高望みしない彼は今日もゴミ女とセックスする 作:しゃしゃしゃ
最寄り駅の改札を抜けると、ひんやりとした夜の風が熱く火照った頬を撫でた。
けれど、私の身体はいまだに卓郎くんの温もりにすがりついていなければ倒れてしまいそうなくらい、ガクガクと震えていた。卓郎くんの腕に必死にしがみつき、蕩けた頭でぼんやりと歩みを進めていた、その時だった。
「おーい、浅井じゃねぇか! こんなところで何してんだ?」
突然、聞き覚えのある明るい声が夜の駅前に響いた。
ハッとして顔を上げると、そこには卓郎くんと同い年くらいの男の人と、その隣にぴったりと寄り添う彼女さんらしき女の人のカップルが立っていた。
「あ、なんだ……お前か」
卓郎くんはいつものように気のない声で応え、立ち止まる。
男の人は「なんだよその反応〜」なんて笑いながら卓郎くんに近づいてきたけれど、ふと、彼の視線が卓郎くんの腕にしがみついている私へと向けられた。
その瞬間、彼の動きがピタリと止まる。
「……っ!?」
彼の目が丸くなり、息をのむ音が聞こえた。
野球部の部員なら、きっと普段の不細工で目立たない『相原彩綾』のことは知っているはずだ。
けれど、今の私はプロの手でメイクをしてもらった『美少女』の姿で、しかも直前まで散々抱き潰されて発情しきった、どエロい雰囲気を全身から撒き散らしている。
目の前の女があの相原彩綾だとは微塵も気づいていない様子で、彼はすっかり私に見惚れてしまっていた。
隣の彼女さんがそれに気づいて、あからさまに不機嫌そうな顔で彼を睨みつけているのにも気づかないくらいに。
「あ、浅井……その子、誰だよ……? お前の、彼女か……?」
動揺を隠せない様子で尋ねる彼に、卓郎くんはどこまでも自然体な口調で言い放った。
「彼女じゃないな」
「っ……で、でもお前、距離感おかしいだろ! てか、どう見てもお前ら……さっきまでヤッてただろ……!?」
直球すぎる質問に、私の心臓が跳ね上がった。
人前でそんなことを聞かれて、卓郎くんは何て答えるんだろう。道具扱いされている私を鬱陶しがって、突き放してしまうかもしれない――そう思って身を縮こまらせた私を余所に、卓郎くんは「あー……」と少しだけ面倒くさそうに考え込む素振りを見せた。
そして、あっさりとこう言ったのだ。
「まぁ、そうだな……。言いふらすなよ? 恥ずかしいから」
「マジかよ……っ!」
驚愕する部員の声を、私の頭はもう拾っていなかった。
(え……っ? 卓郎くん……いま、何て……っ?)
身体中の血が、一気に熱く沸き立つのが分かった。
卓郎くんがどういう意図でそう言ったのか、本当のところは私には分からない。
ただ面倒くさかっただけかもしれないし、適当にあしらっただけかもしれない。
でも――完全な『彼女』としては否定されなかったこと。そして何より、周りに隠すこともなく私との関係を口にしてくれたこと。
仮にでも、ほんの一瞬でも、卓郎くんに『特別な存在』として認められたような気がして、胸の奥から溢れ出す愛おしさと歓喜で目頭が熱くなった。
(嬉しい……っ! 嬉しいよ……卓郎くん……っ♥)
今日、私は卓郎くんに抱かれ、壊されるほどに愛され、そしてこんな言葉までもらえた。本当の自分がどんなに不細工で価値のない人間だとしても、今この瞬間、私は間違いなく世界で一番幸せな女だった。
ポロポロと喜びの涙を零しながら、私は卓郎くんの腕にぎゅっと力を込めて抱きついた。
間違いなく今日という日は、私の人生の中で一番最高で、最良の日だった。
「じゃ、気をつけて帰れよ」
家の近所までたどり着いた頃には、絶頂の波もようやく落ち着き、私はなんとか自分の足で歩けるまでに回復していた。卓郎くんはいつもの平然とした調子で、サラッと背を向けて帰ろうとする。
(あ……もうお別れなんだ……)
数時間前までの夢のような時間が終わってしまう寂しさに胸がキュッと締め付けられた。このままバイバイなんて嫌だ。もっと卓郎くんを感じていたい。
私は意を決して彼の服の裾をキュッと引っ張り、つま先立ちになって少し唇を突き出し、おねだりするように見上げた。
「……卓郎くん、キス……して……っ♥」
「……チッ、クソ面倒くせぇな」
卓郎くんは心底ウザそうに頭をボリボリと掻きながら、私に一歩近づいてきた。そして、拒む間もなく乱暴に唇を重ねてきたのだ。
「んむッ……!? んっ……♥」
荒々しいキスの感触にうっとりとしたのも束の間、次の瞬間、卓郎くんの片手が私のスカートの裾から滑り込んできた。
そのまま抵抗する間もなく下着の隙間に指を潜り込ませ、濡れそぼった蜜壺を乱暴にかき混ぜてくる。
「ひぁっ……!? た、卓郎くっ……んッ……!?」
あまりの刺激と驚きに思わず身を引こうとしたけれど、卓郎くんはそれを見越していたように、もう片方の腕を私の背中に回してぎゅっと抱き寄せた。
逃げ場を完全に塞がれたまま、深く深く舌を絡められ、下からは指で容赦なく膣内を掻き回される。
「んんっ~! んっ、ふぁ……ッ♥ ん、く……っ♥」
強烈な手マンと深いキスのダブル攻めに、落ち着いていたはずの身体が一瞬で再び熱狂の渦に叩き落とされた。頭の中が甘い痺れで満たされ、喉からは塞がれた唇の隙間から淫らな悶絶の声が漏れ出す。
「……はぁっ、んあぁぁぁぁっ♥♥」
じっくりと指で弄ばれた挙句、ようやく唇が解放された瞬間、私はその場にへたり込むようにして盛大に絶頂した。腰の力が完全に抜け、アスファルトの上に膝をついてビクビクと身体を震わせる。
「ハッ……じゃあな」
卓郎くんは腰を抜かして喘ぐ私を見下ろし、意地の悪い笑みを浮かべると、軽く手を振って夜の闇の中へ去っていった。
去っていく彼の背中を見送りながら、私は指先まで痺れるような余韻と愛おしさに包まれ、荒い息をつきながらいつまでもその場から動けないでいた。
「はぁ……っ、ふぅ……っ」
まだガクガクと震える足に必死で力を込めながら、私はなんとかアパートの部屋へと辿り着いた。
鍵を開けて静まり返った玄関に入ると、案の定、部屋の中は真っ暗だった。お母さんは今夜、夜勤で朝まで帰ってこない。静かな空間に足を踏み入れ、私は鍵を締めるとそのままドアに背中を預けて深く息を吐き出した。
全身を包む疲労感と、それ以上に圧倒的な満たされた感覚。
洗面所に向かい、鏡の前に立つ。そこに映っているのは、プロに施してもらったメイクが少し崩れ、瞳をうっとりと潤ませた『美少女』の私の姿。
「ふふ……っ♥」
私はシャワーを浴び、丁寧にメイクを洗い流した。お湯が肌を伝うたび、卓郎くんに力強く抱き締められた感触や、彼の手の温もりが鮮明に蘇ってくる。
鏡を見ると、そこにはいつもの、パッとしない不細工な私に戻った顔があった。
けれど、今の私は少しも惨めじゃなかった。
(メイクで化けた私でも、本当の私でも……卓郎くんに使ってもらえるなら、なんでもいいんだ……っ♥)
お風呂から上がり、ベッドに潜り込む。部屋の電気を消すと、昼間の出来事が波のように次々と胸に押し寄せてきた。
絶妙な力加減のパイズリに恍惚の息を漏らしてくれたこと。湯船の縁で容赦なく奥を抉り、私を何度も絶頂させてくれたこと。電車の中で私を抱いたことを否定せず、知り合いに「そうだな」と言ってくれたこと。そして別れ際、意地悪に指で弄んで腰を抜けさせられたこと。
振り返ってみれば、ほとんど卓郎くんに激しく抱かれていた記憶しかない。
(ふふ……本当に、セックスばっかり……っ♥)
思わずクスッと小さく笑いがこぼれた。
でも、それ以外の記憶なんていらなかった。卓郎くんに求められ、道具のように扱われ、彼の種で満たされた。その事実だけで、私の心と身体はどこまでも温かく、幸せな満腹感で満たされていたのだ。
シーツに顔をうずめると、かすかに卓郎くんの匂いが残っているような気がした。
「卓郎くん……大好き……っ♥」
今日という人生最高の休日の余韻を噛み締めながら、私は深い、甘い眠りへと落ちていくのだった。
「おかえりー。……兄貴、こんな夜遅くまでどこ行ってたの?」
卓郎がリビングのドアを開けると、ソファでテレビを見ていた妹が首を巡らせて声をかけてきた。
「んー? デート」
「はぁ!?」
靴を脱ぎながら素っ気なく答えた卓郎に、妹は跳ね起きるようにソファから身を乗り出した。好奇心を丸出しにして一気に目を輝かせ、詰問するように迫ってくる。
「デートってマジ!? 相手誰なの!? あのデブ女(紗羽)!? それともあと二人(彩綾か凛)のどっちか!?」
矢継ぎ早に問い詰めてくる妹に対し、卓郎は気のない溜息をつくだけだった。口で説明するのも煩わしいと言わんばかりにポケットからスマホを取り出すと、無言のままロックを解除し、画面を妹の目の前に突きつけた。
「……何これ。写真?」
怪訝そうに画面を覗き込んだ妹の顔が、次の瞬間、一瞬でフリーズした。
「……っ!?」
妹は呆気に取られ、驚愕のあまり限界まで目を見開いた。
画面に映し出されていたのは、ラブホテルのベッドの上で撮影された一枚の隠し撮り写真だった。プロのフルメイクによって生まれ変わった、アイドル顔負けの超絶美少女。だが、その整った顔立ちは完全に快楽に蕩け切り、カメラの存在すら気づかないほど激しく絶頂を迎えている。
そして何より、服の上からでも目立っていた豊満すぎるHカップの爆乳、そして剥き出しにされた全裸の体には、ドロドロの白濁がこれでもかというほど盛大にぶちまけられていた。
(だ、誰このおっぱいでかい美少女……!? 兄貴の知り合いにこんな人いた!? てか、これ……あきらかにヤバいでしょ!!)
あまりにも過激で生々しい写真。画面の背景がラブホテルであること、そしてそれを撮影したのが目の前で飄々としている兄であることを理解し、妹の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
「な、な……っ! 兄貴のドスケベ! 変態!! 最悪!!!」
あまりの照れと混乱、そしてパニックから短く罵声を浴びせると、妹はバタバタと猛ダッシュでリビングを飛び出し、自分の部屋へと駆け込んでいった。
バタンッ、と激しくドアが閉まる音が廊下に響き渡る。
卓郎は鼻で小さく「フッ」と笑うと、画面を消してスマホをポケットにしまい、何事もなかったかのように自室へと向かった。
一方、自分の部屋に逃げ込んだ結衣は、ベッドにダイブして布団を頭からすっぽりと被っていた。
「……っあんなの見せられたら、意識しちゃうじゃん……ッ」
真っ赤になった顔を枕に押し付け、悶々としながらベッドの中で身悶える。
脳裏に焼き付いて離れない、見知らぬ美少女の破廉恥極まりない姿と、それを冷酷に撮影して見せつけてきた兄の影。胸の鼓動がうるさいほどに高鳴り、股間の奥がじんわりと熱くなっていく。
今夜もまた、彼女にとって眠れない長い夜が始まるのだった。