高望みしない彼は今日もゴミ女とセックスする 作:しゃしゃしゃ
そして――どれほどの時間が過ぎたのだろうか。
ようやく激しい熱狂の嵐が過ぎ去ったとき、豪邸の豪華なリビングには、二人分の荒い息遣いと、身体から立ち昇る汗と熱気が重々しく滞留していた。
「ふぅ……あ……っ♥ 卓郎ぉ……っ♥ た、卓郎ぉ……っ♥」
高級ラグの上に丸太のような太い手足をだらしなく投げ出した紗羽は、全身の脂肪を脱力させたまま、未だ身体の奥に残る痺れるような快楽の余韻に身を委ねていた。
何度も、何度も繰り返された絶頂。大好きな、世界で一番かっこいい「王子様」である卓郎に、文字通り全身全霊で貪られ、求められたという圧倒的な多幸感。
分厚い頬は真っ赤に火照り、脂汗で顔に張り付いた髪も気にせず、トロンと完全に濁りきった瞳で吹き抜けの天井を見つめている。その表情は、間違いなく世界で一番幸せなお姫様そのものだった。
子宮の奥から湧き上がる熱い愛されている実感と、溢れ出す愛情が全身の脈を激しく打ち鳴らしている。あまりの快楽の深さに、紗羽の肥満体は時折ビクッ、ビクッと大きく打ち震え、そのたびに喉の奥から甘くとろけた喘ぎ声を漏らしていた。
一方の卓郎も、流石にこれだけの激しい交わりを重ねたことで、全身のエネルギーを極限まで搾り取られていた。
ラグの上に仰向けになり、激しく上下する胸を抑えながら、ぐったりと強烈な疲労感に浸っている。あれほど猛り狂っていた男根も、今は完全に力を失い、ぐったりと沈黙を守っていた。
(……くそ、流石に搾り取られすぎたな……。指一本動かすのも億劫だ)
卓郎の腹の底には、これほど疲れ果た後でさえも、依然としてドロリとした暗い欲望の澱が残り続けていた。
どれほど搾り取られ、体力を使い果たそうとも、ふとした拍子にまた腹の底から湧き上がってくる生々しい衝動。若さゆえの底なしの情動と、一人の人間を欲望のままに手玉に取っているという優越感が、卓郎の精神をどこまでも昂らせていた。
(……だが、この感覚も悪くはない。どれだけ出しても、また次が欲しくなる。若い身体の欲望ってのは、本当に恐ろしいな)
卓郎は少しずつ息を整えると、隣で力なく横たわり、時折絶頂の余韻で体を震わせている紗羽の方へと顔を向けた。そして、冷めやらぬ熱を含んだ手で、恋人同士のように優しく紗羽の肉厚な手を握り締めた。
「……紗羽、大丈夫かい? すごく……すごかったよ、今日の君は」
卓郎の手の温もりと、耳元に届いた甘く優しい言葉。
それだけで、疲労で動かないはずの紗羽の全身に、再び狂熱のような歓喜が駆け巡った。分厚い頬をさらに真っ赤に染め、トロンとした瞳に涙を浮かべながら、卓郎の手をギュッと握り返してくる。
「んぁ……っ♥ 卓郎ぉ……っ♥ うん……私、すごく、すごく幸せ……っ♥ 卓郎にいっぱい愛してもらえて……私、世界一幸せなお姫様だわぁ……っ♥」
「ふふ、当たり前じゃないか。君は僕だけの特別なお姫様なんだからね」
「あぁんっ……♥ 卓郎っ、だぁい好き……っ♥ 私……卓郎のためなら、何回だって……いくらでも頑張れるからねっ……♥」
卓郎の言葉ひとつで、紗羽の感情は暴走し、どこまでも甘く、どこまでも深く深遠な依存の沼へと落ちていく。
恋人同士のような甘ったるい言葉を掛け合い、濡れた肌を寄せ合いながら、二人は静まり返ったリビングで倒れ込むように横たわっていた。疲労で沈黙した身体の奥底で、再びどろりとした情熱が芽生え始めるその時を待ちながら、二人は重苦しい熱気の中でいつまでもまどろみ続けるのだった。
激しい疲労感に身を任せていた二人は、やがてどちらからともなく身体を寄せるようにして身を起こした。全身を包む脂汗と火照りを流すため、互いに身体を支え合いながら、ヨロヨロと不確かな足取りで再びバスルームへと向かう。
温かいシャワーを頭から浴びると、一日分の汗や身体の汚れが白く煙る湯気とともに足元へと流れ去っていった。
卓郎はシャワーの温水で顔を拭う。脱衣場の鏡に映った自分の顔は、溜め込んでいた泥のような情動をすべて吐き出しきったことで、毒気が抜けたようにどこかスッキリとした表情をしていた。
「卓郎ぉ……背中、流してあげるね……♥」
まだ足元がおぼつかない様子でありながらも、紗羽は健気にスポンジを取り、卓郎の背中を優しく撫でるように洗ってくる。
自分がどれだけ疲れ果てていようとも、卓郎のために何かをしてあげたいという愛情は絶えることがない。
「ありがとう、紗羽。君は本当に優しいね」
「えへへ……卓郎に喜んでもらえるなら、私、なんだって嬉しいの……♥」
卓郎が振り返り、甘い言葉と共に髪を優しく撫でてやると、紗羽はそれだけで蕩けそうな笑みを浮かべ、幸せそうに頬を緩めた。
洗髪を終え、タオルでお互いの身体を拭き合っている間も、紗羽は一時も卓郎から離れようとせず、まるで犬のようにすがりつき、甘い吐息を漏らし続けていた。
着替えを済ませ、静まり返った玄関へと向かう卓郎の後ろを、紗羽は名残惜しそうに歩いてついてくる。
玄関のドアノブに卓郎が手をかけた瞬間、後ろから衣服を引っ張る重い手応えがあった。
「もう帰っちゃうの……? 寂しいわ、タクロー……」
すっかり「恋する乙女」の顔になった紗羽が、目尻に涙を浮かべながら、卓郎のシャツの裾をギューッと掴んで離さない。
分厚い頬を真っ赤に染め、トロンとした瞳で縋り付いてくるその姿には、卓郎なしではもはや生きていけないという強烈な欲望が宿っていた。
卓郎は振り向き、困ったような、しかしこれ以上なく甘い笑みを浮かべた。
そして、最後の大仕事として、紗羽の丸い肩を力強く抱き寄せると、彼女の肉厚な唇にこれでもかと熱いディープキスを叩き込んだ。
「ん……っ!? んむ……っ♥ ん……ふぁ……っ♥」
肺の空気をすべて吐き出させ、入れ替えるかのような、濃厚で執着に満ちたキス。
自分という存在の刻印を、彼女の精神と身体の奥深くまで永遠に焼き付けるかのような、強烈な毒を注ぎ込む行為だった。
舌を絡め合わせるたび、紗羽の喉から甘い喘ぎ声が漏れ出し、掴んでいたシャツの裾を絞り上げるように握りしめてくる。
息が途切れるまで貪り合い、ゆっくりと唇を離すと、紗羽は完全に腰の力を抜かし、卓郎の胸元へ倒れ込みそうになっていた。
「……またね、紗羽。いい子にしてるんだよ」
耳元で低く甘く囁かれた言葉に、紗羽は恍惚とした表情のまま、狂喜に満ちた強い眼差しで卓郎を見上げた。
「ん、……っ。……うん! 私、タクローだけを待ってるから……っ! ずっと、ずっと大好きだからね……っ♥」
笑顔を浮かべ、最後にもう一度紗羽の頭を撫でると、卓郎は静かにドアを開けて豪邸をあとにした。
加賀原家の豪邸をあとにした卓郎は、いつも通りの涼しげな顔で自宅の玄関をくぐった。
ダイニングからは温かな湯気と夕食の香ばしい匂いが漂っている。リビングに入ると、すでに家族全員が食卓についており、卓郎が席に腰を下ろすと同時に、結衣がニヤニヤとした意地の悪い笑みを浮かべて口を開いた。
「おかえりー、兄貴。ねえ、今日は一日あのデブ女(紗羽)のとこ行ってたんだよねー?」
「……こら。言葉遣いに気をつけなさい」
父親が箸を置き、軽く眉をひそめて妹を嗜めた。母親もどこか気まずそうな表情で小鉢に手を伸ばしながら、ため息混じりに言葉を添える。
「そうよ。いくらなんでも『デブ女』なんて言い方は品がないわ。……でも、卓郎。また加賀原さんのところへ行っていたの?」
両親の反応は「またか」という呆れと憂鬱が混ざったものだった。
卓郎の両親にとっても、加賀原紗羽という存在は極めて扱いにくい相手だった。
性格はワガママで最悪、見た目も醜悪な肥満体。本音を言えば、自分たちの自慢の息子がそんな女と一緒にいる姿など見たくもないし、一刻も早く関わりを絶ってほしいと思っている。
しかし、ご近所付き合いや世間体という手前、大っぴらに排斥するわけにもいかないのが現実だった。
もちろん、両親は加賀原家で卓郎が何をしていたかなど、夢にも思っていない。
まさかあの大邸宅の密室で、湯上がりどころかリビングの床まで使って、時間を忘れてひたすら貪り合い、交尾に没頭していたなどとは、想像の枠組みすら超えた『想定外』の事態だった。両親の頭の中にあるのは、我が子が不器用な昔馴染みの面倒を押し付けられて苦労している、という程度の認識でしかない。
「卓郎、あなたのお人好しなところは長所でもあるけれど……加賀原さんとは、いくら昔馴染みだからといっても、ねえ? そろそろ少しずつ距離を置いたらどうかしら。あなた自身の時間も大切でしょう?」
母親が言葉を選びながら、遠回しに縁切りを勧めてくる。父親も小さく頷き、息子の反応を窺っていた。
卓郎は、困ったような、しかしどこまでも誠実で温厚な笑みを浮かべて両親に向き直った。
「父さん、母さん、心配してくれてありがとう。二人の言いたいこともよくわかるよ。紗羽が学校で少し浮いてしまっているのも、周りからいろいろ言われているのも知っているから」
卓郎は一口お茶を口にし、静かで説得力のある声で言葉を紡ぐ。
「でもね、俺まで彼女を突っぱねてしまったら、本当に彼女の居場所がなくなってしまうんだ。昔馴染みとして、彼女が少しでも前を向けるように話を聞いてあげるのは、そんなに悪いことじゃないと思っているよ。もちろん、俺自身の生活や勉強に支障が出ない範囲で、うまく付き合っていくから。安心して」
一切の揺らぎもない、完璧な模範解答。自分の欲望や所有欲など微塵も感じさせないその爽やかな言葉に、両親は「本当にできた息子だ」と言わんばかりに表情を緩め、「あなたって子は昔から……」と感心したように息をついた。
しかし、その横で妹だけは違っていた。
「……ふーん」
妹は箸の先でご飯をつつきながら、目を細めて卓郎の顔をまじまじと見つめていた。兄の態度と、ほんのわずかに漂うどこか毒気の抜けたような妙な空気感を、直感的に察知している様子だった。
「なんか怪しいなー……。本当に『ただ話を聞いてあげてただけ』なのかなぁ?」
「こら、しつこいぞ」父親に叱られ、妹は「はいはい」と口を尖らせたが、その疑いの眼差しが卓郎から外れることはなかった。