高望みしない彼は今日もゴミ女とセックスする 作:しゃしゃしゃ
薄暗いカーテン越しの光が差し込む部屋には、行為を終えた直後の重苦しい静寂と熱気が充満していた。エアコンの微かな送風音だけが静まり返った室内に響き、運動後のような特有の汗の匂いと、紗羽が好んでつける安っぽい花の香水の匂いが混ざり合い、濃厚な余韻となって部屋全体に滞留している。
「卓郎ぉ……♥ すっごく良かったぁ……やっぱり卓郎は、私の最高の王子様だよぉ……♥」
とろけきった顔をした紗羽は、全身の力を完全に抜き、脂汗でねっとりと濡れた巨体をこれでもかと卓郎へ押し付けてきた。
肥満体特有のずっしりとした重みが胸元を押し潰し、体温と脂っこい汗が混ざり合った不快な生暖かさが、卓郎の肌にべっとりとへばりつく。
(……くそ、吐き気がする……っ)
行為を終えて急激に頭が冷め切った卓郎の脳内では、急激な生理的嫌悪感が押し寄せていた。
目の前に転がっているのは、世間一般で言われるような愛らしいお姫様や美女などでは決してない
。どれだけ贔屓目に見ても、顔から足の先まで全身が肉まみれのただの肥満体だ。
あまりの肉の圧迫感と、鼻を突く熱い汗の匂いに、喉の奥から吐瀉物がこみ上げてきそうになる。
しかし、卓郎はそれをグッと奥歯を噛み締め、力ずくで喉の奥へと呑み込んだ。
皮膚一枚の表面上には、一切の嫌悪感も嫌がりも出させない。
息を整える振りをして静かに深呼吸し、表情筋を完璧にコントロールすると、いつもの甘く優しい王子様の笑みを浮かべた。
「ふふ、紗羽が満足してくれたなら良かったよ。今日もすごく可愛かったし……相変わらず紗羽は最高だ」
卓郎は汗で湿った紗羽の髪に優しく手を差し伸べ、滑らかな手つきでゆっくりとなで上げてやる。頭から首筋、そして惜し気もなく露出した肉厚な肩へと手を滑らせていった。
「えへへ……本当……? 卓郎、私の身体……そんなに好き……?」
「もちろんさ。特にこの胸のボリュームも、この大きな尻も……男なら誰もが目を奪われるくらいの迫力だよ。こんなに豊満で魅力的なパーツを持ってる女子なんて、そうそういないからね」
卓郎は紗羽の溢れんばかりの豊かな肉を、あたかも最高の宝物であるかのように優しく揉みほぐし、甘い言葉を耳元で囁いた。
実際のところ、卓郎は紗羽の身体を美しいとは微塵も思っていない。綺麗どころか、スタイル抜群のモデル体型とは正反対に位置する、救いようのない「デブ」であると冷静に理解している。
美人の要素などどこにもない。だが、それとこれとは話が別だった。
全身が柔らかい肉で包まれたこの規格外の肥満体は、セフレとして弄び、己の欲望をぶつける対象としては申し分なく興奮できる肉体なのだ。
その圧倒的な肉圧と、自分の思うがままに波打つ肉の感覚は、卓郎の嗜虐心と支配欲を刺激する格好の玩具でもあった。
卓郎の言葉を、紗羽は言葉通り――いや、それ以上に自分都合の最高な解釈として受け取っていた。
「あぁん……嬉しい……♥ 卓郎ってば、やっぱり私のこと、ちゃんと女の子として誰よりも愛してくれてるんだぁ……! 卓郎がそこまで言ってくれるなら、私、もっともっと綺麗にならなきゃだね……♥」
うっとりと頬を赤らめ、デレデレとした表情で身をよじる紗羽。
「綺麗になるって……どうするの、紗羽?」
「もっとたくさん食べて、もっともっと胸も尻も大きくして、卓郎をメロメロにする最高の体型を維持するの♥ 卓郎がこの豊かな私の魅力が好きなら、もっと美味しいものたくさん食べて、誰もが羨むグラマラスなお姫様になってあげるね……♥」
誇らしげに胸を張り、真顔で「もっと食べる」と言い放つ紗羽。
周囲からの蔑みや嘲笑の視線をすべて「スタイル抜群な自分への嫉妬」へと脳内変換している紗羽にとって、卓郎のこのお世辞は、自身の過剰な食欲と肥満を正当化する最高の免罪符だった。たくさん食べて太ることこそが「美しくなること」だと、本気で信じ込んでいるのだ。
卓郎の些細で計算し尽くされた甘やかしと褒め言葉を受けるたびに、紗羽の自尊心は怪物のように肥大化していく。卓郎が注ぐ偽りの優しさこそが、自分の歪んだ認知をより強固にし、二度と引き返せない領域へと落とし込む最高の毒薬であることを、卓郎自身も熟知していた。
「そっか。紗羽がもっと魅力的になってくれるなら、僕も楽しみだな。これからも僕だけのお姫様でいてね」
「うんっ! もちろんだよ、私の王子様……♥」
トロンとした瞳で抱きついてくる紗羽の頭を撫でながら、卓郎は胸の奥底でドロリとした冷酷な優越感を噛み締めていた。
(そうだ……そのまま俺の与えた都合のいい幻想に溺れて、もっと見苦しい豚になればいい)
吐き気を完璧な笑顔の裏に隠し、卓郎は自分の上に乗っかる肥満した肉塊を、どこまでも優しく撫で続けたのだった。
「ふぅ〜……卓郎ぉ、私なんだか……お腹が空いちゃったぁ〜♪」
ねっとりとした生暖かい行為の余韻が残る部屋の中、ベッドに横たわったままの紗羽が、だらしない声で甘えてきた。
先ほどまで激しく波打っていた巨体からは、未だにむわっとした熱気と汗の匂いが立ち昇っていた。卓郎は内心の強烈な吐き気を笑顔の裏に隠し、ベッドの端に腰掛けながら優しく相槌を打つ。
「そっか。運動したからお腹空くよね。何か頼もうか?」
「うんっ! 私ね、ピザが食べたいなぁ。あとお寿司! それから、この前卓郎と食べた中華のセットもいいな……あ、食後のクレープも忘れちゃダメだよっ♥ それからそれから――」
次々と飛び出す常軌を逸した注文の数々に、卓郎は心の中で溜息を吐いた。
(ピザに寿司に中華のセットに……? 相変わらず、家畜以下の凄まじい食欲だな。この豚は自分がどれだけ異常な量のカロリーを摂取しているか、本当に理解していないらしい)
「ふふ、紗羽は本当に美味しそうに食べるから、見てて気持ちいいよ。全部頼んであげるから待っててね」
「わぁい、卓郎大好きぃ〜♥ お金はね、パパのクレジットカードがアプリに登録してあるから、それでピピッて払っちゃって!」
一切の悪びれもなく親の金で暴食を宣言する紗羽に呆れ果てながらも、卓郎は手元のスマートフォンを操作し、言われた通りの尋常ではない量の出前を次々と注文していった。
それから数十分後。
大邸宅の静寂を破るように、玄関のインターホンが軽快なメロディを鳴らした。
「あ、来た来たぁ〜! 私のご飯っ♪ 私が出てくるね、卓郎はそこで待ってて!」
紗羽は薄手でスケスケの、到底その巨体を包みきれていないはち切れんばかりのネグリジェ姿のまま、ドシン、ドシンと床を揺らしてインターホンのモニターへと向かった。
『お待たせいたしました! 配達に参りました!』
モニター越しに聞こえてきたのは、いかにも学生アルバイトといった感じの、若く元気な青年の声だった。
「あ、はぁい。加賀原ですぅ〜」
紗羽が甘ったるい声で応対を始めたその背中を、ベッドから眺めていた卓郎の腹の底に、ふと歪んだ暗い欲望が込み上げてきた。
顔を見れば吐き気がするほどの不細工で、体型は見苦しいほどの肥満体。しかし、自分の前では一切の抵抗を持たず、何をされても喜んで受け入れる都合の良い肉便器。第三者と会話をしている無防備なその巨大な背中と、薄い布越しに揺れる圧倒的な肉の質量を見ているうちに、卓郎の嗜虐心と支配欲が妙な興奮を呼び起こしたのだ。
(……ちょっと、遊んでやるか)
卓郎は足音を殺して紗羽の背後に忍び寄ると、モニターに向かって話している紗羽の背中から、いきなりその豊かな肉の塊へと両手を滑り込ませた。
「ひゃんっ……!? ッ……た、卓郎……っ!?」
不意打ちで敏感な部分をきつく揉みしだかれ、紗羽の口から裏返ったような甘い悲鳴が漏れる。
「いま、でんわ……っ、配達の人と、お話し、してるのにぃ……っ♥」
小声で抗議しながらも、紗羽の顔はだらしなくとろけ、本心では卓郎の突然のスキンシップに狂喜乱舞していた。卓郎は冷ややかに笑いながら、さらに激しく紗羽の巨体を愛撫し、逃げられないように背後からねっとりと密着する。
「ああっ……んっ……♥ はぁ、はぁっ……♥」
一方、玄関の外に立っていた配達員の青年は、インターホン越しに聞こえてくる異様な音声に完全にフリーズしていた。
『……えっ? あ、あの……お客様……?』
スピーカーから漏れ聞こえてくるのは、どう聞いても『行為の最中』としか思えない、生々しい水音と、若い女の甘く艶めかしい喘ぎ声だった。
(ま、まさか……ヤッてる!? 今、俺とインターホン越しで話しながら、彼氏か誰かとヤッてるのか!?)
――配達員の脳内に、稲妻のような衝撃が走った。
エロ漫画か、深夜の大人向けビデオでしか見たことがないようなシチュエーション。
彼の脳内では瞬時に、「豪邸に住む、スタイル抜群で顔を真っ赤にした絶世の美少女が、イケメンの彼氏に後ろから悪戯されながら必死に声を殺している姿」という、極上のファンタジーが組み上げられていく。
「あ、あのぉ……っ♥ ごめんなさぁい……っ。お料理は、げ、玄関の前に……っ、お、置いておいて……くださぁいっ……♥ ああんっ!」
『っ……!! は、はいっ! かしこまりました! 玄関前に置かせていただきます! お支払いはカードで決済済みですのでぇっ!』
青年は裏返った声で返事をすると、両手に抱えたピザや寿司、中華料理の山を、震える手で玄関ポーチに並べた。
(すげぇ……マジですげぇもん聞いちゃった……!)
仕事柄、すぐに立ち去らなければならない。しかし、思春期真っ盛りの青年の好奇心と下心は、理性を軽々と凌駕した。
(玄関の前に置いたってことは、すぐにあの電話口の女の人が料理を取りに出てくるってことだよな? もしかしたら……エロい格好のまま乱れた姿の女が見れるかもしれない……!)
青年は息を殺し、玄関ドアから少し離れた門扉の陰に身を隠した。鼓動が早鐘のように鳴り響く。これからドアの向こうに現れるであろう、汗だくで頬を染めた美女の姿を想像し、ごくりと生唾を飲み込んだ。
ガチャリ、と重厚な玄関ドアの鍵が開く音がした。
青年は門扉の陰から、期待に目を輝かせてドアの隙間を見つめる。
ゆっくりとドアが開き、そこから姿を現したのは――。
「ふふっ……もう、卓郎ったら意地悪なんだからぁ……♥ あれ、すごい量! 全部食べられるかなぁ〜♪」
青年の視界に飛び込んできたのは、絶世の美少女などでは断じてなかった。
薄ピンク色のスケスケのネグリジェを身に纏い、しかしその生地が悲鳴を上げるほどにパンパンに膨れ上がった、規格外の巨大な肉の塊だった。
腹の肉は段になり、太ももは丸太のように太く、顔は脂肪で埋もれてパーツが中心に寄っている。汗でベタベタになったボサボサの髪を揺らしながら、その巨大なデブは、玄関前に積まれた大量の食べ物を見て「キャハッ」と豚のような奇声を上げた。
(…………え?)
門扉の陰で覗き見ていた青年の脳髄が、真っ白にショートした。
先ほどまで脳内で思い描いていた極上のエロティシズムは粉々に打ち砕かれ、代わりに目の前に現れたのは、視覚的暴力とも言えるトラウマ級のモンスターだったのだ。
あの甘ったるい喘ぎ声も、すべてはこの巨大な肉塊から発せられていたものだという事実が、青年の精神を容赦なく破壊していく。
(ウソだろ……なんだあれ……バケモノじゃねえか……っ!)
青年は両手で自分の口を強く塞ぎ、悲鳴が漏れるのを必死で堪えた。
足の震えが止まらない。これ以上あの光景を見ていたら、一生消えない心の傷を負うと本能が警鐘を鳴らしていた。
青年は料理の確認などそっちのけで、脱兎のごとく背を向け、音を立てないように必死の形相でその場から逃げ出した。二度と、絶対に二度とこのエリアの配達には来ないと、涙目で神に誓いながら。
★トラウマになった配達の兄ちゃんかわいそかわいそなのです。