゃないの。あんたの息のかかった、イングリッド派の連中はノマドから一掃する。かくして邪魔な連中は消え、療養中のブラック様の側近は私1人となる、というわけだ。その方が私が望む世界に近づけるからねえ。まあチンポをねだる魔界騎士様ってのは、いい見世物だったよ。これで私の力をより広く知らしめ、あんたの威厳を地の底にまで失墜させることに成功した。アスカは価値が無いって言ったけど、最後まで役に立ってくれて感謝するよ」
「殺す……! 私は貴様を絶対に……! んぐおぉっ……! おっ、おおおああああああああぁっ!」
怒りに燃える声は、最後まで続けられなかった。部下達がされているのと同様、彼女も背後からペニスで胎内を貫かれていた。
「ひぃあぁっ……がああああああーっ!」
「へへへ。何が魔界騎士だ。俺のチンポを突っ込まれた瞬間、奴隷娼婦みたいに膣内をうねらせているじゃねえか。てめえも所詮女ってことだな」
「だま……れぇ……! あひっ、ひぃぐううううううぅっ!」
反論しようとも、腰を突き入れられるたびに口からは嬌声が漏れてしまう。かつて朧に嬲り者にされた記憶が呼び起こされる。どれほど心が抵抗しようとしたところで、身体は容易に堕ちていってしまう、あの感覚。
「あっ、あっ、ああああああっ! はぁっ、あああああぁんっ!」
「おい、聞いたかよ? ああーん、だとよ! これがあのお高く止まってた魔界騎士様の本性ってことじゃねえか!」
「くうっ……! あっ……ふぅあああああああぁっ!」
声色に拒絶だけでなく、甘い色が混じってしまっている。隠そうとしても隠し切れない、作り変えられた体が覚えてしまう快楽。蕩けた顔からは舌が突き出され、そこにもオスが欲しいとねだっているようにさえ見える。
「物欲しそうな顔しやがって……! もう我慢ならねえ!」
と、イングリッドを犯す順番待ちをしていた獣人の1人が、彼女の前に仁王立ちになった。
「な……何を……おぐぅっ!? ごっ、ごっおおおおおおっ!」
そして口が開けられ、強引にペニスを突き入れられる。
「ひゃっ……ひゃえっ……! えぐうっ! ぐっ、ぐぶぅえええええぇっ!」
「ヒャハハ! 魔界騎士様は立派な口マンコをお持ちだ! たまんねえぜ! オラ、もっと喉奥まで俺様のチンポを咥え込みやがれ!」
「んむううううぅっ! んんんんっ……んふううううううぅっ!」
「あらあら。上も下も串刺しにされて、さぞご満悦なようね?」
朧の挑発的な言葉に、蹂躙されかけているプライドが呼び覚まされる。が、それも一瞬のこと。次に2本の肉槍で上下の口を貫かれると、やはり普段のような気丈な表情を保つことができない。
「よぉし……出すぞ……! たっぷり味わえ!」
「むぐううううううッ! んっ、んんんんんんんんんんっ!」
膣奥でオークの精液が爆ぜる。子宮を満たされる感覚で絶頂するも、口を犯しているもう片方は止まらない。エクスタシーに打ち震える相手のことなどお構い無しに、口内が蹂躙され続ける。
「おい、出したならさっさと変わりやがれ! この女には俺の兄弟が焼き殺されてんだ、たっぷりお返しをしてやらねえと気が済まねえんだからよ! ……へへっ、次は俺だ。今度はこっちの穴を犯してやるぜ!」
そう言って2人目の亜人がペニスを宛がったのは女性器の上、不浄の穴の方であった。
「んむううっ!? んんっ、んんんーっ!」
懸命に首を振り、拒絶の意思を示そうとするイングリッド。だがその姿に嗜虐心をそそられたのか、その凌辱者は下卑た笑みを浮かべると、容赦なく己の逸物を押し込んだ。
「んおおおおおおおおおぉッ! んぐぅぉっ……むぅおおおおおおおおおぉッ!」
塞がれた口から絶叫が迸る。それでも口虐と肛虐、2本の肉塊による凌辱は止まる気配が無い。
「んんんんんっ! もぉひゃめぇ……ひゃめぇへえええええっ! んむうううっ、んんんんんんんんッ!」
くぐもった、絶望のイングリッドの声が木霊する。だが当然の如く見世物の凌辱劇は終わらない。絶望の演目は、まだまだ始まったばかり。同時に、朧が望む末路への道も、始まったばかりだった。