高望みしない彼は今日もゴミ女とセックスする 作:しゃしゃしゃ
浅井卓郎が、欲望に目覚めたのは、五歳の初夏のことだった。
近所の公園の砂場。照りつける日差しの中で、無防備なママさんの胸元を視界にとらえたタクロー少年はその瞬間、性に目覚めた。
周囲の子供たちが目を輝かせて欲しがる戦隊モノの合体ロボット。父親が休日のたびに熱心に買い与え、教えようとしてくる軟式グローブとキャッチボール。それらはどれも、彼にとって「欲しいもの」ではなくなっていた。
幼くしてすでに強烈な性欲の萌芽を抱いていた卓郎は、テレビのグラビア番組や大人の雑誌の表紙を覗き見ながら、自身の欲望を満たす方法を足りない頭で必死に考えた。
――世の男たちは、美少女を競って奪い合う。しかし、美しい女子は参入障壁が高すぎる。ライバルが多く、関係をつなぎとめておく労力が多大に必要で、なおかつ成長すれば他の男へと目移りして捨てられる危険を常に孕んでいる。
(……なら、誰も欲しがらないゴミを拾えばいい)
誰もが見向きもしない不細工な石ころを拾い上げ、自分だけの道具に加工する。それが、最も安価で、最も安全に性欲を満たし続けるための唯一の正解だと、五歳の卓郎は導き出した。
そんな彼が選んだのは近所の不細工な一人の女の子、相原彩綾(さあや)だった。
「タクローくん、なにしてるの……?」
相原彩綾は自信なさげに卓郎を見つめる少女だった。
凹凸のないのっぺりとした平たい顔立ちに、不揃いで主張の激しい前歯。
ボサボサの髪と猫背な体躯。
たまに見かける彼女の母親はいつも、「うちの子は不器用で、顔も冴えなくて友達ができなくて……」と誰ともなくに申し訳なさそうに溢していた。
卓郎の目が、爛々と怪しい光を帯びた。直感した。容姿が劣るこの少女は、上手く育てれば一生自分だけのために機能する最高の肉の玩具になる、と。
「彩綾ちゃん。こっちおいで。面白いことしよう」
卓郎は、天使のような無邪気な子供の笑顔を貼り付け、彼女の小さな手を引いた。向かったのは、公園の片隅、鬱蒼と茂った植込みの陰にあるジャングルジムの死角だった。
「彩綾ちゃんは、顔がのっぺりしてて、変な顔だよね」
幼い卓郎は、優しく、慈しむような声で彼女の傷口に指を突き立てた。あまりの直球な拒絶に、幼い彩綾の目が涙で歪む。しかし、卓郎は間髪入れずに彼女の幼い肩を抱き寄せ、耳元で囁いた。
「でも、大丈夫だよ。みんなは彩綾ちゃんのこと嫌いだけど、ぼくだけは、その不細工な彩綾ちゃんが大好きだからね。ぼくの言うことを聞いていれば、ずっと一緒にいてあげる」
毒と蜜の交互投与。幼少期から開始されたこの「自己肯定感の破壊」と「依存の注入」は、完璧な成果を結んだ。
成長するにつれ、彩綾の顔立ちはさらに不細工さを増したが、それとは対照的に、胸元は恐ろしい勢いで膨らみ、高校生になる頃にはHカップという規格外の爆乳へと成長を遂げた。
(その成長は卓郎の淫らな開発の成果と言えるのだが、それはひとまず置いておく)
だが、ボサボサの髪とひどい猫背、そして何より卓郎によって植え付けられた「自分は見るに耐えない不細工だ」という強力な自認のせいで、彼女はその圧倒的な肢体を隠し続け、卓郎から便利な肉玩具として扱われることに、歪んだ歓喜を感じるだけの従順な肉体へと仕上がっていったのだった。
七歳になると、二人目の肉奴隷、加賀原紗羽(さわ)が加わった。
紗羽は生まれつき食い意地が張り、同年代の女子よりも一回り体格が大きかった。卓郎は、彼女の両親が共働きで家庭の食生活が極めて乱れていること、そして彼女が強い承認欲求を抱いていることを見抜くとそれを利用して懐柔を行った。
卓郎は自分の小遣いと、親から誤魔化し取った駄菓子代のすべてを紗羽への「餌付け」に注ぎ込んだ。気色悪い肉達磨な満面の笑みで菓子を頬張る紗羽に卓郎は笑顔で嘯いた。
「紗羽ちゃんは、もっと大きくなった方が可愛いよ。たくさん食べる紗羽ちゃんはお姫様みたいだもん」
そう言って笑いかける卓郎の言葉を、幼い紗羽は疑いもなく信じ込んだ。
結果、どうなったか。
紗羽は肥大化した。みるみるうちに脂肪を蓄え、小中高と進むにつれて「歩けばドシンドシンと効果音が聞こえそうな重度の肥満体型」へと変貌した。顔は肉に埋もれ、パンパンに膨れ上がり、Iカップまで成長した巨乳すら、溢れ出た腹肉と巨大な尻の陰に霞むほどだった。
さらに卓郎は、彼女の性格すらも歪めた。「紗羽は特別だから、周りの奴らの言うことなんて聞かなくていい」「みんな紗羽の可愛さが理解できないバカなんだ」と吹き込み続けた結果、彼女は不細工な肥満体型でありながら、横柄で生意気な「歪んだお姫様マインド」を完璧にこじらせたのである。
可愛げのないデブ。性格の悪さが顔に滲み出たブス。
周囲のクラスメイトや教師たちは、当然のように紗羽を忌避した。彼女の友達は、卓郎のみ。彼女は「自分は特別だ」と傲慢に振る舞いながらも、その実、自分を受け入れてくれる唯一の男である卓郎になす術もなく依存していた。
「紗羽」
卓郎がそう呼ぶたび、彼女は上機嫌で鼻を鳴らしながらも、卓郎の体温を求めて巨大な肉体を擦り寄せてくる。卓郎は彼女にとって「私を愛してくれる王子様」で、卓郎の言うことならなんでも盲目的に従う。
他人に奪われるリスクが永久にゼロであり、かつ自分を絶対に拒絶しない「都合の良い肉塊」の完成だった。
そして最後の一人。鈴木凛(りん)という少女にも卓郎は手を出した。
七歳の頃に出会った凛は、卓郎の住む地域の中でも異質な存在だった。顔面の筋肉が弛緩しており、どこか歪んだ、健常者のそれとは異なる表情を常に浮かべている少女。特別支援学級に通い、成長しても常識や倫理、道徳といった概念を理解することはなかった。
恥じらいという感情が存在しない彼女は、癇癪を起こしたり、脈絡のない奇声を上げたりといった異常行動を起こすため、両親からも半ば諦められ、学校でも保健室登校を余儀なくされていた。
しかし、卓郎にとって彼女は「気味の悪い障害児」などではなく、「都合のいい肉穴」に他ならなかった。
凛は自分が何をされているのかすら正しく理解していない。ただ、幼い頃から優しく(あるいは優しく装って)接してくれた卓郎に対して、飼い犬のような強い愛着と懐きを見せているだけだった。
卓郎が11歳の時、自身の童貞を捧げたのは、この凛の身体だった。
彼女の家の彼女の部屋で、卓郎は震える手で彼女の服を脱がせた。まだ未成熟な四肢、少し膨らみ始めた胸、弛緩した不快な顔面とは裏腹に、その肌は恐ろしいほど滑らかで柔らかかった。
卓郎はため込んだ獣欲を無抵抗な凛の体に容赦遠慮なくぶちまけた。
卓郎がどれほど無茶な要求をしようと、欲望をぶつけようと、凛はただ口元を緩め、だらしなく舌を覗かせながら笑顔でそれを受け入れた。抵抗も、拒絶も、告発すらも存在しない空間。
凛の身体の中で、初めて己の膨大なマグマのような欲望を吐き出した時、卓郎は絶頂の波の中で確信した。
――ああ、これこそ求めていたものだ。
確かに同年代で、際立ってかわいらしい子はいる。
だけどそんな美少女と自分が釣り合うか? 釣り合うはずがない。頑張ってアピールして頑張って距離を詰めて頑張って交際にこぎつけて、それで?
それからは?
高望みなんてしても意味ない。
こいつらみたいな不細工女で適当に性欲発散できればそれで充分幸せだ。
――十年後の現在。
私立高校の教室に、夕暮れのオレンジ色の光が差し込んでいる。
「……卓郎ー、今日の部活どうする? 」
後ろの席の男子生徒が、欠伸をしながら声をかけてきた。
浅井卓郎は、自分の丸刈り頭を撫でながら、力なく苦笑いを浮かべてみせた。
「ああ……うん。ちょっと今日、お腹の調子が悪くてさ。監督に言っといてくれないかな」
「本当かよー、まぁどっちでもいいけどさ。適当に連絡入れとくわ」
「悪いな。今度ジュースでもおごるよ」
卓郎は申し訳なさそうに頭を下げた。イケメンでもブサメンでもない、どこにでもいるようなモブ顔。
クラスでの立ち位置は「害はないが、取り立てて存在感もない空気のような男」。
部活では幽霊部員同然のベンチ温存組。
進路希望調査票には、適当な偏差値の無難な大学名を書き連ねてある。教員からも、クラスメイトからも、彼が何か大事を起こすなどとは夢にも思われていない。
家庭でも同様だ。真面目で手のかからない、無害な息子。幼馴染の女子たちと今でも仲良く過ごしていることを、両親は「昔からの友達を大切にする優しい子」とすら思っている。
クラスメイトたちが下校の支度を始め、教室から一人、また一人と人が減っていく。卓郎は一人、窓の外の校庭を眺めていた。
グラウンドでは野球部の部員たちが声を張り上げてノックを受けている。青春という名の、労力ばかりかかって実りの薄い無駄な徒労。卓郎は心の中で彼らを嘲笑した。
放課後になれば、彼が長年かけて丹念に飼い慣らした三頭の家畜たちが、首輪を付けられた状態で彼を待っている。
誰にも知られず、誰とも競わず、誰にも奪われず。
ただ一方的に搾取し、貪り、欲望を満たすだけの穏やかな日常。
「……さて」
終業を告げる最後のチャイムが、静かな校舎に響き渡る。
浅井卓郎は制服の襟元をゆっくりと整えると静かに席を立った。