※オリジナル設定アリ
元帥side
大本営本部元帥室
儂は今日酷な判断をしなければならない。
しかし深海棲艦の襲撃が激しくなってきている今の現状を打破するにはそうする他なく儂は軽く目を伏せる。
「・・・閣下、如何しましたか?」
隣で立っている工藤大将から声を掛けられる。
「いや、ままならんと思ってな」
「先月の大襲撃・・ですか」
「・・・そうだな」
先月の大襲撃、深海棲艦共がこの大本営を目指し大規模な艦隊を率いて進行、その結果深海棲艦の大部分を撃退、轟沈させることが出来た。
しかしその結果・・・
「あの大襲撃が起こったことで我が軍の艦娘や提督多くの仲間をうしなってしまった」
「閣下のせいではありません」
「分かってはいる、分かってはいるが、やはり考えてしまうのだ、あの時まだ何か出来ることがあったのではないかと」
「閣下・・・」
「それに今から彼にこれを見せなくてはならないと思うと胸が張り裂けそうだ」
儂は今からここに来る彼にこの資料を見せなければならない、今回の大襲撃が起こる切っ掛けになった1番の原因を。
「本当にアイツに任せるのですか?」
「・・・それしか思いつかんのだ」
「しかし閣下、今のアイツは変わってしまいました、今のアイツは死に場所をもとめ彷徨っている様にしか見えません!・・・まるで、亡霊みたいに」
「亡霊か、君の目から見てもそう映るか、確か君達は幼馴染だと聞いているが?工藤大将」
「よしてください、ただの腐れ縁です」
「そうかね?意外と仲は良さそうだがね」
「閣下も冗談を仰るのですね」
「いや別に冗談では」
コンコン
そんな話をしていると部屋のドアからノックの音が聞こえてきた。
「入りなさい」
儂がそう言葉を返すと直ぐにドアが開き1人の少女が入ってくる。
「失礼するよ」
「閣下彼女は?」
「あぁ、今回の件で彼女からの希望と儂の判断で適任と判断した為協力してもらう事にしたのだ」
「・・・左様でしたか、しかし彼女は確か」
「そうだ、この大本営で恐らく1番の戦力と言えよう」
「よろしいのですか?」
「彼を止めるにはそれくらいしないと駄目みたいだからね、さて役者は揃った、そろそろ主役が来る頃か?」
_______________________
主人公side
夢を見ている、醒めない悪夢、実際に起こった記憶、変えることの出来ない結末を。
『隊長!深海棲艦の艦隊がこちらに向かってきます!』
俺はそれを眺めることしか出来ない。
『今そっちに向かってる!後もう少し耐えてろ!』
俺は一体何を間違えた?
『ダラダラしてないで早く来てくださいよ!こっちはもう手一杯です!』
いつもと変わらない任務のハズだった。
『うるせーな!これでも急いでんだよ!』
だが、いつもとは違った。
『あまり隊長を怒らせるなよ?後が怖いぞ!』
奴らは大規模な艦隊を率いていた。
『分かってますって!』
それだけなら良かった。
『・・・隊長、どうやらお休みの時間みたいです』
しかし奴らは姫級の艦隊で俺の部下を襲った。
『どうした!、おい!応答しろ!』
だから必然だった。
『そうそう、隊長に言いたいことがあったんだった』
俺の部下が誰1人生き残れなかったのは。
『隊長もう少し─────────』
「ハッ!はぁはぁ!」
悪夢から目を覚ました俺は息を切らしながら飛び起きる。
「はぁはぁ・・・クソが」
あの日から何時も同じ夢を見る、大襲撃があったあの日出撃した俺達の部隊は奴らの砲撃により分散を余儀なくされた。
「立花、朝霧、藤堂、藤山、片桐・・・」
そう呟いた時足音が近づいてきた。
「・・・黒鷹雷牙だな?」
「・・・なんか用か?」
「元帥閣下がお呼びだ、出ろ」
俺が今いるこの場所は大本営の地下にある営倉の懲罰房だ、そんな俺が元帥に呼ばれるとしたら1つしかない。
「ハッ、遂に俺の処分が決まったか」
「・・・私にその答えは持ち合わせておらん」
「そうかよ」
懲罰房から出た俺は手首に手錠をつけられ、憲兵共が俺の周りを囲う。
「人気者は辛いねぇ」
「私語は慎め」
「ヘッ」
それから直ぐに階段を登りそのまま元帥の部屋の前まで連れてこられた。
「元帥閣下、以下の者を連れてまいりました」
「入りなさい」
元帥の部屋に入るとそこには工藤のいけ好かない奴と佐藤のじいさんがいた。
「よぉ、爺さんやっと俺の処分が決まったか?」
そう言った瞬間爺さんの隣の工藤が物凄い勢いで怒鳴ってきた。
「貴様!閣下に向かって何だその口は!」
「うるせぇなぁ、お前にゃ聞いてねぇだろうが工藤のボンボン」
「貴様仮にも上官である俺にもその様な口をするか」
「すいませんねぇ、性分なもんで」
「君達は仲がいいみたいだね」
「「何処が(です)!」」
「ほら、仲がいい、あぁ憲兵諸君後は大丈夫だ、持ち場に戻りたまえ」
そう言われ素直に憲兵共は部屋から出ていく。
「んで、なんの用だ?」
「貴様!」
「大丈夫だ工藤大将、儂は彼の性格を含め彼を素直に賞賛している」
「・・・閣下が、そう仰るのであれば」
「さて、本題に入ろうか」
佐藤の爺さんがそう言った瞬間部屋の中の空気が変わる。
「黒鷹大佐、なぜ呼ばれたかと言ったな、理由は1つだ、ここ最近の命令無視、勝手な出撃及び施設内の破壊行為その他諸々に対して君に処分を下す為だ」
部屋の中がピリピリしている、先程までの朗らかな老人とは思えない豹変に俺はふと笑みを零す。
「今度はどんな戦地に俺を飛ばすんだ?爺さんココ最近は歯応えがなくてなぁ」
「今回君には戦地には送らない、いや?戦地には変わりないか、では君に与える処分は1つだ、黒鷹大佐君を大本営からの任を解く」
その言葉を聞いた俺は一瞬驚いたが今はその後がきになる。
「俺の任を解く、つまりお払い箱ってわけか」
「そうなるね、そして君に紹介したい人がいる、入りたまえ」
そう爺さんが言うと隣の部屋から1人の少女が姿を現す。
「お前は確か・・・」
「・・・暁型駆逐艦2番艦響だよ」
忘れはしない、2年前の出撃で俺はこいつに会っている、そしてコイツは恐らく俺の事を怨んでいるだろう、なんせこいつの姉妹は俺が──────
「自己紹介は必要無いかな?」
「・・・俺をこいつに合わせて何がしたい?」
「何、これから君は大本営の者では無くなる訳だからな挨拶を済ませておこうと思っただけだよ」
「なるほどな、確かにその通りだ」
俺は響に向き直って言う。
「良いぜ、お前にならこの首くれてやる」
「だそうだ響君、やりたまえ」
「ハラショー」
次の瞬間響は俺のすぐ側まで一瞬で近寄ったあと俺の首目掛けて手を伸ばしてきた、恐らく頚椎を破壊するつもりだろう、来る衝撃に目を閉じた俺はその時を待つが首に変な感触とカチッとした音が聞こえ目を開ける。
「任務完了」
目の前には響のドヤ顔があった。
「はぁ?一体何をしやがった!?」
「気にするな、ただ首輪を君に付けただけだ、意外と似合っているぞ」
「ふざけんな!俺のことを処分するんじゃねぇのかよ!」
「ふむ、では改めて説明しよう、君の処分それは大本営の任を解き、新たに提督として艦隊の指揮をとってもらいたい」
「はぁ?!ふざけるな!部下を全員死なせた俺に今度は艦娘の指揮をとれってのか?アンタは!」
「そうだ、あぁ何心配はするな、そこに居る響君が君の秘書艦として君のサポートをしてくれる」
「ふざけるんじゃねぇ!」
腹がたった俺は爺さんに向かって手錠を引きちぎりながら手を伸ばす、しかし
「お座り」
響がそう言った瞬間俺の身体に電流が流れてきた。
「がぁぁぁぁ!!」
身体が痺れた俺はたまらず床に片膝を着く。
「んだよコレは!」
「君の首に着いているそれはまぁ簡単に言えば君の制御装置だ、一定の行動と登録者の音声により着用者に電流が流れる設計となっている」
爺さんか笑いながら話す。
「こんな物!」
首に手を伸ばし首輪を引きちぎろうとした瞬間また身体に電流が走る。
「一定の行動と言ったろう当然許可なく外すことは出来ない、また君の兵装も許可されない限り使用する事は出来ない」
「なっ」
「いい気味だな黒鷹」
「工藤テメェ!」
「お座り」
「がぁぁぁぁ!」
響がそう言った瞬間また電流が身体を走る。
「響テメェ、俺を怨んでるならさっさと俺を殺せ!」
響は不思議そうな顔をしながら首を傾げると思い出したかのように手を叩いた。
「あの日の事を言っているのかい?」
「それ以外に何がある」
「そうか、君はまだあの日の事を悔やんでるんだね」
響の声が小さく何を言っているのか聞きとることは出来なかった。
「そうだね、怨んでいるよ」
「なら何故」
「でも、それは君にじゃない」
「はぁ?」
「私はもう、君を怨んではいないと言う事さ」
「だから、何故だと聞いて」
パンと手の叩く音が聞こえ、音の原因である爺さんに向かって視線を向ける。
「昔話は今度にしよう、今は話の続きだ、君が新たに着任する鎮守府をまだ言っていなかったね、君が着任する鎮守府は横須賀鎮守府だ」
「ふざけん!、俺はまだ認めちゃいねぇし、しかも最前線で提督として指揮なんかとれるわけねぇだろ、第1そこの提督はどうした」
「順番に説明しよう、まず第1に横須賀鎮守府の提督は先月の大襲撃の時、艦娘や鎮守府を捨て敵前逃亡をした、そして第2に君は新人提督として着任する為そこまで心配する必要は無いしアソコは艦娘が優秀だ」
「・・・ちょっと待て、敵前逃亡とはなんだ?」
「そのままの意味だ、彼はある海軍将校の子息だった為提督として働いていたが本人には適性がなく優秀な艦娘がいる鎮守府に着任してもらっていたが先月の大襲撃により逃亡、行方知れずだ」
「だからと言って何故俺がいかなければならない、優秀な提督ならまだ居るはずだ、理由を言え」
「・・・良かろう、ここからが本題でもある、所で君に1つ聞きたいことがある」
「あ?」
「君には確か兄弟がいたな?」
「・・・あぁ」
「提督としての適性の高さ、訓練学校での成績は常にトップだったと聞いている」
「なんの話をしている?俺は理由を説明しろと」
「いいから聞きたまえ、そして今から約5年前戦死したと報告にある」
「・・・あぁ、俺の目の前でな」
「ふむ、ならばこれを見てもらおう先月の大襲撃時、儂の秘書艦である赤城君が撮ったものだ」
爺さんは手元にある資料を俺に見せる、それを見た俺は直ぐにその資料を握りつぶした。
「これはなんの冗談だ?ジジイ!」
「見てもらった通りだ」
「ふざけるな、こんな事ある筈が無い」
爺さんが渡してきた資料は深海棲艦についての資料だった、しかし写真に写っているのは、俺の弟である、黒鷹澄彦だった、しかしその肌は白く瞳は青く光っているように見える。
「君がそれを言うのかね」
「チッ・・・」
「さて分かった、君がそこまで嫌がるのであれば仕方がない、工藤大将今回の件は流そう、至急憲兵を呼び黒鷹大佐を懲罰房へ戻したまえ」
「ハッ、直ちに」
「おい!ちょっと待て!」
「響君もすまないね、今日はもう下がりなさい後日新たに指令をだそう」
「問題ないさ」
「待てって言っんだろ!」
俺を無視してトントン拍子に話が進んでいく。
「・・・なんだね?」
「やってやる」
「はて、何をだね?」
「提督をやってやるって言ってんだ」
「そうか、響君」
「言質はとったよ」
『提督をやってやるって言ってんだ』
「は?」
「うむ、これで合意が取れた、いや私の立場であれど君の様な者を提督にするには骨が折れるのでね」
「嵌めやがったな」
「何をだね?自分から言い出したことではないか、では黒鷹大佐今日この時刻をもってして君を横須賀鎮守府の新たな提督に任命する、後の事は響君に聞くといい、では行きたまえ」
「ハラショー」
「ちょ、おい待て!離せ響!まだ話は終わってな」
バタンと黒鷹大佐をズルズルと引きずりながら響君はドアを閉める。
「・・・本当に、大丈夫でしょうか」
「彼を信じよう」
「しかし」
「工藤大将もご苦労だった下がってもらって構わないよ」
「・・・ハッ」
工藤大将の心配も分かる、彼に首輪をつける際、自分は殺されると思っていながら彼は一瞬、一瞬だけ安心した様な顔をしていた。
「・・・すまない」
誰も居なくなった部屋で1人で誰かに謝る、それは彼になのか、それとも彼の部下になのか、その答えは元帥しか知らないだろう。